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五話

「さて早速、全員集まったし話し合おう」


 昼休み、各部の部長と生徒会長が集まる。

 内容はディアロに対する虐めのことだ。


「既に聞いていると思うけど話し合う内容はディアロの虐めに関してだ。どうやって止めるか、また誰がやっているのか見つけるために協力してほしいと思っている」


 司会の言葉に全員が頷く。

 特にフィンは生徒会長として積極的に協力していこうと思っている。


「まず確認だけど皆はディアロ君に嫌がらせをしようと思っていないよね?」


 こんな集まりを開いて参加しているのだから当然だと思うが、それでも確認のために質問する。

 もし、いたとしても何か反応はあるはずだと鋭い目でうかがう。


「当たり前だろう」


 全員が頷いているが怪しい反応は見られない。

 これは大丈夫だとフィンも考えた。


「それじゃあ何か意見がある者はいるかい?」


 確認が取れての質問に全員が顔をうつむく。

 誰も思いついていなかった。

 むしろ思いつかなかったから、こうして集まってきたのかもしれない。


「はぁ。取り敢えずは皆の部活の中で一人一人、ディアロ君がレイちゃんと付き合っていることに不満を持っている者がいないか確認してくれないかい?いたとしても直ぐに犯人だと決めつけはダメだよ?」


 早速とばかりに意見を出してくれるフィンに部長たちは巻き込んで正解だったと希望の眼差しを向ける。

 そのことにフィンはどうして自分を誘ったのか理解してため息を吐く。


「………時間はかかるかもしれないけど、それぞれ信頼できる者たちにも協力させな」


「不満を持っている奴が犯人じゃないのか?」


「ディアロ君もやり過ぎの件もあるからね。それに不満を持っていても怯えて手出すことも考えられない者がいてもおかしくないよ」


「「「「あぁ」」」」


 フィンの意見に納得する。

 同時にディアロの実力を知っていながら喧嘩を売るなんて馬鹿なんじゃないかと部長たちは思ってしまう。

 犯人を見つけらてやり返されるとは思わなかったのだろうか?

 学校でも有名な不良であるトールですら何度も足蹴にされて不登校になってしまったのに。


「にしても思ったよりもディアロ君は強すぎるわね。今度の学校別の大会では彼を大将にしようかしら?」


 この世界では魔法も使った何でもありの戦いが人気で学校でも年に一度の大会が開かれる。

 最初は県、次に地方、国、世界と勝ち残っていけば段々とステージが上がっていく。

 その成績によって学校のステータスは上がるし、活躍した者たちはプロの武術団体に勧誘されたりする。


「そうだな」


 フィンの言葉には各部の部長たちも頷く。

 あれは確実に自分達より強い。

 実力だけを見れば文句は無かった。


「だとすると個人戦は後四人ね。集団戦には参加させたくは無いんだけど……」


「全くだな」


 個人戦ならともかく集団戦になると未知数というのもある。

 だがそれ以上に味方すら巻き込むんじゃないかと不安になる。


「話が変わってきてるわね。元に戻しましょう。ディアロに嫌がらせをしている者たちについて、まずはそれぞれが自分達の部を調べるということで良いわよね?」


 手を叩いて話を戻されて頷く。


「よしっ、じゃあ解散しよう!聞き終わったら、また集まることにしないか?」


 その意見に全員が頷いて部屋から解散した。





「あら?」


 そして放課後、ディアロのことについて話を聞こうと思っていたがディアロが部へと来た。

 目的は拳闘部と同じように戦いに来たらしい。


「えっと、それじゃあ一人一人挑めば良いかしら?」


「構いませんよ。基本的にそちらのやり方に任せようと思うので」


「それじゃあ、一人十分で相手をしてもらうわ」


 ディアロの言葉に甘えて拳闘部から話を聞いたように一人一人戦闘能力の高い順に戦わせる。

 レーニンから聞いた話だと十分だとしてもかなりの疲労があったらしい。

 自分達も同じぐらいの時間にして挑んでみることにする。


「そうね。全員、私たちの戦いを見て学びなさい!!」


 魔術戦部の全員の注目を集めて、まずは自分がディアロと戦うことを決める。

 少しでも自分達の戦いを見て参考になればよい。

 そしてディアロを利用して自分もまた高みに至って見せようと思い挑んでいった。


「はぁ!」



 最初に魔力で火球を作りディアロへと襲っていく。

 それを見てディアロは拳を叩きつけて無効化する。

 己の拳に魔力を纏わせているために拳は無傷だ。


「ふっ」


 そして次々に多くの種類の魔法が襲い掛かってくる。

 雷、風、水、火と時間差で襲ってきたり、同時に襲ってくる。

 避けても避けても終わらせる気はない。

 それでもディアロが無傷なのも本当だ。

 そのことに僅かな苛立ちと称賛を内心でしながら手を止めない。


「…………意外と魔法を主体に戦う者の方が強いのか」


 気付いたらディアロが直ぐ後ろにいた。

 全く反応できず声がしなければ気付かなかった。

 慌てて距離を取る。


「…………接近させてしまえば弱いな。慌てて距離を取っていたけど遅すぎる」


 それは魔法を主体に戦う者にとっては全員の共通の弱点だ。

 もし接近戦が得意な者と戦うことになったら、基本はどうやって距離を取ったまま戦うかが注目になるぐらいには。


「移動ぐらいは速くしたら」


 そしてまたディアロが反応すらさせずに後ろを取る。

 魔法で攻撃して時間を稼ごうとするが全てを避けられ、また後ろに回られる。

 それを何度も繰り返され、心が折れそうになる。


「終了ですね」


 そしてディアロの言葉に意識を取られた瞬間に顔を殴られ、ようやく終わった。



「この………」


「くそっ……」


「女の子の顔を殴るとか……」


 昨日と同じ六時になるとディアロはレイとリィスと一緒に魔術戦闘部から去る。

 その姿に男女問わずイラっとくる。

 これがレイだけだったら、ここまで腹が立つことは無かったかもしれなかった。


「女の子の顔を殴るなんて、あいつには人の心が無いの……?」


「それは本当に悪い事?」


 ディアロへの文句の言葉の一つに一人が反応した。

 その声色はその文句を責め立てるようなものだった。


「何よ……?」


「あなた、どうせ男子だけ殴って女子だけ殴られなかったら文句を言うでしょ?理不尽過ぎない?」


「だから何よ!?貴女は殴られて文句は無いの!?」


「あるわけないでしょ」


 何を当たり前のことをという目の前の少女に言い合っていた女子だけでなく聞いていた何人か引く。


「な……な……」


「むしろ嬉しかったわ。いくら、あの人より弱くても敵として認めらているような気がして……」


 顔を赤くして殴られた頬をうっとりと撫でる。

 言葉自体には納得しそうになるが行動と表情がそうさせてくれない。

 目の前の少女はただ単に殴られて嬉しかっただけなんじゃ、と思ってしまう。

 もしかしたらこれからも合法的に殴られるために庇っていると考えてしまう。


「…………それ貴女が殴られて気持ち良かっただけじゃないの?」


「違うわよ!」


 少女の否定に少しだけ安心する。


「ディアロ様の楽しそうに見えた表情と殴る際の眼も良かったわ!!」


 そして安心した気持ちを粉砕された。


「…………そういえばリィスも似たような状況だったな」


「あぁ……」


「なんだろう。女の子二人と一緒に来たり帰ったりして嫉妬をしていたけど、どうでも良くなってくる」


「それな……」


 ディアロはマゾに好かれやすい体質何だろうかと思ってしまう。


「ねぇ。リィスもマゾだし、私ディアロが暴れた時にやられた皆や見ていただけの者の何人かがディアロへと向けて顔を赤くしていたのを見たんだけど」


「「「「…………」」」」


 もしかしてレイもマゾなんじゃないかと想像してしまう。

 あれだけマゾに好かれているのだから恋人であるレイもそうなんじゃないかと想像していた。


「はいはい、そこまで。何時までも喋っていないで帰る準備をしなさい」


「部長!部長もディアロ様の眼とかすごく良かったですよね!こう此方に興味は無くても純粋に終わらせようとする眼で!」


「……まぁ、わかるけど」


「「「「!!!!!?」」」」


 部長もマゾなのかと信じられなくなる。

 普段からそんな様子は見えないのに疑ってしまう。


「私たちもリィスのように積極的に隣に立てるように望めば良いかしら?他の皆にも相談しないと……」


「「「「「!!!!?」」」」」


 誰だがは分からないがそんな声が聞こえてきて驚愕してしまう。

 何よりも組織立っているかもしれないのが特に驚いた。


「多分、リィスの例からすると何度も頼んで押し通せばイケるわね。よしっ!」


 立ち上がり早速ディアロの元へと向かおうとしていたが全員で止められた。




「ねぇ。ミリィはマゾなの?」


「はい?」


 帰り道、一緒に部活メンバーで一緒に帰っているとそんなことを聞かれる。

 ミリィとは魔術戦闘部の部長だ。


「いやだって魔術戦闘部のマゾに同意していたじゃない?」


「違うわよ」


「いやでも……」


「違う」


 頑なに否定してくる部長にこれ以上は問うまいと友人は止める。


「そういえば魔術戦闘部にディアロ君へと嫌がらせをしている者たちを確認したいんだけど手伝ってくれない」


「何を言っているの?」


 ミリィの言葉に冷たい目を向ける友人。

 それは自分達の部活仲間を信じていないと言っているようなものだ。


「やっていないという理由で嫌がらせをしていると言われるよりはマシ。それに折角強くなれる機会があるのに手放すなんてもったいないし」


「つまり恩を売るってこと?」


「そういうこと」


 前者の意見にも納得したし、後者の意見にも納得する。

 たしかに強くなれるから手放したくない。

 恩を売るというのも理解できた。


「ねぇ、ディアロ君が皆をまとめて圧倒したのを覚えている?」


「………当たり前でしょ」


 カタカタと震えながらミリィの言葉に頷く。

 つい最近のことだからしっかりと覚えているし、そこらの石ころのように負けたのも覚えている。


「正直、何人かはあれストレスが溜まって爆発したせいだと思っているわ。嫌がらせを受けていて勝負をしてくれって何度も頼まれていたって聞いたし」


「………もしかして彼を助けるのも爆発して被害が増えるのを防ぐため?」


 その質問にミリィは微笑む。


「おぉう」


「だからあまりにストレスを溜めるようなことは防がないと……ね?」


 今度はあれ以上に暴れるかもしれないと考えて深く深く頷く。

 前は多くの生徒たちの心を折ったり性癖を開発させたり目の前の部長のように強くなることに以前よりも貪欲になったりしている。

 良い結果も促すが悪い結果も促していた。

 これ以上、悪化をさせてしまうのはダメだとディアロにストレスを溜めないように注意して見守ることを決意した。


 戦術魔術部の次の日も、さらにその次の日もディアロは各部活へと向かって一人一人相手をする。

 女の子二人を一緒に来ていることには苛立ちを感じている者もいたが、それ以上に尊敬も集めてしまっていた。

 

「ディアロ君と戦うのはキツイけど本当に勉強になるわね」


「あぁ。十分だけなのに限界を引き出されて強くなった実感もあった」


「お前もか?」


 各部の部長たちはディアロとの戦いに非常に満足していた。

 もう一度、戦ってほしいと思ってさえいて、そのためにならディアロのために何でもしようとさえ考えている者もいる。


「それで不満を持っている者はいたかい?」


「「「「…………」」」」


 話を切り上げるように生徒会長のした質問に全員が顔を背けてしまっていた。

 どうやら、どの部活にも不満を持っている者はいるらしい。

 そのことにため息を吐いてしまう。

 誰からも好かれる者はいないと理解していても、どの部からも一人はいるというのは少し多いんじゃないかと考えてさえいた。


「でも、怯えていて何も手出しをする気も無い子もいますよ?」


「俺は逆に嫌がらせでも、とやりそうな奴がいたな」


「こっちは不満を持っているのは女の子を連れてきたことが理由なだけで、嫌がらせとか考えてないな」


 最後の言葉に全員が納得する。

 何で女子を二人も一緒に連れてくるんだと思っていた。

 ぶっちゃけ二股にも思えなくもない。


「うちの部ではディアロ君に崇拝している者も判明しちゃって……」


「「「「わかる」」」」


 うちの部も私のところも、とその言葉に全員が頷いていた。

 男女関係なく惹かれている者がいるところもあって思っている以上にはディアロは嫌われていないことを理解しあう。


「それじゃあ毎朝、ディアロ君に嫌がらせをしている者たちは、その嫌がらせをしようとしている者たちがで良い?」


「そうですね。取り敢えず朝に誰がやっているか見張らせてもらってからで良いでしょうか?」


「良いよ。その代わりに生徒会も一緒に参加させてもらうよ」


 その言葉に頷く。

 今もまだディアロの下駄箱にされている嫌がらせ。

 あれはディアロだけでなく他の生徒にも迷惑になっているから早く犯人を特定したかった。


「それにしてもディアロ君って嫌われている生徒も好かれている生徒も極端だねぇ」


 フィンの言葉に全員が頷く。

 好かれている生徒には崇拝している者もいる。

 そして逆に嫌われている生徒からは陰湿な嫌がらせをされていた。

 どちらも結構な数がいて組織立っている。


「しかも組織立っているし……。多分、嫌がらせもバレないように協力してやっているんだろうね」


 その言葉に全員が深いため息を吐いた。

 もし徹夜をして犯人を特定しようとしても一日で終わる気がしない。

 もしかしたら切り捨てて別の者でディアロに嫌がらせをするんじゃないかと考えてしまう。


「まぁ、そこまで嫌われいたとしても実行するはずが無いわよね。考えている私たちも私たちだけど……」


 その言葉に今度は落ち込んでしまう。

 切り捨ていると本の読み過ぎだと有り得ないと思ってしまっていた。


「取り敢えずいい加減に捕まえたいし今日から行動しようと思うけど大丈夫か?」


「そうね。皆にも話しておくわ。他の生徒会の皆が行かなくても私だけは行くから安心して」


「ダメよ!それなら私も行くから!」


「そうだぞ!」


 男女二人きりになるのはダメだと他の部長たちも自分たちも手を上げて参加することを告げる。

 フィンはため息を吐き、もう一人も苦笑する。


「わかったわよ。それじゃあ参加する奴らは放課後に生徒会室に来なさい」


 そこで作戦会議をするからという言葉に全員が生徒会室に集まることを承諾した。




「えっと………」


 今日も生徒会の一員としてダイキは生徒会室で待っていたら知らない先輩が来た。

 それも何人もだ。


「え……」


 あまりにも多く来たために戸惑って対処することも出来ていない。


「あぁ~。うん……。フィンから話を聞いていないか?」


「い……いえっ!何も聞いていません!」


 二年どころか三年の先輩が続々と入ってきて緊張で身体を固くするダイキ。

 各部の部長たちは三年の者たちが一斉に入ってきたら、そりゃ緊張するよなと納得する。

 それよりも同じ生徒会のメンバーに何も伝えていないのかとため息を吐いた。


「……っ。その?」


「あぁ、ごめん。フィンとは生徒会室で集まる約束をしていたんだが伝えていないことにため息を吐いただけなんだ。気にしなくて大丈夫だ」


 ため息を吐いてしまったことにダイキが反応してしまい、直ぐに理由を話して謝る。

 それでも信じられないのか疑うような眼で見てくる。


「本当だって。俺もフィンは既に伝えていたと思っていたんだ」


「………わかりました。椅子を持ってくるので待ってて下さい」


「なら俺も行くよ。まだ全員が来たわけじゃないし何人来るか分からないだろう?それに一人じゃ何度も往復するだろうし」


 その言葉に他にも俺も行く、私も行くと手を上げる者が何人か出る。


「え……。え……」


 先輩に手伝ってもらうことに気が引いてしまうが行くぞ、と声を掛けられてしまう。

 次第には手を引かれて一緒に人数分の椅子を運ぶことになった。



「あぁ、来たね。椅子を持って来てくれてありがとう。早速座ってくれ」


 ダイキたちが生徒会室に戻るとダイキ以外の生徒会のメンバーが揃っていた。


「さて、それじゃあディアロ君について話そうか」


 クラスメイトの友人について話し合うと聞いてダイキは顔を強張らせる。

 最近は色んな部に行って暴れていると聞いているが、その件なのかと想像する。

 現に今ここに集まっているのは部長たちだ。


「あの……?」


 ディアロのついての話と聞いて何も聞いていないダイキは質問しようと声を出す。

 だがフィンはそれを無視して話を続ける。


「まず、ここにいる皆はディアロ君へと嫌がらせをしている者を捕まえることに同意するで良いかい?」


 フィンの言葉に全員が頷く。

 ダイキはディアロを助けるという言葉に顔を上げた。


「それじゃあ確認だけど毎日、デイアロ君の机や下駄箱に嫌がらせをされているんだよね?」


「え……。あ……はい。今日もクラスの皆で掃除を手伝ったりしました」


「うん。………うん?君の教室ではディアロ君を嫌っている者は少ないのかい?」


「そりゃ、まぁ。むしろクラスのほとんどは応援していましたし……」


「今は……?」


「リィスにも好かれていることに嫉妬をされていたり、同情されていますね!自分もマゾにされるのかと顔を赤くしたり怯えている者もいます!」


「そうか……」


 安心して良いようななダメなような答えに頭を抱えてしまう。

 少なくともディアロのクラスメイトだけは嫌がらせをしていないことに安堵するべきなのかもしれない。


「悪いけど今日から徹夜をしようと思うけど大丈夫かい?何人かずつで見張って犯人を捕まえようと思うんだけど」


 フィンの発言にダイキは面白そうだと頷く。

 ディアロの為でもあるが、それ以上に学校に犯人を捕まえるために泊まるということに興奮する。

 ぶっちゃけダイキはディアロを罰するのではないのなら気が楽になっていた。

 毎日、嫌がらせを受けているのに全く気にしていないし、何ならタイムウォッチを出して何分で魔法を使って洗えるか図っていたりする。

 教室の掃除ではマネして何分で洗えるか勝負している者たちさえいた。


「わかりました。俺たちも大丈夫です」


 生徒会の先輩たちはダイキとは違い真面目な表情で頷いていた。


「そう良かった。それで先生たちから学校に泊まることは許可してもらったの?」


「当然だろう?先生たちも毎日、学校の備品を汚されているから協力してくれるって言ってね。鍵を渡してくれたよ。無線機も渡してくれたし何人かは隠れて待機をしてくれるらしい」


 先生たちも協力してくれるのかと少しだけありがたく思う。

 無線機まで渡してくれたことには感謝しかないが生徒の為でなく、学校の備品のためという理由で少し感謝の念が薄れてしまっていた。


「それじゃあ今日から頼むわね。私はそろそろ部活に行くわ。もしかしたらディアロ君が着ているかもしれないし」


「そうか。かなり勉強になるから相手をしてもらえよ」


 その言葉にまだ部に来てもらっていない数名が生徒会室から去っていく。

 残ったのは生徒会のメンバーと既に来てもらった部の部長だけだ。


「それにしても何で毎日、レイと一緒に部活に来ているんだろうな?格好いいところでも見せたいのかねぇ?」


「明日、聞いてみましょうか?」


 既に組み手をしたところの部長の疑問にダイキが乗っかかる。

 正直、ダイキも毎日レイを連れているというディアロの行動に興味を持ってしまったせいだ。

 もし格好いいところを見せたくて連れているのなら、からかってやろうと思っている。


「そうだな。それじゃあ頼む。あと何でリィスまで連れてきているのか確認してもらって良いか?アレも一緒にいるからイラッてきている奴もいると思うんだが?」


「分かりましたけど……」


「けど?」


 リィスまで一緒に来ている理由に心当たりがありそうなダイキに全員が耳を傾ける。

 不満の理由にレイだけでなくリィスも一緒に侍らせているからというのを聞いているから知りたくなる。


「あいつって毎日の様に殴ってくれとか縛ってくれって変わらずに言うんですよね。しかも常にディアロの近くにいようとするし」


 常にディアロの近くにいようとすると聞いて、そういうことかと納得する。

 おそらくはリィスがディアロに纏わりついているのだろうと考えていた。

 それが正解だと結局ディアロはストレスを溜めているんじゃないかと不安になる。


「もうディアロは諦めているんじゃないかと思うんですけどね……」


 正直いってざまぁと思ってもいる。

 ストレスを溜めさせて暴れてしまうのは嫌だが、少しは苦労しやがれとも思っていた。

 しかも相手はディアロ自身の行動によって変態になったと聞いた。

 これを期にもっと手加減を覚えて欲しいと思う。

 自分達の部活にもディアロの行動のせいで色々と開花してしまった者もいるのだ。


「これを期に責任取らせて引き取ってもらうか?ディアロに開花された者たちの会みたいな集まりをつくって。自業自得だからストレスを感じても、これを理由に無暗に暴れることは無いかもしれないし……」


「確かに……。それにこの会に入ってる者は変態だと直ぐに分かりそうだ」


 全員が頷き、自分達の部の開花されたもの達はその会にも入れようと決意した。



 生徒会と各部の部活は家へと連絡し学校で泊ることに伝える。

 目的はディアロへと嫌がらせをしている者たちを捕まえることだが、友人たちと泊まるためちょっとした修学旅行気分で浮かれてしまっている。

 ちなみにダイキとアクアは自分以外に同じ学年はいないため、ちょっとした緊張と疎外感を感じていた。


「さてと一時間交代で見張ることは覚えているね。順番もちゃんと覚えているね?」


 フィンの確認に全員が頷く。

 それぞれメモをしていたり泊まる部屋にもメモをした紙を貼ってある。


「それじゃあ、それぞれ男女の部屋に別れてから行動しよう」





「よう。大丈夫か」


「うわっ!」


 男子の集まる部屋に入ってダイキは突然、後ろから背中を叩かれる。


「最初はお前からだけど頑張れよ。一緒にいく奴にも散々迷惑を掛けてやればよい」


「そうそう。この場にいる一年はお前だけなんだし俺たちに頼れば良いって」


 この場にいるのは三年がほとんどで一年は一人しかいない。

 そのせいで緊張しているのを察して声を掛ける。


「は……はいっ!」


 それでも緊張しているダイキに三年たちはため息を吐いてしまう。

 だが責める気は無かった。

 むしろ自分一人だけという疎外感にしょうが無いかと納得する。

 自分達が同じ状況でも緊張していることは簡単に想像できたからだ。

 何なら周りが一年だけで三年が自分だけという状況だったら緊張はしないが疎外感は覚えてしまう。


「よしっ!お前の時間が終わって帰ってきたら恋バナしようぜ!寝るにはまだ早い時間だろうし!」


「えっ」


「そうだな。面白そうだしダイキ君の好みとか聞こうか」


「えっ」


 凄く嫌そうな顔をするダイキに対して三年たちは楽しそうにする。

 年下の好きな異性のタイプとかすごく面白そうだと思っている。


「よしっ、行くぞ」


 面白そうだからと言って自分の好みのタイプを聞き出そうと考えている先輩たちを見ながらダイキは連れて行かれ絶対に話すものかと決意していた。



「悪いな。あいつらも悪気は無いんだ。ただ単純にお前と仲良くなりたいだけでな」


 ダイキと一緒に警戒することになった三年がフォローをする。

 あまりにもダイキが緊張して、それをほぐすためにあんなことを言ったのだと。


「ありがとうございます。それにしても何で部長さんたちはディアロへと嫌がらせをしてる者を捕まえることに協力してくれることになったんですか?」


 生徒会室で話したのはどうやって捕まえるかで、そのことは話していない。

 ディアロとは仲が良いと聞いていたし理由を教える。


「彼と戦ってもらえば強くなれるからね。恩を売ってまた部活に来てほしいのさ。それにストレスを溜めさせて以前のように暴れて欲しくないし」


 打算だが強くなりたいという気持ちに理解する。

 たしかに強者と戦えれば強くなれる。

 同じ学校にいるディアロは都合が良い。


 そしてストレスを溜めて暴れて欲しくないという気持ちも理解できた。

 以前のあれで何人かが心折れたのは知っている。

 あれは二度と起こしたくない。

 見ていただけでも泣きそうになった。

 そしてディアロの行動に顔を赤くしたり興奮していた者も見ていて心にダメージを与えられた。


「それでディアロは教室ではどんな感じなんだ?あれだけ強いと、どんなふうに生活しているのか気になるんだが?」


 ダイキが納得すると今度は三年が質問する。

 その内容にダイキは少しだけ困った顔になる。

 正直期待するようなものは無い。


「リィスがディアロに縛ってくれと言うまで皆と変わりありませんでしたよ?よくよく考えるとリィスがディアロに付きまとい始めてから嫌われ始めているような……」


 リィスが縄を持ち出して縛ってくれと言い始めた辺りから嫌われ始めていないかとダイキは思い出す。

 だが、それは教室内のクラスメイトだけかもしれないとも思う。

 正直クラスの皆はレイのことを応援していたしディアロと恋人になったことに喜んで祝福していた。

 だけどディアロへとリィスが縛ってくれと言ったあたりから微妙になっていた。


「なるほどなぁ。応援していたのに片方が浮気をしていたように感じて裏切られた気分なのか」


 その意見に納得するダイキ。

 応援していたのに裏切られたと感じたからこそ、もしかしたらディアロは敵意を持たれるようになったのかと想像する。


「でも俺から見るとリィスが勝手に付きまとっているようにしか見えないんですよね……。最初は何度か否定していたのに、それでも縛ってくれって頼んできているし」


 厄介なマゾだなとダイキの言葉を聞いて三年は思う。

 拒否をしても頼みこんでくるなんて自分だったら普通に嫌だ。

 もしかしたら、これもディアロのストレスになっているんじゃないかと思ってしまう。


「まぁディアロは向こうの頼みを無視してパシリをさせていますが」


 自分に縛ってくれ首を絞めてくれというマゾをパシリにさせている辺りディアロは思ったより図太いのかもしれない。

 それとも出来るだけ顔を見たくないからパシらせて自分から無理矢理にでも距離を離しているのかと想像する。


 そしてリィスはもしかしてワザとストレスを与えようとしているんじゃないかと考えた。

 そうすれば爆発してストレスを溜めた原因である自分に暴力を振るわれるかもしれないからだ。

 そこまで予想してストレスを与えるのは止めて欲しいと祈った。

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