七話
「それよりも試合を開始しないんですか?」
ディアロが真性のサドじゃないかと疑うが、試合のことを聞かれて思い出す。
いつまでも喋っていないで試合をいい加減に開始するべきだ。
「少し話が逸れてしまいましたが今より試合を開始させていただきます!」
試合を開始という言葉が聞こえてディアロとシェートの会話を無視して罵り合っていた二つの団体が距離を取る。
そして何時でも始めれるように構え始める。
「それでは始め!!」
「おらぁぁぁ!!!喰らえ!!殲滅拳」
まず排斥派の一人が拳に魔力を込めて上空から突撃する。
崇拝派の全員が避けて直撃することは無かったが地面と衝突した瞬間に地面が瓦礫となって吹き飛ぶ。
「そこだ!!」
そして崇拝派が避けている隙に残った排斥派の者たちが数えきれないほどの魔法の弾で攻撃していった。
「甘い!」
だが魔法の弾を全て全員それぞれに結解を張って防ぐ。
『おぉっと!!最初っから、ものすごく派手です!初手は排斥派が有利か!?そこのところどう思いますか!?』
『まだ本当に始めたばかりですからわかりませんね。ただ排斥派の攻撃の連携も凄いと思いますが崇拝派も完璧に避けていますね。もし今ので一人でもダウンしていたら排斥派が流れをつかんで勝っていましたね』
『なるほど……。ところでディアロ君だったら、今の攻防はどうしていましたか?』
『紙一重で躱して反撃しますね』
『……つまりは排斥派の最初の奇襲はディアロ君にとっては飛んで火にいる夏の虫だったと』
司会と実況の言葉にディアロなら確かに反撃できそうだなと思う観客たち。
正直、想像すると反撃の一撃で終わらせようとする気がしてならない。
「ちっ」
ディアロの言葉に上空から襲撃した排斥派は舌打ちをする。
自分の最大の攻撃を避けて反撃できるというディアロの自信が気に食わなかった。
「隙だらけだ!」
「っ!!?」
そして一人だけ外れてた場所にいるせいで袋叩きにあう。
「はぁ!」
まずは接近してきた一人が剣を振り下ろしてくる。
それを横に移動して避けるが後ろから衝撃が奔る。
「がっ!」
思わず後ろを振り返るが、そこには拳を構えている者がいた。
「このっ!ぎっ!?」
「俺も忘れるな!」
まずは一人を確実に減らすと考えているのか崇拝派の二人で排斥派の一人を潰しにかかっている。
他の崇拝派は排斥派の者が助けに来ないように邪魔をしていた。
二人ほど少なくなっても無理に攻撃しようとせず二人の邪魔をしないように立ちまわっているお陰で被害も少ない。
『確実に一人一人潰す作戦でしょうか!?二人がかりで最初に襲撃した相手を潰している!!』
『………あの場面だけ見るとリンチに見えるのが不思議ですね』
『それを言わない約束でしょう!?』
前から後ろからと攻撃を受けているせいで既にボロボロになっている。
次第には後ろから羽交い絞めにして別の者が正面から剣を叩きつけている。
それを見て確かにリンチだと観客の者たちも見ていた。
「あれはもう止めるべきじゃあ……」
「いや、まだだ。気絶もしていない。もし気絶しても殴っているようなら介入するが、それまではダメだ。もしかしたら反撃をして逆襲するかもしれない」
「…………」
無理だろうと思うが肩を捕まられているために動けない。
彼らは最悪の事態を防ぐために待機していた者たちだった。
戦いである以上、どうしても最悪の可能性は残ってしまう。
その可能性を少しでも減らすためにいる。
ちなみに以前のディアロの時は止めようとしたが誰一人止められず逆にボコボコにされていた。
「おぉらぁっ!!!」
そうして見ていると羽交い絞めされていた者は強引に力づくで抜け出す。
それを見て止めていた者は動こうとしていた者に言った通りだろうと、笑顔を見せる。
そして羽交い絞めされていた男は剣で叩かれるが耐えて逆にカウンターを撃ち、すぐさまに後ろの者へと拳を振るう。
「いよっし!!」
そのことに排斥派は良くやったと笑みを浮かべ。
「なっ!?」
崇拝派は今の状況はマズいと焦る。
二人掛かりで潰そうとした相手は自分達の後ろにいるのだ。
相手にとっては絶好のチャンスだろう。
「俺たちの勝ちだな」
そして拳に魔力を集め―――。
「「舐めんな!!」」
何度も殴られて諦めなかったお前のように俺らも一度ぐらい殴られた程度で終わるわけが無いだろうという様に羽交い絞めして殴っていた二人が後ろから反撃し返す。
片方は頭を思いきり殴り、片方は足を攻撃して転ばせる。
そして最後に思いきり頭を蹴り気絶させた。
『『…………』』
最後の攻撃にディアロもシェートも黙ってしまう。
特に最後の攻撃は殺すつもりだとしか思えなかった。
公衆の面前で堂々と殺しかねない攻撃はディアロもやらない。
以前のアレはディアロも殺さないようには手加減はしていたのだ。
『あぁ~。取り敢えずあの人はコロシアム内から出した方が良いですね。気絶しましたし、他の者たちの邪魔です』
『ディアロ君、言い方は気を付けましょう!でも同意見です!頭を思いきり蹴られていましたし検査もするべきですね!』
司会と実況の言葉に待機していた者たちは邪魔にならないように気絶した者を回収した。
『待機していた者たちはどうやら生徒会のメンバーと各部の部長たちみたいですね。コロシアム内から出すのが早かったです』
『そうですか?のんびりしているように見えましたけど。それよりも二対一で戦っていた崇拝派の二人が集団の中に戻りましたね』
『私から見ればかなり早いですからね?貴方が強すぎるだけで。それで、この次はどうなると思いますか?』
回収した者は生徒会のメンバーと各部の部長の一人であり、気絶した排斥派の一人を保健室へと運んでいく。
それを確認しながら実況していく。
まさか死ぬことは無いだろうと根拠なく思っているのが理由だ。
『多分、崇拝派の何人かダウンするんじゃないですか?』
ディアロは排斥派の中で一人離れて魔力を込めている者を見つけて口に出す。
崇拝派からは他の排斥派から隠されて見えない。
『それにしても元々はレイがモテるのが原因になったのにな』
『たしかにそうですが、その後にディアロ君の行動によって今のようになりましたね。崇拝派はディアロ君に鍛えてもらいたいのと痛みつけて欲しいと。排斥派は君の行動が危険だと退学させた方が良いと』
『排斥派はさらに言うなら俺がレイと別れて傷心のところを慰めて恋人になろうと思っているのがいるんじゃないか?多分、排斥派だけになっても最後は結局、レイと恋人になるために他の仲間を排除するだろうな』
『うわぁ』
ディアロの予測が当たっていたとしたら最悪だとシェートは思う。
モテたいとは思っていたが、そんなことをされるならモテなくても良いと考えを改めてしまう。
レイもモテてしまうばかりに大変だなと同情する。
「くらえ!!大魔砲弾!!」
『あ』
排斥派たちの後ろにいた者が極大の魔法弾を撃つ。
直径一メートル程の魔弾。
それを発射されたと同時に隠すようにいた排斥派もフレンドリーファイアをしないように距離を取る。
「っ!!魔法障壁!!!」
崇拝派は排斥派が急に目の前から移動したことに何か攻撃されることを察して障壁を張ったり急いでその場から離れたりする。
『おぉ。相手の行動の意味を察して直ぐに行動に移して最小限の被害に抑えましたね。これは凄い』
『おおっと!!ここで珍しくディアロ君から賞賛の言葉来たー!!他でも相手をしたときは罵倒とかダメなところを指摘ばっかりしていた気がするから珍しい!!』
『何?各部の相手をしていたのを見ていたの?』
『一人十分ぐらいで相手をしていましたよね!二時間、ぶっ通しで!!アレを見て学校で最強なのは貴方だと思いました!!』
それでも数人ほどは直撃したり防ごうとしても威力を防ぎきれずにボロボロになる。
そんな状態でも意識を遺しているのはほとんどだ。
「くそっ!!隠されて気付かった!」
「これ以上、戦うのが無理そうなら撤退しろ!足手纏いになってしまうのは嫌だろ!」
「大丈夫だ!一人でも多く倒してやる!!お前らも俺たちがボロボロになっても無視して勝ちに行け!」
自分だったら足手纏いになってしまったら嫌だからと撤退を薦めるが拒否をされてしまう。
そしてボロボロになった者たちは排斥派からの攻撃を直撃されながらも突撃していく。
「まさか!?」
それを見て自爆特攻をするつもりなのかと察してしまう。
排斥派も当然、それに気づいて狙い通りにさえないと攻撃が激しくなる。
『崇拝派の自爆特攻!排斥派もそれを防ごうと攻撃が激しくなる!ディアロ君はどうなると思いますか!』
『さぁ。おそらくは崇拝派の意思次第ですね。目的を貫けるか貫けないか見ものですね』
『なるほど!それじゃあ皆さん、彼らが目的を達成できるか見ましょう!』
司会の言葉に自爆特攻とは言えボロボロの姿で相手を倒せるか見守る空気になる。
中には応援するものが多く、ほとんどが声援を送っていた。
そして崇拝派が排斥派へと触れるほど接近した際には歓声が上がっていた。
「魔力過負荷!!」
そして掌に自分では制御できないほどの魔力を込めて爆発させる。
ボロボロの身体にそれはマズいとも思うが誰も止める者はいない。
どう反撃するのかと見入っていて止めるのも忘れていた。
『うん。とりあえず回収班は自爆した崇拝派とそれによって気絶した排斥派の回収をしようか?』
強い光に目を焼かれて何も出来ないでいたが司会者たちの言葉に目に光が戻ると全員が回収のために行動する。
もし声が無ければ目に光が戻ってもしばらくは動けなかったかもしれない。
『…………』
『少しずつですが両派閥とも数が減ってきました!どちらが勝つのでしょうか!?ディアロ君はどっちが勝つと思いますか!?』
『本当に分かりません。どっちが勝ってもおかしくないと思っています』
『そうですか!ちなみにですが崇拝派が勝ったら何かご褒美にでもあるんですか!?』
『え?』
『え?』
ディアロは崇拝派が勝ったらご褒美をあげるとか考えてもいなかった。
どっちが勝っても特に影響はないと思っていたせいだ。
『片方は君を崇拝しているんですよ?今も君のために戦っているんだし、何かお礼をしたらどうですか?』
『………まぁ、無理のない範囲で頼みごとを叶えることにします。無理だったら拒否をしますが』
シェートの説得にディアロも崇拝派が勝ったら何か叶えてやろうと決意した。
それにしてもだ。
ディアロは光で目を焼かれている間に両派閥とも攻撃をしなかったことにため息を吐く。
目を焼かれていても直前まで視認して戦っていたのだから相手の位置ぐらいわかっていたはずだ。
攻撃をしていれば勝負は決まっていたかもしれないのに残念だと思っていた。
『ところで崇拝派の自爆から呆れて見ているように見えましたが、やはり自爆というのは嫌いなんですか!?』
シェートの疑問に観客たちは興味を持って耳を傾ける。
ディアロが嫌いな事と聞いて詳しく知りたいと思っていた。
『いえ。ただ単に目が光に焼かれても動いていないのがほとんどだから攻撃すれば良かったのにと思っただけです』
自爆が嫌いなのかと思って確認したら違う理由だった。
そして自分が同じ立場だったらと思うと無理だろうなと思う。
急に眼を光に焼かれて行動できる者は少ないはずだ。
『たしかにそうかもしれませんが、出来る者は少ないと思いますよ?』
『そうですか……』
シェートの言葉に少しだけ残念そうにするディアロ。
だがディアロの言葉に参考になると観客の一部は深く頷いていた。
「これで互いに片手で数えられる数しかいないわね」
「全くだ……。ディアロは危険人物だというのに何で誰もわかってくれないんだ!」
排斥派の者たちは、こちらが正義だというのに勝つどころか互角の勝負をされていることに苛立ちを覚えていた。
このままディアロの好きなようにさせると調教されたり力尽くで学校を支配されると考えないのだろうか?
それにレイも、このままだとディアロのモノのままだ。
「レイさんだけでなく学校の皆も救わないといけないのに……!」
崇拝派の者たちも簡単にディアロに調教されて自分達の邪魔をしてくる。
同じ学校に通う仲間として情けなくなってしまう。
「とりあえず、この試合が終わったら一度学校のある地区外から出すぞ。そうしたら正気に戻るかもしれない」
「そうね。他にも私たちから抜け出した皆も説得してもう一度、ディアロに挑むべきね」
ディアロに味方がいることが認められなくて洗脳されたと考える排斥派たち。
実際にそうでもないと有り得ないと思っていた。
ディアロの起こした事件でも責任は少なく、凄惨な現場を見たのに惹かれる者たち。
マゾだとしてもディアロからは恐怖で引くだろうし、いくら強くても教えを乞おうとしないはずだ。
「…………これはディアロにもう一度、挑むための前哨戦だ」
その言葉に排斥派は全員がディアロを睨む。
『…………』
『ディアロ君、急に手を振ってどうしたんですか?しかも振っている相手は排斥派のように見えるんですが?』
『なんか見られているので手を振り返しました』
『いや、アレ見られているというより睨んでいますよね!?』
「「「「「…………っ!!!」」」」」
こちらは睨んでいるのに、にこやかに手を振って返すディアロに排斥派は怒りで声にならない叫びをあげた。
「ぶっ殺してやる!!」
そして崇拝派へと襲い掛かる。
もはや崇拝派はディアロに洗脳や調教された被害者だとかは考えていない。
ディアロへの怒りをそのまま崇拝派へとぶつける力に変えて攻撃していく。
それは試合の始めよりも威力が高く怒りは力になるんだと観客たちに理解させた。
だが同時に怒りに染まりたくないと思っていた。
「おぉぉぉぉ!!」
「死ねぇぇぇ!!」
「くらえやぁぁ!!」
怒りに染まっているせいで攻撃が単調。
いくら攻撃の速度や威力が高くなってもある程度の実力者なら簡単に避けることが出来る。
『排斥派の者たちが凄く怒っています!!まさに怒りを力に変えています!!速い!速い!速い!それに威力も高いです!!』
『凄いですね。怒りの力でこんなに能力が上がるなんて。それにしても何であんなに怒っているんでしょうね?』
『マジで言ってんのか』
シェートの言葉に観客全員が信じられない顔をする。
明らかに怒っている原因はディアロにあるのに惚けているのか真面目に言っているのか判断がつかない。
シェートも真顔で言っている。
『当たり前でしょう?俺は見られていたから手を振っただけですよ?それだけで、あんなに怒るとか………』
ディアロは心底不思議そうな表情でそんなことを言う。
排斥派に嫌われているとこは理解しているが、それでも手を振っただけであんなに怒るか疑問に思っていた。
怒るとしても理性は残るはずだと考えていたから怒り狂っているのは想像できていなかった。
『うん。やっぱりレイは人気者だな』
『関係ある?』
『だって、あれら俺を排除してレイと恋人になろうとしているし。多分だけどストーカーもしているんじゃないか?そもそも忘れているだろうから思い出させるけど、あくまでも俺が嫌いになったのはレイと恋人だからだろう?』
何度も言っているけど、というディアロの言葉にそのことを思い出す。
正直レイのことよりディアロの行動の方がインパクトがデカすぎて忘れてしまう。
『最初はそうだろうけど、今は絶対にそれだけじゃないよね!』
全くだと頷く観客たち。
ディアロを排除してレイの恋人になろうとしているのは半信半疑だが、ディアロを嫌っているのはレイのことと関係ない者もいるはずだと思っていた。
むしろ絶対にいると確信している。
理不尽に嫌われてもいるが同時に自業自得の部分でもあった。
「ディアロ様を強いという理由だけで排除しようとしている癖に……!」
崇拝派もまた怒り狂っていた。
対象は排斥派でありディアロに手を振って貰ったことに嫉妬したことが原因だった。
「皆、絶対に勝つぞ」
「ええ」
「当然だ」
排斥派と違い感情に任せたまま行動しないのは怒りが一周回って冷静になったのが理由かもしれない。
冷静に排斥派を潰そうと決意している。
「おぉぉぉぉぉ!!」
「…………ふっ!」
一人は突撃した相手を紙一重で躱しカウンターを打つ。
「はぁぁぁぁぁ!!」
「甘い!」
一人は息の着く間もない攻撃をひたすら冷静に躱していく。
「そこぉ!!」
「ふっ!!」
普段なら直撃していただろう攻撃を余裕をもって躱す。
排斥派の攻撃が全て無効化していた。
『崇拝派の皆さん、凄いです!!相手のあらゆる攻撃をかわして反撃しています!一体どこまで躱せるんでしょうか!?』
『本当にですね。あそこまで攻撃を避け続けるなんて凄いです。いくら相手が単調な攻撃をしているとはいえ速いのに』
ある程度の実力者なら避けれるのは事実だが学生の身では難しいのも事実だ。
学生で出来るとしたら各部長などの実力者ぐらいだろう。
ハッキリ言って本来なら目で追いつくので限界でもおかしくない。
『崇拝派の者たちを鍛えたりしましたか?個人的には部長クラスの実力者だと思うんですけど?』
『個人的には鍛えていませんね。各部に行って何人かは相手にしましたがそれだけです』
『なるほど!どうやって崇拝派の皆さんがあんなに強くなったのか気になるところです!』
ただの怒りによる一時的なブーストだ。
おそらくはそれが無ければ既に負けていただろう。
「くそがぁ!!」
全ての攻撃が避けられて反撃をされることに排斥派たちは屈辱で更に怒りが燃え上がる。
その怒りのせいで痛みすらも超越しようとしていた。
「うるっさいんだよ、雑魚」
突撃してくる排斥派をカウンターで迎撃して崇拝派は罵倒する。
「雑魚だと!?」
「雑魚だろう?ディアロ様が本当に嫌いなら直接、襲えば良いのに隠れて嫌がらせをするだけ。あぁ、卑怯者の方が正しいか?」
「ディアロが強いから排除するにはそれしか無いだろうが!」
「そう?ディアロ様を退学にする署名を集めて提示すれば良かったじゃん。そうすれば退学に出来たと思うけど?もしかして考え着かなかった?」
バカじゃないの?と煽れば拳を振るってくる。
「なぁ、ずっと思っていたんだけどディアロ様が危険だから排除しようとしているのか?それともレイさんと恋人だから排除しようと考えているんだ?両方だとしても、どのくらいの割合なんだ?」
崇拝派の疑問に排斥派は正気だったら何も言えなくなっていた。
ディアロが危険だからという理由もあるが、それが主目的なのは全体から見ても少ない。
それよりもレイさんと恋人だからという理由が圧倒的に多かった。
ディアロが危険なのも排除する絶好の理由と見ている者が多い。
「そんなもの殆どがレイさんと恋人だからに決まっているだろうが!ディアロが危険や多くの者たちの心を折ったからと排除に動いている者は少ししかいねぇよ!」
だが今は怒りで正気を失っている。
そのせいで本当のことを喋っていた。
そしてディアロが危険だからではなく嫉妬で排除しようとしていたことがバレてしまう。
『どうやらディアロ君を排除しようとしている者のほとんどがレイさんと恋人だからという理由みたいです!本当にレイさんが関係ありますね!ちなみにディアロ君が危険だと理由で排除しようとしているのは少ないと聞いてどう思いましたか?』
『俺に勝てないと心を折ったりしたので当然かな、と。正直、俺を危険だからと排斥派にいる者たちは見どころがありそうだと思います。ほとんどの者が心から負けを認めているのに、どんな形でも勝とうとしているので』
『なるほど。つまりディアロ君は自分に挑んでくる者が好き、と』
『否定できませんね。特に一度敗北した者が再び挑んでくるとなりふり構わずに勝とうとしてきて、その戦術が勉強になることも多いですし』
ディアロの言葉に思っている以上に実戦経験があるのだと察してしまう。
再び挑んできた相手のことを話せるのだから相当の数の喧嘩をしていたのかもしれない。
『それにしても強くなるには実戦も大事だと思うんですけど喧嘩でもしていたんですか?』
気になってシェートは質問する。
腕立てや腹筋をしたって強くなるわけじゃない。
どうしたって組手や試合といったものが必要だ。
『喧嘩をよく売られたので………』
どうやら喧嘩を良く売られていたらしい。
経験をどうやって得ていたのか理解できた。
そして喧嘩を売られたからと言って買うのも問題だとディアロの言葉に呆れてしまう。
『私たちも喧嘩をすれば強くなれるんですかねぇ?』
『中には凶器を複数人持って来ている時もあるから良い経験になると思いますよ?』
『………』
ディアロの経験からの言葉にシェートは喧嘩をすることに怖気ついてしまう。
ナイフなんて使われたら自分が死ぬ姿しか想像できなかった。
それはシェートだけでなく観客のほとんどは凶器を突き付けられている自分を想像して身体を震わせた。
排斥派の男は崇拝派の男へ剣を振り下ろす。
ディアロがレイと恋人だと知る前は二人は共に競い合う友人だった。
そのころからすると比べ物にならないぐらいに速いが、酷く単純な攻撃だ。
「甘い!」
攻撃をした後の隙があまりにも大きく反撃をしやすい。
以前なら、この隙もほとんど無かったのにと残念に思っていた。
「なんかレイの方が学校から追い出した方が良いんじゃないかと思ってきた……」
本来は互角だった相手の実力の落差に崇拝派の男はレイの方こそが追い出すべきだと考えてしまう。
恋は盲目だと聞いたことがあるが、ここまで影響があるのも考えものだ。
レイの容姿に頭がおかしくなっているんじゃないかと疑問を持つ。
「何だと!?追い出すべきなのはディアロだろうが!?レイさんと恋人になるなんてふざけやがって!!」
普通はここまで執着するかと崇拝派の男は疑問に持つ。
ディアロ様も脅して恋人になったわけでは無いんだし素直に祝福すれば良いのに何故しないのか疑問だった。
そもそも告白したのかと思ってしまう。
本当に好きなのなら既に告白しているはずだ。
「何でそこまでレイに執着するんだ?世の中には他にも素晴らしい女性はいるだろう?本当に好きなら彼女が恋人といることに祝福すれば良いだろ?」
「そんなこと出来るか!!ディアロなんかより俺の方がレイさんを幸せに出来るんだ!!」
根拠もなく自分の方が幸せに出来るという排斥派の友人に崇拝派の男は苛立ちを覚えてしまう。
その上、執着している理由を話していない。
もしかして執着している自覚が無いのかと想像して聞き方を変えることにする。
「なんでお前はそこまでレイのことが好きなんだ?」
「一目ぼれだ。夕日に映える白い肌。そして夕焼けに染まる白い髪。その上で目立つ赤い眼。触れてはいけないと思わされる美しさであり、穢してしまいたくなる綺麗さ。あのディアロにだけ見せる笑顔。あの笑顔を自分にだけに向けて欲しいと思うし、他の誰にも見せたくない。自分の全てを犠牲にしてでも手に入れたいんだ」
「…………」
やはりディアロよりレイを追い出した方が良いんじゃないかと崇拝者は思ってしまう。
目の前の排斥派の友人が口にしていることは全て容姿のことだけだ。
中身のことは何一つ話していない。
「悪意のない九尾の狐かな?」
その昔、九尾の狐は自らの容姿の美しさを利用して国のトップを誑かした。
そして贅沢三昧をしたり自分の言うことを従わせたりしたらしい。
レイはそんなことはしていないが美しさはまさに罪だと理解させられてしまう。
そうなるとディアロも容姿に惹かれて恋人になったんじゃないかと想像させられる。
『凄いですね……。もしかして他の者たちもレイさんへと同じような思いを抱いているんでしょうか?』
『容姿のことしか話していない気がするけど、アレを聞いてレイがどう思ったか気になるな』
『私だったら絶対に恋人になりたくないですね。ちなみにディアロ君はレイちゃんのどこが好きになったんですか?』
『料理』
ディアロはレイの好きなとこを聞かれて即答する。
容姿では無いが、それもどうなのかと微妙な雰囲気になってしまった。
『あれ?前は弁当箱に焼きそばだけを詰めた弁当を持ってきたと聞いていたけど……?』
『すごく美味かった。また作ってほしい』
涎をたらしそうな夢心地の表情で言うディアロにそれで良いのかと観客たちは呆れてしまう。
それで満足しているディアロに崇拝派は本当にこのままレイと恋人同士のままで良いのか、それとも騙されていると判断して引き離した方が良いんじゃないかと迷ってしまう。
そしては排斥派はディアロの言葉を聞いて酷く羨ましがる。
レイの手作り料理とかすごく羨ましく思っていた。
彼女の手料理ならおむすび一つだけでもご褒美だと本気で思っている。
「ディアロ様、騙されているんじゃないか……?」
「ディアロめ、なんて羨ましい……!!」
同じ話を聞いて全く対照的な反応を二人は示す。
そして互いに声が聞こえてきて真逆な感想を持ったことに二人は信じられないと目を向ける。
片方は弁当箱に焼きそばだけということが信じられず、もう片方は手料理を作ってくれたことが心底羨ましく思っていた。
「はぁ?弁当に焼きそばだけって有り得ないだろうが!?」
「恋人に作ってきてもらう事態が有難いことだろうが!?俺ならそれだけでも凄く嬉しくなるぞ!」
二人の言い分に観客たちは、どちらの意見も正しく思ってしまう。
特に恋人のいる女の子たちは本気でそれだけにしたのかとレイへと冷たい目を向けていた。
そんなことをしていたら本気で好きだったとしても離れていくだろうと呆れてしまう。
そして崇拝派の少女たちはこれはチャンスだと目を光らせ、排斥派の者たちは引き離すチャンスだと考える。
崇拝派の少女たちはディアロの傍にいれることに期待に胸を膨らませる
排斥派たちはディアロとレイを引き離すためならば、ディアロに接触して別れるように説得することも苦では無かった。




