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七話

「ふふっ」


「えへへ」


 リィスとルカは片方と同じ名前を持った年上の人に服を買ってもらってご機嫌のまま家に帰る。


「ルカ!」


 そしてルカの両親がリィスを突き飛ばしルカを抱きしめる。

 何をするのか分からない人殺しの子供が大切な娘と一緒にいることに危機感を持ったのだろう。

 まずは何よりも二人を引き離すことが大事だと両親は母親が娘を抱きかかえ、父親がレイの前へと二人を庇う様に前に立つ。


「何で、あの子と一緒にいるの!?朝にもう近づかないで言ったわよね!」


「………お母さんたちこそ、おかしいよ!何で親の罪を関係のない子供にも巻き込ませるの!」


「何を言っているの!?性格は一部分だけでも遺伝するのよ!何が起こるか分かったものじゃないわ!」


 自分を信頼してくれるルカに嬉しくなり、そしてその両親に嫌われていることにリィスは涙が出てくる。

 昨日までは家の中に入れてくれてクッキーをくれたりしたのに、今ではきっと家の中に入れてもらうどころか近づくのも文句を言われそうだ。


「ドラマで一緒に人殺しの子供がどうなったか見たじゃん!その時にお母さんも私にちゃんと親の罪を子供にも重ねないようにって言ったじゃん!それなのにリィスちゃんを否定するの!?」


「あの時と状況は違うでしょ!」


「同じじゃん!」


 抱きかかえられたまま確実にルカはリィスから離れさせられていく。

 そのことにリィスとルカは、ルカの両親に絶望する。

 ルカは自分の両親がリィスと仲良くすることを絶対に反対であることに、そしてリィスはこれでルカとはもう仲良くできないことに。




「さいっこう!」


 高校生のリィスは小学生のリィスの絶望した表情を見て歓喜に顔を歪める。

 事務員からもらったマントで後をつけていたが思ったよりも早く絶望した顔を見られたのは幸いだった。

 自分を味方してくれた者が引き離されるのが思ったよりも早くて幸運だと感じている。


「………それでも人目がつかないところでは仲良くするかもしれないのよね」


 だがルカはもともと朝に近寄るなと言われて仲良くする子だ。

 今、怒らても人目がつかないところで仲良くしてもおかしくない。

 だから期待をするのは両親ではなく学校の友達だ。

 もしルカが離れるとしたら仲良くしていた友達がリィスと近くにいることで危害を与えられてからだろう。

 その時のリィスの顔を見るのが非常に楽しみだ。


「…………それにしても、ちょっとだけ予想外」


 高校生のリィスとしては近所の皆が距離を取ることに少しだけ予想外だった。

 事件のことを知っていた癖に信じないと言って受け入れていたと思ったら距離を取り始めたのだ。

 結局、こんなものかと冷めた目を向ける。


「……………」


 小学生のリィスはルカの家族たちが完全に離れてから起き上がり自分の家へと歩いていく。

 その際に小学生のリィスへと向けられる視線は冷たかった。

 大人でも辛いのに小学生には更に辛いだろう。


「………ただいま」


 小学生のリィスが家に帰ると既に両親がいた。

 母親は基本的に家にいるが、父親が小学生のリィスより先に帰ってきているのは珍しい。

 リィスは首を傾げる。


「おかえりなさい」


「学校はどうだった………?」


「貴方!!」


 父親が小学生のリィスへと質問するが母親に怒られて止められる。

 小学生のリィスも今日はサボっていたから詳しく聞かれなかったことに一息つく。


「夕飯は用意してあるから食べておきなさい。私はこの人と相談したいことがあるから」


 母親はそう言って父親と共に別の部屋へと移動する。

 どうやら聞かれたくないらしくリィスとは少し距離を取ろうとしていた。

 そして


「まさか、こんなことになるなんて……」


「………」


 二人は頭を抱えて悩んでしまう。

 過去の過ちが書いてある記事をチラシと一緒に近所へとばら撒かれたことでクビになってしまったことが原因だ。

 職場では過去に事件を起こしたと知っても受け入れてもらったが、詳細な内容を周囲に知られてしまったせいでクビにせざるを得なかった。

 客商売だから共倒れになるのも他の職員に金を払えなくなるのも嫌だったらしい。


「…………これから、どうする?」


「…………誰も俺たちを知らない場所へと引っ越すしかないだろうな。田舎なら気付かれないかもしれないし」


 そうなると、どうやって金を稼いでいくかという話になる。

 リィスには色々と不便になってしまうが許してほしいと祈る。

 自分達の悪行のせいで子供にも被害がいくことに過去にいけるなら殺したいと本気で殺意を抱く。

 ここで互いを責めないのは過去に何度も何度も子供が生まれるまでやったことだ。

 子供が最優先と互いに頷き合って決めた。

 それは今も変わらない。




「…………運が良いわね」


 それを高校生のリィスは聞いていた。

 小学生と別れた後、姿を隠して後を追っていたが正解だった。

 この話を聞かなければ逃げられていた。

 どうやって、その話を潰すか考える必要がある。

 事務員にも相談するべきだろう。


「お父さん、お母さん………?」


 小学生のリィスが食べ終わったのか両親の元へと近づく。

 高校生のリィスはそれを尻目に憎い相手の家から出て行った。



「すいません、ちょっと良いですか?」


 翌日、リィスは事務所へと入る。

 今日も事務所は開いていて好都合だ。

 お陰で相談にも乗って貰える。


「どうしましたか?」


 リィスの呼びかけに応える事務員。

 リィスはいつも自分のことで精一杯だったから、さっきまで気付かなかったがいつも同じ者しかいない。

 他に働いている者はいないのか疑問だ。


「他に働いている者はいないんですか?」


「………?セイナがいますよ?」


「それ以外で」


 セイナさんがいると事務員が口にしたことに肩の力が抜けてしまう。

 本当にこちらが言いたいことをわかっていないのか疑問だ。


「それなら全員、クビにしましたよ」


「え?」


 全員、クビにしたと聞いてリィスは困惑する。

 まずは目の前の事務員が他の者たちをクビに出来る権限を持っていること。

 次に全員をクビにしたのにセイナさんが働いていること。

 更にクビにしたものたちから、この場所が漏れることだ。

 特に最後は復讐が失敗してしまうんじゃないかと危機感を抱いてしまう。


「心配でしょうけど安心しても大丈夫よ。クビにした者たちの記憶は消したみたいだから、ここがバレることは無いみたいよ」


 安心し、そしてそんなことが出来るのかと事務員を意味不明の存在として見るリィス。

 普通はそんなことは出来ない。


「ちなみにリィスさんも話せないみたいです」


 いつの間にそんなことをされたんだと身体を抱きしめて事務員から距離を取る。

 できないとは思わない。

 姿を消すマントを作って渡してくる時点で理外にいる。


「…………なら良いけど」


 取り敢えずは復讐を成せれば良いとリィスは自分を納得させる。

 クビになった者たちからバレないのなら、それで良い。


「ところで相談があるんだけど……」


 リィスはここに来た本来の目的を切り出した。




「ネットに晒せばどこに離れていても辛い目にあうと思いますよ」


 今の時代、ほとんどがネットが繋がっている。

 逆に繋がっていない場所を探すのが難しいぐらいだ。


「そうかもしれないけど、興味のない人だっているし……」


「そうですね。でも復讐をするために貴女はわざわざ引っ越し先まで行く………つもりですね。でもそうすると学生だから厳しいと思いますよ」


 それだけでなく孤児院ぐらしだから簡単に移動するのも難しい。


「どうすれば、この町に留められると思う?」


「そうですね。仕事をクビにさせられていたら、引っ越すのも簡単ですよね。時間があるとすれば引っ越しするまでの新しい住居を探したりする必要がありますし……」


 どうすれば良いんだと頭を抱えるリィス。

 引っ越してしまったら探さなくてはならない。


「………取り敢えず悪意を集中させてみますか?今なら相手は犯罪者ということで軽いことでも八つ当たりで攻撃するでしょうし。何をしても許されると勘違いする可能性もありますね」


「お願いするわ」


 事務員の提案にリィスは受け入れる。

 上手くすれば自殺か殺されるかもしれない。

 できれば、それを自分の目で見たい。


「………それと命の危険があったら、その瞬間を見れる方法は無い?」


 リィスの言葉に事務員は上を見て考え込む。

 そして待っていてくれと言って移動する。

 どうやら望みのアイテムがあるらしい。


「ねぇ、他の者たちはクビになったって聞いたけど貴女は違うの?もしかして恋人だったり?」


 そしてリィスは待っている間に気になったことをセイナに尋ねる。


「そうよ。恋人だからクビにならなかったんだと思うわ」


「へぇ」


 雰囲気で顔を赤くしていることが分かりリィスはニヤニヤとした笑みを浮かべる。

 他人の恋愛ごとだから詳しく聞きたい。

 事務員が来るまでに、どちらから告白したのか、デートは何処に行ったのか等、色んな質問をする。


「………ん?」


 セイナから聞いた答えに何か既視感を覚える。

 それを何か悩んでいたら声を掛けられて忘れてしまった。


「持ってきました」


 声を掛けてきたのは事務員。

 手には水晶と薬のようなものを持っている。


「これを飲ませて水晶を覗けば貴女の好きな状況の顔がリアルタイムで見れるようになりますよ。欠点として、これを飲ませなければいけませんが」


 そう言って見せられたのは錠剤らしきもの。

 そのぐらいなら姿を隠して飲み物に混ぜればバレないとリィスは喜ぶ。

 何よりも姿を消すマントがあるのだ。

 余裕で出来ると考える。


「…………貴方からもらったマントもあるから大丈夫よ!」


「慢心して失敗したら終わりですからね」


「そうよ。そのマントはいい加減にわかっていると思うけど姿を消すだけで、確かにそこにいるし音も消えないわ。それに見えないはずなのに事務員は貴女を当然のように抱きかかえたのよ?」


 セイナの言葉に事務員の身体の感触を思い出して顔を赤くするリィス。

 それを見てセイナは余計なことを言ってしまったと不機嫌になる。


「そ………それじゃあ、早速行ってくるので……!!」


 リィスはセイナの不機嫌な雰囲気を察して事務所から出ていく。

 残ったのは事務員と事務員に対して嫉妬の視線を向けているセイナだけだった。




 高校生のリィスは事務所から出て早速、憎い相手の家にたどり着く。

 姿を消して家の中に入ると両親が共にいる。

 一人はパソコンを使って何か調べており、もう一人は家事をしていた。


「………いつ飲み物を口にする機会があったら見逃さないようにしないと」


 飲み物に薬を混ぜるのは意外と面倒くさいとリィスは思っていた。





「………ただいま」


 小学生のリィスが帰ってきて、ようやく最後の一人が来たと高校生のリィスは一息を付く。

 両親には既に飲ませた。

 特に父親相手には楽に薬を飲ませることが出来、母親も運よく飲ませることが出来た。

 両者とも休憩や一息つく際に口にしていた飲み物に薬を入れるだけで済んだ。


「はい、これ」


 そして母親が飲み物を淹れて小学生のリィスに渡しに行く。

 運んでいる最中に薬を飲み物に混ぜたから多少、混ぜた際に跳ねてもバレないはずだと予想する。

 その際に母親やリィスにぶつからないように気を張る。

 決して事務員の言っていた、あくまでもマントは姿を消すだけという言葉を高校生のリィスは忘れていなかった。


「…………ふぅ」


 高校生のリィスは全員が飲んだのを確認して家から出ていき離れたところで一息を付く。

 そして水晶を覗くと家族三人の姿が見える。

 どうやら、ちゃんと成功していたらしい。


「これで何時でも確認できるわね」


 リィスは薬を飲ませれたことに安堵して後はどうやって引っ越すのを防ぐべきか考えていた。

 そして思いついたのか邪悪な笑みを浮かべると、もう一度、事務所へと向かう。



「ねぇ!変装道具無い!?…………あ」


 高校生のリィスが事務所に戻ると、事務員にセイナが抱き着いて甘えていた。

 その姿を見て顔を赤くしセイナはあたふたと慌てる。


「はい。これを使えば姿は帰れますよ。魔力を込めて望むだけで大丈夫です。わかっていると思いますがマントを被っていたら姿を消していますから意味が無いですからね」


 邪魔をしてしまったかと事務所から出ようとするリィスに事務員が引き留める。

 やはり既視感を覚えてしまう。

 恋人が不機嫌そうにしているのにマイペースに行動している姿にディアロと被る。


「ありがとう、ディアロ。これで復讐できるわ」


「…………?」


 事務員はディアロという呼び名に困惑する。

 突然、ここにいない聞いたことのない名前を出されて意味が分からないと言った様子だ。

 もし、ここにいるのが事務員だけだったらバレなかっただろう。


「……………!!」


 そしてもう片方のセイナは分かりやす過ぎるぐらいに反応していた。

 その反応にリィスは首を取ったという風に表情を歪める。

 これでバラされたくなければ五十万という大金を払う必要が無い。


「やっぱり」


 リィスはこの情報を使って脅そうとする。

 決定的な証拠は無いが確信していた。

 警察に頼んで調べて貰えば、こんな趣味の悪い事業も止めさせられるはずだ。


「ねぇ……?」


「俺は記憶を消せますけど、面白そうだから違うことをしますね」


 その言葉を最後にリィスは目の前が真っ暗になった。



「………ん」


 そして目を覚ますとリィスは縛られていた。

 かなり強く縛られていて逃げ出すのも難しい。

 そして縛り方が女性の身体の各部位を強調するような形で顔を赤くする。


「起きましたか?」


 目の前にはディアロだと思っている事務員。

 この姿を見られていることに恥ずかしなり、そして抱きかかえられた身体の感触を思い出し身体をもじもじと揺らす。


「えい」


「あだっ!」


 そんなリィスにセイナは蹴りを叩きこみ。

 事務員は写真を撮って呟く。


「SMかな?」


 亀甲縛りをされた女性が蹴られる姿をしっかりと取れたことを確認して呟いた言葉にリィスとセイナの二人は聞こえていなかった。


「取り敢えず写真を撮りますのでセイナは離れてください。余計なことを言ったらバラ撒くつもりですし」


 この姿を目の前にいる事務員なら、ともかく他にも見られると想像して顔を青くする。

 もしかしたら裸も撮られるのではないかとガチガチと歯を鳴らす。

 セイナも外道だとは思うが止める気は無い。


「何枚か撮ったら違う写真も撮りますのでセイナも着替えさせるのを手伝ってくださいね」


 事務員の言葉にセイナも頷く。

 その顔はとても楽しそうだ。


「それじゃあ、席を外しますので着替え終わったら呼んでください」


「分かっているわ。でも質問して良い?」


「何でしょうか?」


「犯さないの?」


 セイナの疑問にリィスは外道と視線を向け、そして事務員に犯されることを想像して顔を真っ赤にする。

 親友の恋人だが悪くないと思う。

 むしろ子供が出来て奪うのも良いのではないかと考えていた。


「セイナがいるのにですか?」


 事務員の言葉にセイナは顔を赤くしリィスへと勝ち誇った顔を見せる。

 当然、リィスは顔を見えないがどんな顔をしているのか理解できて青筋を立てる。


「何十枚も撮りますから早く着替えさせてくださいね」


 事務員の言葉にセイナは頷き、さっさとリィスの服を脱がしていく。

 同性だけど全裸にされて着替えさせられるのは恥ずかしい。

 その上、部屋の近くに事務員がいるかもしれないのに悪戯で色んなところを触られて変な悲鳴を上げてしまったことに恥ずかしくなる。

 事務員であろうディアロの恋人だからレイかもしれないが恥ずかしいから本当に辞めて欲しいとリィスは思っていた。。

 これ以上するなら、本気でディアロを奪ってやろうかと考えると更に悪戯が激しくなった。




「うぅ。ひどい目にあった………」


 リィスは何度も着替えさせられ写真を撮られた。

 水着やメイド服、巫女の格好と様々な服を着させられ無理矢理にポーズをとられて恥ずかしい姿を撮られる。

 かなりの数の弱みを握られた。


「あんまり騒ぐと、この写真をバラ撒きますので。探ろうとしないで下さいね?」


 事務員の言葉にリィスは顔を赤くして頷く。

 自分の恥ずかしい写真という弱みを握られているのだから当然だ。

 中にはえっちぃ写真もあり、それを目の前にいる異性が持っているということに倒錯的な気分になる。


「…………犯さないの?」


 あれだけ恥ずかしい写真を撮られたのだから、その気もあるんじゃとリィスは質問する。

 正直、何度聞いても信じられない気持ちがある。


「発情しているのかもしれませんが、俺は犯しませんよ」


 事務員は何度でも否定する。

 そして何度も聞かれるのは嫌だからとリィスを追い出した。





「ねぇ?結局、何で犯さなかったの?レイプした写真もかなりの弱みになると思うんだけど?」


 セイナは犯した後の写真の方が弱みになると純粋に思って質問する。

 本当に犯すとなったら不快でたまらないが、そちらの方が従うことが出来ると思っている。


「…………犯したら今度は俺に対しての復讐を企むでしょうし。そうなったら、もともとの復讐相手への憎しみが分散してしまいますしね」


 あくまでも復讐を成功させるために考える事務員にセイナはため息を出そうになる。

 レイもかなりの美人なのに手を出さない理由に何とも言えない。


「正直、犯すよりもコスプレさせて写真を撮って脅した方が言いなりにしやすいと思うんですよね?本人もたかがコスプレ写真で脅されているという理由で殺しに来るはずがないでしょうし」


 事務員の言葉にセイナは想像してみる。

 コスプレ写真を撮られたという理由で自分が殺そうとする姿を。

 そして犯されたという理由で事務員を殺そうとする姿を。


「………無いわね」


 特にコスプレ写真を撮られたからという理由で殺そうとする姿に有り得ないとセイナも頷く。

 リィスも同じだろうと予想していた。

 逆に目の前にいる事務員ではなく別の男に犯されたことを考えると確かに復讐をいつかするだろうと考えている。


「あなたの言いたいことは分かったけど………」


 セイナは冷たい目で事務員を見て上に乗っかかる。

 女の目から見てもリィスは事務員に欲情していた。

 正体も勘づいているみたいだし知らないところで何かしていたんじゃないかと疑う。


「ねぇ、何かヒントとか与えていた?」


「………それはこちらのセリフですよ。貴女が質問の度に身体を震わせているんですから。その反応で判断している可能性もありますし、さっきも反応していましたしね」


「マジ?」


「えぇ」


 それが本当だとしたらクビにされるんじゃとセイナは顔を蒼くする。

 何度もやっていたら恋人だとしても捨てられそうで怖い。


「捨てる気はありませんよ」


 そう考えた瞬間に事務員から否定される。

 あまりにもタイミングよく声を掛けられたために心を読めるんじゃないかと疑っていた。


「…………そういえば貴方って記憶を消せたわよね。正体がバレないように脅す必要ってあるの?」


「ありますよ。今、消したら復讐している記憶すら消してしま思想ですし。そうなったら復讐が見えませんし」


「………」


 事務員の記憶を消す魔法は、そういう仕様なのか。

 それとも単純に事務員の技量の問題なのか分からずに首を傾げる。

 そして、どこまでも復讐を見たいと言う欲を出す事務員に苦笑していた。

 だが同時にセイナも復讐を見たいと事務員と同じぐらいに思っている。


「ねぇ、どんな復讐になると思う?」


「復讐相手の娘と仲良くなったし、まずはそこから家族と仲良くなるとかでしょうか………?」


「裏切って絶望させるのね。最初から被害者だと告げて自分は許しているっていう嘘を吐く方法もありそうじゃない」


「たしかにそうですね」


 事務員とセイナはリィスがこれからどんな復讐をしていくのか想像して語り合う。

 一緒に遊んだ女の子がどうなろうとリィスにとってはどうでも良いことだった。




「うぅ………」


 リィスは孤児院にある自分の部屋にこもり顔を赤くしてうずくまる。

 ほぼ確実に男性である事務員に恥ずかしい格好で色んなコスプレをした写真を撮られた。

 他の男たちに撮られて持っていられると考えたらたまらなく嫌なのに事務員相手なら構わないと考えている自分にリィスは首を傾げる。

 そこまで関りが深いわけでも無いのに、どうしてか意識をしてしまっている。


「…………!!」


 リィスは不意に事務員の身体の感触を思い出して暴れる。

 女の子同士で抱き着いた時とは違う感触を何時でも思い出せれるぐらいには忘れられないでいる。


「あらあら」


「あらまぁ」


 リィスが帰ってきて部屋に直行したのを心配したスタッフたちが部屋を覗くが微笑ましそうに笑って仕事に戻る。

 思春期の女の子にはあることだと安心し、自分の若いころを思い出していた。



 小学生のリィスは朝、一人で登校する。

 今までは途中で友達が来て一緒に学校へと向かっていたが、そんな様子は一切ない。

 むしろリィスを見つけたら自分から距離をとっていた。

 そしてリィスから近づいても逃げるように離れていく。


「…………」


 仲が良かった友人も離れて行ってリィスは学校でも一人だ。

 離れたところからはリィスを見てヒソヒソと声を立てている。


「おはよう、リィス。大丈夫?」


 そんな中、ルカだけは事件のことを学校中に知られる前と同じようにリィスへと話しかける。

 リィスと仲良くしているせいで親からも叩かれて叱られたのに一緒にいて大丈夫なのかと驚いてしまう。


「え?」


「本当に嫌にならない?隠れてこそこそ悪口を言うなんて。子供の私たちには親が何をしていたって知るはずも無いのにね」


 本当に何も変わらずにルカはリィスへと接してくれている。

 彼女だけは味方だと信じてしまう。


「…………ちょっと!!」


 いつも通りに接してくれているルカを見て仲の良かった友人の一人がルカの手をつかんで強引にリィスから引き離す。

 相変わらず面倒見が良いと思い、そして彼女が助けてくれないことに悲しく思えてしまっていた。


「何でリィスちゃんと距離を取ろうとするの!リィスちゃんは何も悪くないじゃん!」


「それでもお父さんたちから距離を取れって言われたのよ!」


「お父さん、お母さんに言われたから距離を取るって自分の意見は無いの!」


 向こうでは激しく口喧嘩をしている。

 リィスのことについて喧嘩をしており、周りの者もルカの言葉にダメージを受けていた。


「………」


 リィスは自分のことだから止めるべきか悩んでしまう。

 リィス自身も友達たちと遊びたいのだ。

 ルカの言葉でまた以前のようにみんなと遊びたいと思っている。


「……………うるさい!!」


「あっ!」


 最後には引き離した友達がルカを押すのが見えた。

 このままでは怪我をすると思い、リィスはルカの後ろに駆け寄る。

 そのおかげでルカはリィスをクッションにして地面に倒れなかった。


「…………っ!!」


 リィスの行動に引き離した友達は顔を歪めて二人の前から走り去った。




「ありがとう。やっぱり、優しいじゃん」


「………うん」


 ルカは助けてくれた礼を言うがリィスは顔を暗くしていた。

 自分と関わらなければ押されて怪我をしかけることは無かったと思うと一緒にいるのは止めた方が良いのではないかと考えてしまう。


「ねぇ、あんな風に怪我をされてしまうぐらいなら………」


「えい」


 もう仲良くするのは止めた方が良いとリィスは言おうとしたらルカにデコピンをされる。

 いきなり何をするのかとルカの方を見ると怒っていた。


「何があっても私は貴女の前から離れる気は無いわよ。そんな薄情者になった気はないし」


「………でも怪我をさせられそうになったんだよ」


「大丈夫よ、両親は犯罪者だったかもしれないけど貴女は何も犯罪を犯していないんでしょ。何かされても訴えれば勝てるわよ」


 そう断言するルカにリィスも笑顔を見せる。

 ルカも学校でようやく見せたリィスの笑顔に嬉しそうに笑った。





「本当に邪魔」


 高校生のリィスは水晶から二人を見て呟く。

 特にルカという子に敵視する。

 彼女さえいなければ、小学生のリィスは既に絶望していたはずなのだ。

 絶望させるために、ありとあらゆる手段を使って引き離すことを決意する。

 まずは事務員が言っていた悪意を集中させるのをルカという少女に使うことに決めた。

 自分を味方してくれた友達が自分のせいで悪意をぶつけられたとなったら絶望して一石二鳥にもなる。

 今日の放課後、事務員にお願いしようと決めた。


「リィス、水晶なんて持って来てどうしたの?」


 そうしているとレイが話しかけてきた。

 それに対して、そういえばとセイナのことを思い出してリィスはカマをかける。


「レイ、今日も事務は空いている?」


「………事務?何の話?」


 誰にも気付かれないぐらいの一瞬だけビクッとレイは震える。

 そしてリィスは目の前にいるレイが震えたのは見逃さなかった。

 親しい仲であり目の前にいたのが原因だ。

 もし、どちらかでも条件が外れていたら気付かなかった。

 それだけ隠すのが上手くなっている。


「一瞬だけでも体が震えていたよ」


 お礼にアドバイスを送る。

 レイは今度は震えなかった。


「ねぇ、ディアロ。少し良いかな?」


「何?」


 リィスは今度は事務員の前に立つ。

 要件は当然、放課後のことだ。

 ここで内容を聞かれたくもないから場所を変えようと提案する。


「良いけど、ちょっと待って」


 ディアロは読んでいた本を机の引き出しに入れて立ち上がる。

 そして準備オッケーだとリィスの後ろを付いて行く。


「え?」


 途中、通りすがった生徒たちのほとんどはリィスとその後ろに着いているディアロの顔を見て振り返る。

 片方は嬉しそうな顔をしており、もう片方は面倒くさそうな顔をしていた。

 見ていた者たちはレイという学園でもトップクラスの美少女の恋人ということもあり、脅されているんじゃないかと心配になっていた。

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