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四話

「はっ!?」


 そしてアウルの母親は目を貫いた痛みで目を覚ました。


「はぁ……。はぁ……」


 見ている間は夢だと気づかなかった。

 そして夢の中とはいえ、本気で魔眼を持っていることで追い詰められて自分で抉ることを決意してしまったことに自分の身体を抱きしめる。

 夢であるはずなのになぜか目にも痛みがあるような気がしていた。


「あれは、アウルの実際に経験したことじゃないわよね……?」


 クラスメイトに暴行され、教師からも黙認される、そして自分の眼をえぐる。

 どれもがアウルが実際にやっていたことだ。


 そしてアウルの母親は自分がしていたことを認めたくなかった。

 夢に見たのがアウルが受けたことをもとにしたのなら親もまたアウルにとって信頼できない相手になっていた。

 何を言っても自分が悪いと断言させられて頼ることが出来ない相手だと思われていたのだ。

 親として最低の部類になってしまう。


 自分のせいで娘が追い込まれて死んだなんて認めたくなかった。


「っ………!!!?」


 そしてアウルの父親は目が覚めると直ぐに洗面台へと向かう。

 その手は自分の眼を抑えておりアウルの母親だけでなく父親も見ていたのだと理解できてしまう。

 

 そして、それはアウルの両親だけではない。

 アウルのクラスメイトとその両親、そして担任の先生と校長先生も見ていた。


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」


「違う違う違う違う違う!!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 自分のしたことに絶望する者、否定する者、殺してしまったことに罪悪感が襲ってきて謝罪をする者、いろいろな反応をしていた。

 クラスメイト達は望んで持ってきたわけでも無いし無理矢理、魔眼を使わされたのに理不尽に責められた経験を受けて自分のしてきたことを理解させられてしまう。


 そして親御さんたちは自分の子供のしたことを理解して怒りの視線を向ける。

 子供たちのしたことは最早、ただの人殺しにしか思えなかった。

 そしてどしてこんな子に育ってしまったのかと泣き崩れてしまう者もいた。


「なんでこんな子供に育ってしまったんだ……。どこで育て方を間違えてしまったんだ……」


 父の言葉に子供は何も言えない。

 ただ黙って泣くことしか出来ないでいた。


「何で泣いているんだ……。泣きたいのはこちらだし、一番は殺してしまったクラスメイトの子だろう?人を殺すのは罪だと知っているよな?どうやってこれから生きていくつもり何だ……」


 人殺しだと実の親に言われて子供は恐怖におびえる。

 これからは犯罪者として牢屋で生活しなくてはいけないと。

 目の前が真っ暗だった。


「はぁ。多分だがお前はまだ子供だし虐めていただけで実際に殺したわけではない。多分、警察も自殺だと判断するだろうな。だから捕まることは無いと思う」


 親と離れて牢屋暮らしにならないことに安堵のため息を吐く子供に苛立ちを覚えてしまう親。

 人を殺したのにその反応であることに自分の子供でありながら信用できなくなった。


「おい。安堵しているが人を殺したことは覚えておけよ。お前、また人を殺すかもしれないんだぞ」


 人を殺したのに安堵している姿にまた過ちを犯すのではないかと不安になる親。

 正直に言って人を殺してしまったのに捕まっていないことに調子に乗るんじゃないかと不安になってしまう。

 もしくは暴力に忌避感を失ってしまうかもしれない。

 最悪なことにならないように二度とこんなことが無いように祈ることしか出来ないのが歯痒かった。


「分かっているよ……」


 子供がそう言うが不安を抱きながら学校へと行くのを見送る。

 そして完全に消えた後に連絡網にある同じクラスの子供の親に連絡をし始める。

 内容は子供たちの将来についてだ。


「もしもし」


「もしもし……」


 早速、電話を掛けると向こうからは元気のない声が聞こえてくる。

 いくら朝早いとはいえ大人でも出勤し始める時間だ。


「あの相談したいことがあるのですが大丈夫ですか?無理そうなら、また電話を掛けますが?」


「いえ大丈夫です。気も紛れますので是非頼ってください……」


 それならと言葉に甘えることにして子供の将来について一度皆で集まって話し合いたいと相談する。

 その意見にもしかしてと電話相手も予想できてしまう。


「もしかしてアウルちゃんの夢を見ました?」


「そちらもですか!?」


 アウルの夢を見たのは自分だけではないと理解して意気投合する二人。

 もしかしたら他にもいるんじゃないかと想像する。

 連絡網もあるのだから、それも使ってまずは同じクラスの家を調べようと考える。


「もしかしたらアウルちゃんの亡霊の復讐かもしれませんね……」


「そうですね。だからこそ、これ以上は罪を重ねない様にしないと」


 同じ日に同じ夢を同じクラスの関係者が見たのだ。

 本当に死者の復讐だとしても納得できてしまっていた。

 だから、これ以上の恨みは買わないために子供たちが虐めなんてしないようにしてほしいと祈る。

 もし虐めなんてしたら、他の家の子供より厳しく叱る必要があると考えていた。




「うわぁぁぁぁ!!」


 アウルの担任は悲鳴を上げて起き上がる。


「違う………。死なせるつもりは無かったんだ………!!」


 先生でありながら虐めを見て笑っていた自分にアウルの担任は吐き気が出る。

 虐めを見て笑うなんて人としても先生としてもくそ野郎としてか思えない。

 それが自分だと認識してしまい絶望する。


「アウルちゃんの呪いかな……」


 担任は自分の見た夢からアウルの呪いだと思ってしまう。

 アウルが死んだ次の日に夢に見るなんて、あまりにもタイミングが良かった。


「あの子からすれば私も敵だったんだなぁ……」


 担任はそう言って苦笑した。

 そんなのは分かり切っていたことだからだ。

 自分も嫌っていたのだからアウルが嫌っていてもおかしくない。

 むしろ先に敵意を持ったのは担任の方だ。

 自分が嫌っているのに相手は自分を嫌わないと考えるのはあまりにもバカバカしかった。


「これからどうしようかな……」


 一人の子供を殺してしまった教師だ。

 クビになるのは目に見えている。

 だからと言って、このまま何もしないのは嫌だった。

 アウルに対して何か償っていきたいと思っていた。


 どうするか悩んでいると目覚まし時計の音が鳴る。

 それで担任の先生は学校に行かなくてはいけないことを思い出す。

 まだ正確にクビになっていないのだ。

 無断で休むのは許されないことだった。





「失礼します」


 そして学校に着くとアウルのクラスの担任は校長に呼び出された。


「君はアウルちゃんが虐められていても助けることはせずに笑って見ていたのは本当かね?」


「………はい」


 校長先生が知っていることに担任の先生は全く驚くことは無かった。

 アウルが呪っていたのなら校長先生にも見せていてもおかしくなかった。


「何でだ?君は先生だよな?普通は虐めを見たら止めるべきなんじゃないのか?何で一緒になってアウルちゃんを虐めていたんだ?」


 校長先生の詰問に何も答えれない担任。

 何よりも自分が悪いと分かっていた。


「君はクビだ。教育委員会にも連絡して教育免許を剥奪してもらう」


 校長先生の言葉に担任は頷く。

 それだけのことをしたのだと理解していた。


「分かりました。短い間でしたが色々とありがとうございました」


 担任の言葉に校長先生は頷き学校から追い出す。

 これ以上、自殺にまで追い込んだアウルのクラスの担任を学校に追いたくなかった。




 そしてアウルのクラスの元担任はそれから決して報われない日々が続いて行った。


「何をやっているんだお前は!!」


 何をするにしても理不尽に怒鳴られ殴られる。

 仕事のミスは自分が関係なくても知らないうちに自分のせいにされる。

 そのことを相談しても門前払いをさせられて話を聞いてくれない。

 それならと証拠を撮ろうとするも何故かいつも壊れて使い物にならなくなる。


「ははははははは」


 笑うしかなった。

 これら全てがアウルの呪いだと思うと本当に自分のやったことを後悔してしまう。


 もともと元担任は子供が好きで学校の教師になった。

 それなのに結果は先生という立場を笠に着て忌々しい子供を排除していた。

 これはアウルの呪いであり天罰としか思えなかった。


「今回もクビかな……」


 何度も何度も就職やバイトで働いても最初の一日は幸先よく生活できたのに次の日には不審な眼で見られ一週間経つと敵意を向けられ、一ヶ月経つと嫌がらせが始まってしまう。

 ここ数年ずっとこんな生活だ。

 少しずつ貯蓄も減ってきてジワジワとなぶり殺しにされている気分になる。


「そもそも何で敵意を向けてくるんだ……」


 このままでは死んでしまうと何が悪かったのか聞くことを決める。

 今までは何度も同じような経緯でクビになったショックで聞いてこなかった。

 そうと決まれば早速、明日にでも聞くことに決める。


 そして――


「だってお前、先生だったのに担当していた子供の虐めを冗長させて殺したんだろ?」


「え?」


 何で知っているのかと元担任は顔を青褪める。


「お前が働いた次の日から全員が夢に見るんだよ。お前が逆恨みで子供の虐めを冗長させて殺す夢を。それで気になって調べた者がいたんだよ」


 そんなことは知らなかった。

 自分の罪が知らない相手にも夢で見られるなんて。

 そんなの予想できるはずが無い。


「そう……ですか」


「そういうことだ。それでお前は仕事を辞めるのか?」


「はい………」


 これ以上は、ここで働けないと元担任は仕事を辞めて出ていく。

 そして誰もいない屋上へと歩いて行き、たどり着くと笑う。


「あははははははははははははは!!」


 その顔には涙が流れていた。


 仕事を探している間も虐めに耐えている間にも、ずっとアウルが死んでからの夢を見ていた。

 それなのに狂うことも出来ずに生きていたのに一緒に働くことになる者にまで見られるなんて、そこまでのことをしたのかと疑問に思ってしまう。


 そして落ちようとして途中で意識が暗くなってしまう。

 意識が戻ると相変わらず屋上の上にいた。

 何となく家に戻って刃物を自分の胸刺そうとする。

 手に持って刃を自分に向けたところで意識が落ちる。

 首を攣ろうとする。

 輪を作って首に掛けようとしたところで意識が落ちる。

 

 自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。自殺をしようとする。途中で意識が落ちる。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


 死ぬことも出来ない。

 狂うことも出来ない。

 元担任は地獄の中で生きていた。





「……………」


 アウルのクラスメイト達は学校にいても静かだった。

 普通は同じクラスの友達と話したり別クラスの友人と廊下や教室の中で話したりしているのに、今はそんな様子は一切見せていなかった。


「はぁ………」


 子供たちは最近から毎朝見ている夢のせいで朝から気力が無くなっていた。

 見ている夢の内容は大人たちと同じ。

 そのせいで自分達がアウルに対してしたことを身をもって理解させられてしまい後悔している。


「やるんじゃなかった………」


 クラスメイトに暴力を振るって殺してしまった自分に他のクラスの友人と一緒にいる資格があるのだろうかと子供たちは考えてしまう。

 こんな人殺しと一緒にいるぐらいなら、もう皆とは一緒に遊べない方が良い。


「はぁ………」


 本当は一番悪いのは自分じゃないと皆が思っていたい。

 最初にサングラスを付けているのが不公平だと騒いだ者たち、最初にアウルに暴力を振るった者たち。

 自分達は流されただけで悪くないと考えたかった。


 だけど、それを理由に暴力を振るってまた殺してしまうんじゃないかと不安になる。

 そしてアウルのように毎朝、悪夢として自分が誰かを責めている夢を見たくない。

 だから誰もが自分以外の誰かを責めるような真似はしなかった。


「おはよう!」


 そんな中、自分達の担任とは違う先生が教室に入ってくる。

 違う先生だということで子供たちは、まだ授業は始まらないと思い下を向いて子供たちは落ち込んでいた。


「授業を始めるから下を向いていないで前を向けー」


 教室に入ってきた先生の言葉に子供たちは顔を上げる。

 担任の先生でないのは短銃に休みだと想像していた。

 それ以外では担任とは違う先生が来るのは想像できていなかった。


「まず最初に言っておくが君たちの前の担任はとある都合で学校を辞めることになった。今日からは俺が君たちの担任になる」


 急に担任の先生が変わると聞いて子供たちはざわついてしまう。

 前の担任からは何も聞いていなかった。

 もしかして逃げたんじゃないかと考えてしまう。


「それじゃあ最初の授業を始めるから教科書を机に出せー」


 子供たちがざわついている間に新しい担任はマイペースに話しを続けていく。

 そのことに子供達も慌てて教科書を開いて行った。



 授業中、子供たちが必死に問題を過ごしている姿に新しい担任は自分のやり方は間違っていないと安堵する。

 話を既に聞いていたが、死なせてしまったことを考えさせるよりは別のことで頭をいっぱいにした方が良いと考えている。

 誰もがしてしまう虐めのせいで死んでしまったのは不幸だと思うが、子供には背負うには早すぎる。

 今はまだ時間を掛けてあげるべきだと考えていた。


「それにしても魔眼持ちか……」


 彼女も子供たちも不幸だなと思ってしまう。

 ただでさえ数少ない魔眼持ちだから理解が少ないのに、こんな普通の学校に入学させたのだ。

 学校側から誘われたとはいえ信じるべきでは無かった。

 そうすれば今のこの場にいる子供も心に傷を負わなかったし、死んでしまった子も自殺を選ぶことはなかった。


 そして似たようなことが二度と起きないように何かしら手を打つ必要がある。

 虐めが苦で自殺をするなんて毎年聞く話だ。

 今までこの学校では自殺が無かっただけで、これからは対抗策を考える必要がある。


「職員会議で話し合うか……」


 自分一人では考えつかないし、思いついたとしても一人一人の負担が大きくなるものばかりだ。

 子供の教育は難しいと実感する。




「将来か………」


 子供の一人、ライクは将来のことを考える。

 なるとしたら先生か医者だと決めていた。


「どうしたの?」


 急に将来という言葉を口にしたライクにクラスの皆は注目を集める。

 将来について絶望していたからだろう。

 人殺しになってしまった以上、夢は叶わないと諦めていた。


「私は将来、先生か医者になるわ。二度とアウルのような子を生み出したくないし、今の私たちと同じような苦しみを味合わせたくない」


 ライクの言葉に確かにと考えてしまうクラスメイト達。

 先生になれば虐めを止めることも出来る。


「その二つなら俺は医者かな……。そうすれば、アウルも助けれたかもしれないし」


 あの時点でアウルは死んでいたが、それが分からない子供たちはもしかしたら助けれたかもしれないと考える。

 それに魔眼について研究することも出来るかもしれない。

 そして将来的には魔眼を子供でもコントロールできる手段を見つけたいと思っていた。


「どっちを選ぶしろ勉強は必要だな」


「うん」


 どちらも頭が良くないとなれない職業だ。

 これまで以上に頑張る必要がある。


 そして何よりも、それらを目指せば自分達は救われると思っていた。

 医者に、先生になって誰かを救えば毎日見る悪夢から解放されると何故か確信していた。

 その為に子供たちは必死に勉強をし始める。


「おっ、頑張っているな~」


 新しい担任の先生はそれを見て感心する。

 そして新しい課題を準備しようと張り切る。

 教師としても勉強に集中して人の死を一時的にも忘れて欲しいから協力的だった。




「はぁ………」


 校長は悪夢を見て後悔をしていた。

 校長室に来たのは助けを求めに来たのだと理解をしていればアウルは今も生きていたのではないかと考えてしまう。


「学校に通う様に頼まなければ良かった……」


 そもそも自分の学校に通う様に頼んだのは校長先生だった。

 子供を導き成長させる立場の者たちの長として失敗してしまった。

 正当な理由があっても子供たちは自分と違うとズルいと不満を持つし、簡単に容赦なく相手を自殺させるまで追い詰めていく。

 そのことをちゃんと理解しておくべきだった。


「はぁ………。子供だから大丈夫だと思うべきじゃなかったかぁ……」


 虐めで追い詰めて自殺をするという話は当然、校長も聞いたことがある。

 だけど自殺するのはある程度年齢を重ねてからだった。

 最低でも中学一年生以上でし聞いたことが無い。

 小学生だと引きこもりになるのが大半だった。

 だから死ぬことは無いと油断していた。


「それにしても、これからはどうするべきか……」


 虐めによって自殺者が出たのだ。

 それに対する対抗策を考えなくてはいけない。


 単純に常に生徒たちを見守るようにすれば安全だと思うが監視されているようなしているような気分になるし圧倒的に人手が足りない。

 現実的では無かった。


「そこは他の先生の皆と一緒に考えるか……」


 一人で考えるよりは皆で考えた方が良いと考えて職員会議で話し合うことを決める。

 早速、いつ職員会議をするか予定を考える。

 できれば早ければ早い方が良いと思っていた。



「皆、いますか?」


 そして校長先生は職員室の中へと入る。

 目的は先程考えていた虐めの対策についてだった。


「はい!います!」


 急に校長先生が職員室に入ってきたことに中にいた教師たちは驚いてしまう。

 つい反射的に答えてしまった。


「………うん、たしかに」


 運が良く反射的に答えてしまった通りに教師全員がいる。

 それを確認して校長先生は頷く。


「悪いけど明日の放課後、職員会議をしたいんだけど大丈夫かな?」


 校長先生の言葉に内容はアウルのことで起きた事件だと先生たちは察する。

 そして確かに至急、話し合うべき内容だった。

 それでも今まで話し合わなかったのは校長先生抜きで勝手に話し合うのを遠慮していたからだった。


「大丈夫です。それじゃあ明日の放課後に職員会議をしましょう」


 先生たち全員が頷き合って職員会議をすることを決定する。

 そのことに校長先生は安堵していた。

 拒否や不満の声があるのではないかと不安に思っていた。


「そうですか。会議の内容はアウルちゃんの事件についてだから対策を皆も考えて欲しい」


 校長先生の言葉に予想通りだと頷く先生たち。

 それぞれが明日までに案を考えてこようと思っていた。


 そして翌日の放課後、緊急の職員会議が開かれた。


「まずアウルちゃんの虐められた経緯を教えますね」


 校長先生が全員が集まったのを確認して黒板にアウルの虐められた原因を書いていく。

 黒板にはアウルがサングラスを付けているのに許されていること。

 魔眼を持っているということを信じていなかったこと。

 無理矢理サングラスを外させて自分で魔眼を使わせたのに逆ギレをしたこと。

 教師も黙認していたせいで虐めを正当化してしまったこと、などが書かれていた。


「うわぁ……」


 いくつか読んで先生たちは呆れてしまう。

 クラスメイト達が魔眼を受けてしまったのは完全に自業自得にしか思えなかった。

 魔眼を持っていることを信じなかったということは説明はされていたのだ。

 それなのに無理矢理魔眼を使わせたのだ。

 子供だからと言って許せることでは無かった。


 そして同時に虐めを黙認していた教師について、先生である資格は無いと考える。

 むしろ何で教師になったのかと疑問だ。

 自殺の原因は虐めを黙認したことが大半じゃないかと考えていた。


「黙認していたのって担任の先生ですよね?誰でしょうか?」


「元担任ならクビにしましたよ。教育委員会にも連絡して教員免許を剥奪させてもらいました」


 それなら良いやと先生たちは安堵した。

 そんな教師と一緒に働きたくなかった。

 また教員免許を剥奪されることに、これ以上似たような目にあう不幸な子供が生まれないことに安心する。


「そうですか……。それなら良かったです。ところで、虐めなどを防ぐために意見を求めていましたが人員を増やせないのですか?」


 話を本来の内容に戻して意見が出てくる。

 それは誰もが最初は考えていたがお金や人手がいないこと、そして監視のように感じると考えて案から排除したことだ。


「たしかに子供たちにとっても最初は息苦しいと思いますが、いずれは慣れると思います。それに人手の方も今年はともかく来年から保護者達からもお金を出してもらって護衛会社や警察に見回ってもらえば良と思いますし」


 その言葉に自分達教師だけで何とかしようと思っていた先生たちは恥ずかしくなる。

 たしかにそうなのだ。

 人手が足りないのなら他の会社から来てもらえば良かった。

 親御さんたちも実際に身近に起きた虐めによる自殺の防ぐためだと言えばお金を出してくれるだろう。

 誰だって学校にまで通わせている自分の子供を殺したくないのだ。

 保護者達も受け入れてくれると教師たちは思っていた。



 そして虐めについての対策は決まった。

 学校や保護者たちでお金を出して警察か護衛会社を雇うことに決まった。

 できれば警察に頼みたいが断られる可能性も考えて護衛会社にも視野を入れることに決めた。


「それじゃあ私が交渉をすることで良いな?」


 校長先生の確認に全員が頷く。


「わかった。それじゃあ会議も終わったし解散!」


 それを確認した校長先生は教師たちに解散するように指示を出す。

 教師たちもそれに再度頷いて解散していった。




「もしもし……」


 校長先生は早速、校長室へと戻り電話をする。

 電話相手は当然、警察だ。


『はい、どうしましたか?』


「最近、虐めが原因で自殺者を出した小学校の校長ですが相談したことがあるのですが?」


『えっと、どうしました?』


 最近、虐めが原因で自殺者を出した小学校と聞いて誰だが思い至る。

 だが何の用なのかは思い至らず疑問を持つ。


「実は虐めの対策として警察にも小学校の中を見回ってほしいのですが大丈夫でしょうか?」


 それを聞いて電話を受けた警察官は頭を悩ませる。

 どう考えても一人では答えを出してはいけないことだった。

 だけど、同時に良い案だと思う。

 警察官でなくても大人が近くにいると分かれば虐めをしないだろう。

 自分も積極的に受け入れたいとは思っている。


『良い案だとは思いますが一人では決めることは出来ません。この案件を上に方にも相談したいのですが大丈夫でしょうか?』


「本当ですか!?」


 会話から警察も乗り気だと察して校長先生も期待できると喜ぶ。

 警察も参加してくれるなら虐めも無くなるだろうと考えていた。




「すみません。連絡したいことがあります」


 早速、電話で相談を受けた警察官は上司へと報告する。


「なんだ?」


「先程、電話で警察にも学校に来てもらって見回って欲しいそうです。それで虐めを防ぎたいと……」


「ふむ」


 学校の先生だと虐めを発見しても問題にしたくないと隠したりするから良い案だとは思う。

 ただ流石に毎日、行くのは無理だ。


「分かった。ただし毎日は無理だし、署全体に通達する必要がある」


 虐めを完全に防ぎたいのなら毎日通う必要があると上司も思っていた。

 だが、それをすると警察の仕事に関しても人手が足りなくなる。

 だから小学校に通う日を警察で決めて見回った方が良い。

 もしかすると虐めがあってもバレないように、その日だけ虐めをしないように注意されるかもしれない。

 そうなったら虐めなんて気づけない。


「よし、案を考えたいから会議を開くか。不満や疑問があったら言ってくれ」


「もしかして大体の形は考えたんですか?」


「そうだ。書類も作らないといけないし明日だな」


 そう言うとキーボードをかなりの速度で叩いていく上司。


「他の皆にも明日の朝は会議をすると伝えてくれ」


「わかりました」


 やる気になっている上司に頼りになると思いながら他の同僚たちに伝言をしに行った。




「どうしたの?電話を受けてから上司の方へと行ったけど?」


 同僚の元へと行くと早速、質問を浴びせられる。

 他の皆も興味津々だ。


「うん。最近、虐めで自殺した女の子がいたでしょ?」


「えぇ」


「その子のいた学校から虐めを減らすために警察も小学校の中へと見回りに来て欲しいって」


 虐め無くすために警察に頼んできたことに感心の声が上がる。


「それは良いわね。でもそれって他の学校にズルいって言われない?」


「うわっ、有り得そう」


 他の学校にも見回りに行く必要性があると考えて仕事が増えると思ってしまう。

 あとはクレームだ。

 他の学校にだけ行って自分の学校には来ないのかと文句を言われそうだ。


「文句を言われても既に見回りに行っている学校側から見回りに来て欲しいと頼まれたと言われれば良いと思うけど………」


「どうした?」


 急に何かを思いついたのか話が止まる。

 それに対して心配して声がかかる。


「見回りに来て欲しい学校って虐めで自殺が起きた学校よね?よく考えたら見回りに行く理由が分かるからクレームも少ないんじゃないかしら?」


「「「「「あ~」」」」」


 同僚たちは、その意見に納得してしまう。

 とういうよりも、そうであってくれと祈っていた。

 クレーム対応は嫌だった。

 何度同じことを言っても繰り返し文句を言われるのは辛い。


「それにしても魔眼持ちか~」


 アウルの虐められた原因を思い出す。

 魔眼は見るだけで相手に影響を与えてしまう。

 言っては何だが持っているだけで罪となる考えられる。

 子供たちももしかしたら魔眼を持っている子供がいるということで恐怖で暴力性が強くなったんじゃないかと疑ってしまう。


「たしか魔眼の影響を受けないようにするには魔力に対する抵抗力を強くないといけないんだよね?」


「そうですよ。かなり強くなる必要がありますけど」


 具体的には国でも有数の実力者は魔眼の影響を受けない。

 当然、そんな者は数多くいるはずがない。


「魔眼の影響を受けないためには強くなるしか方法が無いっているのがアレよね。何か他に対策は無いのかしら?魔眼の持っている子の善性を信じるしかないなんて……」


 善性を信じるしか方法が無いなんて安心できない。

 どうか他の方法を考えて欲しいが、十万人に一人の割合しか生まれないのだ。

 研究することも難しいのだろうと考えるが、それでも何か対策を作って欲しいと誰かに願っいた。

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