九話
「うるせぇんだよ!本当は負けていた癖に!」
ディアロに心配してもらったことに喜んでいる崇拝派に排斥派は文句を叫ぶ。
「は?何を言っているんだ、お前ら?」
排斥派の文句に崇拝派は何を言っているんだと困惑する。
ディアロが助けたのはあくまでも死人が出てしまう可能性があったから。
勝敗何て関係ないし勝っていたのは、あくまでも崇拝派だと考えていた。
「何だよ、理解していないのか?本当なら排斥派が勝っていたのにディアロが邪魔をしてうやむやにしたんだろうが!?」
「あぁ!?」
排斥派の言葉に崇拝派は無視することが出来ない。
自分達が排斥派より下だと言われるのは、どうしても我慢できない。
「何、寝言を言っている!!ディアロ様が横槍を入れたのはあくまでも死者を出さないためにだ!ださなかったとしても崇拝派が勝っていた!!」
近くにいた排斥派の胸ぐらをつかんでにらみ合う。
自分達の方がより強いと言い合っている。
この時点で養護教諭は一人では止められないと応援を呼ぶために職員室へと向かい、リィスは黙ってみている。
このままいけば今度こそぶつかり合って排斥派はつぶれるかもしれない。
崇拝派もつぶれる可能性もあるが、ディアロを崇拝する同士でもご褒美をもらえる機会が少なくなることを天秤にかければ、つぶれる方に傾いてしまう。
「「「「…………!!」」」」
そして崇拝派と排斥派は互いに無言で殴り合う。
本当なら先程の試合で互いに対するフラストレーションなどは減らすつもりだったが、途中でディアロが死者を出さないためとはいえ横槍を入れたせいで減らず、そして決着を付けれなかったことに更に溜まってしまっていた。
相手の髪を引っ張り、相手のいたるところに噛みつき、押し倒して何度も殴っていく。
誰も魔法を使わず、学校で学んだ技を使わず、幼い子供のように本能のままに暴力をぶつけていく。
(へぇ……)
リィスはそれを見て感心する。
全員がやられている者は同じような姿になっていた。
そしてまだ倒れていない者は互いの身体を引っ張ったり押したりとして倒そうとしている。
(こうしてみると相手の上に乗って殴ることが本能的に刻まれているみたい)
相手の上にのしかかり優位に立ち、そしてその上から殴ることによって自分が上だと覚え込ませようとしているのかと考えてしまう。
そうだとしたら相手より上に立たなきゃ人は満足しない生き物だと考えてしまっていた。
「ふん!!」
だがその中に一人、相手を倒したのにのしかからず、そのまま自分達の味方の中でのしかかられている者を助けるために行動する者がいた。
その者はマウントを取っている敵を見つけると保健室にあった椅子を手に取りそれを武器に敵の頭へと叩きつける。
その際にした鈍い音に全員が手を止めて注目してしまう。
そして手に持っている椅子を見て隣に倒れている者を見て、全員が正気を取り戻す。
先程までは魔法も技も忘れて本能のままに暴れていたが、それらを思い出した。
特に先程までやられていた者たちが思い出して反撃に出る。
マウントを取られて殴られていた者たちは、それだけ相手が近くにいると何も考えずに魔法を撃つ。
そのせいで魔法が直撃した者は血を流して気絶し、躱したとしても自分以外の誰かに当たったり保健室の壁を壊していく。
「ごっ!!?」
「先生!?」
壊れた壁、もしくは魔法が保健室へと来た教師や生徒たちに直撃していく。
突然のことだったせいで誰もが反応できていなかった。
そして、その一瞬後に保健室からまばゆい光が溢れた。
「「「「「「………………」」」」」」
保健室の中が見えるようになったことに口を開けてしまう。
完全に教室の一つが壊れたことに、もとのディアロたちが使っていた教室が壊れたことも含めて頭を抱えたくなってしまう。
その上に保健室には数々の治療するための道具が置いてあるため、それが全て吹っ飛び仕事に使っていたパソコンも壊れて養護教諭は阿鼻叫喚となる。
そして保健室の中では血が飛び散っていた。
一人は口から血を流し、一人は何度も殴られたのか顔が酷く腫れている。
頭の髪の一部分が禿げている者もいれば、噛みちぎられたように骨が見えている者もいる。
以前、止めた時よりの惨状に吐いてしまう。
「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
そして保健室の中心では目が潰れた者と口が裂かれている者が互いに拳をぶつけあっている。
目が潰れた者は口の辺りを拳をぶつけ、口が裂かれた者は無事な方の眼へと拳をぶつける。
どちらも更に傷が深くなり痛みで悶絶したいはずなのにそれらを無視して更に拳をぶつけている。
「はっ!!止めないと!!」
その光景に圧倒されて思考が止まるが直ぐに再起動して止めるように動き出す。
どれだけ狂気的でも保健室にいる者たちは気絶しているか暴れているかだ。
そして暴れている者たちも既に体はボロボロだ。
圧倒されていなければ簡単に封じ込めるだろうと考えて保健室の中へと挑んでいった。
崇拝派と排斥派の争いは警察が来てから、ようやく終わった。
保健室が輝き爆発したのが学校の近所から通報してもらったお陰で警察も直ぐに学校まで来れた。
「っ~!」
当然ながら警察官が学校まで来るのに時間がかかる。
それなのに警察官が来るまでボロボロになった崇拝派と排斥派を教師と生徒たちは取り押さえることが出来なかった。
「くそっ!精神は肉体を凌駕するのは長年の経験から知っていたが……」
「はぁ……。はぁ………」
生徒と教師は取り押さえようとして何もできなかった。
身体を取り押さえようとしてもことごとく躱され、戦いの邪魔だと言わんばかりに反撃された。
しかも片方ずつではなく途中から息の合った連携だった。
「一体、何があったんですか?」
協力してくれた警察官がいなかったら取り押さえることは出来なかっただろう。
そんな考えもあるから素直に答える。
といっても何で殺し合っていたのかは教師たちも知らない。
「申し訳ありません。何で殺し合っていたのかは私たちも分からないんです……。一体、何があったんだか……」
「あっ、それなら今日の試合で横槍を入れてなければ自分達が勝ってたという言い合いですよ。途中まで私も見ていて一人では止められないと見ていましたし」
養護教諭の言葉に事前に止められなかったのかと睨まれるが慌てて言い訳をする。
「すいませんが無理です!一人や二人抑えられてもそれ以上は出来ません!先に先生方を急いで呼んで協力してもらった方が確実に全員を抑えられると思ったんです!!」
養護教諭の言葉には警察官も教師たちも納得する。
確かに暴れていた者たちは一人や二人だけではない。
二桁はおり一人では止められなかっただろう。
取り押さえるために協力者を求めようとするのは間違っていない。
「そうですね。確かにそうでした」
事実として教師と共に保健室に戻ってきたし、教師と一緒に取り押さえようとしていたのは警察官たちも目撃している。
逃げたわけでは無いと理解しているからか簡単に納得していた。
「それにしても何でこの者たちは学生なのにここまで憎しみ合って殺し合っているのか?ハッキリ言って試合で横槍を入れられて決着を付けたかったからって、おかしくありませんか?」
警察官の疑問に教師たちも何も言えない。
それは教師たちも分かっているのだ。
そもそも横槍を入れたのだって死者を出さないようにするためだったのに完全に意味がなくなっている。
ディアロもこの結果を聞いたら横槍を入れた意味がないと頭を抱えてしまいそうだ。
「あの……?」
何でこんなことになったのか悩む教師と警察官たちに養護教諭は声を掛ける。
悩むのは良いが、それよりもするべきことがある。
「取り敢えずは救急車などを呼びませんか?それと応急処置をしたいんですが手が足りないので協力してください」
養護教諭の言葉に血だらけで倒れている生徒の姿を思い出す。
そして文句を言うことなく養護教諭の指示に従った。
「ふぅ……」
「すいません。早速何ですが確認させてもらって良いですか?」
全員を病院に運び込み一息ついて教師へと警察官が話しかける。
おそらくは詳しいことを聞こうとしているのだろうと想像がついて頷く。
自分も誰かに話して状況を理解したかったと頷く。
「まずは発端となったディアロ君のことなんですが」
ディアロと聞いて教師はそういえばと思い出す。
崇拝派も排斥派もディアロに関してだったと。
崇拝派はディアロの実力に憧れ、排斥派はディアロがレイと付き合っていることが原因で生まれたことを。
排斥派に関してはそれだけでなく、ディアロのやり過ぎが原因も加わっていた。
教師からすれば単純な実力差で心が折れるのなら将来的にもいずれ折れていたからと不満は何もない。
「彼は排斥派と崇拝派に対して何か不満を口にしていたりした様子はありませんでしたか?」
「………少しはあったような気がしますけど、基本的に無視をしていましたね」
崇拝派は少し行き過ぎのような気もするが好かれてはいるから不満を口にしていても悪くは思ってなかったのが分かる。
そして排斥派に関しては嫌がらせで被害があってもクラスメイト達が助けてくれたりしていたから不満も少ない。
「なるほど。ディアロ君は少なくともクラスメイトから好かれていて嫌がらせに関しても気にしていないと……」
そのことを伝えると警察官も何度も首を縦に振って納得しているようだった。
「ちなみにディアロ君が横槍を入れた件ですが、死者を出さないためというのは教師である貴方もそう思いますか?」
「えぇ?そうですね。死者が出る可能性は普通にあったと思います」
先程からディアロについて質問してくる警察官。
ディアロが狙ってこの状況を生み出したのかと思っているのかと疑ってしまう。
「あの?自分を慕ってくれている者たちも一緒に巻き込んで、こんな状況を生み出すとは私にはとても思わないんですが?ディアロが後ろから手を引いていると思っているんですか?」
ディアロを疑っていることがバレて警察官は冷や汗を流す。
これは何で疑っているのが話さないと信用されないな、とため息を吐いてしまった。
「申し訳ありません。実は最近、復讐相談事務所というところから復讐のために力を貸してもらえると聞いて、排斥派のこともあって怪しく思ったんです」
警察官から説明をされたが、それでも納得できない。
ディアロなら力を借りなくても一人で復讐できる力を持っている。
現にディアロは一人で敵意を持った者たちを叩きのめす実力を持っている。
「ディアロ君が他人の力を借りるとは思えないし、必要ないとも私は思うんですが?」
「そう申されましても、私は彼のことを知っているわけではありませんし、確認をする必要があったと理解してください」
教師の不満に警察官は理解してもらおうと説得する。
しょうがないのだろう。
調べないといけない相手は最初は何も知らない相手なのだ。
不快に思われても確認する必要がある。
そして教師もこれ以上、不満を述べても警察官も仕事だからと無理矢理にでも納得しようとした。
「わかりました。ついでにそちらはディアロ君が狙ったとは思っているんですか?」
「いいえ?」
そう考えているのなら教師として否定しなきゃいけないと考えていたら、思ったのと違う反応が返ってきた。
以外そうにしている教師に警察官は苦笑する。
警察官として調べる必要があるだけで狙ったとは思っていない。
「以外そうにしていますが、これは確認のための調査ですよ?私としても聞いたディアロ君の実力から復讐相談事務所から力を借りる必要は無いと思いますし。それに相手もしていないと聞いたので狙って起こしたわけでも無いと思っています」
警察官の言葉に教師は気が抜けたように息を吐く。
それで本当に確認のために聞いているのだと理解する。
「他にもリィスさんやレイさんについても確認したいんですが、大丈夫ですか?」
そして出された名前は最近、特にディアロと一緒にいる者たち。
確認のためだと言っているが本当は怪しんでいるんじゃないかと再び疑ってしまう。
だが、ここで文句を言っても変わらない。
あくまでも確認のためだと自らに言い聞かせて教師は答えていった。
「ありがとうございます。これで確認したいことが確認できました」
警察官はそう言うが教師は複雑だった。
ディアロは何もしていないが、リィスやレイに関しては排斥派に敵意を持っていることが簡単に想像できてしまった。
自分の恋人に悪意をぶつけられているのに、その相手を許しているはずがない。
むしろ敵意をぶつけているだろうと簡単に考えられた。
「…………うぅん。取り敢えずリィスさんやレイさんは崇拝派と排斥派に関わっていないんですよね?」
なぜか同じ質問をする警察官に教師は頷く。
何か気になることでもあったのだろうか、と口にする。
「もし隠れてでも接触していないなら、この二人も無関係ですね。誘導するにしても、まずは接触する必要がありますし」
誘導すると聞いて、それもそうだと教師も頷く。
排斥派に敵意を持っていたが接触していない。
同時に崇拝派にもだ。
特にリィスは崇拝派なのにディアロの近くにいるからか崇拝派たちに近づいてすらいなかった。
「それにしてもレイさんもディアロ君も影響力が強いですね。ただ強いから恋人の容姿が優れているからってだけで、ここまで人が動くのは初めてですよ」
「それは……たしかに」
たまに教師から見ても釣り合わない二人が恋人同士になっているのを見たことがあるが、それでも嫌がらせや嫉妬で攻撃するところは、あまり見たことが無い。
あっても相手と釣り合わないからやめた方が良いとかの忠告や苦言がほとんどだ。
「申し訳ありませんが、これからディアロ君のことを注意してもらって良いですか?彼が中心になって事件が引き起こされてもおかしくないので」
「そうですね……。わかりました、出来る限り気を配って行こうと思います」
ディアロの影響力を考えて警察官の頼みを引き受ける教師。
今回の事件が起きたのはディアロの影響力かもしれないと考えている。
もしレイがディアロ以外を恋人にしていなかったら起きなかった気がするし、レイ以外を恋人にしても起きていた気がしている。
何せ崇拝派も排斥派もディアロへと強く意識している。
特に排斥派は最初はレイと恋人だということで嫌っていた癖に、今はレイのことなんてほとんど忘れているようにしか見えない。
両派閥ともベクトルは違うだけで同じぐらいディアロのことしか目に入っていない。
「それにしても復讐相談事務所ですか………」
「信じられませんか?この学校でも三人の女子生徒と彼女たちに暴行を加えた生徒、そしてその親。彼らにも関わっているのですが」
「いえ。単純に何で復讐なんて後押しするのか気になっているだけです。どんな環境で生きていけばそんなことになるのか………」
そんなことを言う教師に警察官は肩を強く掴む。
肩を掴む強さと圧に教師は後ずさろうとする。
「理解しようとしても無駄ですのでやめてください。貴方達はただ犯罪者が捕まるのを祈っていてください」
復讐相談事務所を犯罪者と警察官は称す。
そして知ってもどうせ理解できないと調べることを否定した。
「何があったの?」
「どうやら学校で殺し合っていたみたい」
「殺し合いって………」
「だから色んな病院に分けて入院させているみたいよ。学校でも保健室を壊したみたいだし、それを防ぐためらしいわ」
何で学校に通っている子供たちが殺し合っているのか理解が出来ずに首を傾げてしまう。
怪我の具合を見たが骨がむき出しになったら肉がえぐれていたりと、こんな怪我なんてめったに見ない。
どれだけ激しく殺し合ったのが想像がつき、同時に何でそこまで憎み合うのか想像が出来なかった。
「くっそ……」
意識を取り戻して排斥派の一人は悔し気に呟く。
動かせる範囲で周りを確認するが見つけたのは病院で働いている者たちと同じ排斥派の者が一人。
病院に運ばれたから同じ病室に一緒にいるかもしれないと想像したが、そんなことは無かったようだ。
「最後にあいつらが来なかったら勝ってたかもしれないのに……」
いまだに教師が来なかったら勝ててたと根拠もなく思っている。
実際には互角だったのに、どこからその自信が来るのかわからない。
「たしかにな……」
そして目を覚ましたのか近くにいた排斥派も頷く。
「何でディアロも他の奴らも途中で邪魔をするんだ。おかげで勝てるのも勝てない」
その意見に深く頷く排斥派たち。
ギリギリの勝負で同じことをされたら勝てるのも勝てなくなると不満を持つ。
「なぁ、お前はディアロのどこが一番、嫌いだ?俺は何人も心を折って夢を諦めさせた癖にレイさん付き合っているのが腹立つ」
何人もディアロに挑み、そして見て自分ではあそこまで強くなれないと夢を諦めた者が多い。
それなのにディアロは自分には関係ないとレイと楽しく付き合っている。
何でフォローしてくれないんだと、何で他人の夢を壊して楽しそうにしているんだと思ってしまう。
「わかる。特に相手が自分より強いと理解させるまでわざと手を出さなかったり何度も何度も倒れた相手に蹴りをいれたり頭を地面に叩きつけたりとしているからな。心を折ろうとしているのは絶対にわざとだ」
互いの意見に頷く。
心を折り、夢を諦めさせる。
あんなのがいたら未来に希望が持てなくなる。
「なぁ、退院したらディアロを退学にする署名をもらわないか?今度こそ退学に賛成する者が多いかもしれないし」
「………どうだろうな。崇拝派も俺たちと同じくらいの人数がいるし。もしかしたら、ほとんどの生徒たちは中立派。こちらが何もしなかったら相手も何もしないと思っているんじゃないか?」
「それでも……」
「それに退学になって復讐しに来たらと考えて署名をしないかもしれない」
それは有り得ると思ってしまう。
やり過ぎるということは手加減が苦手だということだ。
退学した仕返しにと本人は軽くやったつもりでも実際には大怪我をさせるとか簡単に想像できてしまう。
「それもそうだな………」
「まぁ、たしかに退学された復讐をするかもしれないな」
退学するための署名のことに話しているとディアロの声が聞こえてきた。
慌てて振り向くと、そこにはディアロとレイがいた。
病室から見える外は既に暗い。
おそらくは既に夜だと考えれる。
「何で……?」
ここは二人以上はいる大部屋だ。
そして夜だということは、お見舞いなんて出来ないはず。
それなのにディアロたちがいることに困惑する。
「……!だ……!!!」
そして直ぐにここで大声を出せば病院で働いているスタッフが来てディアロに嫌がらせが出来ると考える。
一緒にいるレイは自分たいが庇って責任を減らせば良いと思い叫ぼうとするが寸前でディアロに口を抑えられる。
「騒ぐな」
強引に黙らせらて睨むが自分一人だけではないともう一人の排斥派を見る。
そこではレイが隣にいるのに絶望に泣いていた。
「私は貴方みたいな人なんて嫌い。だって心身共に弱いじゃない。ディアロに怯えて決して一人では立ち向かわない。最初は一人だったけど、それは一人だけだしディアロの実力を知らなかっただけ。正面からだと怖いから隠れて陰口を言う。ほら情けない。ディアロなら相手の数が多くても一人で立ち向かうわよ」
ディアロ一人に対して決して一人で立ち向かっていないことを言われて排斥派の者たちは心にダメージを負う。
そしてディアロが一人でコロシアムで多くの者を一度にボコボコにしてから、誰もディアロに一人で挑むことは無くなった。
部活でのアレも自分達が強くなるための組手でディアロを倒そうと挑んできたわけでは無い。
「それにしても崇拝派と殺し合って、そんなになったのか……。弱いなぁ」
俺なら無傷で倒せたと目の前の排斥派を煽るディアロ。
「黙れよ!先生たちが邪魔をしなかったら勝てた!!」
「勝てても、そんなにボロボロじゃあ結局俺より弱いだろ?諦めろよ、お前は一生俺に勝てない」
そんなことは無いと叫ぼうとする目の前の排斥派の首をディアロは絞めていく。
その顔は笑みを浮かべている。
「う……が…………」
首を絞められて苦しそうにしている排斥派はその顔を見て本気で殺そうとしていると理解する。
だがレイなら助けてくれるのではないかと視線を送るが、そこでは腕が垂れ下がって意識を失っているもう一人の排斥派とこちらを笑顔で見ているレイがいる。
それでレイはディアロと本性は同類だと理解する。
もう助からないと理解し排斥派は涙を流して気を失った。
「何でここまで怪我をしたんだ?ここら辺にそんな危ない場所があったかな?」
「先生、どうやら彼らは喧嘩でここまで怪我をしたみたいです」
「はい?」
「ですから喧嘩です」
喧嘩でここまで怪我をさせるのかと信じられない眼で見てしまう。
時代は変わるとはいえ自分達の時代でも怪我でここまでの怪我をしたとか聞いたことは無い。
あったとしても事故とか故意ではない。
「最近の子供たちは怖いね」
「まぁまぁ。どうやら彼らは自分達の尊敬している者たちのために戦ったみたいですし」
「それでも会話という手段があるのだから、そっちを使ってほしかったかな」
医者の言葉にスタッフは苦笑した。
「はぁ………」
「思った以上に強かったね……」
「うん……」
崇拝派の者たちは排斥派と戦って感想を言い合う。
ディアロの実力に恐怖し、レイという恋人がいることに嫉妬していた者たちとは思えないほど強かった。
「恋人がいるってことに嫉妬するような奴らの癖に何であんなに強かったんだろうね?」
「本当にね。レイと恋人になったことに嫉妬をするのは理解できるけど、その前に告白すらしなかった癖に何を考えているのかしら?」
告白すらしていない癖に立派に嫉妬をしている排斥派の者たちに呆れてしまう崇拝派たち。
せめて告白ぐらいはしろよと思ってしまう。
「告白すらしていない癖に嫉妬で攻撃するような者なんて付き合いたくないわね。そもそも意中の相手が別の者と付き合っているからって攻撃するなんて異常者でしょ」
「全くだよね。それにディアロ君が危険って言っていたけど、そもそも喧嘩を売らなければ良かったんだし」
基本的にディアロは喧嘩を買っているだけ。
そして喧嘩を買っているのも舐められないようにするためだ。
やり過ぎだとは思うが舐められないためにと考えるのなら、しょうがないとも思う。
普段から暴力を振るうのなら危険だとも思うが、ディアロは喧嘩を普段から売っていないから大丈夫だと考える。
「まぁ、やり過ぎだとは私も思うけどね」
「それは自分達の身を護るためじゃん」
「そうかもしれないけど偶に楽しそうに笑っているし」
「う……」
ディアロが力を振るっている時に楽しそうに笑っている姿を見ているから何も言えない。
つまらなそうな顔をしている時の方が多いが、楽しそうな顔も確かにしていた。
「まぁ、喧嘩を売らなければディアロも何もしないんだし。それに最近では組み手をして色んな部活の者たちを鍛えているみたいだしね。危険視する者は少ないんじゃない」
その言葉に頷こうとして――。
「そう言ってくれるとありがたいわね」
レイの声が聞こえてくる。
その声の下方向を振り向くとレイだけではなくディアロもいた。
「何で!?二人とも!?」
もう夜も遅い時間。
そして病室に入ったことにも気付かせずに二人はいた。
「安心してくれ。俺は基本的に喧嘩を売られない限り暴れるつもりはないから」
ディアロの言葉にそれなら危険視する者も少なくなると安心する。
もうディアロの実力は学校内で知れ渡った。
なら喧嘩を売る者も減るはずだ。
それでも喧嘩を売るのなら大バカ者か強くなりたいから挑む者ぐらいだろ。
「それとありがとう」
崇拝派の者たちは突然のディアロの言葉に理解できなかった。
こう言っては何だが崇拝派の者たちはディアロのために戦ってもお礼を言われるとは思ってもいなかった。
「い……いえ。自分達が好きでやったことなので……」
だから感激で胸を震わせてしまう。
「お礼をしたいんだけど何か望むことは無い?出来る限りの協力をするよ?」
実はディアロの味方となって打算として望んでいたことが手に入って崇拝派の者たちは顔にはおくびも出さずに歓声を上げる。
「本当ですか……!?」
打算していたことがバレたら不快になると思うから、それだけ絶対に隠すことを決意する。
それで貸しがなくなるのは嫌だ。
「一応、言っておくけど二人きりになるとかはダメよ?」
「………らしいよ」
「アッハイ」
そしてレイからも条件が出される。
恋人として嫉妬から出た条件に崇拝派たちは微笑まし気に笑った。
「ところでお前たち二人は何を望むんだ?嬉しそうにしていたから何か望みがあると思うんだけど……」
ディアロの言葉に崇拝派たちは顔を見合わせる。
二人きりになれず、この学校に通っているのならほとんど決まっている。
「各部活に時間を使うよりは私たちに時間を使ってくれませんか?強くなりたいんです!」
「………わかった。面倒だし崇拝派の皆はそれにするか。レイも相手をしている間はその場に一緒にいてくれない?」
「当然よ。いつものように家まで送ってもらうわよ」
二人の望みを承諾し、レイへとディアロは一緒にいてくれと頼む。
家に送ってくれという頼みもむしろ願ってもないと頷く。
「それじゃあ他の崇拝派にも伝えてくるか……」
「そうね」
ディアロたちが頷くと二人の崇拝派は意識が霞んでくる。
「私たちがここに来たことを黙っていて」
その言葉と共に最後に覚えていたのはレイの眼。
ディアロが二人に気を掛けているのに嫉妬をしていた眼だった。




