八話
「お父さん、お久しぶりですね」
「えぇ、お久しぶりです」
家に帰りレアーは一目散に父親に挨拶をする。
父親に頼みたいことがあった。
「お父さん、呪いに変化を与えることが出来る?」
「どういうことかな?」
娘の言葉に父親は詳しく聞こうとする。
もしかしたら呪いを解いてほしいのかと想像していた。
「お父さんって相手に特定の言葉を話せない様に出来るよね?」
レアーの確認に頷く。
現に今も復讐相談事務所のことは言えない様にしている。
「私はあいつらに虐めていた本人だと言いたいです」
「つまり虐めていた本人だと教えて逃げられない様にしたいんですか?」
思った以上に理解されていてレアーは頷く。
「なら特定の言葉以外にもレアーから逃げられない様にする必要がありますね。取り敢えず全員じゃなくてレアーが自分の正体を教えた相手だけ逃げられない様にしますか?」
「それでお願いします!」
レアーの頼みに頷いて父親は手を光らせてレアーの額に触れる。
それだけで終わりだった。
「……これでレアーが自分のかつての名前を教えた相手は逃げられなくなったし誰にも教えることは出来なくなりましたよ」
「ありがとうございます!」
光らせた手を自分の額に触れただけで終わりだという父親にレアーは慣れた様子で礼を言う。
父親が意味不明なことをして本当に望んだとおりの成果を出すのはいつものことだった。
「それにしても、まさか教えるなんてね」
「もう少しで一緒の部屋に住んでいる女が私に依存しそうで」
「依存……?」
「はい。最近では毎日の様に私に抱きしめられて寝ているんですよ?私に甘え切っていて本当のことを言うのが楽しみです」
「そうか。もしかして君の正体を知っても、君に抱きしめられないと寝られない様にするつもりかい?それなら依存性が増すように薬でも使う?」
「是非!」
「「うわぁ……」」
離れたところで二人を見ていた嫁と愛人は思いきり引いてしまう。
そして血は繋がっていないが、まさしく家族だと認識していた。
「思いきり影響を受けているわね」
「はい………」
嫁と愛人も影響を受けているが娘ほどではない。
正直、夫は子供の影響に悪すぎる。
「………子供が生まれたら絶対に事務所なんて開かないで喫茶店の営業だけに集中してもらうわ。あれば夫だから成功できるのであって子供たちに出来る気がしない」
「わかります。協力して復讐相談なんてしないようにしましょう」
二人は手をがっしりと握り合う。
自分の子供たちが同じことをしたら、あっさり警察に捕まる気しかしなかった。
「あの人にも子供に悪影響だから釘を刺すべきよね」
「それで止まるかどうかは分かりませが同意します」
子供のことを盾にすれば流石に頷いてくれるだろうと二人は思う。
どうか子供たちは平穏に成長して欲しかった。
「これを使えば依存性は高まりますよ」
どこからか取り出した薬をレアーに渡す父親。
それを見て本当にどこに隠していたんだと二人は思う。
結婚もしたし、ずっと一緒にいるのにまだまだ分からないことがある。
「ありがとうございます!!」
そしてレアーはそれを掲げて嬉しそうにしている。
子供が生まれたら絶対に近寄らせないようにするべきじゃないかと考える。
夫が黙っていたとしてもレアーが子供に悪影響を与えそうだ。
「そうそう、レアー。何か最近、子供が生まれそうな気がするから復讐とかは隠れてやってくださいね。俺も気を付けますが子供の影響に悪いので」
「本当!?どっち!?」
「両方です」
夫と娘の会話が聞こえてきて妻と愛人の二人は互いに顔を見合わせる。
二人とも全く自覚が無かった。
「一応、言っておきますが初期の初期の段階ですからね。まだ身体に変調は無いと思います。本格的に身体の調子が変わってきたら病院に行きましょう」
レアーは目を輝かせて嫁と愛人の二人を見る。
そして二人に対してお腹を触って大丈夫か確認する。
「レアー、触っても良いけど優しくね?」
まだ自覚が無いが夫がそう言うのなら事実なのだろうと夫以外の全員が納得する。
そしてレアーは許可が貰うと早速とばかりに母親の腹に耳を当てる。
「何の音も聞こえませんよ?」
「胎児になる前ですからね。まだ形にもなっていませんよ」
「「「………」」」
だから何で分かるのと三人とも父親を見る。
どうやって視ているのか理解ができない。
魔法で透視をするにしても胎児が出来上がっていくのを認識するのはまず無理だろうと思う。
二ヶ月で2.5センチの8グラムの体重なのに、それ以前の状態なんて目に映るのも難しいはずだ。
「はぁ………。子供の教育に悪いから復讐相談なんてしないでね?」
「子供の前ではしませんよ。それよりも子供がどれだけ強くなるのか楽しみです」
自分達と同じように子供も鍛えるのだろうなと思い身体が恐怖で震えてしまう。
それでも止めないのは、いざという時に暴力的に強ければ問題を解決することも出来る。。
問題なのは力の使い方だ。
それを間違わなければ良い。
そして強ければ闘技者として食っていけることも出来るから止めることは考えていなかった。
「ふふふっ」
レアーは寮にある部屋に戻ると早速、父親に貰った香水を自分に使う。
密着しなければ意味は無いらしいが、それでもレアーにとっては十分だ。
「あれ?レアー、どうしたの?機嫌が凄く良いみたいだけど……」
「お父さんに香水を貰いました!前から欲しかった香水ですから嬉しかったです!」
ライクにレアーは機嫌が良い理由を香水を貰ったからと伝える。
この薬でライクを更に自分に依存させるつもりなんて言うつもりは無かった。
「へぇ。私も使って良い?」
「ダメです!」
ほとんど反射的に拒否をしたレアーにライクは残念に思いながらも受け入れる。
それだけ父親のことが好きなんだろうとライクは考えていた。
「そういえば今日も一緒に寝ますか?」
「うん………」
一緒に寝るのかという疑問にライクは恥ずかしそうに顔を赤くしながらも頷く。
この年齢になって抱きしめられて寝るというのはやっぱり恥ずかしいのだ。
それでも一緒に寝るのは、その方が深く眠ることが出来るからからだった。
「それじゃあ寝ましょう」
そして、眠る時間になるとベッドの中にレアーが誘ってくる。
ライクはレアーのベッドの中に入りレアーの胸に顔を埋める。
そうするとレアーが頭を撫でてくれて、ひどく落ち着く。
「良い匂い……」
ベッドの中に入ると良い匂いがしてくる。
いつも匂いを嗅いでいるが、普段とは違う匂いについ言葉が出てしまっていた。
「ふふっ、ありがとうございます。お父さんからもらった香水は他者を落ち着かせる匂いをしているんですよ」
レアーの答えに、だからいつもより良い落ち着くのだと納得するライク。
相変わらず頭も撫でられて心地よい。
「~~~♪」
そんなライクにレアーは悪戯心が湧いて子守歌を歌い始める。
それがまた心地よくライクは安らぎまどろんでしまう。
子守唄を歌われているという恥ずかしさは覚えていない。
ただ居心地よさに甘えて眠ってしまっていた。
「本当にいつもより甘えていますね」
自分に抱き着いて眠っているライクを見てレアーは父親からもらった香水を見る。
密着しなければ効果は無いらしいが、その分効果は高い。
このまま使っていけば完全に自分無しでは生きていけなくなるんじゃないかとレアーは顔を歪める。
「もっともっと甘えて下さいね?真実を知っても逃げられなくなるくらいに……」
完全に依存して逃げられなくなったら真実を話す。
その時の相手が誰だか分かっていても甘えることしか出来なくなった表情が楽しみだ。
父親や母親に子供の影響に悪いと言われたが隠れてやれば問題ないとも言われた。
「そういえば墓参りはいつにしましょうか?」
まだ墓参りには行っていない。
自分の墓に行くのは不思議な気分になる。
「今度の日曜日なら空いていますよね?」
基本的に日曜日はどこも休日だから墓参りにも行けるはずだとレアーは考える。
明日になったら相談しようと思っていた。
「私もそろそろ寝ますか……」
良い加減にレアーも起きるのが辛くなってきた。
それでも抱きしめるのは変わらずにレアーは寝ようとする。
「………あ。やめ……!」
だが眠ることは出来なかった。
原因はライクの悪夢だ。
聞こえてくる悲鳴が寝かせてくれない。
最近の悩み事だった。
ライクが苦しんでいることに関しては良い。
むしろ、もっとヤレと考える。
だが密着しているせいで悪夢のうめき声がハッキリ聞こえてきて、うるさくて眠れなかった。
「あぁ……!?」
苦しんでいるのを見るのは愉快だが、こうも眠れない日が続くのは辛い。
このことも相談すれば良かったとレアーは後悔する。
「ふぅ……」
「あっ……。ゆる……!」
レアーがライクの首に後ろから触れると更に悲鳴が強くなる。
目を瞑りながらレアーはそれを聞いていく。
以前までは悲鳴の度に眼を開けていたが、今は悲鳴を上げても絶対に眼を開けないようにする。
そうすることで少しでも目を休ませたかった。
「………すぅ」
だがレアーは時間が経つと、それを子守唄にして眠ってしまう。
それは最初のライクと同じように安らいでいた。
「………うんっ」
レアーは起きて身体を伸ばす。
久しぶりにスッキリ眠れたことで気分が爽快だった。
「愉快愉快だとは思っていたけど子守唄代わりにもなるんですね……」
ライクの苦痛の声が子守唄代わりになることを実感して更に気分が良くなる。
睡眠不足も解消でき、目覚めもスッキリしていて最高だった。
これならライクを抱きしめている不快感も我慢できる。
だけどそれは恥ずかしいが父親か母親、そして愛人の者と一緒に寝れば同じものを得れるモノだ。
だから惜しいとは全く思わない。
「さてと……」
レアーはベッドから出て今日も朝食を作り始める。
悪夢を見て精神的に傷ついているだろうから好きなモノを作って回復する必要があった。
「もっともっと苦しみますように………」
そう思ってレアーは思い出す。
今はライク一人に集中しているが他にも自分に暴力を振るった者たちを。
彼ら彼女らも何時か自らの手で苦しませたいとレアーは考えていた。
「今度の日曜日、時間は空いていますか?」
父親からもらった薬を使ってライクが完全にレアーと抱き締められないと眠れなくなって数日。
レアーからの疑問にライクは何かあるのだろうかと疑問に思いながら頷く。
「なら、その日に墓参りに行きませんか?」
レアーの言葉にライクは気が進まないが頷く。
既に以前にも約束したから自分から破るつもりは無かった。
それでもレアーには忘れて欲しかったとライクは思ってしまう。
「そうね。それじゃあ日曜日に行きましょう」
正直に言えばライクはレアーに勧められても墓参りには行きたくなかった。
自分の罪を現実でも自覚するのが辛く逃げ出したくなる。
それでも行かなくてはならなかった。
「それじゃあ日曜日は墓参りに決定ですね」
予定は埋まったと嬉しそうにするレアーにそんなに墓参りに行きたかったのかとライクは思う。
楽しんでいるんじゃないかと思ってしまう。
「そんなに墓参りに行きたかったの?」
「……?だってライクは墓参りに行ったことは一度も無いでしょう?」
理解されていることにライクは何も言えない。
墓のある場所は知っているが行ったことは一度もない。
「無理矢理にでも連れて行かなきゃ貴女は行かないでしょ?」
「…………」
本当に何も言えなかった。
現に一度もライクは墓参りに行っていない。
それはきっと他の者たちも同じはずだ。
「自分に対してケジメは付けましょう?墓参りにも行っていないと後悔するよりは一度でも墓参りに行った方が良いですよ?」
自分のために墓参りに行こうというレアーにライクは感動し、そして覚悟を決める。
「そうね。行かないといけないわよね」
たしかに墓参りにも一度も行っていないことにライクは自分に対して不満を持ってた。
それでも行くことは出来なかった。
自分の罪を現実で見るのは嫌だったのだ。
「大丈夫。一緒に行くから遅くなっても絶対に墓参りをしましょう」
思わず震えていた手をレアーは両手で包み込む。
それが暖かくて涙があふれる。
レアーが一緒に来てくれれば墓参りにも行ける勇気が湧いてくる。
「お墓の前で自分の将来の夢を宣言しましょう?二度と同じことが起きないように防いでいくと」
「うん……うん……!」
レアーの提案にライクは頷いていく。
関係のないはずの第三者なのに自分を許してくれて一緒にいてくれることに深く感謝していた。
そしてレアーは……。
(ばっかばかしい……!)
冷めた目でライクを見ていた。
二度と同じことを起こさないように防いでいくと言われてもレアーからすれば、だから何としか思えなかった。
過去にお前にした行動を後悔しているから未来ではやらないし防ぐ?
やられた本人にとっては、そんなことはどうでも良い。
後悔したからと言って過去は変わらない。
暴力を振るわれたことは決して忘れられず復讐心を募らせる。
(本当、いつバラすか迷いますね……?)
自分の正体をバラして墓参りに行くか?
それとも行った後に正体をバラすか?
どちらを選んでも恐怖に濡れた顔を見えるはずだ。
ずっと憎まれていてもおかしくない女と一緒にいたのだ。
怯えて逃げようとするかもしれない。
だけど逃げられない様にレアーは細工をしてある。
他の部屋で過ごそうとしても悪夢にうなされて声が大きいと追い出されるだろうし、そもそも既にレアーに抱きしめられないと眠れなくなっていた。
どうやっても自分の元に帰ってくると確信していた。
(少し楽しみね)
ライクが後悔と恐怖でいっぱいなのにじぶんに甘えてくるのを想像して今から楽しみだった。
どんな顔をするのか予想できずに期待してしまう。
それにライクはレアーの正体を話せない様に呪われている。
誰にも相談できないというのは辛いだろうと思う。
(日曜日までには時間があるし精一杯、甘やかさないと)
少なくとも今はまだ教えるつもりは無い。
教えるにしても直前が良かった。
それまでにもっともっと甘やかして自分に依存させようと考える。
「そろそろ学校の時間だし一緒に行きませんか?」
「うん」
学校に行く時間になり声を掛けると頷かれる。
そして互いにカバンを持つと空いた腕に抱き付いてくる。
今までにない行動にレアーはライクを見ると照れ臭そうに顔を赤くしていた。
その行動に嫌悪感が湧いた。
まるで恋人のように甘えてきて気持ち悪かった。
同時に歓喜をした。
ここまで好意を持ってくれているのなら自分の正体を教えたら、どんな反応をするのか楽しみになった。
「ダメ?」
「大丈夫ですよ。このまま一緒に学校に行きましょう?」
ライクの疑問にレアーは受け入れて、このまま学校に行こうと誘う。
するとライクも満面の笑みを浮かべる。
「うん!」
少し幼くなっているように感じるがレアーは敢えて無視する。
そこまで深く考えるつもりは無い。
ただ自分に好意を持っているか、持っていないかが大事だった。
依存していれば尚良い。
ただ同じ学校の友人たちにからかわれそうでレアーは考える。
何度も恋人なのかと聞かれて嫌悪感を出さずに否定しなきゃいけないのが地味に辛い。
嫌悪感を出して否定したらライクがショックを受けて、ここまで依存させたのに無駄になりそうで嫌だった。
「二人とも仲が良いわね」
「そう?」
「えへへ」
学校の友人の言葉にレアーは聞き流し、ライクは嬉しそうに笑う。
レアーはともかくライクの態度に学校の友人は顔を引き攣らせる。
「ごめん、ちょっとレアーを借りるわね!」
そう言って学校の友人はレアーの腕を引っ張ってライクから距離を取る。
「ねぇ、あの子。かなり距離が近くなってない?」
「そうなんですよね。まぁ慕われているのは気分が良いからどうでも良いですけど凄く密着してくるんですよね……」
「うわぁ……」
密着してくると聞いてライクに引いてしまう学校の友人。
距離を取ろうと思うしレアーも一緒に引き離した方が良いんじゃないかと考える。
「別にまだ気にしなくて大丈夫ですよ。どうせ少ししたら落ち着いて適切な距離を取るはずだと思いますし……」
レアーの言葉に本当かと疑ってしまう。
ライクに視線を向けるが依存しているような気がしている。
これは適切な距離を取ることも無く近寄ってくるだろうと想像してしまう。
「そうなんだ………」
だが、そこまで予想していてもレアーに教えるつもりは無かった。
今もライクが学校の友人に向けている視線が怖かったからだ。
レアーを独占されていると思っているのか憎しみの籠った視線が向けられる。
あまりにも恐ろしく、レアーには悪いがライクだけではなくレアーからも距離を取りたかった。
「それじゃあ先に行ってるわね!」
逃げるように走り去っていた学校の友人にレアーはため息を吐く。
レアーもまたライクの視線に気づいていた。
まさかライクから離れて聞こえない様に二人で話していただけで相手の方に憎悪の視線を向けていたことに驚き、そして嬉しくなる。
もっともっと甘えさせようと考えていたが、今のままでもかなり依存していることが分かったからだ。
「レアー!」
そして嬉しそうに抱き着いてくるライク。
まるで自分を否定するはずが無いと思っているようだ。
だから、一度だけでも抱き着いてきたライクを拒絶したいと思う。
だけど頭を振って、その考えを振り払い我慢する。
本当は嫌っているのだと思わせたくない。
「私たちも行きましょうか?」
「うん!」
満面の笑みを浮かべてライクは腕を組んでくる。
そのまま学校の中に入り男子女子関係なく注目を集めていた。
「ねぇねぇ!」
教室の中に入り先生が来るまで、ずっとライクはレアーの近くにおりレアーもニコニコと笑顔で相手をした。
そして授業が終わり休憩時間になるとライクよりもクラスの女子たちが集まってくる。
「もしかしてライクとレアーって付き合っているの!?」
その疑問に男子も聞き耳を立てる。
下手に自分以外の男子が付き合うよりはマシだという考えもあるが、容姿の整っている女の子同士で付き合うというのは色々と興奮してしまう。
そして、それは女子も同じで同性同士で付き合っているということに興味があった。
「付き合ってませんよ。純粋に仲が良くてライクが甘えてきているだけです」
本当かぁ~、とレアーに視線が集まるが、それだけだと揺るぎもしない。
正直、女子たちは自分が同じことをされたら冗談でも引き剝がすから、ずっと腕を組んだままでいた二人を疑っている。
「純粋に好意を向けてくれるのは嬉しいですから……」
それでも女子は自分なら引き剝がすと思っている。
そして男子は目の保養になるから応援しようと考えていた。
面白そうだからと女子の中にも男子と同じように応援しようと考えている者もおり確実に楽しんでいる。
付き合っていないのなら自分達で本当に付き合わせようと計画しようとさえ思っている。
レアーも慕ってくれているのは嬉しいと好意を持っているのだ。
だったら後押ししても問題ないよなと考えている。
「ところでレアーは昨日、ライクとどんな風に寝てたの?」
ニヤニヤとして質問する。
昨日までは仲は良かったが腕を組んでいなかった。
だから昨日に何かあったはずだと予想する。
その中でも睡眠について質問したのは特に影響があるとしたら寝る際にナニかしたんじゃないかと考えたからだ。
「いつもどおりに抱きしめて寝ていましたよ?」
「え?」
「だから、いつものように抱きしめて上げて寝ました」
レアーの発言に信じられなくて聞き返してしまうが同じ言葉を繰り返される。
抱きしめられて寝るって決して恋人に成れないんじゃないかと思う。
しかも、いつものようにと言っているから毎日のことなんだろうと想像できる。
つまりライクはレアーにとって妹か同い年ながら娘のようにしか思っていないだろうと予想できてしまった。
応援しようと思っていたが、やる気が削がれてしまう。
「ねぇ、もしかしてライクのこと妹とか娘のように庇護対象だと思っていない?」
「そうですね……。否定できませんね」
レアーの言葉にライクはそれはそれでと嬉しそうにする。
娘や妹のように思われているということは、それだけ近しい距離にいるのだと思ったからだ。
そのことが凄く嬉しくてニヤけた笑みが全く抑えられなくなっていた。
喜んでいるライクを見て冷めた視線をクラスメイト達はついつい送ってしまう。
年上の相手に甘えるのなら、何とも思わなかったかもしれないが同い年の相手に甘えたと聞いて引いてしまう。
しかもレアーの話からすると毎日の様に抱き着いて寝ていることに甘え過ぎだと思っていた。
「ねぇ?良く受け入れるね?」
ライクに聞こえない様にレアーに話しかける。
自分だったら同性でも抱きしめるなんて無理だ。
年齢が離れているのなら出来るが、相手は同い年だ。
「さっきも言いましたけど年下の子供のように思っていますから……」
どれだけ年下扱いをしているんだと思ってしまう。
あれだけ甘えるなんて、かなり年下として扱ってきたんだなと予想できる。
今日のはそれが表面に出ただけなんだろう。
「ふぅん。それでも腕を組んできたりとかしたから恋人なんじゃないかと噂されていると思うわよ。何度も質問されると思うから頑張りなさいよ」
レアーはそれに頷いて次の授業の準備をした。
「ところで今度の日曜日、暇?」
「ごめんなさい。その日は墓参りに行くから無理です。ライクも同じですよ」
遊びの誘いにレアーは断る。
誘ってくれた友人もレアーの理由に納得しかけ、ライクも同じ理由で遊べないと聞いて信じられなくなる。
本当はどこか遊びに行くんじゃないかとも思うがレアーがそんな嘘を吐くはずが無いしと困惑する。
「たまたま私の墓参りとライクの墓参りの日にちが被っただけですよ?」
本当かと疑いの視線を向けてしまう。
墓参りの日が偶々被ってしまうかと思う。
本当は一緒に行くんじゃないかと考えていた。
「もしかしたら同じ場所かもしれませんね」
どこの墓地に行くのかは話し合っていないらしい。
だけど同じ墓地に行くのだろうなと友達は思っていた。
「それじゃあ来週は空いている?」
話を戻して遊びに行く日の予定を友達は確認する。
今週は無理でも来週なら、と今から約束をしようと思っていた。
それは他の者たちも同じでレアーに期待の視線を送っている。
「大丈夫ですよ……?」
ただレアーは何で一緒に遊ぶのにそこまで期待の視線を向けられているのか分からなかった。
そこまで好意を向けらるようなことをしたのか疑問だ。
「でも、何でそんなに一緒に遊ぼうって約束をしようとするんですか?」
だから質問をしてしまう。
どうしてここまで一緒に遊ぼうとしてくれているのか。
「………だって貴女、いつも勉強ばかりしているじゃない。頭が良いし将来の夢のために頑張っているのは知っているけど詰め込み過ぎなんじゃないかと不安になるわよ」
その理由にレアーは面食らう。
ただただ遊びに誘ってくれた者が良い人だっただけみたいだ。
「それに勉強を見てもらった恩もあるしね。おかげで助かったわ。そのお礼も良い加減にしたかったのよ」
たしかに勉強を教えていたが、そこまで感謝されていたことにレアーは驚いてしまった。
そこまで感謝をしているのなら何か奢ってもらおうとレアーは考えていた。
そして。
「何で嘘をついたの?」
寮にある部屋に戻ってのライクの疑問にレアーは首を傾げる。
何のことか最初は分からなかったせいだ。
「墓参りのことですか?それならライクと私が恋人だと誤解されない様にするためですよ。ただでさえ噂されていますし、それらしい行動を取ったら勘違いさせてしまいますから」
「そうなんだ……」
レアーの答えにライクは少しだけ残念そうにする。
どうやらレアーは恋人だと思われたくないようだった。
「レアーは私のことをどう思っているの?」
「同い年なのに可愛らしく甘えてくる女の子でしょうか?」
ライクはレアーの答えに少しだけ嬉しくなり、そして同時に残念だと思う。
同じ女の子同士でも少しは意識してもらいたかった。
どうすれば女の子でも意識してもらえるのか調べる必要があると考える。
「恋人が欲しくなった時に同性愛者だからと拒否されたくないですし……」
「は?」
レアーの言葉にライクは激しく反応する。
その言い方だと好きな男がいるみたいだ。
「もしかして好きな男の子でもいるの?」
「まだいませんよっ!?」
レアーの反応にライクは、それが事実だと安心する。
もしいたら排除しようと思っていた。
抱きついたら抱きしめ返してくれて、しかもその温もりが暖かい彼女をライクは誰にも渡したくなかった。
「ねぇ、日曜日に墓参りが終わったらどこかで買い物をしない?」
「良いですよ。服でも見に行きますか?」
レアーが自分の提案に頷いてくれたことにライクは嬉しくなる。
その上に意見まで出してくれる。
「良いわね!あとケーキも一緒に食べに行かない?美味しい店を知っているわ」
美味しいケーキと聞いてレアーも目を輝かせる。
それが嬉しくて墓参りが終わったら絶対にケーキ屋にも行こうとライクは決意する。
何故なら自分にしれくれたようにライクもレアーを甘やかしたいと思っていた。
その為なら服やケーキの代金もレアーの代わりに自分が全部払おうと考えていた。




