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一話

「何でサングラスなんてつけているんだよ、お前!」


 小学生低学年ぐらいの男の子が同じぐらいの女の子に文句を言う。

 女子は今まで何も言わなかったのに急にサングラスのことで行ってきたことに驚いて固まってしまう。


 そしてサングラスを付けていることに不満を持っているのは文句を口に出した男の子だけではない。

 特別扱いされていると男子女子関係なく思っていて不満だった。


「でも……」


「でもじゃねぇよ!」


 言い訳しようとする女の子に男の子は押して地面に転がせる。

 話を聞く気は無い。

 目の前の女の子だけが特別扱いされていることに不満を持ちサングラスを取ろうとする。


「ダメ!」


 それを察して盗られまいとする女の子。

 抵抗する姿にムカついて全員がサングラスを取ろうと協力しようとする。


「皆が酷い目にあうんだよ!?魔眼のことぐらいは知っているでしょう!?」


「嘘つけ!そんなの十万人に一人ってお父さんが言っていたぞ!」


 魔眼という見ただけで他人に影響を与えてしまう眼を持つ者は十万人に一人の割合しかいない。

 だからこそ魔眼を持っていると言っても信じられず嘘をついていると思われてしまう。 

 魔眼を防ぐには今のところ持っている本人がサングラスなどで防ぐしかない。

 もしくは掛けられる側に抵抗力が高い必要がある。

 当然、小学生に抵抗力があるはずもない。


「何だ、その目!変な………」


 だから女の子の眼を見てしまい魔眼に掛けられる。

 魔眼の効果は個人ごとに違う。

 そして女の子の魔眼は目を見た者を生命活動を止める能力だった。


「だから言ったのに……」


 女の子の眼を見た者たちは全員、その場に倒れてしまう。

 生命活動を止めるといっても直ぐに女の子が目を閉じたから影響は少ない。

 直ぐに目を覚ますはずだ。


「きゃぁぁぁぁぁ!!」


「ひぃっ!!」


 そして他の者たちは女の子の前にいた者たちが倒れたのを見て悲鳴を上げて逃げて行った。

 見るだけで他者に影響を与える魔眼。

 十万に一人という割合だから専門の学校も出来ていない。


 そうでなくても保健室登校などにするべきだが学校側から敢えて普通の子供たちと同じように学校に通ってくれと頼まれた。

 女の子の両親は娘が他の子どもたちと同じように学校に通えると聞いて諸手を上げて喜び娘を学校に入れた。


 学校側としては魔眼を持っている子供でも通える学校として名を広めようと考えて受け入れた。

 その際の費用何て考えていない。

 それに十万人に一人の割合だから一人ぐらい受けれ入れても他にはいないだろうという考えもあった。


 実際、初日から一ヶ月ぐらい掛かっているのに問題は起きておらず、これからも起きることは無いだろうと油断してからの事件だ。

 悲鳴が聞こえて魔眼を持っている女の子の前へと走っていく。


「何で魔眼を使ったんだ!危険なのはわかっているだろう!」


 そして魔眼を使ったことに理由も聞かずに女の子へと怒鳴る。

 女の子としては無理矢理サングラスを盗られての結果なのに自分が怒られたことに困惑で何も言えなくなる。

 何も言い訳をしない姿に教師は自分の意志で魔眼を使ったのだと誤解してしまう。


「分かっているのか!君が悪いんだから謝りなさい!」


 一方的に女の子が悪いという教師に女の子は泣いてしまう。

 むしろ魔眼を持っているから止めてと言ったのにサングラスを強引に盗った相手が悪い。

 それなのに自分が悪いと怒られる理不尽に泣いてしまう。


「うわぁぁぁぁん!!わだじ……わるぐないもん!!」


 自分が悪くないという女の子に教師は子供相手に怒りを覚える。

 自分が大人だから、教え導く教師だから、自分が間違ているとは思ってもいない。


「ふざけるな!今日はもう家に帰れ!親御さんも呼んで注意してもらうからな!」


 教師の言葉に女の子は更に泣き叫ぶ。

 本当に女の子は悪くない。

 サングラスを付けている理由を信じなかった皆が悪い。


「そもそも君が魔眼を持っているのは皆に話しているんだ!それなのにサングラスを外すわけが無いだろう!」


 それでも信じられないとサングラスを盗ろうとした結果だ。

 子供だからこそ、やるのだと考えられないのだろう。

 もしかしたら大人で教師である自分の言葉は絶対で子供たちはそれに従うと思っているのかもしれない。


「何で君みたいな子がこの学校に来たんだ!」


 もし本当に女の子がサングラスを外したとしても言い過ぎな教師。

 そもそも子供だから言うことを聞かないのはあるのに学校に通ってもらう様にいったのは、そちらだ。

 その辺りの配慮も教師たちがするべきことだ。


「目を覚ましたら絶対に謝れよ」


 言いながら教師はまず女の子を担ぐ。

 そのまま空いている教室に放り込んで隔離するつもりだ。

 そうすれば、これ以上の被害は出ないはずだと考えている。


「はぁ……。この子を隔離したら今度はこの子たちを保健室に運ばないとな……」


 この後に自分の子供たちが危険な目にあった理由を聞かれるだろうと教師はため息を吐く。

 正直に言って子供たちを任せてくれる癖にあーだこーだと言われるのは不快だった。




「何でサングラスを外したの!?貴方の持っている魔眼は強力だっていったでしょ!」


「わたしから外してないもん!サングラスを付けるなって盗られたもん!」


 魔眼を持っている女の子アウルが事実を言うが母親は信じられないと更に怒る。

 危険だと教えられているのに外すなんて馬鹿なことを子供でもするはずが無いと考えていたからだ。


「はぁ。さっきから聞いていたが何を嘘を言っているんだ。意識を取り戻した皆から聞いたが君から三ぐらラスを外したと言っていたぞ。本当のことを言いなさい」


 そして教師の言葉に母親も頷く。

 それを聞いたからこそ娘が自分の意志でサングラスを外したのだと思っていた。

 自分の娘より他人の子供の方が母親としては信じられるらしい。


「嘘じゃない!!」


「この……!!」


 アウルからすれば本当のこと。

 そして母親と教師からすれば嘘を改めないアウルに苛立ちだけが増えていく。


「何を言っても変える気は無いことは理解した。なら学校に来なくて良いよ。もともと魔眼を持っている子が入学するのは反対だったんだ」


 学校に通うようにお願いしてきたのはそちらなのにふざけたことを言う教師。

 そして母親はそれを聞いて、それだけはと必死に謝る。


「そんな……!お願いします!娘も謝らせますから、それだけは許してください!」


「その娘さんが嘘をついて謝る気は無いんですよ。信じられません」


 教師の言葉に母親は娘を睨む。

 母親として娘に普通の生活を味わってほしいのに何で理解してくれないのかと恨んでしまう。


「はやく謝りなさい!!」


 娘を普通の学校生活をしてもらうために無理矢理にでも母親は頭を下げさせる。

 頭を下げるということは自分が悪いと示すことだ。

 自分が悪くさせられることにアウルは泣きそうになる。


「ほら!謝りなさい!」


 母親が謝れと言い、教師は責める視線でアウルを見る。

 何度も頭の中で謝れという言葉がリフレインし、そして視線で責め立てられて何も考えられなくなる。


「ごめんなさい……」


 そして、ついにアウルは謝った。


「よし。他の皆にも謝りに行くぞ。早い方が良いだろう」


 そしてアウルの手を掴んでみんなの前に連れて行こうとする。

 何を言っても信じてもらえず悪く言われるのなら何も抵抗する気にはならなかった。




「ごめんなさい」


「何でこんな子を子供たちと同じ学校に入れたんですか!おかげで子供が酷い目に遭ったんですよ!」


「申し訳ありません」


 魔眼に掛けられた子供たちの親が怒りをぶつけてくる。

 それに対して母親や教師は謝る。

 アウルも言われたとおりに謝るだけだ。


「どうしたんだい?」


 怒り声が聞こえてきて校長先生も中に入ってくる。

 詳しいことは見ていたから知っている。


「うちの子供に魔眼を掛けられたんですよ!どうしてくれるんですか!」


 相手の言葉にアウルの母親は娘を睨む。

 サングラスさえ外さなければ、こんなことにはならなかったのにと怒っていた。


「最初っから魔眼を持っていると説明したのに何でサングラスを奪ったのか、こちらから聞き返して良いでしょうか?そうでなくても初めから見ていましたが虐めでしたよ?どんな育て方をしているんですか?」


「「は?」」


 校長の言葉にアウルは視線を向ける。

 まさか自分の味方が現れるなんて思ってもいなかった。

 母親と教師はどういうことだとアウルに視線を向ける。

 何で本当のことを言わなかったのかと責めた視線だ。


「君は何でそんな視線をアウルちゃんに向けているんだ?私は最初から見ていたが本当のことを言っていなのに信じなかったじゃないか。君がそんな視線を向ける必要は無い。取り敢えずは一年は減給させてもらう」


 校長の言葉に顔を青くする教師。

 アウルの言っていたことが本当だったのだと今更理解して何で最初から言ってくれなかったんだと今度は校長に対して怒りを抱く。


「貴女もです。母親なんですから娘の言葉を信じたらどうですか?」


「それは……」


 母親の癖に娘を信じていないのかと責められ口ごもる。

 アウルは自分を味方してくれる校長に目を輝かせて見ている。


「証拠はあるんですか……!?」


 子供たちが危険な目に遭ったのに自業自得だという校長に証拠を求める危害を加えらた子供の親たち。

 それをわかっていたのか撮っていた動画を見せる。


 それはアウルを抑えて無理矢理サングラスを盗る子供たちの姿。

 虐めにも見えるそれを確認して親たちは自分の子供たちを睨んだ。

 何せ親たちは自分の意志でサングラスを外して危害を加えられたと聞いたのだ。

 それなのに実際の動画では虐めていたのは自分達の子供たちで恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にする。


「「「「「………」」」」」


 対して子供たちの顔は真っ青だった。

 嘘をついていたのがバレて親に怒られることを想像して恐怖で震えている。


 そして嘘をついていた子供たち、教師でありながら一方だけを信じて本当のことを言っていた子供を責めた教師、自分の娘を信じなかった母親、子供たちのせいで恥をかいた親たち。

 全員がアウルが魔眼を持っていなかったら、こんなことにならかったと恨んでしまっていた。



「何で本当のことを言わなかったの!?お陰で私まで恥をかいたじゃない!!サングラスを盗られたって言えば良かったじゃない」


「まぁまぁ。そうやって責め立てるから言わなかったんじゃないか?落ち着いて怒鳴らない様に話そう」


 家に帰ると母親はアウルに対して怒鳴る。

 お陰で娘を信じない母親だと教師や魔眼を掛けられた子供たちの両親に晒されてしまった。


「それで、どうして言わなかったんだい?怒らないから教えて?」


「…………言った」


 アウルは自分の母親にサングラスを盗られたと言ったのに信じてもらえなかったことを思い出しながら否定する。

 どうせ信じないのだろうと思いながら。

 今、アウルは信じているのは校長だけだ。

 校長だけが自分の言葉を信じて証明してくれた。


「え?」


「だから言った。言っても嘘だと言われて信じてくれなかったけど……」


「………」


 娘の言葉に父親はアウルの母親へと視線を向ける。

 妻と娘の言っていることが真逆だ。

 もしかして本当のことを言ったのに信じてもらえなかったことから自分たちを信用できくなったんじゃないかと思ってしまう。


「何よ……」


 震えながら目を逸らすアウルの母親。

 その姿に娘の言っていることが本当だと理解してしまう。


「そうか……。ごめんね?悪いけど、お父さんはお母さんと一緒に話すことがあるから自分の部屋に戻ってくれないか?」


 父親の言葉に従いアウルは自分の部屋に戻っていった。

 

 それを確認して父親は自分の妻に視線を再度向ける。

 アウルの母親は震えていた。


「娘の言葉を信じなかったのか?」


「………」


 それが事実だからこそ母親は何も言えずに黙ってしまう。

 そのせいで事実だと理解して更に父親は怒る。


「ふざけるな!お前が授かった子供だろう!?俺たちが信じなくてどうするんだ!?」


「っ………」


 アウルの父親に怒鳴られてアウルの母親は身がすくむ。

 魔眼を持っているからと何もかも娘が悪いと判断して信じなかったことが親として悪いことだと自覚していたから反論も出来ない。


「親ならまずは子供の言葉を信じるべきじゃないのか!?」


 だから反論するとしたら逆ギレになる。


「うるさいわね!だってあの子は魔眼を持っているのよ!しょうがないじゃない!!私だってあの子が魔眼を持っていなかったら信じれていたわよ!あの子が魔眼を持って生まれたのが悪いんじゃない!」


「言い過ぎだ!!」


 アウルの母親の言葉は言い過ぎだと思うが、同時に気持ちは分かっていた。

 何で自分達の子供が物騒な力を持って生まれてしまったのだと神を恨んでしまう。

 何処にでもいる普通の子供として生まれてこなければ大変な思いもしなかった。


「俺も子供が魔眼を持って生まれたのは不幸だと思っているが、それでも子供にぶつけて良いわけが無いだろう!?」


 アウルの父親の言葉にアウルの母親も落ち着こうと息を吐く。

 自分の意志で魔眼を宿したわけでは無いのだ。

 子供を責めるわけにはいないと冷静になろうとする。


「何であの子に魔眼なんて授かってしまったのよ……。お陰でこんな辛い目に遭うなんて……。私たちが何をしたって言うの……!」


 それでも母親は愚痴をこぼしてしまう。

 魔眼なんて宿してほしくなかったと。

 そのせいで自分達が辛い目にあっているのだと。

 父親はそれを聞いて何も言わない。

 言ってしまうのなら同意をしていた。


「たしかにそうだけど頑張ろう。そもそも学校側から受け入れさせて欲しいと言っていたんだ。何かあったら学校のせいにしていこう?」


「そうね……」


 娘が魔眼を持っているのに向こうから受け入れさせて欲しいと言っていたのだ。

 何かあっても学校に責任を被せようと決めていた。






「そっかぁ………」


 アウルは魔眼を持って生まれてしまったことに後悔していた。

 部屋に戻っていろと言われたが声が聞こえてきてしまう。

 そして自分を産んだことに後悔する母親の声に悲しくなっていた。


「お母さんは私を産んだことを後悔しているんだ……」


 そう考えればアウルは色々と納得していた。

 嘘を言っていないのに謝れと怒ってきたことも。

 自分の話を信じてくれようとしないのも本当は自分が嫌いなのだからと。


「もしかして校長先生もそうなのかな……」


 助けてくれた本当は自分のことが嫌いなんじゃないかと考える。

 母親だけでなく父親も魔眼を持っていることに不幸だと思っている。

 同じ学校の校長だからと言って所詮は赤の他人だから同じように思っていても不思議じゃない。


「私だって魔眼を望んで持っているわけじゃないのに………」


 サングラスを付ける必要のない皆が羨ましい。

 やはりサングラスを着けるのと着けないのでは景色が全く違う。

 外した方が景色は綺麗だ。


「本当は皆、私のことが嫌いなんだ……」


 自分がいることが苦痛になるのなら、どこかに行きたいとアウルは思う。

 そうすれば誰もが幸せになるのかもしれない。

 だけど自分一人で生きていく自信がなく直ぐに死んでしまいそうで怖い。

 そんな自分が嫌でしょうがなかった。




「何で嘘をついた!サングラスを着けた子は魔眼を持っていると言ったし、外すなとも言ったよな!」


「………」


 父親の怒り様に涙を堪えて子供は何も言えなくなる。

 その様子に更に怒りが増す。


 魔眼を持っている子が止めてとも魔眼を持っているとも口にしたのに話を聞かずに無理矢理にサングラスを盗る動画を見せられた。

 れっきとした虐めであり、こんな子供に育ってしまったことに悲しくて涙が出そうになる。


「しかも、よりによって女の子一人に何人もよってたかって虐めて……。恥ずかしくないのか……」


 父親が恥ずかしそうに悲しそうに言う姿に自分も悲しくなってくる子供。

 これも全てアウルのせいだと思っているし、同時に両親たちも悪いと思っていた。


「でもサングラスを着けていたし……」


「魔眼を持っているから着けていると言っただろうが!!」


 ふざけた言い訳をする子供に親は怒鳴る。

 自分の話は聞いていなかったのかと泣きそうだ。


「ひぐ……。そもそも魔眼を持っているのは十万人に一人って言ってたじゃん!なら嘘だって思って何がおかしいの!?」


「確かに言ったが学校側から魔眼を持っている子もいると事前に言われていたし、お前たちにもいるってったよな!?」


 子供の言い訳に言い返す父親。

 何を言っても怒られてしまい子供は涙を流す。


「泣いて許されると思うなよ……!お前はそれだけのことをしたんだ……」


 子供が泣いても父親は無視をする。

 慰める気は全くない。

 今日は色々あったから謝ることを忘れてしまったが後日、時間を見つけてアウルの家族に謝ろうと決意していた。



「何でだよ……」


 子供は家で自分の部屋に引きこもり泣く。

 十万人に一人しかいない魔眼を持っていると言われて普通は信じるはずが無い。

 だから自分は悪くないと考えていた。


「十万人に一人しかいないのに……。嘘をついていると思うのが普通じゃん……」


 サングラスを無理矢理盗ろうとしたのも嘘を暴こうとしたからにすぎない。

 それだけのことなのに魔眼を掛けてくる相手の方が悪いと子供は思っている。


「そうだよ。むしろサングラスを外しただけで魔眼を掛けてくるあいつの方が悪いじゃん。俺は悪くない」


 あくまでも自分は悪くないと子供は理論武装しようとする。

 その為にはアウルを排除しなくてはいけないと思う。

 自分が怒られたのは両親がアウルに騙されているからで元に戻るはずだと考える。


「皆にも相談すれば協力してくれるはずだ。早速明日から相談しよう!」


 アウルを排除するために子供は企み始める。

 他の皆もアウルを排除するのには協力するだろうと予想していた。





「くっそ……!」


 アウルを怒っていた教師は怒りで自分の住んでいる部屋で者を壁にぶつけていた。

 自分が悪くないと言っていたアウルを叱って謝らせたのに実際はアウルは何も悪くなかった。

 何も悪くない女の子を責めて謝らせたことで減給され、その怒りを壁にぶつけている。


「ふざけやがって……。本当に悪くないんだったら、もっと主張しろよ……!」


 もっと自分は悪くないと主張していれば減給させられることは無かったのにとアウルを恨む。

 もし虐められていたとしても助ける気は無くなった。

 せいぜい虐めで苦しめば良いと思っている。


「そういえば子供たちもそれぞれの親に怒られていたな。アウルを虐めるのは難しいか……?」


 子供たちがそれぞれの親に怒られていたことを思い出して考えるが大丈夫だろうと予想する。

 所詮は子供たちだ。

 大人である教師が誘導すれば簡単に虐めに発展できる。


 それに学校という世界だからこそ隠すことも容易だろうと思える。

 校長も今回は助けることは出来たが自分から受け入れさせて欲しいと言って結果は受け入れた学校で虐めがあって退学になるのは嫌なはずだ。

 隠すのも協力的になるだろうと想像する。


「そうと決まれば嫌だがアウルを贔屓にしないとな……」


 そうすれば教師が勝手に贔屓していようが子供たちは不満を持ってアウルを虐めるはずだと想像する。

 子供たちは誰か一人だけが特別扱いされるのは嫌なのだ。

 現にサングラスを盗ろうとしたのも一人だけ許されているからだ。


 なら意図的に一人だけ贔屓にさせて敵意を持たせれば良い。

 それだけで良いのだから簡単なことだと教師は笑う。


「そもそも魔眼を持っているのに何でこの学校で受け入れようとしたんだか」


 本人には制御できず視ただけで相手に影響を与える魔眼。

 そんなものを受け入れるぐらいなら排除した方が良い。

 できなくても保健室登校にすれば誰にも危害は加えることは、ほとんどなくなる。。

 アウルも自分の意図しないところで危害を加えてしまうよりは、それがマシのはずだ。


「次年度からは障害を抱えている子供は受け入れないようにしないと……」


 魔眼に関しては十万人に一人の割合だから専門的な学校は無いにしても他の障害に関しては大体が専門的な学校があるはずだ。

 今度からはこの学校で受け入れさせるのではなく、その専門の学校へと行かせるように校長たちに説得するべきだ。

 その際には他の同僚たちにも協力してもらおうと考えていた。



「えい!」


 クラスでアウルは背中を押されて転ばされる。

 その勢いは強く少しでも運が悪ければ怪我をしてしまいそうだ。


「全員、席に座れー!勉強の時間だぞ!」


 そして教師はそれを確実に見ていたのに止めはしない。

 むしろ虐められているアウルを見て笑ってさえいた。

 クラスメイト達はそれに気づいていて虐めを更に激しくしていた。


「アウルさんも何をやっているんだ?さっさと席に座れ」


 先程、転ばされたのを見ての発言にアウルは本気で言っているのかと教師を見る。

 その顔をは虐められているアウルを見て楽しそうに歪んでおり助けてくれないのだと嫌でも理解させられる。

 自分に味方はいないのだとアウルは絶望してしまう。


「きゃっ!!?」


 自分の席に座ろうとすると途中で足を引っかけられてアウルはまたも転んでしまう。

 その姿に皆が笑い声をあげる。


「…………っ!!」


 アウルは泣きそうになりながらも我慢をする。

 泣いても更に相手を喜ばせるだけだ。

 そのことは既に理解できてしまっていた。




「先生!アウルさんが暴力を振るってきましたー!!」


 肩を叩かれて振り返ったら目の前の女子が何故か床に尻を着けていた。

 そして聞こえてきた言葉に何を言っているのかと理解が出来ずに頭が真っ白になる。


「何だって!?」


 そしてクラスの先生とは違う、別のクラスを担当としている教師と校長も反応して近寄ってくる。


「何があったんだ!」


「急にアウルさんが殴ってきて……!」


 嘘を校長と教師に告げる女子。

 その瞳には涙が浮かんでいて頬も赤く腫れている。

 それを確認した教師たちはアウルへと責める視線を向けていた。

 特に校長はするだけの理由があると知っているから疑っていない。


「いくら嫌いだからって暴力を振るったら、彼らと同じようになるからダメだろう?」


「え……。ちがっ……」


 アウルが否定しようとしていても校長は信じることは出来ないでいた。

 たかが小学生が演技をして嵌めることなんて出来ないだろうと考えていた。

 現に校長や教師は今まで小学生にそんなことをかかったことがなかった。

 小学生が出来るのはせいぜい嘘を吐くことぐらいし出来ないと思っていた。


「後で説教だ。放課後、校長室に来なさい!」


 アウルが味方だと思われていた校長に信じてもらえないことに内心でほくそ笑むクラスメイトたち。

 いい気味だと思っている。

 このまま上手くいけば校長も味方じゃなくなるはずだ。

 いずれは学校の全員をアウルの敵にしたいとクラスメイト達は考えていた。




「汚いのは掃除しないと!」


 放課後、校長室へと行く前に掃除をしないといけない。

 そしてクラスメイト達はバケツに入れた水をアウルにかける。


「………」


 思いきり水を掛けられたためにアウルは全身が水浸しになり、座っていた机の中も水で濡れてしまう。

 水で濡れた体が冷たくしゃみをしてしまう。


「うわっ!?風邪をひいたの!?移ったら嫌だから消えてよ!」


「ぶぎゅっ!!」


 追い出すように箒の掃く部分を押し付けて教室から出そうとする。

 その勢いが強くわき腹や顔などアウルの身体のいたる所を強打されうめき声を上げてしまう。


「ぶぎゅって!!ぶははははは!!もう一回!!」


 それを発端としてクラスの皆がアウルの悲鳴を笑う。

 そして面白いからと何度もアウルの腹に顔に足に腕に、と箒を押し付ける。

 アウルの悲鳴が気に入ってしまったらしい。


 それから逃げようとアウルが動いている姿にも面白くなり箒で叩いたりする。

 中には濡れた雑巾で拭いている者もいる。

 水を掛けられ雑巾で拭かれて臭くなり涙が出てくる。


 だけど同時にある意味、チャンスだとアウルは思っていた。

 この状態のまま教室の外に出れば虐められていることを理解させることが出来る。

 もしかしたら殴ったという誤解も解けるかもしれない。


「おっとバレないように臭いを消して服も乾かさないと」


 その言葉と同時に雑巾のにおいと服が乾く。

 聞こえてきた声からすると、どうやら教師がやったことらしい。


「ありがとう先生!!」


 歪んだ笑みを向けてアウルを見てくるクラスメイト達。

 それに恐怖を覚えて校長室へとアウルは逃げて行った。




「まだ掃除の時間だろう?何で、もう来ているんだ?さっさと教室に戻りなさい」


 校長室へと逃げ込むと開口一番にアウルはそう言われる。

 アウルの顔は恐怖と絶望に染まっているのに、全く気付いていない。

 校長も本当はアウル自身についてはどうでも良いと思っているのかもしれない。

 そのことに気付いてアウルは更に絶望する。


 校長は、ただ単に魔眼を持つ子供も受け入れる学校という評価が欲しかったのだろう。

 真面に気にかけていたら子供のしている顔にも気付いたはずだ。


「ほら戻った戻った」


 校長は話は掃除が終わった後で良いとアウルを校長室から追い出す。

 きっと目の前で、学校外の者たちにも見えるように、魔眼を持っている子を、虐めなければ助けないのだろう。

 以前は校舎の外で虐めていた。

 だけど今回は校舎の中だ。

 学校外にはバレないと考えたから助けなかったのかもしれない。

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