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十話

「ディアロ、聞いた?」


「聞いたって何を?」


 ディアロが大会に参加するために泊まっているホテルの部屋にレイが入ってくる。

 そして聞いているかの確認にディアロは何の話かと聞き返す。


「最初の試合相手だったロールド学校だけど事件が起きて参加できなくなったみたいよ」


「………ふーん」


 それなら初戦は不戦勝になるのかとディアロは予想する。

 それにロールド学校と聞いて以前に見たことはあるが負ける要素が無いから、どうでも良いと考えていた。


「驚かないわね」


「だってどうでも良いし。それよりも不戦勝になったってことで良い?」


 どうでも良いと聞いてレイはディアロを睨む。

 そして本当にどうでも良さそうにベッドに寝っ転がって本を読んでいる姿に呆れてため息を吐く。


「大将に実力で選ばれているからって油断しすぎじゃない?」


「そう言われても大将だぞ。基本的に一番最後にしか出番が無い大将。正直、うちの学校だったら大将の俺が出る前にこの大会を優勝で決めてしまいそうなんだけど……」


 ディアロの意見にレイは何も言えなくなる。

 たしかにディアロたちの通っている学校は世界大会にも出場しているから実力が高い。

 こんな大会で敗けるとしたら余程、相性が悪かったりするぐらいだろう。

 ディアロが今大会で試合に出る可能性も低い。


「先鋒だったら、まだ良かったのに……」


 そうすれば経験も積めるのに大将だからと最後に回されて不満をディアロは口にする。


「あはは……」


 自分が準備しなくても他の代表者の皆なら勝てるとディアロは確信している。

 もしかしたら信頼とも言えるかもしれないそれにレイも不満は無くなっていた。


「今からでも先鋒に変えてもらう様に頼みに行く?」


「迷惑じゃないかな?俺だったら既に決めたことを急に変えるのは嫌なんだけど……」


「でも一度でも経験を積むべきだと私も思わよ。いざ戦うとなると緊張するかもしれないし……」


「………あんな大勢の前で戦うからな。絶対にぶっつけ本番だと緊張して本来の動きが全くできなさそうだ」


 それならとレイはディアロの手を引いて教師の泊っている部屋へと向かう。

 目的は当然、ディアロを大将じゃなくて先鋒にするためだ。


 そして一緒に手を繋いでいる姿に廊下で、その姿を見ていた者たちは様々な反応を見せる。

 年下の子が仲良さそうに手を繋いでいる姿に微笑ましく思っている者もいれば、嫉妬で睨んでいる者もいる。

 中には大会に参加しているのにイチャ付いていることに怒りを抱いている者もいた。


「先生!今、大丈夫ですか!?」


「急にどうした!?」


 レイが教師の泊っている部屋に呼び鈴もならさずに中に入ったことに教師は酷く驚く。

 それはディアロも同じで、こちらはため息を吐きながら呆れた目を向けてしまう。

 一緒に教師の部屋に来るのは良いが、せめて呼び鈴を鳴らすぐらいはしろよと思う。


「ディアロ、流石に呼び鈴を鳴らさずに中に入るのは止めて欲しかったんだが……。お前の恋人なんだろ?」


「すいません。止める間も無かったので。それとお願いがあるんですが」


 ディアロの言葉に教師はため息を吐いて頷く。

 急に現れて言いたいことだけを言おうとする二人にさっさと話して帰ってもらいたかった。


「俺に経験を積ませるために先鋒にしてくれませんか?大将だとこの大会、出番はないと思うんですけど」


「………ダメだ。君は切り札だからな。存在は知られていても隠したい」


「肝心な時に初出場で緊張で敗けたら、どうするんですか?」


「?前に皆の前で学校の実力者をボコボコにしただろ」


「アレと今回のは違います」


 前回、ボコボコにしたというのはディアロがレイの恋人になったということで不満をぶつけてきたヤツだろう。

 ディアロにとってはこの大会とは全く違う。

 喧嘩を売ってきた者たちが、ただ不快でしかなくイラついていた。

 だから見られていたとしても怒りで何も影響はなかった。


「一試合だけでも良いですから体験させてください!!」


 ディアロの頼みに教師は悩んでしまう。

 正直、集団戦などが選ばれれば戦うことが出来る。

 だけど基本的に何もやらせるつもりは無かったしディアロにもそう指示をしている。

 集団戦では避けることしか許すつもりは無い。

 詳しい情報は晒したくなかった。


「でもなぁ……」


 正直に言ってコンバット学校を勝たせたい教師からすれば隠したかった。

 星抜き戦もあるが大将だから最後Dだし態と負けさせようと考えている。


「お願いします!!」


 必死にディアロは頭を下げているが教師は受け入れようとしない。

 そこで良い案が思いついたとばかりに顔をにやけさせる。


「わかった。フィンたちにも相談しよう」


「ありがとうございます!」


 生徒会長にも相談して決めると言う教師にディアロは表面だけ嬉しそうに頷いて礼を言う。

 どうせ相談をするだけで方針は変わらないのだろうと予想していた。


「それじゃあ失礼しました!」


「おう。次はちゃんとノックなりに呼び鈴を鳴らすなりしろよ」


 教師のその言葉に頷いてディアロとレイは教師の泊っている部屋から出て行った。



「はぁ~」


 教師の泊っている部屋から出て少し離れるとディアロはため息を吐く。

 その様子にレイはどうかしたのかと心配そうに声を掛ける。


「急にため息なんて吐いてどうしたのよ?」


「試合で戦うのは認められないだろうなぁって思って」


「え?でも生徒会長と相談するって……」


「相談はするんじゃないか?結果は変わらないだけで」


 つまりは形だけやると言うことだ。

 そのことにレイはため息が出る。

 こちらの望みを叶える気は無いのに聞き入れたようにように見せるのは狸だと思ってしまう。


「あっ、二人とも。これからディアロ様の部屋に向かおうとしていたんですけど、何所か行っていたんですか!?」


 そしてディアロの部屋に戻ろうとしている最中にリィスと出会う。

 これから自分達のところへと向かおうとしていたと言うが自分ではなくディアロの部屋に向かっていたリィスにレイは睨む。

 自分の恋人のいる部屋に向かうなら、まずは恋人である自分を連れて行くべきだ。


「恋人の私がいるのに一人でディアロの部屋に向かおうとしたのよね?」


「?どうせリィスさんはディアロ様の部屋にいるでしょう?」


「「………」」


 リィスの何でもないかのように言った言葉に二人は何も言えなくなる。

 実際にレイはディアロの部屋にいたから否定することが出来ない。


「それよりも夕食一緒に食べに行きませんか!?どうせなら皆と食べたいので!」


 リィスの提案に二人は頷き時間までディアロの泊っている部屋で時間を潰すことになった。




「それにしてもロールド学校は運が無いと思いません?折角の大会なのに出場できないなんて」


「何を言っているのよ?私たちの学校と一回戦で当たった時点で運が無いわよ。相手はうちからしたら格下だし、どちらにしても一回戦負けをするわよ」


 レイの意見にリィスもディアロも否定しない。

 特にディアロはロールド学校の生徒を直に見て相手にならないと思っていた。

 面白そうだから挑発をしたが期待は出来ないだろうなと考えていた。


「はぁ~。暇だ」


 この大会ではやることが無いからディアロはため息を吐く。

 本来の実力を発揮させることも僅かでも見せることも許されずに負けを強要される。

 正直、ストレスを溜めてしまいそうだ。


「暇って……。代表、それも大将にディアロ様は選ばれたんですよね?」


「試合に出ても負けるか避け続けろと言われているんだよ。実力を隠せだってさ」


 確かにそれは暇だろうなとリィスも頷く。

 試合の勝敗は全て自分以外の者で決まるのだからディアロはいてもいなくても変わらない。


「それにしてもいい加減にディアロも慣れたわよね……」


「………色んな奴らに様付けされていたら、そりゃあな」


 学校で実力差を分からせてからディアロは様付けで呼ばれるようになってしまった。

 様付けで呼ぶほとんどが崇拝の念で呼んでおり、ノリで呼んでいる者は少ない。

 リィスも崇拝からディアロを様付けで呼んでいる。


 ちなみにディアロは最初は様付けで呼ばれるのは嫌で止めるように言った。

 だが、それでもふとした瞬間に様付けで呼んでしまう者が多く、その度に止めるように言うのもめんどくさくなった。

 その結果、普段からディアロは様付けで呼ばれるようになった。

 何人かはそんなディアロに好い気になりやがってと敵意を持つ者もいるし、様付けで呼ばれることに恥ずかしがっているディアロに同情している者もいた。


「別に様付けでも良いじゃないですか……。それだけディアロ様に崇拝しているわけですし」


 崇拝されていると聞いてディアロは微妙な表情を浮かべてしまう。

 正直、そこまで嬉しくなかった。

 そのせいで様付けをされるという恥ずかしい経験をされているのだ。

 何も知らない周りからはどう思われているのか考えたくもなかった。


「それにしても私は本当に運が良いです。こうしてディアロ様とレイさんの近くにいるんですから」


 コンバット学校でも一年生で代表に選ばれたのはディアロだけだ。

 他にも一年生でホテルに泊まっている者もいるが、それは全員がサポートとして。

 つまりはレイやリィスもサポートとして選ばれてきている。


 特にリィスは選ばれたことから崇拝者たちに尊敬と嫉妬の視線を向けられていた。

 その視線にリィスは気持ちよくなりながらも胸を張ってサポートとしてディアロと一緒に来た。


 実はリィスはディアロの崇拝者たちの中でも宗教でいうトップに近いが、それでも嫉妬の視線を向けられていた。

 普段からディアロやレイと一緒にいるのだから今回ぐらいは譲れよと思われていたし、絶対に譲らない姿からそれでこそだとも思われていた。

 近々、崇拝者のトップとして立つことになるかもしれない。


「ふぅん。それよりも、そろそろご飯を食べに行かない?」


 呆れたような顔を見せたディアロから夕食を食べに行かないかと提案される。

 レイもリィスも腹が減ったからと頷きホテルのレストランへと行くことに同意した。


「確か夕食は一階のレストランで合っているわよね?」


 レイの確認にディアロは頷く。

 それを確認してレイは二人と一緒に目的地へと歩いていく。


「すみません。そちらにいるのはリィスさんで合っているでしょうか?」


 そして一階にたどり着きレストランへと向かう途中、二人組の警察官がリィスたちへと話しかけてくる。

 警察官が話しかけて来たことに三人とも緊張してしまう。


「何の用でしょうか?」


 リィスへと話しかけているのに男の子が要件を確認してきて警察官の二人は恋人なのかなと疑問を持つ。

 女の子を護るように前に立っている男の子に犯罪者かと聞きにくい。


「ちょっとだけ時間をもらって良いかな?すこし聞きたいことがあるの。不満なら貴方達も来て良いから」


 女性の警察官の言葉に頷き、三人とも警察官の後をついてその場を離れる。

 そして着いた先は少しだけ離れているが話が聞こえないように配慮されている場所だった。


「ごめんね。聞きたいことが終わったら直ぐに終わるから」


 再度謝ってくる警察官に、むしろこちらが何度も謝らせて悪い気になってくる。

 何の用なのかと早く終わらせてほしい。


「まずリィスさん。こちらは貴方の幼少の過去を調べさせてもらいました。もちろん孤児になった理由もです」


 過去を調べられたと聞いてリィスは女性の警察官を睨む。

 自分の過去を調べられるのは正直、不快でしかなかったが相手が警察だから事件についても詳細が残っているのだろうと自分を納得させる。


「貴女の家族を殺した者たちですが二人を残して死んでおり、その残った二人も生まれていた娘と一緒に最近、死にました」


「………私の両親を殺した二人が生きていて子供を成していたって聞こえたんですけど」


「その通りです」


 そんなことを言いに来たのかとリィスは怒りの眼差しで警察官を見る。

 そして子供を成していたと聞いて、その家族が何処にいるのかと確認しようとする。


「その二人。いえ、三人は今どこに住んでいるんですか?」


「聞いてどうするつもりですか?」


「人の家族を殺してといて幸せになっている何てふざけているじゃない!!」


 怒気を露わにして住んでいる場所を問い質そうとしているリィスにディアロは後ろから羽交い絞めをして止める。

 レイも一緒になって警察官に掴みかかろうとしているリィスを止めていた。


「えっと、以前に小学生の女子二人と遊んでいましたよね?」


「それが何ですか!?」


「彼女が、その二人の子供ですよ」


「は?」


 リィスのここまでの反応で二人の警察官はリィスは復讐相談事務所に関係していないと確信する。

 関係していたのなら、ここまで怒りを見せることはないはずだし嘘だとは思えなかった。

 

 それにしても話していて普通の子だと思うが何を凄いと思ったのか疑問だ。

 家族の仇が幸せそうに過ごしているのを聞いて怒りが湧くのも当然だから意味が分からずに首を傾げてしまう。


「リィス。いい加減に落ち着け」


「はい!」


 怒りが滲み出ているような声音にリィスは動きを止める。


「良いか、よく聞け。子供を授かって過ごしていた二人も最近になって死んだと警察官は言っているんだ」


「…………」


 ディアロの言葉にリィスは警察官たちに視線を向け頷かれる。

 話を聞いておらず暴れたことにリィスは顔を赤くする。

 そしてディアロに離されたと思ったら頭を下げて謝罪した。


「ごめんなさい……」


「いえいえ。構いませんよ。確認したかったことも終わりましたし、こちらこそ不躾なことを口に出してすみません」


 確認したかったのはリィスが復讐相談事務所に関わっていたかだけ。

 それも先程の反応で確信も出来たから要件は終わった。


「そうなんですか?」


「えぇ。最近、復讐相談事務所というのが有名になっていて。そこに関わっているのか確認したかったんです。いくら相手が憎くて復讐するに足る理由があっても犯罪になりますからね」


 そういうことかとリィスは納得する。

 どんな理由があったとしても警察官としては犯罪を許してはいけない。

 そして復讐をする理由があるリィスに罪を犯していないか確認しに来たのだと。

 少し会話しただけで真偽を見極められるのは流石、プロだと言えるのかもしれない。


「あのすみませんけど生き残っていた二人は本当に死んだんですか?」


「……そうですね。詳しいことは言えませんが他にも恨みを買っていたらしく子供も一緒に殺されていました」


 それを確認して聞いてリィスは良い気味だと笑う。

 気持ちは分かるが子供も死んでいるのにその反応は止めて欲しいと思う。


「そうですか。教えてくれてありがとうございます。要件はそれで終わりですよね?」


「はい。大会では頑張ってください。応援していますね」


 要件は終わりだと、警察官とリィスたちは別れる。

 警察官たちは警察署に、リィスたちは夕食を食べにレストランへと向かう。

 互いの顔には笑みを浮かべており、片方は安心したような、片方は満足げな笑みを浮かべていた。



「三人とも。警察の人と話していたみたいだけど、何かあったのかい?」


 三人がレストランへと入ると生徒会長であるフィンに捕まり一緒の席で夕食を取ることになった。

 そこには生徒会のメンバーが全員揃っていた。

 他にも警察官に連れて行かれたところを見ていた者も多くいるせいで犯罪者なのかと警戒して視線が集まる。


「ちょっとした確認をされました。どうも昔に関わっていた者が死んでしまったみたいで何か知らないか危機に来たいみたいです」


「「「「え」」」」


 関わりのある者が死んだと聞いて生徒会のメンバーや周りで聞いていた者たちは視線を更に強くする。

 それなのにここにいて良いのか、心配じゃないのか疑問を抱く。


「それって……、そのここにいていいのかい?」


「本当に昔関わったことがあるだけで赤の他人ですよ?親が死んでから会ったことも無いですし」


 嘘は言っていない。

 言ってはいないが気軽に親が死んでいると聞いて空気が重くなる。

 同じ学校の生徒もいるが、だからこそ知らなかった。

 普通、同じ学校の生徒だからって調べる奴はいない。

 いたとしても家柄がとても高いところぐらいだろう。


「そ……そうなんだね。悪いことを聞いちゃったし今日は奢ってあげるよ」


「良いんですか!それなら、この高い奴をお願いします」


「うん……」


 遠慮なしに高いものを頼んでくるリィスにフィンは頷く。

 たしかに高いが不躾なことを聞いてしまったせいで何とも思わない。

 むしろ自分達にも払わせてくれと言っている者がいるから、そこまで財布に影響はなかった。


「あの……?一応言っておきますけど、そこまで気にする必要は無いですからね?今ではディアロ様という崇拝できる方がいますし」


「…………………」


 突然話を振られ、そして人生の支えだと言われたディアロは重すぎると表情が死んでしまう。

 自分の思っていた以上に傾倒されており、依存しているんじゃないかと思ってしまう。

 それでも慕われているのなら悪い気はしないと治す気はなかった。


「そうなんだね。ディアロ君も彼女を大切にして上げなよ」


 フィンの言葉に周りの者たちが頷く。

 それに対してディアロは取り敢えず頷くことで了解する。

 崇拝していると聞いて矯正するつもりは無いのが疑問だ。


「わかりました。取り敢えず俺もメニューを頼みますね。ずっと話をしていて何も頼んでいませんし」


「そうね。私たちも席に座らせてもらって良いかしら?」


 ディアロたちの言葉に頷き、三人を椅子に座らせる。

 そして生徒会の二学年以上の者は、そういえばダイキも含めて四人とも一年生だということを思い出す。

 既にリィスへと奢ることは決めているから、ついでに他の三人も奢ることに決める。


「他の二人も奢るから好きなの決めても良いよ。リィスちゃんのついでだ」


 フィンの言葉にディアロたちは目を輝かせる。

 他人の金で食う飯は美味いからだ。


「ダイキも私たちが今日は奢ってあげるから好きなのを頼んで良いよ」


 そしてダイキにも伝え目を輝かせて注文を増やす。

 後輩たちが素直に飯を奢ってもらう姿に目を細めて生徒会の先輩は見ていた。

 年下に飯を奢って喜んでもらえると癒されるらしい。

 その光景を見ていた他の者たちも生徒会のメンバーたちを羨ましそうな眼で見ていた。



「ところでディアロ君。大将に選ばれているけど緊張していない?」


「試合に出ることになっても敗けろと言われているので、どうでも良いです」


 フィンの疑問にディアロは不機嫌そうに即答する。

 当たり前だ。

 誰だって普通は負けたくなんてない。

 相手にも手を抜くなんて失礼だと思ってしまう。


「それはどういうことだ」


 生徒会のメンバーたちが顔を逸らしレイたちも不機嫌になっている姿に聞こえていた他校の生徒たちもそれは事実なのだ察する。

 だが相手はコンバット学校の生徒であり世界大会の常連だ。

 負け続けている自分達が何を言っても無駄だと考えている。


 それなのに一人だけ他校の生徒なのにそのことに物申す者がいた。

 突然のことに誰だとリィスたちは視線を向ける。

 赤の他人だからか視線は厳しい。

 そしてディアロは自分の助けになるかもと期待の視線を向ける。


「たしかに俺たちはお前たちから見て弱いかもしれないが、それでも手を抜かれるのは礼儀としてどうなんだ?」


 目の前の男に何も言えなくなるフィン。

 余計なことを話してしまったことに後悔するが同時に星抜き戦に当たったら遅かれ早かれバレていた。


「それは………」


「そうだ!」


 何か言い訳をしようとしていたフィンの言葉を遮るようにディアロが大声を出す。


「学校が敗けそうになったら俺も本気を出さないといけないので皆さん、頑張ってください!」


 ディアロの言葉に確かにそうすれば問題ないと他校の生徒たちも思う。

 同時に舐められていると敵意を出し戦意を燃やす。


「ディアロ君は彼らが私たちに勝てると思っているのかい?」


 何となくフィンはディアロに対して君を引き出すことが出来るのかと疑問を持つ。

 もしかして今年は実力者がいるかもしれないと思い、ディアロなら見抜けるかもしれないと考えての疑問だ。


「無理ですね」


 良い笑顔でディアロはフィンに告げる。

 その笑顔と言葉に他校の生徒たちは怒りを向け、そして強制的に黙らされた。


 黙らしたのはディアロから感じるプレッシャー。

 それだけ黙ってしまい何も言わなくなった姿にディアロはため息を吐いた。


「つまらない」


 大会が終わりディアロは大会の感想として、つまらないと口にする。

 それを聞いた同じ学校の者たちは、それもそうだろうなと苦笑していた。


「結局、ディアロ様は何もこの大会で何もしていませんからね!情報はある程度隠せたと思います!」


 リィスの意見には教師も他の皆も頷いていた。

 事前に言っていた試合に出るとしても敗けろという指示に従ってくれて安堵する。


「そうだね。お陰で次の大会でも有利に動けそうだ。………次の大会ではディアロ君も戦えるんでしたっけ」


「あぁ。確か大丈夫だったはずだ。ディアロも次からは暴れていいぞ……?」


 その言葉にディアロは両手を上げてガッツポーズを作り喜ぶ。

 その姿に教師だけではなく全員が驚いてしまう。


「ディアロ、そんなに暇だったの?」


「当り前だろ?ただ来ただけでやることは無かったんだから。試合に出ることはあったけど情報が出来るだけ隠したいってことで直ぐにリタイアしたし。強そうな者もいなかった」


 ディアロの言葉には何も言えない。

 星抜き戦や集団戦では試合に出たがディアロだけは何もせずにリタイアしていた。

 これでもし勝ち進めないとなるとディアロも戦えたのだが、その様子は一切なく理不尽にも相手を恨む。


「取り敢えずは次の大会から大丈夫のはずだから、な?」


 教師の言葉にディアロは頷く。

 これで次の大会でも出番がなければ暴れてやると考えていた。




「くそ………」


 大会会場に残っていたほとんどの生徒たちは結局、ディアロを本気にさせることが出来なかったことに悔しく思い地面に拳を叩きつけていた。

 夕食を食べる時間、ディアロが戦うのを止められていることを聞いた日。

 ほとんどの学校の生徒たちがいた。

 そして、その場にいなかったとしても他のその場にいた学校の生徒から話を聞き舐められていると感じた者がほとんどだ。


 それならディアロを本気に出させざるを得ない状況にしてやると意気込むが結果は引きずり出すことも出来ずに敗北してしまった。

 優勝へと近づくたびに学校の垣根を越えて協力していったのに阻むことも出来ずに蹂躙される。

 学校の中でも特に強く選ばれたことに自信を持っていたのに、それすらも粉々にされてしまった。


「うーん……」


 それを見て一人の男が悩み声を上げる。


「どうしましたか?会長」


 男は県の武闘会会長だった。

 戦いが人気のこの世界で、自分達が住む地域の者たちを強くする役目がある。


「いやコンバット学校一強だと思ってね」


「それは確かに……」


 少しづつだが他の学校が協力していってもコンバット学校に勝つことは敵わなかった。

 それどころか一人だけ情報をほとんど隠して勝っていった。


「このままコンバット学校が一強だと詰まらないと思うんだよ。どうにかして他の学校も強化しないと。このままだと全体的には弱いままなんじゃないか?」


「そうなんですか?」


 会長の言葉に秘書はたしかにコンバット学校は強すぎるが他の学校も強いんじゃないかと思っている。

 あくまでもコンバット学校が強すぎるせいで比較にされて弱いように見えるだけだと考えていた。


「うん。多分、他の地域で戦わせても上位には入らないと思う。……普通は互いに競い合って強くなるはずなのに、なんでこの環境でコンバット学校は強さを維持しているんだ?」


 まさかコンバット学校以外の学校が他の地域では上位にも入れないという会長の指摘に秘書は信じられない気持ちになる。

 ちなみに秘書は信じられない気持ちになっても間違いだとは思えなかった。

 一地域とはいえ会長に選ばれた者が見誤る目を持っているとは思えなかった。


「そうなんですか……。もしかしてコンバット学校が強いのは周りの学校を見限って校内で激しく競い合っているのかもしれませんね。それで世界大会常連の実力を維持できているのかも」


「………」


 有り得そうだと思えるし、同時に無理だろうとも思う。

 それが出来るとしても、どれだけ激しく校内で競い合っているのか疑問だ。


「地域の強化合宿だとしてもコンバット学校を誘わないのは問題だし。来ても差は縮まらないだろうし、どうするかね?」


「そうですね。今度、こちら側から見学に行って、どう鍛えているのか勉強しに行きますか?それとも地域の皆を強くすることを優先して差を縮めるよりも頭を下げて鍛えてもらいますか?」


 秘書の言葉に地域に住んでいる皆を強くする義務を思い出す会長。

 その意見に賛同しようと考えるが自分のライバルになる学校を鍛えるか疑問だ。

 それでも良い意見だし頭を下げても実行して欲しいと思う。


「そうだね。地域の皆を強くする義務があるんだ。せっとくして彼らに鍛えてもらおう。教えることで理解が深まってさらに強くなるかもしれないと言えば納得するかもしれないし。それに、もしかしたらライバルがいなくて張り合いが無いだろうから、あっさり認めてもらえるかもしれない」


 秘書も会長の意見に同意する。

 そして説得の際には自分も協力しようと決意していた。

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