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六話

「うわぁ!!」


 数年が経ち高校生となったライクは悪夢を見たことで悲鳴を上げて起き上がる。

 見た夢はアウルを自殺に追いやった時の夢。

 年齢を重ねるにつれて自分のやったことに嫌悪感が強くなる。


 あの日、アウルが死んでから一度も悪夢を見ない日は来なかった。

 それはライクだけでなく同じクラスの者たちや、その両親も同じ。

 それなのに一人も決して狂うことは無く生きてこれた。


「大丈夫……?」


 声を掛けてきたのは同じ寮に住むことになった友人レアーだった。

 初めて見たときはアウルにそっくりで非常に驚いてしまった。

 きっと生きていれば、こんな風になっていただろうと思わせる者だった。


 最初は初めて会って驚いたことに不思議がられていたが一緒に過ごすうちに仲良くなった。

 今では一緒に色んな所に買い物に行ったりする仲だ。


「うん……。ごめんなさい……」


 そしてライクは彼女が同じ寮の部屋で一緒に住んでいることに、とても感謝していた。

 毎日、悪夢で悲鳴を上げて目を覚ますのだ。

 嫌になってしょうがないし、もし自分だったら違う者と部屋を交代したいと思ってしまう。

 それなのに気にせずに毎日、心配してくれる。

 自分に対しても愚痴や文句も聞いたことが無かった。


「気にしなくて大丈夫です。将来は医学関係の道に進みたいですし、看護師の道を選ぶなら良い経験になりますから」


 医学関係の道に進むつもりだというレアーに同じだと嬉しくなるライク。

 ライクも医学関係の道に進むつもりだ。

 そして過去から続く後悔を少しでも晴らすために魔眼の専門家になる夢を持っている。


「そうなんだ………。私も将来は医学関係、それも魔眼の専門家になりたいと思っているわ」


 魔眼の専門なんて有っただろうかとレアーは首を傾げる。

 少なくともレアーは聞いたことが無い。

 魔眼自体も十万人に一人の割合だから研究すること自体が難しい。


「そんなのありましたっけ?」


「無いから私が作るのよ」


 無いから作るというライクにレアーは感嘆の声を上げる。

 学校でも学年で一番の成績を誇っているから、あながち冗談とは思えないのもあった。


「へぇ、頑張ってくださいね」


「当然!」


 レアーに応援にライクは力強く頷く。

 友人から応援されるのは力が沸き上がってくる感じがした。

 今なら普段よりも結果が出しやすそうだ。


「それじゃあ朝食を食べましょう?」


 そう思っていると朝食を準備して渡してくる。

 どうやら寝ている間にご飯の準備もしてくれたみたいだ。

 悪夢の悲鳴で寝ている邪魔をしている上にご飯まで準備してくれてライクはレアーに頭が上がらなくなりそうだった。

 なんでも甘えてしまっているみたいで恥ずかしくなる。

 今度は自分が先に起き上がって世話をしてみせると内心で決めていた。




「はぁ………。それにしても皆、どうしているかな?」


 皆というのは、かつてアウルを自殺の追い込んだクラスメイト達だった。

 ライクたちは中学、高校が離れた今でも連絡を取り合っている。


 ただ、ここ最近高校に入学したばかりで連絡はほとんどしていなかった。

 だが最近は落ち着いてきたし今度は皆で集まろうと考えている。


「集まるにしても何人が来るんだろう?」


 だが当然ながら全員が集まるわけでは無い。

 何人かは転校して気軽に集まることが出来ない遠くへと行ったし、それぞれ用事が重なる場合もある。

 それにそれぞれ将来の夢のために勉強もしなくてはいけないから断られる可能性もあった。


「皆、教師か医者になる夢を持っているからなぁ~」


 アウルのクラスメイト全員が医者か教師になる夢を小学生の入学したての年から持っており、そして今も変わっていない。

 直接会っていなくても何故か確信できる。


 そして全員が自分達の親に嫌われていた。

 今も仲が良く連絡が取り合うのは同じ辛さを経験して分かち合っているからだろう。

 他人を殺した後悔と親に嫌われる辛さ。

 それを共有し合ったからこその仲の良さだ。


 そして夢が変わらないのを確信し合っている理由の一つはお前だけが楽になるのは許さないというのもある。

 毎日、悪夢を見ているからこそ子供のころに抱いた夢は変わらないのだと理解している。

 アウルを殺したことを後悔していことを決して忘れさせてくれない。

 もし変わったとしたら悪夢を見ることが無くなったということだ。

 それは後悔した過去を忘れてしまいかねない。

 それはあまりにも羨ましくて同時に侮蔑してしまいそうになる。。


「きっとアウルは一生、私たちを許さないんだろうな」


 毎日見る悪夢。

 それが決して一日たりとも見ない日は無い。

 普通ではありえないことに、だからこそアウルの怨念だと皆が思っている。


 何度見ても決して慣れることが出来ない。

 現実では毎日同じ夢を見ているのだと理解していても夢の中では忘れてしまう。

 狂ってしまえば楽になるのに狂えない。

 アウルを憎みたいのに自分のした行動を毎日理解させられているせいで憎むことも出来ない。


 狂えずに正気でいることもアウルの復讐かもしれない。

 そのせいで自分の過去を後悔するライク。

 だが、それは毎日のことで後悔しない日は今まで一度もなかった。



「そういえば今まで聞いてこなかったけど毎日、悪夢を見るって何があったんですか?」


 ある日レアーから、そんなことを聞かれる。

 毎日、悪夢を見ているせいで魘される自分の世話をしてくれているから話すべきかもしれない。

 だけど、それは自分の過去を話すということ。

 そうしたらレアーも自分から離れていくと想像すると話すことを戸惑ってしまう。


「無理なら話そうとしなくても大丈夫ですからね?」


「ごめん……」


 詳しいことを聞こうとしないことにライクは感謝する。

 本当にそれなのに相手をしてくれるレアーは有難かった。


「……ねぇ。私も答えなくて良いけど、何でレアーは私に対しても敬語で話すの?同い年だし、ため口でも構わないのに」


 話を変えるためにライクもレアーに質問する。

 その内容はレアーの口調についてだった。

 同じ寮の部屋に住んでいる友人なのに会話は敬語が基本だ。

 それは自分だけでなく他の同級生にも同じだが、だからこそ気になってた。


「あぁ~。これは育ての親の影響ですね。基本的に育ててくれた人が私相手にも敬語で話していて、それが移った影響だと思います」


「…………育てた親?」


「そうですよ。私、捨てられたので」


 初めて聞いた情報に悪いことをした気分になるライク。

 正直、そんな過去を気軽に話すとも思わなった。

 むしろ話して大丈夫なのか心配になる。


「………良い親なんだね」


「………………」


 レアーが優しい者に育ったのは、その育てた親のお陰だと思いライクは優しい親だと評するが、何故かレアーは微妙な表情をする。

 そのせいでライクは何か間違えてしまったのかと不安になる。


「優しい………。いえ、かなり酷い人ですね!」


 力強く断念するレアー。

 その頭の中には色々なことを思い出している。

 特に女の子だからと念のために鍛えられたが何度、自信を打ち砕かれたか分からない。

 正直、戦闘に関しては絶対に勝てないと魂に刻まれてしまった気がしている。


 それに仕事の内容も普通に最悪だった。

 感謝している者も多いらしいが、それ以上に恨まれている。

 それなのに育ての親たちは止める気も無いし、それに以上に楽しんで仕事をしていた。

 幸いなのは昔よりも仕事がかなり減り喫茶店を経営したことだった。


「そ、そうなんだ?」


 レアーの力強い否定にライクは引きながら頷く。

 ただ仲が良いから、そんなことを言えるんだろうなと考えていた。

 本当に嫌いだったりするのなら、もっと暗いはずだ。


 血が繋がっていないだろうに少しだけ羨ましいとライクは思ってしまう。

 自業自得だがライクたちアウルのクラスメイトだった皆は自分の親に嫌われている。

 皆が学校は寮のある学校を選んでいたし、そこに追い出された。


「どんな仕事をしているの?」


「………喫茶店を経営しているけどお嫁さんだけでなく愛人もいるんだよね」


「…………マジで」


 育ての親に愛人がいると聞いて思わずライクは真顔になる。

 それは浮気じゃないのとか、力強く否定しようとするのも納得してしまう。

 自分も親が浮気をしていたら否定するだろう。


「しかもお嫁さんは受け入れているし……!いや、たしかに昔から二人に対して献身的でしたけど受けいれるの?それなら私だって受け入れても良いじゃないですか」


「レアー?」


「はっ!」


 目の前の少女からファザコン気味な言葉が聞こえてきたが無視をする。

 それよりも夫婦二人に対して献身的とかお嫁さんが受け入れたことに興味がわく。

 ヤバイ修羅場が起こっていると思ったら三人ともが仲が良いらしい。

 そんなこともあるんだなと更に詳しく聞きたくなった。


「昔から献身的って、そんなに長く一緒にいるんだ?」


「はい。私が育ての親と一緒に過ごし始めたのが小学生の頃なんですけど、そのころから三人一緒にいましたね。優先順位は一番はお父さんでしたけど二番目はお母さん、でその次が私でした。後はその他大勢でしたね」


 問題のある人なんだな、とライクは話を聞いていて思った。

 三人しか大事にしていないらしい。

 自分の両親とか大事にしないのかと思ってしまう。


「両親……おじいちゃんたちは大事にしていないの?」


「愛人になった人なら孤児だからいませんよ?お父さんもいないらしいし、生きているのはお母さんの両親ぐらいです。ちなみに最初は愛人がいることに怒っていましたが、お母さん自身が説得させていました」


 思ったよりも過去が重そうで、これ以上は話を聞かないことをライクは決める。

 少し踏み込み過ぎた。


「そうだ!喫茶店を開いているのなら今度、招待してくれない!?」


 だから話題をずらす。

 友人の親が店を開いていると知って行ってみたいとも思っていた。

 しかも父親は愛人もいるのだ。

 どんな者なのか一度でも良いから見てみたい。


「別に良いですけど………」


 食い気味に頼んでくる目の前の相手にレアーは引き気味になりながら頷く。

 そして願わくば家族たちの目に留まらなければ良いと思う。

 同じ寮の部屋に住んでいる友人が不幸な目に会うのは普通に嫌だった。





「へぇ~。ここがレアーを育てた親の経営している喫茶店?」


「そうですよ………」


 休日、ライクとレアーは二人でレアーの育ての親が経営している喫茶店に入った。

 レアーからすれば友達を親に招待しているみたいで恥ずかしく感じる。


「良い雰囲気じゃない」


 ライクは目を輝かせて喫茶店の内装を見る。

 もし恋人が出来たら、この店を利用したいと思ってしまう。


「ありがとうございます。もしかして君はレアーの友人かな?」


 急に後ろから話しかけられてライクは慌てて距離を取り振り向く。

 そこにはレアーに頭を叩かれている大人の男がいた。


「お父さん、何をしているんですか!?」


「面白そうだから、ついですね!それにしてもいい加減に娘が驚かなくなって悲しい……」


「何度もされていますから良い加減に慣れます」


「反応はできていますか」


「………出来ていないです」


 悔しそうにレアーが言うが、そんな娘に育ての親は頭を撫でる。

 彼からすれば反応は少しずつだが出来ている。

 自分以外の者なら対処できるだろうと考えていた。

 初めの頃に比べれば雲泥の差だ。


「反応は良くなっていますから頑張ってくださいね」


「店の中でお客さんを驚かすのは、どうなのよ。そういうのは完全にプライベートの時だけにしなさいよ」


 育ての親がレアーの頭を撫でて応援していると奥から女性が現れる。

 どうやら店内で騒がしい音が聞こえたから注意するために来たらしいがライクはその女性を見惚れてしまった。


「お母さん!」


「お帰りなさいレアー。急にどうしたのよ?」


 寮で生活しているはずの娘が帰ってきて何かあったのかと母親は問いかける。

 三者面談か保護者参観か。

 後者は無いだろうと考えつつも三者面談には、まだ早すぎるんじゃないかとも思っている。

 なら、何の用かと首を傾げてしまう。


「その親が喫茶店を経営していると言ったら興味があるって言われて……」


「あら、そうなのね。もしかして将来の夢は喫茶店を経営することとか?」


 将来の夢は喫茶店経営なのかと奥さんは興味を持つ。

 だが自分の店のこと教えても同じように続けれないと考える。

 ほとんど趣味のようなものだから勉強にならないと奥さんは考える。


「いえ。実はただ単に愛人を受け入れている者って、どんな者なんだろうと考えて………」


「ふふっ」


 正直に愛人のことで興味を持ったと言われて奥さんは好意を持つ。

 今までは遠回しに言って来たり、否定することばかり言う者がほとんどだったから純粋に興味で来た者は珍しいせいなのもあった。


「最初は邪魔だっわよ。恋人は私なのに夫最優先で折角の二人きりを邪魔されたこともあるし」


「おぉ……」


 そこから、どうやって受け入れたのか興味があって話を聞くことに集中する。


「だけど最優先が夫だからか、その恋人である私にも崇拝していてね………」


「………すうはい?」


「えぇ」


 奥さんの言葉にライクはレアーに顔を向ける。

 顔を逸らされた。

 店主さんに顔を向ける。

 苦笑しているが笑顔で頷かれた。

 そして最後に奥さんに顔を向ける。

 真顔で頷かれた。


 今も崇拝しているのだと察してライクは、やべぇ者だなと顔を引き攣らせる。

 だが、それよりもヤバいのは店主さんの方だ。

 他の二人が真顔だったり、顔逸らしたのに一人だけ苦笑とはいえ笑顔だ。

 崇拝されるほどの何をしたのかと疑問を覚えてしまう。


「感謝する気持ちも好意を持つ理由もわかるけど崇拝の域まで来るのは………ね。しかも一人だけじゃないし」


「「うわぁ……」」


 ライクとレアーは二人揃って店主を見る。

 そこには笑顔で頷く店主がいる。

 やべぇ相手に二人は背筋が震えてしまった。



 最初に落ち着いたのはレアーだった。

 家族だからと淹れてもらったコーヒーで身体を温める。

 よくよく考えればレアーにとって父親がヤバい人なのは分かり切っていたことだった。

 だから直ぐに落ち着けることも出来た。


「あっ、そうだ。レアー、久しぶりに帰ってきたしお小遣いを上げるから仕事でもする?昔みたいにメイド服を着て。ちゃんと今も切れるように調節しているわよ」


「お小遣いはいらないから止めて!」


 流石に友達の目の前でメイド服を着るのは恥ずかしかった。

 お小遣いを上げると言われても拒否をする。


「メイド服!?」


 そしてライクはメイド服と聞いて復活する。

 目の前の友人がそれを着ると聞いて面白そうな事で復活した。


「そうよ。昔、夫が小さくて可愛いからと仕事の最中はメイド服を着せたのよ。その頃は可愛い服だと嬉しそうに着ていたわ。その頃の写真もあるけど見る?」


「是非!!」


 そんな面白そうなものを見れるのなら是非ともお願いしたいとライクは思う。

 そして当然、本人であるレアーは拒否をする。


「ダメです!お母さんもダメですからね!!」


 全力で阻止をしようとするレアー。

 それを楽しそうに受け入れる母親。

 ライクは母親に助力しようとする。


 そして店主はそんな三人を見て面白そうに眺めている。

 特に友人であるらしいライクとレアーは今度どうなるのか想像するだけで楽しくて笑顔になってしまっていた。


「娘の学校の様子とかも聞きたいですし、また来てくださいね。教えてくれれば割引もしますよ」


「お父さん!!」


 結局、レアーの父親を崇拝しているらしき者は来なかったがライクは満足した。

 レアーの学校生活さえ話せば割引にしてくれるから有難くまた来ようと思う。

 出された料理も美味しいし他の友人も連れて来ようと考える。


「勉強、頑張りなさい。疲れたら、また来ても良いから」


 レアーは疲れているのは母親が自分の写真を見せようとしたからだと睨む。

 本当に恥ずかしいから止めて欲しい。


「美味しかったです!また来ます!」


 ライクは正直に感想を言って喫茶店に去っていく。

 そしてレアーは先に行ったライクを追って育ての親たちの前から走り去っていく。

 母親はそんなレアーを微笑ましく思い、父親は将来どんな関係になるのか楽しみに思っていた。




「ねぇ?」


「………どうしました?」


 メイド服のことなど色々とバレて恥ずかして顔を真っ赤にしたレアーにライクは声を掛ける。

 どうしても気になったことがあった。


「医療関係の道を歩むって言ってたけど、喫茶店を継ぐ気は無いの?」


「…………正直、迷ってはいます。ただ、医療技術も学んでいた方が後々役に立つかもしれないから力を入れているだけで」


 迷っているという言葉に納得する。

 それに医療技術を学んでおけば役に立つかもしれないということにもだ。

 それに喫茶店の経営についても最悪は両親に学べば良かった。


「ふぅん。喫茶店を継ぐとなったらメイド喫茶になるのかしら?」


「………しませんよ」


「昔はノリノリで着ていたのに?」


「止めて……」


 ニヤニヤと笑ってからかうライク。

 レアーは顔を赤くして隠してしまう。


「でも喫茶店を継ぐとなったら教えてよ。私も食べてみたいし」


「うん……」


 ライクの言葉にレアーは顔を赤くしながらも頷いていた。


「………そういえば優しそうだったけど、どこが酷い者なの?愛人がいるって聞いたから警戒していたけど思ったほどヤバイ者じゃなかったし……。いや崇拝者がいるという意味ではヤバイけど……」


 そういえばとライクの疑問にレアーは父親の酷いことを思い出して身体が震える。

 顔も青褪めておりライクは本気で怯えているのだと理解する。

 そして、その内容が詳しく知りたくて踏み込む。


「ねぇ、教えてもらって良い?」


「お父さんはね……。学生時代、単純な実力だけで崇拝者を生み出してしまうぐらい強かったらしいの……」


 単純な実力だけで崇拝者を生み出したと聞いて真顔になるライク。

 好感を抱くのは理解できるが崇拝者の域までは普通は行かない。

 それだけ強いのだと何とか理解しようとする。


「私も鍛えて貰ったんだけど、お父さんが強すぎるせいでナチュラルに求められる水準が高すぎるんですよ……!!」


 血反吐を吐きそうな表情でそう言うレアーにライクも納得する。

 実力差があり過ぎるせいで求められる水準が高くなりすぎたりするというのは、よく聞く話だ。


「もう終わらない筋トレは嫌だ……。何度も投げ飛ばさないで………。痛い方が覚えるからって何で一々叩くの……!?」


「レアー……?」


 レアーの様子にライクは心配して声を掛けてしまう。

 気になって質問したが聞いたことに悪いことをした気分になっていた。

 終わらない筋トレって聞くだけで辛そうだった。


「ねぇ、貴女も一緒に参加しますか?鍛えてくれって頼めば強くしてくれると思いますよ……。かなり辛いですし自身が折れたりしますけど」


「止めとくわ」


 嫌な気配がしてライクは即否定する。

 そもそもライクはそこまで強くなることに興味はない。

 将来の夢が医術関係だから、むしろ必要なのは勉強の方だ。


「残念ですね……。私には女の子だから自衛のためにもと叩き込まれましたのに……。そのせいでお父さんには絶対に勝てないと刻み込まれてしまったけど」


 うわぁ、とドン引きしてしまうライク。

 母親や愛人に止められなかったのかと考え、愛人は崇拝しているから止めなかったのだろうと考え直す。


「お母さんたちも泣いていましたしねぇ。恋人だった時から訓練を課して泣いていたのに何で止めなかったんですか……?お母さんも何で結婚を決めたの?」


 どうやら母親も訓練に参加して泣いていたことにライクは色々と驚く。

 本当に、それなのに何で結婚したのか疑問を持つ。


「………ところで愛人さんはどんな者なの?」


 この話を変えようとライクは愛人について質問する。

 結局、会っていないのだから気になってしまってしょうがない。

 レアーの父親に崇拝しているという情報が興味を忘れさせない。


「献身的なマゾでしょうか……」


「…………」


 父親もヤバいけど、愛人もヤバかった。

 マトモなのは母親だけかと思ったが受け入れている時点でマトモじゃないとライクは考え直す。

 そして、そんな家族と一緒に暮らしているレアーもマトモのはずが無いんじゃないかと考える。

 少しだけ一緒の寮の部屋に住んでいることに恐怖を覚えた。




「………医学関係の道ですか」


 先に寝てしまった同じ寮の部屋に住んでいる者の夢を思い出してレアーは冷めた目でライクを見る。

 だけど愉しそうな顔で眼鏡を取った。

 この眼鏡は魔眼殺しであり、つけていると他者に魔眼の影響を与えない。

 そして外した状態でライクを見る。


「………楽しそうに私に暴行していた癖にね。三つ子の魂百までという言葉を知らないのでしょうか?」


 だが眼鏡を外してライクを見ているのに影響は無かった。

 実はレアーは父親の訓練によって魔眼のオンオフが出来るようになった。

 眼鏡を付けているは念の為だった。


「きっと医者になっても気に喰わない相手には暴力を振るうんでしょうね……」


 医者になっても暴力を振るうと予想して今のうちに将来の夢を断つべきかと悩んでしまう。

 だが医者になるためには、まず勉強をしなくてはいけない。

 それを邪魔して妨害するというのは、こちらも評価が最悪になってしまう。

 他にも何か条件は無いか調べる必要があった。


「あぁ…!やめ……!」


 うなされていることでライクは眠っているのだとレアーは確信を持つ。

 そして今のうちにネットでも使って医者になる条件を調べる。

 前科持ちとその近親者は警察官になれない様に、医者にもあるんじゃないかと希望を持つ。


「あった……!」


 そして見つけたのは、心身の障害で適切な処置が出来ない者、麻薬中毒者、そして警察と同じように前科がある者だった。


「もしかしたら既に医学関係の道は歩けない?」


 レアーはそう考えるが微妙な表情を浮かべる。

 虐めで自殺に追い込んだとされるのは小学校に入学したばかりの子供の頃だ。

 もしかしたら幼すぎる頃の事件として除外されている可能性もある。

 そして何よりも相手の子供が魔眼を持っていたという理由で恐怖から行動を起こしたのだと思われる可能性もあった。


「やるとしたら麻薬か心身に障害を残す方法かな?」


 一番楽なのは障害を残す方法。

 だけど、それをするのなら殺して方が手っ取り早いし、下手に正体がバレたら復讐される可能性がある。


 そして麻薬はどうやって服用させるか悩みどころだった。

 医学関係の道を歩くつもりだから拒絶するのは目に見えているし、もしかしたら詳しいかもしれない。

 そもそも麻薬は犯罪だから所持している時点で見つかったらヤバイ。

 同じ部屋に住んでいるからこそ油断することすら危険だ。


「お父さんに頼もうかなぁ……」


 正直に言ってレアーは父親に頼むのが嫌だった。

 育ての親に復讐を頼むのが恥ずかしいとかではなく単純にどんな目にあうのか分からなくて嫌だった。

 メイド服を着せられてだが仕事をしていたが復讐を成した者も結構な数が酷い目にあっている。

 あっていない代表がおそらくは愛人になった者だとレアーは考えていた。


 それでもレアーは父親に依頼するのが一番、安全だとも思っている。

 今までもそうだが今回も頼めば確実にバレない方法で復讐できると信頼はしていた。

 もしかしたら家族だからと自分に降りかかる災難も無いかもしれない。


 それでも、もう一つ頼むのが嫌だった理由は復讐に関しての仕事を目に見えて減ってきているからだった。

 折角、ヤバイ仕事を減らしてきているのに復讐を相談するのは嫌だった。

 素直に喫茶店を経営して欲しい。

 クソっタレな外道などが復讐されてひどい目に会うのは見ていてスッキリしたし、ある意味ヒーローのように昔は思えたが冷静に考えれば犯罪も犯している。

 育ての親が捕まるのは可能性が限りなくゼロだったとしても嫌だった。


「………よくよく考えれば、お父さん気付いているわよね」


 写真を見せようとする母親と写真を見ようとするライク。

 それを止めようとしている間にチラッと見えた父親の顔が愉し気に歪んでいたのを思い出す。

 その姿が絶対に気付いていると確信してしまう。


「何を考えているんだろう?」


 そう愚痴りながらもレアーは父親の考えていることを想像する。

 ただ単に気付いた時の反応を知りたかっただけか。

 それとも復讐を望むのか望まないのかレアーの答えを知りたいのか。

 

 そもそも単純に友達として連れてきたことに驚いて笑っていた可能性もある。

 レアーに伝えていないのは単純に被害者加害者が揃っていたからかもしれない。


「………それにしても悪夢ですか。私に暴力を振るった夢でしたっけ?」


 父親に虐めていた相手に悪夢を見せていると聞いたことがある。

 その内容もレアーのされていたことを体験させるというもの。

 しかも自殺をしないように、決して慣れない様に細工もしているらしい。


 正直うなされて煩いがそれでも良い気味だとレアーは思っている。

 レアーからすれば自分に暴力を振るっていた相手だ。

 このまま苦しんでも何とも思わないし、もっと苦しめとも思っている。

 決して許す気は無かった。


「私は絶対に貴女を許さない」


 悪夢でうなされている女の首にレアーは触れる。

 更にうなり声が強くなったことに悪夢が酷くなったのだと理解して満面の笑みを浮かべた。

 今度からは寝ているたびに首に触れようかと考えるぐらいには気分が良くなっていた。

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