九話
「おぉぉぉぉぉ!!」
今も戦っているルーに良いところを見せたいと絶望していた男たちは『這い出て来た黒い何か』に挑む。
何よりも女の子だけが戦っていて男である自分たちが絶望して見ているだけなのは情けなく感じていた。
「はぁ……」
そんな男子たちに女子たちは呆れてしまう。
先程まで絶望していたくせに今ではそんなことは知らんと言わんばかりに挑んでいる。
その姿に最初からできなかったのか疑問だ。
「ルー!俺たちが隙を作るから、一発ドでかいの頼む!」
エストはルーにそう言って『這い出て来た黒い何か』に魔法で攻撃して牽制していく。
その行動に邪魔だと思っていた相手が自分の助けになっていることに驚きながらエストは頷いて構える。
「オラオラオラ!!」
普段では絶対にしない声を上げてエストは『這い出て来た黒い何か』に魔法を撃ちこんでいく。
「あぁぁぁぁぁ!!」
「死ねぇぇぇぇ!!」
エストだけではない。
男も女も関係なく普段の姿からは予想できない声を上げて『這い出て来た黒い何か』に攻撃していた。
その姿に多くの者が一瞬だけ驚き、そして『這い出て来た黒い何か』に意識を集中させる。
普段の姿と違うなんて今はどうでも良かった。
「………」
『這い出て来た黒い何か』は攻撃を受けても何も言わない。
普通は獣でも攻撃を受ければ悲鳴を上げるはずなのに、そんな様子は一切ない。
それが余計に不気味に思えてしまう。
「………」
エストの正確かつ凄まじい速度の攻撃に『這い出て来た黒い何か』は何も出来なくなっているように見える。
それが自分たちの有利だと思ってしまいエストたちは調子に乗ってしまう。
自分達なら『這い出て来た黒い何か』に勝てると思ってしまっていた。
「…………いける!!」
そして絶好のチャンスだとルーも想い力を蓄えた自分の中で最高の一撃を放とうとする。
それはネストと一緒に訓練している途中に身についた技だ。
ネストとの思い出が詰まった技で『這い出て来た黒い何か』に復讐しようと考えていた。
それは単純に突撃槍を構えて突撃するだけだ。
だが相手に避けられることもカウンターをされることも考えない諸刃の技だ。
それだけに威力がとてつもなく高くなるし避けられることすらも困難な技となる。
そして、その技を『這い出て来た黒い何か』に使った。
その技の威力を知っているエストはそれで勝ったと思ってしまう。
相手は燃え上がり爆発したバスの中にいても無傷だった化け物なのにだ。
普通の者の攻撃では傷つくはずが無い。
たとえ、それが学校で特に強いと選ばれた代表者でも同じだ。
「…………」
そしてルーの最大の攻撃は『這い出て来た黒い何か』に正面から簡単に掴まれる。
「え?」
そして『這い出て来た黒い何か』は黒い触手のようなものを伸ばしルーの頭に振り払い首から上を弾き飛ばす。
そのせいで首から上の部分からは血が噴水のように噴き出す。
死者が出ている中で最初から今まで戦っていたルーがそれで死んでしまったことに生き残っていた者はまた絶望してしまった。
そして何人かは地面に膝をついて逃げることも倒すことも諦めてしまっている。
ルーだけが生き残っていた者たちの中で唯一の希望だった。
それが失ってしまった結果が絶望し生きることを諦めてしまった者たちだ。
「…………」
そんな生きることを諦めてしまった者たちの一人に『這い出て来た黒い何か』は近づいていく。
諦めてしまった者は殺されると分かっていても逃げることはしなかった。
むしろ『這い出て来た黒い何か』にさっさと終わらせてほしいと視線を向けている。
「あ………」
最初に殺される諦めた者が最後に見たのは視界一面にあまりにも濁っている黒い何か一色だった。
その一瞬後に首に痛みが奔る。
そして視界に映っていた濁っている黒い色から純粋な黒へと変わり意識が消えていった。
「…………」
あっさりと仲間が殺されたことに、誰もが何も言えなかった。
ただ一瞬で首が刎ね飛ばされることに痛みも少しで済みそうだと安心する。
死ぬのは覚悟をしていたが激しい痛みに長く襲われるのは嫌だった。
「………」
そう考えていると、また一人の首が刎ね飛ばされている。
一人一人殺していく気なのかと考え悪趣味だと思ってしまう。
どうせなら一気に全員の首を刎ね飛ばせばよかった。
そうすれば何時殺されるのかと考えることも無かった。
一人一人殺されていくのを見ているせいで少しずつ死への恐怖が思い出していく。
ここから逃げたいと思い、そしてどうやっても逃げられないことを思い出す。
痛みも一瞬であることを祈り殺されるのを待っていた。
「………」
そして今『這い出て来た黒い何か』が目の前に現れる。
やっとこの恐怖も終わるのかと思い安堵したかのような表情を『這い出て来た黒い何か』の前に見せていた。
「………」
『這い出て来た黒い何か』は安堵したかの表情を見せられるが何も疑問にも思わず首を刎ねる。
ただ単純に『這い出て来た黒い何か』は自分の持ち主が憎んでいた者を殺しただけだ。
それも終わった以上、他に何か行動する気は無かった。
「くそっ!!どうしてたどり着けない!!」
バスが燃え上がる炎。
そして爆発した際の音。
学校の中にいなくても何か起きたのだと気づいている者は当然いる。
そして警察へと連絡した者もだ。
だが学校の中に入ることは出来ず、何度も学校の中に一歩入ると別の出入り口に出てしまう。
目の前で火災が起きて事件性があるのに中に入れないのは警察として認められなかった。
「何で学校の中に入れないんだ!もう一回だ!!」
そして、もう一度試してみると今度は中に入ることが出来た。
どうして中に入れたのか理解できないが警察の一人は炎が燃え上がっている場所へと走って向かう。
そこには彼以外にも突入しようとした仲間たち、そして消防官などもいた。
「…………」
彼らが集まった中心には『這い出て来た黒い何か』がいた。
その周りには、この学校の生徒やその家族、そして教師の死体が積み重なっていた。
「「「うぼぇ……」」」
消防官や何人かの警察官はそれを見て吐く者も出てきた。
吐いていない者も血なまぐさい匂いに不快な表情を見せる。
「何なんだアレは……?」
『這い出て来た黒い何か』は全く人に見えない姿をしていることもあり、それぞれが武器を向けて警戒をする。
状況からして、これだけの死体を作ったのは目の前の化け物だと判断できたからだ。
そして同時にたった一体でこれだけの惨劇を生み出したことに恐怖を覚えてしまう。
抑え込めるのか、それとも勝てるのかも分からずにただ武器を構えて怯えていた。
初めて見る生き物でもあるのだ。
他にもいないか、どんな生態をしているのか調べる必要はある。
「…………」
そして『這い出て来た黒い何か』は警察官たちの前で体がボロボロと崩れ落ちていく。
目の前の惨劇を繰り出した存在が自分達が何もしなくても崩れていくことに警察官たちや消防官は呆然としてしまう。
詳しく調べて似たような事件は起きないようにしないといけないのに、それさえも出来ない。
そのことに気付いた警察官の一人は急いで『這い出て来た黒い何か』がいた場所に駆け寄っても既に何もなくなっていた。
残っているのは学校の関係者の死体だけだった。
「…………どういうこと?」
事件があってここまで来たのに最後は目の前で犯人らしき者は死んでしまった。
何も手掛かりがつかめないのかと警察官たちは悔しくなる。
「………申し訳ありませんが消防官として消火活動だけはして良いでしょうか?このままだと他に燃え移りそうで怖いので」
そして消防官も急にボロボロに崩れ落ちた『這い出て来た黒い何か』に恐怖を覚えながらも消火活動の許可を警察官に求める。
それには警察官たちも頷き頭を下げてお願いをしている。
死体にも火がこれ以上、燃え広がるのは嫌だった。
「………あの黒い化け物は何だと思う?」
消防官が消火活動を行っている中、警察官たちは集まって『這い出て来た黒い何か』について話し合う。
「新種の魔獣とかでしょうか?」
一人の意見に全員が微妙な顔をする。
たしかに魔法の影響で普通の生き物とは違う特徴を持った生き物、魔獣もいる。
有り得ると思うが、それでも学校に着くまでに誰にも見られなかったこと。
そしてまるで魔獣が学校の関係者を殺しつくすまで邪魔されないようにされていたこと。
それらが新種の魔獣だとしても野生だとは思えなかった。
「もしそうだとしてもやっていることが野生ではありえないよな。明らかに人手が加わっている感じがする」
野生の魔獣が逃げられない様に、邪魔をされないようにするなんて聞いたこともないし考える知能があるとは思えない。
そして目的を達したら勝手に崩れ落ちた姿に本当に魔獣であるかも疑ってしまう。
「もしかしたら魔獣でないのかもしれないな」
魔獣も所詮は生き物なのだ。
目的を達したら勝手に崩れ落ちて消えてなくなるなんて普通は有り得ない。
もしかしたら魔法なんじゃないかと疑ってしまう。
「有り得るな。いくら魔獣でも確認されているのは元の生物の特徴がかなり残っている。なのに黒い化け物はいろんな生物の特徴はあったが、どれか分からなかった」
何よりも姿が一定せずに色んな姿に変わっていった。
そんな生物は普通は存在しないと考えるから魔法だったんじゃないかと考えてしまう。
目的を達したら証拠を残さないように勝手に崩れ落ちるなんてお伽噺の魔法みたいに便利だ。
「そうですね。あと、まるで挑発しているみたいですね」
その言葉に全員の視線を集める。
それに怯えながらも説明を続けていく。
「いや、だって。全てが終わった後に見せつけるようにボロボロに崩れ落ちて消えたんですよ?まるで私たちでは何も出来ないと挑発しているみたいじゃないですか?」
その言葉に最後の光景を思い出して警察官は怒りが湧く。
たしかに言うとおりだった。
明らかに狙って警察官の前で証拠が見つからない様に消えてなくなる。
嫌がらせとしか思えない。
そしてやはりこんなことが考え着くのは野生では無理だと判断できてしまう。
犯人が別にいると推測され捜索されることになった。
「なぁ、ちょっと良いか?」
後日、復讐相談事務所という変な名前の事務所を探している部署の者に話しかけられた。
「どうしたんだ?」
「お前たちの探している犯人だが俺たちも一緒に探して良いか?もしかしたら俺たちの探している奴と同じかもしれない」
復讐相談事務所を探してる部署のサースにそんなことを言われて困惑してしまう。
彼からすれば探している相手が同じだということが信じられなかった。
「お前も俺たちの捜査している相手の資料を見ればわかってくれるはずだ………」
それが分かったのか自分達の部署へと案内しようとしているサースに付いて行く。
未だに信じ切ることは出来ないがそれが事実だとしたら相手を捜査するのに協力する必要があった。
「これが、その資料だ」
サースに見せてもらった資料は三十センチ以上に積み重なっている紙が大量にあった。
こんなに資料があるのに自分達に協力を求めてきていることに本当に自分達が必要なのか疑問に思う。
「それらは全て詳細な違いはあるが同じ内容の事件だ」
その言葉に資料を見ていくが確かに同じだった。
虐げられていた者が、自分を虐げていた者に復讐し、そして自分も復讐した相手と同じように怪我を負ってしまっている。
中には死んだ者もおり被害者加害者関係なくに全員が被害にあっていた。
「なんだこれ………」
「俺たちはその事件の生きている復讐者たち全員から同じ事務所の名前を聞いた」
「それが……」
「そう、復讐相談事務所だ」
これだけの事件を起こしていることに背筋が冷えてしまう。
本当に同じ人間なのか疑ってしまう。
「それでお前たちの学校を調べていたが虐めがあったらしい」
資料には絶対に虐めなどの復讐者がいた。
そしてサースからはロールド学校でも虐めがあったらしい。
その復讐として殺されたのだとこの事件の資料と関連して考えてしまう。
「一度、学校で虐めがあったか………。無理か、当事者は全員死んでしまっている。ん……?」
何で学校という閉鎖された世界で虐めがあったのだとサースたちが知ることが出来たのか疑問を覚える。
「何で虐めがあると知っているんだ?」
「死んだ生徒のスマホを調べていたネストって子の裸にされたりしている画像を見つけたんだよ……。しれで多分、虐められていたんだなって……」
裸の生徒の画像がスマホにあったと聞いて何も言えなくなる。
おそらくは男子の全裸姿なのだろうと想像できるが、そんなものをスマホに残す気持ちが分からなかった。
犯罪になるが女子の裸なら、まだ気持ちは分かった。
それとも女子のスマホなのだろうか?
「しかも男子女子両方のスマホに同じ写真があってな……。さらに調べてみたら同じクラスらしき者たちは全員が持っていた」
その言葉に思わず真顔になってしまう。
ある意味愛されていると考えるべきなのかもしれない。
普通は虐めている相手の写真を一人残らず持っているはずが無い。
「話は戻すが虐められていた上に裸の写真を撮られるという弱みを握られているからネストは復讐する理由は十分あると俺は考えている」
ネストの裸の写真をクラスメイト全員が持っているということに意識を飛ばしてしまったが、サースの言葉に意識を取り戻してから確かにと考える。
自分が同じ立場になったら絶望もするし、同時になんとか自分の恥ずかしい写真を消してしまいたいと思う。
その為なら何でもやるかもしれない。
そして、そこまで考えて背筋が凍る。
それをネストという子も考えた結果が現在のロールド学校なんじゃないかと。
「相手の手にあるモノを奪うには殺した方が手っ取り早いと思ったのかもしれないな。……あと屈辱的な写真を撮った復讐かな」
警察なのに人を殺した理由に納得してしまった。
たしかに、それなら感情的になってもおかしくはない。
だからと言って許すことは無い。
何故なら無関係であるはずの者を多く殺している。
決して許されることでは無い。
「…………まだネスト君と復讐相談事務所が繋がっていた証拠は無いんだよな?」
「あぁ。だからこそ一緒に協力して探して欲しい。家族は死んだとしても近所の人は何か変化がなかったか知っているはずだ」
サースの頼みに頷く。
目の前で重なっている復讐相談事務所が関わっている事件。
ネストも関わっただろう証拠を集めれば少しでも復讐相談事務所に近づけるはずだ。
そうすれば、この山のように重なった資料がこれ以上増えることも無くなる。
「今度からはそちらの部署と協力することが多くなるだろうが、よろしく頼む」
「こちらこそ。頼りにさせてもらう」
互いに警察として、これ以上の被害を増やさないために手を結ぶ。
今回の件だけで百人を超える被害が生まれたのだ。
これから更に規模が大きくなってもおかしくない。
一番、手っ取り早いのは復讐相談事務所を見つけて、そこで働いている者たちを見つけること。
路地裏にあるという情報は掴んでいる。
更に人員を増やして探すことが出来ることにサースはこれで見つけられるかもしれないと嬉しくなっていた。
「全員、話を聞いてくれ!」
サースが自分の所属する部署全体に聞こえるように声を出すと注目がサースに集まる。
そのことに気を良くして話し始める。
「今日から別の部署も協力してくれることになった。仲良く復讐相談事務所を捜索するように」
サースの言葉に有難いと言う気持ちが沸き上がる。
満面の笑みを浮かべている者もおり、自分達だけでは探すのも大変なのだろうと推測できてしまう。
「それで何処と協力することになったんですか?」
「ガサレのところとだ。どうも俺たちの探している相手が起こした事件に関わってしまったみたいだ」
また復讐相談事務所による事件が起きたかと理解してしまう。
そして自分達が見つけられないから被害が出たのだと悔しくなる。
「ハッキリ言って俺たちだけじゃ見つけれない。だから同じ事件に関わったとして協力してもらおうと考えた。何か不満はあるか?」
「いえ、ありません!」
トーカを代表として全員が頷く。
自分達だけでは見つからないのだ。
なら他の部署からも力を借りたかった。
それに何故か復讐相談事務所に入っていく者を見つけることも出来ない。
復讐相談事務所を見つけるのがベストだが、そこに入る前に復讐者を止めることが出来れば事件も減るはずだ。
それなのに、どうしても復讐相談事務所どころか復讐者すら見つけることが出来ない。
人手が足りないから見逃してしまうんじゃないかと考えてしまう。
だから人が増えるのは賛成だった。
今までは人の数もあり徹夜は出来なかったが、これからは交代して見張ることが出来るかもしれない。
事件を事前に止めることができるなら是非ともお願いしたかった。
「そうか。それなら良かった」
相談せずに決めてしまったことでサースは少しだけ責められるかもしれないと思ったが全員が何もその件に関して言わないことに安堵していた。
「今から、これから協力する部署のところに言って良いでしょうか?折角だから顔合わせもしたいですし」
トーカの意見によい考えだとサースも頷く。
他の皆も頷いており不満は抱いてないらしい。
早速、ガサレの元へとサースの所属する部署は向かっていった。
「これからはサースの部署と一緒に事件の捜査をするぞ」
「「「は?」」」
サースの所属する部署と協力して操作すると聞いてカイドの部署に所属する者たちは正気かと疑ってしまう。
なぜらならサースの所属する部署は噂ではどんなベテラン刑事がいても全く見つけることが出来ない案件を抱いていると聞いている。
こちらの協力をする余裕があるのか疑問だ。
もしかして、どうしても見つからないから諦めているんじゃないかと疑ってしまう。
そうだとするのなら同じ警察官として許せなくなる。
「理由としてはコンバット学校で起きた事件だが、彼らが捜査している事件と同じ犯人の可能性がある」
「「「「…………」」」」
ガサレの言葉を聞いて納得よりも先に信じられない気持ちになってしまう。
同じ犯人の事件を引き当てるなんて偶然にもほどがある。
本当なのが疑問に思う。
「一応、それらしき証拠を見たが俺も同じ犯人じゃないかと思った。後で皆にも許可を貰ったらその資料を見せようと思う」
証拠があり見せてもらえるのなら文句は無い。
それに目の前の男が自分達の中でも優秀だと知っているから同じ事件の犯人だと思っているのなら、その可能性が高いとも考えている。
「それで何時から協力しあうことになるんだ?」
「できれば明日には顔合わせをして一緒に捜査してもらおうと思っている」
ガサレの言葉に頷き全員が気を引き締める。
少なくとも足を引っ張らない様にしようと考えていた。
「すいませんー。今大丈夫ですか?」
気を引き締めていると部屋の外から声を掛けられる。
それに返事をし扉を開けると何人もの数が部屋の前にいた。
「悪い。どうせなら今から顔合わせだけでもしようと言い出してな」
その中にはサースもいた。
さして更に来た理由も教えてもらい、とりあえず中に入ってもらう。
「顔合わせをするのなら明日じゃ……」
中に入ってきた者を見てガサレの所属する部署は驚く。
明日だと思っていたのが今日になっていたのだ。
どういことだとガサレを睨んでいる者たちもいる。
「俺も驚いているから睨まないでくれ……」
ガサレも本当に予想外だと言うが言い忘れたんじゃないかと、それでも睨んでしまう。
「取り敢えず今日は親交を深めるために一緒にどこか飲みに行かないか!?」
テンション高くして飲みに誘ってくるサースの部署にガサレの所属する部署の者たちは困惑する。
何でこんなにテンション高いのが疑問を抱く。
「まぁ、全然見つけることが出来ないからな。ストレスが溜まってしまうんだよ。毎日毎日、路地裏を歩いているのに復讐者も復讐相談事務所も見つけれず気付いたら復讐をしていく。そのせいで被害が増えていると思うと飲まないとやってられない……!」
思っている以上に犯人を捜査するのは辛くストレスも溜まるみたいだ。
そのことにガストたちは犯人を捜査することに覚悟をした。
「それじゃあカンパーイ!!」
サースとガストの所属している部署で親交を深めるために居酒屋で打ち上げを始める。
特にサースの所属している部署の者たちはテンションが高く酒を飲んでいた。
「くー!もう一杯!!」
サースの所属している部署の者たちは次々と酒を注ぎ飲んでいく。
そのペースはかなり早く、直ぐにでも酔いつぶれてしまいそうだ。
「………そんなにストレスを溜めているのか」
思わずガストはそんなサースの所属している部署の者たちを見てこぼしてしまう。
本当に酒でも飲まないとやってられないという姿には哀れにも思えてしまう。
「お前たちも同じ穴のムジナになると思うぞ。これから一緒に仕事をすることになるんだからな」
ガストの言葉が聞こえていたのかサースはガストの肩に手をまわして、これからのことを告げる。
見つけなくてはいけないのに全然見つからない捜索対象。
そのせいで増える被害者。
酒でも飲まないとやっていけなくなる。
「………そうか」
少し早まってしまったかとガストは考えてしまう。
警察官だから捜査する義務はあるが、それでも自分の身の方が大事だ。
だから同じようになると聞いて躊躇してしまった。
「ここで仕事の話をするのはアレだけど、とりあえず明日は資料の貸し出しで問題ないな?」
サースの確認にガストは頷く。
具体的な共通点を共通点を部署の皆も知りたがったから、むしろ好都合だと有難かった。
「なぁ、ところで復讐者の加害者はどんな奴らがいるんだ?」
「それって虐めのこと以外で、だよな?」
「そうそう」
ガストの質問にサースは少しだけ考える。
大雑把で見れば全員が虐められていたと言える。
だけどガストが聞きたいのは、詳しい内容だろう。
取り敢えず、印象に残っていたのを上げていく。
「まずはレイプ被害者だろ」
その言葉に女性たちがこちらに注目を集める。
「親の罪が子供に行ってしまって行動を起こした奴もいるな」
今度は子供を持つ親たちが視線を向ける。
「あとは普通に虐待や、もしかしたら過去の復讐として裏で手を回していた可能性もある。証拠は無いから個人の推測でしかないけど」
何でこいつら打ち上げの最中に仕事の話をしているんだと思いながら恐怖を覚えてしまう。
過去の覚えていない軽い虐めでも、やられた本人にとっては一生を引きずっているのかもしれない。
それを考えると恐怖で身体を震わせてしまう。
「………ある意味ではよくやったと言いたいこともやっているのよね」
よくやったと言いたいことと聞いてレイプ被害者のことだろうと考えつく。
たしかに、それは女性なら復讐として殺しても納得し助けようとする者もいるだろう。
それでも警察としては止めなければいけないが。
「なぁ、過去の復讐として裏で手をまわしたってどういうことだ?」
「そのまんまの意味だよ。一つだけ、おかしい事件があるんだ。復讐者がいるはずなのに捕まっていない事件が。他は復讐者も被害者も捕まっているのに、一つだけ復讐者が捕まっていない」
そんな事件があるのかとサースと同じ部署にいる者たちも考えてしまう。
どうも思い浮かばないようだ。
「え?どんな事件でも被害者も復讐者も捕まっているはずだけど、そんなのあったっけ?」
「多分だけどね」
勘違いしているのもしょうがないと思ってしまう。
その事件は子供が復讐者だと考えてもおかしくなく、そして死んでしまったのだから。
他の事件でも復讐者も被害に合っているからこそ事件としては終わったと考えてしまうのもしょうがない。
そして、これが事実だとしたら復讐者は利用されていただけで他の事件にも黒幕がいる可能性を考えなくてはならない。
ハッキリ言って調べることが多すぎて、他の部署が協力してくれることになっても人手が足りない。
何よりも自分一人だけの推測だけでしかないのだ。
勘違いの可能性も十分にあった。
「多分って事件を起こす事務所の関係者だろう?これからの被害を抑えるためには接触する必要があると思うんだけど……」
「なら今度一緒に行くか?なんかある意味凄い子だけど」
凄い子と聞いて首を傾げる。
どういうことかと視線で問うがサースは何も答えない。
まるで答えたくないと言わんばかりに目を逸らし続ける。
「それじゃあ私が行くー!!」
「ズルいぞ!俺も興味がある!」
酒を飲んでいたこともあり空気を変えようと声を張り上げる者たちもいる。
それならとサースは二人にその相手の写真を見せる。
「それじゃあ頼む。聞き取りだけをすれば良いから」
その写真には高校生ぐらいの女の子が写っていた。
「あれ?この制服ってコンバット学校の子じゃ?」
その制服を見て一人がどこの学校の子が言い当てる。
有名な学校の制服だし、この辺りの学校だから知っていても誰も疑問に思わない。
「そうだ。あと多分というか、ほとんどの確率で他の子も二人ほど一緒にいるから」
女の子が一人で行動していないという意味では好感を抱く警察官たち。
そのことはサースも同じはずだが、それでも何か言いづらそうに眼を逸らしていることに疑問を抱いた。




