三話
「眠ったかな?」
目の前で穏やかな顔で眠るレアーに事務員は愛おしそうに撫でる。
そして、やっぱり小さい女の子は庇護欲が湧いてくると考える。
もし男の子だったら、ここまで庇護欲は湧いてこなかっただろう。
「さてと……」
事務員は撫でていた手を止めてレアーの頭に触れながら腕を光らせてる。
そして、もう片方の手にも光を纏わせて、レアーにそっくりな何かを生み出した。
「…………。うん、そっくりだな」
何度もレアー本人と偽物を見比べて事務員はそっくりだと自画自賛する。
「遺伝子情報はどうなっているか分からないけど、それはそれで良いか。偽物を置いて誘拐されたとして思われるだけだろうし」
そっくりな偽物を作り出しただけで事務員は満足だった。
あとはそれをレアーのもともといた病室に運ぶだけ。
「さて、どうなるかな?」
面白そうだし監視カメラでも病室に一緒にセットしておこうかと思う。
この後、どんな反応をするか楽しみだ。
「…………それじゃあ、また明日ね」
事務員は優しそうな表情でレアーの頭を撫で、部屋から出ていった。
「さてと、ここからですね」
事務員はレアーの病室に偽物を設置する。
そしてベッドの上に乗せて偽物の眼をボールペンを使って突き刺して潰す。
潰したのは片方だけだが、それで良いだろうと事務員は思っていた。
死んだ原因は思いきり突き刺したボールペンが脳まで達した原因にするつもりだ。
そして死後硬直としてボールペンを強く握らせるようにする。
「これで魔眼を持っていることを苦にして潰そうとしたら勢い余って死んでしまったことになりましたね。後はこの子のクラスメイトとその親、生まれの親もこの光景は絶対に見るようにして………」
何かしらの魔法を使いながら楽しそうにしている事務員。
絶望するのか精々するのか、それとも後悔するのかと、興味深いのか楽しそうだ。
「ついでにこの子が受けた虐めを毎日、夢で見るようにして。狂ったりしないように細工もしないといけませんね」
そこまでしたら、もしかしたらバレるかもしれないが事務員は面白そうに笑う。
何年でも楽しめそうなチャンスが来たのだ。
多少のリスクはしょうがないと受け入れていた。
「あぁ、楽しみだなぁ。もしかしたら後悔が原因で教師になる者もいるのかな。医者になる者がいるのかな。自殺するのかな。想像するだけで楽しみだなぁ」
今回の事件でどうなるのかすごく楽しみにしている事務員。
多くの者の人生を狂わせることになるが正直、どうでも良いと思っている。
そもそも今回の件は死ぬかどうかは置いていても同じようなことはいずれ起こっていた。
その結果、後悔するかどうかはその者しだいだ。
ただ単に事務員がしたのは確実に後悔するなり、絶望するなり、何かしら思わせることでしかない。
「そろそろ帰るか……」
欠伸をしながら事務員は事務所へと帰る。
監視カメラもバレないように設置したし、事務所のレアーの部屋に入ることに決める。
「子供の体温は温かいと聞いたし確かめてみるか」
レアーを抱き枕にして眠っているところを見られたらロリコンだと思われるかもしれないが、それでも事務員は試してみたかった。
本当に子供の体温は温かいのか。
許可がもらえるのなら冬は抱き枕にして寝ようと今から考えていた。
そして早速レアーの部屋へと入る。
まだレアーは眠っていてぐっすりとしている。
そのことにまだまだ暗いから当然かと事務員は納得して一緒のベッドに潜り込む。
「おぉ……」
そして事務員はレアーを抱きしめて感動していた。
抱きしめると本当に暖かった。
「本気で寒い日には抱き枕にしようかな」
そんなことを言いながら事務員は目を瞑る。
暖かくて眠くなってきた。
レアーを安心させるように抱きしめて事務員は眠ってしまった。
「うん………」
そしてレアーは目を覚ます。
抱きしめられてる感触にレアーは疑問に思うよりも、まずは安心感を覚えて自分から抱き着く。
「えへへ」
「起きましたか?」
「ふぇっ?…………っ!!?」
抱き着いて安心していたところに声を掛けられて抱き着いている相手を見てレアーは声にならない悲鳴を上げる。
男の人に同じベッドで寝ていて抱き着いていることが恥ずかしくなっていた。
「今日は昨日も言っていた恋人のセイナとバイトのエマが来るから一緒に服を買いに行こうか?」
「………わかりました」
服を買ってくれるは嬉しいが恋人だというセイナも来ることにレアーは少しだけ不満を持つ。
そして事務員は早くセイナたちが来ないかなと楽しみにしていた。
同い年ぐらいの可愛い女の子なら不満を持つかもしれないが、幼くて可愛い女の子なら気に入るだろうと考えている。
そして、あわよくば彼女たちに世話を頼もうと考えていた。
出来る限り事務員もレアーの世話をしようとは思っているが、やはり男の子と女の子では違うのかもしれないと考えている。
それなら最初から恋人やバイトに世話を任せて自分が出来ることを学んでいった方が良いと思っていた。
「おはよう」
セイナはいつも通りに朝早くから事務所へと来る。
そうしないとエマが自分より早く来て手料理を作る。
恋人として料理を作って食べさせるのは認められなかった。
正直、本当にエマは事務員の隣でいるだけで満足しているのか疑問だ。
いつか恋人の座を奪いそうでセイナは警戒していた。
「おはよう。今日から、この子もここに住むことになるから」
そう言って事務員は小さい女の子を見せてくる。
背丈からして小学生低学年の女の子だろう。
一緒に暮らすと聞いてセイナはひたすらに困惑した。
「…………はじめまして」
女の子が敵意を持って挨拶をしてくる。
何かしてしまったかとセイナは首を傾げるが、女の子が事務員の服を掴んでいるのを見て察する。
要するに初恋の王子様なんだろうと理解した。
セイナも初恋の者は年上の男の人だ。
「この子の名前はレアーです。あのままだと死んでしまいそうだから保護しました。ついでに、この事務所でも仕事を頼もうと思っています」
本気で言っているのかとセイナは事務員を見る。
子供を働かせるなんて有り得ない。
「わかりました」
そして子供は働くと聞いて緊張している。
受け入れるつもり十分の子供にセイナは抱きしめて事務員から離す。
「ひゃっ!?」
「こんな小さい子供に仕事をさせる気なの!?遊んだり勉強させたりしなさいよ!?」
自分を強く抱きしめて事務員に強く反抗する女の人にレアーは瞬きする。
初めて会ったのに自分を心配してくれているのだと分かって事務員の恋人なのにほだされそうになってた。
「お茶出しとかですかね……?後、勉強は俺も教えるつもりですけど、セイナやエマにも頼みますね。家事に関しても教えて上げてください」
「仕事……?お手伝いじゃなくて……?」
「最初はお手伝いかもしれませんが仕事ですよ。給金ぐらいは、ある程度出しますし」
そう言いながら事務員はセイナに手を振って招く。
それに対して小声で軽い説明をするつもりなんだと理解してセイナは近づいていく。
「きゃっ!?」
「あぁ!?」
そして近づいてきたセイナを事務員は抱き寄せて耳元に口を寄せる。
セイナは子供の前ですることじゃないと怒りと羞恥と嬉しさで顔を真っ赤にし、レアーは怒りと嫉妬で顔を不満だと歪める。
「あの子、魔眼を持っていて学校で教師も一緒になって暴行されて全身痣だらけで入院していたましたし、家でも蔑ろにされていたから今は外に出す気は無いんです」
今は家の中でゆっくりと癒していきたいと伝える事務員。
仕事をさせるのも少しずつ他人に慣れさせるためだと自分の考えを述べていく。
「そ……そう」
事務員が子供に仕事をさせる理由を聞いてセイナも納得する。
虐待されていたせいで他人に恐怖を覚えているのだと理解した。
そして暴行されていたと知ってセイナはレアーに優しくしようと決意する。
「あと病院服のまま連れ出したからエマと一緒に下着とか服と買いに行ってくれませんか?」
その言葉にセイナはレアーを見る。
その容姿は可愛らしく着せ替えするのは楽しそうだとセイナは想像する。
「わかったわ。エマと一緒に行けば良いのよね?」
事務員はそれに頷いたのを確認してセイナは更に疑問を口にする。
「あなたは他に何が用事でもあるの?」
「ありませんけど、下着も買うんですよ?男の私が一緒に行ったら流石に恥ずかしくありせんか?」
そう言いながら事務員はレアーを見る。
そしてセイナはレアーを見て自分だったらと想像する。
確かに男の人に自分の下着を一緒に勝ってもらうのは恥ずかしい。
それでも荷物持ちとしてセイナは男手が欲しいと思っている。
「別に下着店の中に入る必要はないじゃない。外で待つぐらいは良いじゃない」
セイナの提案に事務員は否定する。
中に入るのも問題だが、それ以上にレアーを一人事務所に置くことは不安だ。
それを説明するとセイナもエマと二人だけで買いに行くのを納得してくれる。
「わかったわ。それじゃあエマも来たら買いに行けば良いわよね」
「えぇ。お金はこれぐらいあれば大丈夫ですかね?」
服代としてお金を渡す事務員。
金額を確認してセイナは頷く。
これなら少なくとも十着以上は買えるはずだ。
「おはようございます!!」
そしてエマも来て、同時にレアーと事務員から腹が減った音が聞こえてくる。
レアーは顔を赤くして腹を抑えていた。
「そういえば、まだ朝食を食っていないな」
「なら私が作ってくるから、その間に自己紹介でもしてなさい」
「そうですね。レアー、セイナの料理は美味いから期待しても大丈夫ですからね」
セイナに頷いて事務員はエマの前までレアーの手を引いて歩いていく。
そしてセイナは事務員の言葉を聞いて気合を入れて料理を作ろうとしていた。
「あっ、そうだった」
突然、事務員は忘れていたことを思い出したのかレアーに顔を向ける。
どしたのだろうかとレアーは疑問に思う。
「普段は好きな服を着ても良いけど、仕事の時はメイド服を着てもらいますからね」
「うん!」
メイド服を着ると言われてレアーは嬉しそうに頷く。
大人も仕事の時と普段では服が違うのは知っているが、まさか仕事でも可愛い服が着ることが出来ると知って満面の笑みを浮かべていた。
「入りますよー」
病室の扉を何度も叩いても返事が無いから看護師は中に入る。
どうせ、まだ寝ているんだろと思っての行動だ。
その手には朝食を持っており食べさせてあげるつもりだった。
「アウルちゃ………」
そしてアウルを見て手にしていた朝食を落とす。
「キャーーー!!」
看護師が悲鳴を上げるのと同時に何人もの者たちがアウルの病室に駆け寄る。
その者たちのほとんどがアウルのクラスメイトたちとその親、そしてアウルの両親がいた。
この者たちは何故か朝早くから起きてしまい、妙に胸騒ぎがあり病室へと急いで来ていた。
面会の時間にまだまだ速いが妨げる職員を無理矢理突破して病室の中に入る。
そこにはアウルが自分の眼を貫いて血を流している姿があった。
ベッドにはアウルのものらしき血で濡れており鉄のにおいが充満している。
「うげぇ……!?」
鉄のにおいと血で染まったベッド、そしてボールペンを突き刺したアウル。
それを直視して一人が吐いたのを皮切りにその場にいた多くの者が吐いてしまう。
特にアウルの両親は信じられないような顔をして娘に縋り付こうとする。
「っ!」
その前に看護師がアウルに近づいて脈や心臓などを知らべる。
そして止まっていることを確認して顔を青くする。
「先生!302号室に来てください!!患者が死んでしまっています!!」
看護師は無線で直ぐに医者を呼ぶ。
まさか、この病院で自殺者が出るとは思わなかった。
「今から先生が来るのでスペースを空けてください!!あと吐いている方は付いてきてください!休める場所を確保しますので!」
看護師の言葉に全員があとを付いていく。
残っていたのはアウルの両親だけだった。
「そんな……」
「アウル……。どうして死んでしまったんだ……」
自分達の一人娘が死んだことにアウルの両親は絶望する。
たしかに魔眼を持って生まれたことに不満を持っていたが、それでも愛してはいたのだ。
それなのに死んでしまい生き甲斐の一つが失ってしまった。
そのせいで胸の中で虚無感が満ちていた。
「本当にバカよ……。本当は目を潰すつもりだけだったんでしょう?でも、そのせいで死んじゃったら意味が無いじゃない……」
アウルの母親は自分の娘が死ぬ気は無かったのだと想像する。
死んでしまったのも、ただの事故だと。
そうじゃなかったら、それだけ生きているのが辛かったのだと理解させられてしまう。
母親なのにそのことに気付かなかったことが恥ずかしくてしょうがなかった。
「何で娘は死んでしまった………」
そして父親は娘が死んだ原因を考える。
そもそも目をえぐろうとした原因はクラスメイト達が娘に暴行したから。
暴行した理由は娘に対してサングラスを付けているのが不公平だと感じたから。
サングラスを付けて不満を持っているのは親御さんと学校がちゃんと説明をしていないから。
そして何よりも学校側から受けれいると言ったのに何も対策をしていないのが悪いと考える。
「まず何よりも悪いのは学校のせいか……」
信じたことが間違いだったとアウルの父親は後悔する。
少なくとも信じて学校を通わせなかったら娘は死ぬことは無かった。
こうなるのなら学校に通わせず家で勉強させてやれば良かったと思っている。。
そして娘とクラスメイトの子供たちとその親御さんたちにも憎悪を抱く。
どんな理由があったとしても娘に暴行を振るったのだ。
許せるわけが無いし、何よりも女の子に暴力を振るうような子供を育てた親御さんたちも、どんな育て方をしたんだと忌々しく思う。
「どうやって復讐してやろうか……」
今なら娘を害した者とその親を全員殺せるかもしれないと父親は考える。
そして自分の妻を見て誘おうか悩んでしまう。
もし妻と一緒に殺したら当然だが一緒に捕まってしまう。
それだけは嫌だった。
人殺しの妻とかでも非難は強いと思うが、人を実際に殺したよりはマシだと考える。
何よりも自分の妻にまで手を汚して欲しいと思わなかった。
「そうだな……」
だからアウルの父親は悩むのを辞めた。
相談して巻き込んでしまうぐらいなら一人で殺した方が良いと決意する。
「あなた……?」
そして何かを決意したような自分の夫に妻は反応した。
夫婦だから何かを仕出かしそうなのを察してしまう。
娘が死んだのにと考えて、何をするのか予想できてしまった。
「もしかして復讐として殺そうと思っている………?」
妻の問いかけに固まる夫。
それだけで予想が当たってしまったことを理解する妻。
だけど娘も死んでしまって生き甲斐も失ってしまったし良い案だと考えてしまう。
「そうね。私もヤるわ。今、どこにいるかしら?」
そしてアウルの母親もヤる気だった。
むしろ母親の方がヤる気にあふれている。
「一緒に行きましょう?」
アウルの父親は妻に促されて一緒に探し始める。
既に最初に自分一人だけで良いという考えは無くなっていた。
やはり自分一人だけよりも一緒に行動する方が安心できるらしい。
娘を殺した原因たちだ。
その責任は死んで償ってもらおうとアウルの両親たちは嗤って探していた。
「何をしようとしているんですか!?止めてください!!」
そして娘のクラスメイト達とその親がいる部屋に辿り着くのと同時に看護師や医者たちに止められた。
明らかに何か危害を加えそうな雰囲気が流れていたせいでもあるのだろう。
「クソっ!緊急事態だ!殴ってでも止めろ!」
医者だが、このままでは誰かを殺してしまいそうだと考え強引に止めようとする。
このまま放してしまえば病院内で死者が出てしまいそうだ。
「警察へは!?既に連絡しています!急いで来るようです!」
その言葉に早く来てくれと祈る止めている者たち。
力が強く限界が来てしまいそうだ。
「そこか……!」
「どこ!?」
「正面を進んで左の部屋だ!一瞬だけだがチラッと見えた!」
「!?」
運悪くアウルのクラスメイトとその親御さんたちの場所が何処にいるのかバレてしまった。
殴ってでも止めようと考えている者もいるが病院で働いている者として理性が働いてしまう。
偶々、見ていた患者たちもいつも自分を見てくれている医者や看護師を引きずって鬼気迫る表情で何処かに行こうとしているアウルの両親に怯えていた。
「ぶっ殺してやる!」
そして遂に止めることも出来ずにクラスメイトとその親御さんたちの部屋に辿り着く。
そこには未だに吐いて気持ち悪そうにしていた者たちがいた。
「え……?」
アウルの両親が来て殺すという言葉を聞き、少しだけ遅れて理解する。
復讐しに来たのだと。
そして同時に腹が立った。
娘を信用していない癖に全部、こちらが悪いと言われている気がした。
「なぁ、もしかして娘さんが死んだのは全部、俺たちが悪いと思っているのか?」
「………ふざけん「ふざけているのはお前らだろうが!!」」
肯定しようとしたアウルの父親にクラスメイトの親は反論する。
あんな幼い女の子が自らの眼をえぐるように決意したのは自分達だけでなく親であるお前たちのせいだと。
むしろ、その罪は親である二人の方が重い。
「なんで何も聞いていなのに娘が悪いと断言できた!話を聞いてあげない!それでどれだけ傷ついたと思っているんだ!?」
死んだ原因は自分にもあると言われて両親は顔を真っ赤にする。
二人からすれば昔からそうだったからとしか言えない。
魔眼を持って生まれたせいで、どれだけの苦労をしていたのか知らなく癖にと思う。
「しょうがないじゃない!あの子は魔眼を持っているのよ!?それでどれだけ苦労したのか知らない癖に!?」
「そうやって子供に接したから自殺何て結果的にしてしまったでしょうが!?」
「はぁ!?女の子に暴力を振るうような子を育てた貴方たちに言われたくないわよ!どんな育て方をしたのよ!」
「っ!うちの子に魔眼を使ったのはどこの子よ!?」
「サングラスを付けている理由を学校側からも説明したのに無理矢理外したのが悪いんじゃない!」
アウルが死んだ責任はどちらが重いのかと擦り付け合っている親たち。
そして子供たちは震えていた。
嫌いだったが最近まで一緒に授業を受けていた女の子が死んだのだ。
本能的にもう会えないのだと理解して死に恐怖をしている。
何も関係のない赤の他人だったら死んだと聞いても何とも思わないだろう。
だがクラスの全員が一緒になって虐めていた。
休憩時間が来たら皆で苦しめていた。
それが楽しかった思い出で最近のことだから記憶に残っている。
ある意味ではクラスの中で一番、思い出深く接点を持っていた。
だから、もう二度と会えないことに。
その理由である死に恐怖をしてしまう。
「あはは………」
中には壊れたように笑う子供たちもいた。
死が身近にあると理解して恐怖で心が壊れそうになっている。
しかも、その原因が自分たちでもあると理解して心が弱い者たちは自分にも恐怖する。
そして周りに者たちにも。
いつアウルのように皆に暴力を振るわれて死んでしまうのかと怯えて震える。
すぐ近くには入口で大人が喧嘩をしており逃げたくても近づくことすら出来ない。
逃げたくても入り口には大人が喧嘩をしており、部屋の中には人を簡単に追いつめて殺してしまう者たちがいる。
悪循環だった。
「何をしているんですか!?」
大人たちが言い合いをしている間に警察が割り込んでくる。
復讐すると息巻いていたが口喧嘩に夢中になり忘れていたらしい。
他にも理由があるのなら医者や看護師が手や足を出さないように必死に取り押さえていたのもあったのだろう。
「うるさい!!こいつがっつ!?…………」
警察が来ても暴れようとする親御さんたちに警察は容赦なく魔法で攻撃して意識を奪う。
((((((えぇーーー!!!???))))))
警察が魔法を使って攻撃したことに見ていた者たちは困惑してしまう。
他の警察官はそれを見ても注意もしない姿に、これが警察の実態なんだと恐怖を覚える。
だが、その中にも突っかかる者はいた。
「何をしているんですか!?怪我をしたかもしれないんですよ!?」
この病院の先生だ。
医者として魔法を使って暴力を振るうは許せなかった。
「何を言っているんですか?意識を奪っただけで怪我なんてさせていませんよ?」
「は?」
「これでも警察なんですよ?暴れている者たちを抑えるためには多少の技量も必要なんですから怪我をさせないように意識を奪う技量を持っていますって!」
その言葉に他にいる警官たちに視線を向けるが全員が頷いていた。
「ここは?」
警察官に意識を奪われたアウルの母親が目を覚めると、そこは小学校の教室だった。
何でここにいるのかと疑問に思わずに、ただた単純に懐かしんでいた。
「あぁ、そうそう。こんな形の机だったわよね」
自分が小学生の頃に通っていた学校の机と全く同じことに感動してしまっている。
「あぁ!見つけた!!」
そんなことを言ってくるのは小学生のころ、よく一緒に遊んでいた友達たち。
懐かしい顔に笑顔を向けてアウルの母親は叩かれた。
「え?」
友人に叩かれたことが理解できずアウルの母親は頭が真っ白になる。
一緒に遊んでいた友達が叩いてきたことに、これは夢だと思ってしまう。
「何でアンタだけサングラスを付けているいるのよ!?」
「そうよ!一人だけズルいわよ!!」
「どうせ魔眼を持っているなんて嘘なんでしょ!本当なら使って見なさいよ!!」
アウルの母親は嘘じゃないと否定しようとする。
だけど使ったら目の前の友人が死んでしまうのかもしれないと恐怖を覚えてしまう。
ついサングラスを手で抑えてしまった。
「何をしてんの?」
そして更にクラスメイトがやってくる。
今度は男の子だ。
「それが魔眼を本当は持っていない癖にサングラスを付けているんだよ?ムカつかない?」
「はぁ!マジで!?」
「違う!!」
違うと言っているのにクラスメイト達は嘘をついている者を見る目で見てくる。
信じてくれずにサングラスを外そうと男子たちが腕を抑えてくる。
サングラスを無理矢理にでも外すつもりだと理解して必死にアウルの母親は抵抗しようとする。
だけど抵抗むなしくサングラスを奪われてしまった。
「大人しくしろ!嘘を吐かなか………」
そしてサングラスを外した男の子がまず最初に魔眼の犠牲になった。
「えっ………」
次に女の子たちが犠牲になった。
嘘だと思ってアウルを見ていたせいだろう。
全員が魔眼の影響を受けてしまった。
その結果、全員が倒れたのを認識してアウルの母親は悲鳴を上げてしまう。
その叫び声に先生は来てくれるがアウルの母親を見た後、怒りの視線でアウルの母親を見る。
「何で魔眼を使った!!」
理由を聞かずに怒りをぶつけてくる先生にアウルの母親は怯えてしまっていた。
「皆が目を覚ますまで待っていろ!」
そして担ぎあがられて教室を一人閉じ込められてしまう。
鍵を掛けられて逃げることも出来ない。
何でサングラスを奪ったのは皆なのに話を聞いてくれないのかと絶望してしまう。
「おい目を覚ました皆から聞いたけど、何で自分からサングラスを外したんだ」
「は?」
「は?じゃない!!魔眼を持っている癖に危険なのも分からないのか!親御さんにも来てもらったからな!」
何を言っているのか理解できなかった。
無理矢理サングラスを外されたのに自分のせいにされていることが意味不明だった。
「何でサングラスを外したの!?魔眼は危険だってわかっているじゃない!!」
そして両親も信じてくれなかった。
そのことが、とても悲しかった。
「何を言っているんだ?」
そして校長先生が助けてくれた。
魔眼を使ってしまった原因はクラスメイト達が悪いと。
その証拠も見せてくれる。
それなのに先生やクラスメイトの皆はアウルの母親を睨んでいた。
「お前のせいで!!」
そして次の日から虐めが始まった。
すれ違いざまに殴られたり、休みの時間に水を掛けられる。
勉強に使う教科書やノートも隠されたり破かれたりした。
助けてくれた校長に頼ろうとしても仕事だから追い出される。
そして帰るために教室に戻るが引きずり込まれて暴力を振るわれる。
先生も見ているだけで止めることはせず笑っていた。
「………死ね」
だからアウルの母親は魔眼を使った。
全員、死んでしまっても良かった。
「これは……!?」
校長も来たが、どうでも良かった。
助けに来たのかもしれないが何度も追い出され続けて信用できない。
こうなる前に助けて欲しかった。
「申し訳ありません!!」
意識を取り戻すと必死に謝る両親の姿。
どんな理由があっても自分の方が悪いという両親にアウルの母親は絶望する。
魔眼を使わなきゃ殺されるような状況でも自分が悪いという両親に本当は死んで欲しいんじゃないかと思ってしまう。
全員が帰った後に鏡に映った自分の姿を見る。
魔眼が当然写っており、これさえなければ皆と同じように生活できたのにと思う。
「あっ………!!」
そして一つ思いついてしまった。
この魔眼のせいで、こんなに苦しむのなら失くしてしまえば良いのだと。
その為の方法は簡単だった。
誰かが落として床に落ちていたボールペンを使えば良い。
それで目を突き刺せば魔眼も無くなってしまうと予想する。
そうと決まればボールペンを自分の眼の前に構える。
眼を突き刺すとなれば痛いだろう。
それを二回もやらないといけない。
恐怖で腕が振るえるが、やらなくては何時までも怯えて過ごすことになってしまう。
覚悟を決めて思いきり良く自分の眼にボールペンを突き刺した。




