七話
「気付いているのかなぁ……」
「急にどうしたのよ?」
急にレアーの父親がそんなことを口にして妻は問いかける。
その口は笑みにの形に歪んでいたのが更に気になった。
それは一緒にいた愛人も気になって視線を向ける。
「いや。今日レアーが友達を連れてきただろ?」
「えぇ……?」
レアーが友達を連れてきたことを思い出して顔を緩める母親。
狭い世界で暮らしてしまっていたから友達を作って世界を広くしてほしいと祈っていたから嬉しかった。
「は?」
そしてそれは愛人も同じで友達を連れてきていたのに、その場にいなかったことを悔しく感じている。
一目だけでも見たかったし、出来ることなら友達となってくれたことにお礼を言いたかった。
会えなかったことで八つ当たりになるかもしれないくても文句を言わなかったのは相手が崇拝している男とその妻だからだ。
「彼女、レアーになる前のあの子に暴力を振るってボロボロにした子の一人ですし」
「「は?」」
夫の言葉を聞いて二人は怒りを滲ませた表情になる。
初めて見たレアーの表情は今でも思い出せる。
夫以外誰も信用していなくて怯えと敵意を含んだ表情。
そうさせた相手を妻たちは嫌っていた。
「取り敢えずお前たちが手を出すなよ。どうするか決めるのはレアーだ」
夫の言葉に不満を抱きながら二人も頷く。
理は夫にあるし、何よりも復讐のための道具は夫が管理している。
「確認して良い?」
そして確認したいことがあると強い視線で夫を見る。
「何?」
「復讐の結果としてレアーもひどい目に遭わないわよね?」
「はぁ……」
妻の疑問に夫はため息を吐く。
そのことが妻の琴線に触れ更に目が吊り上がる。
せっかく育てた娘をひどい目に遭わせるつもりなのかと、声を荒げて問い質そうとしたところで夫は遮る。
「ねぇ「一応言っておくけど、基本的に痛い目に遭っているのは詰めが甘いか、最後の最後に力尽きて倒れた者だけですよ?心配ならバレないように徹底してあげたらどうですか?」………貴方は協力しないの?」
夫の反論にたしかにと納得している部分もあった。
最後の最後で詰めが甘かったりバレても良いからと命がけで復讐して成功と同時に捕まった者もいた。
特に後者に関しては、ほとんどが復讐が終わった途端に力尽きて、その場に倒れてしまい捕まっていた。
そして妻はそれが分かっているのなら夫は手助けしないのか質問する。
一緒に暮らして育てて来たのに情が移っていなのか疑問だ。
情が移っているのなら協力するべきなんじゃないかと妻たちは思う。
「良いよ」
ぶっちゃければ夫である男がいれば、ほぼ完璧に復讐は成功できる。
捕まったり復讐がバレることもないだろう。
面白そうだからと復讐の配信もすることは無い。
「…………ほっ」
妻たちも夫のことは良く知っているから協力してくれることに安心する。
夫さえいれば確実にバレないと妻たちも思っていた。
「何度も言うようだけど復讐するのはレアーの意思次第だからな?勝手に判断して行動するなよ?」
「わかっているわよ」
夫の再度の注意に頷く妻たち。
全ては娘の意思次第だと落ち着こうとする。
「取り敢えずレアーに友達だと紹介された子は昔、暴力を振るわれていた子だと教えた方が良いわよね?」
「そうですね。私も教えていた方が良いと思います。後で気づいたらショックでしょうし」
二人はレアーの連れて来た友達について教えることに決めたらしい。
ショックを受けるかもしれないが、そんな子と近くにいることが親として不安だった。
同じ寮の部屋に住んでいるらしいが警戒だけは出来るはずだと考える。
「二人とも?」
「何?もしかして止めるつもり?」
夫の声に止めるつもりかと妻は睨み、愛人は崇拝しているせいで動きを止める。
愛人は連絡をするなと言われたらしないつもりだった。
「もう寝ているかもしれないから明日にしたら?」
「「あ」」
レアーの友達が暴力を振るっていた子だと聞いて焦って忘れていたのか今の時間を思い出す。
もう遅い時間で寝ていてもおかしくない時間だ。
起きていても電話をしても迷惑になるだろう。
「そうね。明日の朝にするわ。朝、起きて学校に行くまでにも時間はあるでしょうし」
自分も学生だった頃を思い出して連絡をすることに決める。
連絡をするのなら出来るだけ早い方が良い。
「二人とも連絡をするってことで良いんだよな?」
夫の言葉に妻は頷く。
むしろ心配じゃないのかと睨むが、夫は頷かれたことに携帯端末を手に操作をしている。
「何をしているんですか?」
「電話は迷惑だからメールを送っている。これなら朝、気付いたら確認してくれるだろうし」
「ズルいわよ!?」
夫が先に手を回していたことに妻はズルいと叫ぶ。
そうやって娘の好感度を稼ぐのが上手すぎる。
「明日の朝は私が連絡するわよ!?貴方が連絡しないでね!?」
妻の言葉に夫は笑みを浮かべながら頷く。
自分に食って掛かる妻が可愛くてしょうがない。
連絡する気は無いが、もう少し妻のこの姿を愛でたいと夫は思っていた。
「………ん?」
レアーはいつものようにライクのうめき声で目が覚める。
そして携帯端末を見るとメールが来ているのを確認する。
送ってきた相手は父親であり急いで確認する。
「お父さんがメールを送るなんて珍しい。何かあったのかな?」
メールは二通あり書かれていた内容はライクのこととレアーのことだった。
「やっぱり気付いていたんだ……」
メールの一通には友達だと連れて来た子がかつて自分に暴力を振るった相手だと書かれていた。
父親が気付いていたことに驚きはない。
むしろ当然だと思っている。
今もうなされている悪夢は父親がかけた呪いだとレアーは知っている。
だから気付くのも当然のことだ。
ただレアーがそのことに気付いていたのか予想できなかったらしい。
こんなことだが父親の予想を超えていたことにレアーは嬉しくなる。
「二通目は……?ふふっ」
二通目の内容には母親たちが心配して電話を掛けることが書かれていた。
母親が心配してくれていることにくすぐったくなる。
あの人たちに会えたことが本当にうれしく思えてしまう。
医学関係の道を歩みたいと思っていたが本格的に喫茶店を継ぐことにも心が揺らいでしまっていた。
それでも今はまだ医学関係の道を歩もうとは思っている。
「さてと朝食の準備でもしますか」
育ての親たちが心配してくれていることにレアーは気分を良くして朝食の準備をする。
今ならいつもより美味しく調理できそうだと気合が入っていた。
「…………おはよう」
「おはようございます。朝食は出来ていますよ」
その言葉にライクは悪夢を振り払おうと朝食を摂ろうとする。
レアーの料理は悪夢を見ていたことを忘れるぐらいには美味しかった。
今日もレアーの料理に口を付けるとライクはかき込むように食べ始める。
「うっま……!!」
今日はいつもよりレアーの料理が上手くて手が止まらないようだった。
その様子にやはり今日は会心の出来だとレアーは拳を握る。
例え相手がライクでも作った料理が美味しいと言われてレアーは嬉しくなる。
実験として新しい調理法を試しても心も痛まないからライクという存在はレアーにとって都合が良かった。
失敗した料理を食べさせても心が痛まないだろう。
「本当にレアーは喫茶店を継いだ方が良いんじゃないの?」
「ありがとうございます」
そしてレアーは笑顔でライクに礼を言う。
だが内心ではライクの言葉のほとんどはどうでも良かった。
ライクの言葉で価値があるのは美味しいか不味いかだけ。
目の前の女の意見何て全く聞き入れる気は無い。
「それじゃあ私は先に学校に行っていますね。少し早いでしょうけど用事を思い出したので」
「分かった。それじゃあお礼に皿は洗っておくから先に行ってて良いよ」
ライクの言葉に礼を言ってレアーは学校へと今から向かっていった。
本当は用事が無い。
ただライクの目の前で母親と電話をするのが嫌だった。
会話に内容で自分のかつてのアウルだとバレるのが嫌だった。
「何があったんだろう?」
ライクはレアーが今の時間から学校に行ったことに疑問を持つ。
だが何か困っている様子でも無かったし気にしないことにした。
「はぁ……」
そしてライクは皿を洗いながらため息を吐く。
レアーの料理は今まで食べて来た料理の中でも一番美味しかった。
自分との圧倒的な料理の腕の差に嫉妬をしてしまう。
「私もレアーに料理を教えてもらえないかなぁ……」
ライクは料理が出来ないわけでは無い。
むしろ人並みに出来る。
だだレアーの料理を食べて自分も同じくらい料理が出来るようになりたいと思ってしまう。
「頼めば教えてくれるか……?」
だけど正直、教えてくれるか不安に思ってしまう。
レアーもライクも毎日、部屋に戻ったら将来の勉強をするのが殆どだ。
偶に息抜きとして遊びに行くこともあるが、そこまで頻度は高くない。
断られる可能性もある。
「そもそも悪夢を見てしまっているとはいえ、うなされて煩いはずなのに文句を言うどころか朝食を作ってもらっているのよね……」
自分の普段を考えて冷や汗を流すライク。
物凄くレアーに迷惑を掛けていると再認識する。
「料理を教えてもらうよりも何か御礼に送った方が良いかもしれない」
普段から頭を使っているし何か甘いモノをレアーに送ることを決める。
ケーキなんてどうだろうと考える。
甘いし女子で嫌いな者はほとんどいない。
そうと決まれば今日の学校が終わったら買いに行くことを決める。
「それにしても……」
悪夢を見る度に何度でも思うがアウルにそっくりだと思ってしまう。
ただ、どれだけそっくりでもライクは別人だと思っていた。
何故ならレアーの素顔を見たことはあるが魔眼の影響を受けなかった。
魔眼の影響をオンオフに出来るなんて調べても出てこない。
「彼女のような子をこれ以上、増やさないようにしないと……」
自分達の行いのせいで身近な者が死んだのは、かつてのクラスメイト全員のトラウマだ。
だから似たようなことを起こさないため、そして防ぐために教師か医者になることを全員が決めていた。
そして死んだ後にアウルに会って謝罪したいと思っていた。
「もしもし?」
寮から離れて周りに誰もいない。
そんな時に都合よく電話が鳴る。
相手が誰なのか確認すると母親だった。
『レアー?今、大丈夫?』
「大丈夫だけど、どうしたんですか?」
母親の質問にレアーは何があったのかと聞き返す。
予想はしているが父親に既に電話がかかってくると伝えられていたことは言わない。
あまり自分の行動を想像通りにしか動いていないと思われるのは嫌だった。
『あなたの友達、幼いころクラスメイトを集団で暴力を振るっていたらしいわ。仲良くなるのは止めておきなさい』
「知っていますよ。その対象が私だと言うことも」
『え……』
予想通りの内容にレアーは苦笑する。
そんなことは初めて会った日から覚えていた。
『もしかしてお父さんから聞いたの?』
そうなら最初から言えと自分の夫を睨む母親。
気付いているか、気付いていないかどちらか分からないと言っていたが嘘じゃないかと睨む。
「ううん。初日で顔を見たことと悪夢でうなされていたので確信しました。ずっと前にお父さんが私に理不尽に暴力を振るった者は全員悪夢を見せているって聞いたことがありますし」
だから気付いていたという娘の言葉に母親は父親を見る。
『な…?』
『レアーが貴方が悪夢を見せているって教えてたって言っていたけど?』
『………?そ……え…。……かり……れ…た』
電話越しでは父親が何を言っているのか聞こえていないが何となく想像がつく。
悪夢を見せていることを忘れていたのだろう。
レアーはそのことにため息を吐く。
かなり前のことだとはいえ呪いを掛けたくせに忘れているのは、どうかと思う。
「忘れていたみたいですね……。それとお母さん、お父さんに感謝しているって言ってくれない?」
『急にどうしたの?』
忘れていたという意見に母親は同意して何で急に感謝という言葉が出てきたのか理解できずに首を傾げてしまう。
「おかげで、あの女の苦しむ顔がまじかに見える……!」
その声色に母親は夫を見る。
何となく恍惚とした表情を浮かべているのが想像できてしまう。
そして他人の苦しむ顔を見て、そんな表情を浮かべることに血のつながりは無いが夫の娘だと認識する。
なお自分の影響は受けているとは思っていない。
『そ……そう』
「うん!それに首に手を掛けたら更に苦しむのが最高ですね!」
母親は娘の言葉に相当恨んでいると理解する。
なら好機だと理解して感謝するのも納得していた。
「今度また帰らせてもらいますね!前はライクがいたから確認することが出来なかったけど、他の者たちの悪夢がどうなっているのか知りたいので!」
『そう……。楽しみにしているわね』
現在の呪いを掛けられた者たちのことについて一番詳しいのは夫だ。
母親である自分達よりも父親が理由で帰ってくるのは少し嫌だった。
自分達にも甘えて欲しいと母親は考える。
『ねぇ。その日、話が終わったら久しぶりに親子でどこか行かない?ケーキでも何でも奢って上げるわ』
「良いんですか!?ならお母さんたち二人と一緒にケーキバイキングにでも行きませんか!?」
『お母さんたち二人ってお父さんは良いの?』
「ダメでしょうか?久しぶりに女だけで出掛けようと思ったんですけど……」
『ううん!構わないわ!それじゃあお父さんを置いて買い物に行きましょう!』
娘の残念そうな声に即座に母親は否定する。
久しぶりに娘と買い物に行けることにテンションが上がってしまった。
まだ愛人である子には聞いていないが一緒に来てくれるように頼むつもりだ。
『それじゃあ勉強を頑張るのよ』
「うん!それじゃあ、また連絡をしますね!」
いつの日にするか決まっていないが自分と愛人、そして娘の約束が重なるように予定が重ならない様に今から準備しようと考えていた。
「良かったですね」
そんな妻に夫は声を掛ける。
嫉妬かと思い羨ましいだろうと自慢しようと思うが夫は優しい笑みを浮かべていた。
「何時でも大丈夫ですから楽しんでくださいね?その分の仕事は頑張りますので」
想定内だと自分を見てくる夫の瞳に何も言えなくなった。
その瞳に腹が立つ。
いつもいつも夫の掌の中にいる気分だ。
そして同時に自分が支配されているようで気分が良くなってしまう。
きっとそれは愛人である女も同じ気分かもしれない。
何をやっても想定内だということは理解されているということだろう。
そのことが矛盾した気持ちを抱かせる。
自分はこの程度だと思われていることが腹立たしくて、自分ならこう考えると理解してくれているのが嬉しくなる。
「そういえばレア―がらみで悪夢を掛けた相手って今はどうなっているの?」
考えていことを振り払うためでもあるが、何となくレアーを傷つけた他の子たちはどうなっているのか知りたくなった。
きっと他の者たちも同じ目に遭っているのだろうと想像する。
「レアーを虐めていたクラスメイト達は将来の夢は医者か教師になることに固定したことと死ぬまで一生悪夢を見ること。担任の教師は職場の者たちに自分のしたことを悪夢として見せる呪いを掛けましたよ。あと本人も一生悪夢を見ます」
「「……………」」
将来の夢が奪われてざまぁ、とも思うしやり過ぎなんじゃないかと少しだけ考えてしまう。
だけど将来は絶対にレアーを虐めていた者たちが働いている学校や病院に子供は連れて行きたくないと思った。
「……さてと」
学校に着くとレアーは早速、図書室へと向かう。
学校の中でも特に勉強に出来る場所でレアー以外にも何人か使っている。
レアーは図書室へと入ると早速、医療関係の本を探す。
その中でも魔眼について書かれている本をレアーは探していた。
「何を探しているの?」
そんなレアーに先輩である女子生徒が話しかけてくる。
突然のことに驚いて反応すると先輩は苦笑する。
「必死に探していたみたいだけど私も手伝うわ。何を探しているのか教えてくれない?」
「え……でも」
迷惑なんじゃないかとレアーは考えて拒否しようと考えるが、その前に先輩が口を出す。
「私は図書委員なの。せっかく後輩が本を一生懸命探しているのに手伝わないなんて見ているだけなんて出来ないわ」
「……分かりました。お願いします」
先輩の説得に折れるレアー。
一人では見つけることも出来なかったから人手を増やすのにも丁度良かった。
「それで何の本を探しているの?」
「魔眼について書かれている本を探しているんです。できれば対処法や魔眼の効果を消す方法が内容に書かれている本を読みたいです」
魔眼について対処するために方法が書かれている本ならともかく、魔眼を失う方法が書かれた本が学校にあったかと図書委員の先輩は考え込む。
魔眼について書かれている本はあるが、ほとんどは魔眼を防ぐ方法や知られている魔眼の能力に書かれている者ばかりだ。
そもそも魔眼を失う方法なんて考えたことが無い。
「魔眼について書かれている本ならともかく、魔眼の効果を消す方法なんて聞いたことも無いわよ。……とりあえず対処法、いえ魔眼について書かれた本を片っ端から読んでいく?」
やっぱりそれしかないかと思いながらレアーは頷く。
もしかしたら、その中に魔眼の効果を消すことについて軽くでも書かれているかもしれないと期待していた。
「ねぇ?どうして魔眼の効果を消す方法を調べているの?」
先輩は気になってレアーに質問する。
魔眼を持っているのは戦うのに便利だし、プロの『闘技者』になるのも有利だ。
『闘技者』とはその名の通り武闘会で戦う者たちでテレビに映ったりする人気の職業だ。
「知り合いに魔眼を持っている者がいるんですけど、昔は魔眼を持っているせいで勝手に発動して皆を困らせていたみたいで。それに使わない時はサングラスを着用しないといけないから裸眼で景色を見たことが無いって言っていたんです」
魔眼を持っている者と知り合いなんてラッキーじゃないかと思い、魔眼を持っているからこその苦労を聞いて同情してしまう。
そしてレアーのことが羨ましいと思った。
そんな苦労なんて余程親しくなければ聞けるはずがない。
「将来は魔眼の研究者にでもなるのかしら?」
「迷っています」
ハッキリとそう言ったレアーに先輩は思ったのとは違う回答だったことに驚く。
てっきり肯定するのかと思ったのに迷っていると返されてしまった。
「私はお父さんたちの経営している喫茶店も継ぎたいと思っているんです……」
後輩が将来の道を悩んでいることに優しく見守ってしまいたくなる先輩。
親たちの経営している喫茶店を継ぎたいと言った表情は、とても楽しそうだった。
きっと喫茶店を経営している自分を予想できたのだろう。
研究者か医者として働いている自分より身近な事だから想像しやすかったみたいだ。
どっちを選んでも真剣に選んだ後になるだろうから後悔はしないだろうと予想できてしまう。
「そっか。喫茶店を経営するのに必要な知識が知りたかったら相談してね。一緒に探して上げるわよ」
先輩はレアーの両親が経営する喫茶店に興味を持つ。
想像だけであんなに楽しそうな笑顔を浮かべる喫茶店がどんなところなのか一度でも良いから行ってみたくなる。
「それと喫茶店の名前を教えてもらって良い?少し興味があるわ」
「ヴァンジャンスです。どの料理もおススメですから好きなのがあったら頼んでくださいね」
「えぇ、そうさせてもらうわ」
どの料理もおススメと言われたが、それは経営している者の娘だからこその言葉なのだろうと先輩は考える。
喫茶店に行ったら直接、店主におススメを聞こうと考えていた。
「……………はぁ」
やはり今のところ読んできた本の中に魔眼の効果を消す方法は書かれていなかった。
ほとんどが対処する方法と日常的に使ってしまわない様にする方法しか書かれていない。
しかも後者に関しては物理的に遮る方法しかないし外れたら問答無用で発動してしまう。
だからこそ現在の自分の状態が謎だった。
魔眼を持っているのに自分の意志で効力をオンオフ出来る。
他に前例は無いか調べてみたが、どの本にも書かれていない。
ネットでも調べてみるべきだと考えた。
「お父さんに弟子入りしたら医者としても喫茶店の経営者としても成功しそう………」
それにしてもと思わずレアーは愚痴ってしまう。
それだけ父親が偉大だと感じてしまったのだ。
喫茶店も生活に困らない程度には生活しているし、世の中には出していないが前代未聞のことも魔眼のことを含めなくても複数やらかしている。
もしかしてお母さんも愛人も制御するために一緒になったんじゃないかと思ってしまった。
「いい加減に話すべきよね……?」
ライクは食器洗いをしている最中にふと思ってしまう。
いつも悪夢にうなされている自分に文句を言わず、朝になったら起こしてくれて朝食も用意してくれる。
それなのに大したお返しはしていなく甘えたままの自分が嫌になった。
自分の過去を話したことによって距離を取られてしまうかもしれないが、このまま甘え切った状態でいるのが我ながら嫌になってしまった。
いい加減に離れるべきだろうと思ってしまう。
「そうと決まれば確実に話す時間のある夜に話すか!」
その時間になら自分も覚悟を決めれると思って夜に決める。
そして今日一日ぐらいは部屋にいなくて野宿しても大丈夫だろうと思っていた。
「どうしましたか?」
そして話があると呼び出した目の前の女の子にライクは緊張していた。
何かあったのだろうかと優しそうに自分を見てくるレアーに嫌われることを恐れてしまっている。
「大丈夫ですか?」
「来ないで!!」
心配して近づいてくるレアーにライクは拒絶する。
今更ながらに自分に対して優しくして良い存在じゃないと思い、他の誰かに優しくしてほしいと思う。
「ライク……?」
「ごめん……。私の過去を話すから優しくしないで………」
そしてライクは自分の過去を話す。
小学校に入学したばかりの頃、魔眼を持っている少女がいたこと。
そして一人だけサングラスを付けていたことに嫉妬して虐めていたこと。
魔眼を持っていると教えられたのに信じずにサングラスを奪ったこと。
そのせいで被害を受けて何もかも虐めていた子が悪いと嘘をついたこと。
それがバレて更に虐めが酷くしたこと。
そして最後に虐めを苦に虐めていた子が自分の目を刺して死んだことを全て話した。
「そうなんだ……」
そして聞こえてきた言葉にライクは肩を震わす。
これで終わったと覚悟をしていたが、それでも何を言われるのか想像できなくて怖かった。
「頑張りましたね」
そして抱きしめられた感触が伝わってきてライクは混乱する。
自分のしてしまったことを考えて聞こえてきた言葉もあり意味が分からかった。
これだけ酷い事をしたのに受け入れてくれるなんて信じられない気持ちでいた。
「やってしまったのは小学校に入学したばかりの頃なんですよね?」
「うん……」
「なら本当に良い事と悪い事がまだわかっていなかったんでしょう?そして今は後悔している。だから私は許します。でも、それは私が第三者だからです」
「うん……。わかっている……」
関係のない第三者だからこそ許せると言われてもライクはそれでも許してくれるのが嬉しかった。
今まで誰も許してくれなかった。
家族もそうだし過去に話したことのある友人は全員離れて行った。
かつてのクラスメイト達は同士だから許す許さないの関係では無かった。
「それでもありがとう」
だからこそ許してくれたことが、とても嬉しかった。
(ばっかばかしい……)
そしてレアーは自分が抱きしめているライクを冷めた目で見ていた。
自分の胸の中に顔を埋めさせているから、そのことにライクは絶対に気付かない。
気付いていたら許すというのは嘘だと気づいただろう。
だが、それも叶わない。
(今度、絶対にお父さんに会いに行こう)
呪いのことに関してレアーは話し合おうと決意していた。
ただ悪夢を見せるだけではない。
他にも掛けて欲しい呪いがあった。
「ねぇ、今度一緒に墓参りに行きませんか?」
その言葉にライクは顔を上げる。
どういうことだと疑問を持っていた。
「相手の墓は、その魔眼を持っていた女の子の墓ですけど謝りに行きましょう?私も魔眼を持っていたせいで悲劇を味わった子の墓に行きたいし」
「なんで……」
「話を聞いて魔眼の制御を出来るようにする研究をしたいと更に強く思ったんです。その決意を強くするために行きたいです」
「………わかった」
レアーの決意にライクも行くことを決める。
毎日、悪夢を見ていたせいで墓参りに行くことも考えていなかった。
幸いにも場所は知っているから案内するのも問題は無い。
「何時行く………」
「そちらの都合の良い日で大丈夫ですよ。その日に私も合わせますので」
空いている日を確認しようと思う。
そして予定を作って墓参りに行く日を決めようとライクは思った。
「今日は一緒に寝ますか?」
「え?」
一緒に寝るということ言葉にライクはレアーの瞳を見る。
冗談を言っているみたいだが頷いてしまう。
「ぷっ。良いですよ、それじゃあ一緒に寝ますか……」
レアーは素直にライクが素直に甘えたことに吹き出し優しい顔でライクと一緒にベッドに潜り込む。
ベッドに潜り込んでからも、ずっとライクを胸の中に抱きしめているレアー。
その間、ライクはレアーの温もりを感じて安堵していた。
久しぶりの感覚に甘えてしまっている。
そしてレアーは優しくライクの頭を撫でる。
嫌悪感が溢れた表情を見せないように、絶対に敵意のある言葉をぶつけない様に必死に自分を抑えながらライクを愛おしげに撫でていた。




