六話
ざわつきのある声が聞こえてきてリィスあ目を覚ます。
時間はまだ六時。
まだ余裕はあるが嫌な予感がしてきて眠れない。
「お母さん、お父さん?」
二人はもう起きているだろうと挨拶をしようとするが返事が無い。
リビングにいるのだろうかとパジャマのまま向かう。
その間も胸に嫌な予感を覚えている。
「あっ、いた!」
両親を見つけて喜ぶが両親ともに暗い顔をしている。
何があったのかと疑問を持って二人へと近づこうとした。
「見るな!!」
その瞬間、父親に殴り飛ばされる。
急なことに驚き、そして殴られた痛みに涙が出てきた。
そして朝早くから周りの迷惑も考えずに泣き叫んでしまった。
「わるい!大丈夫か!」
父親が娘を殴ってしまったことに気付いて心配して駆け寄る。
だが娘のリィスは先程、殴られたことで父親に対して恐怖を覚えて更に泣き叫ぶ。
更に外からのざわめきの声が大きくなる。
「ごめんね。お父さんも貴方が嫌いなわけじゃないの。ただびっくりしてしまっただけなのよ」
母親も父親のフォローをする。
こんなことで更に誤解をされたくなかった。
「…………なぁ、やっぱり」
「うん。良い人たちだと思っていたけど、本当は最低な人たちみたいね」
中から子供の泣き声が聞こえる家を見ながら近所の人たちは声をこぼしていく。
家の壁の至る所には人殺しや金の亡者という文字が書かれている。
昨日までは無かったそれを一夜でやったのだと理解させられる。
無論、それだけで家の壁に書いてあることをやったのだと信じたわけでは無い。
集まっている者たちの片手には紙を持っていた。
「………酷いいたずらだと思ったけど事実みたいだしな」
それは昨日、リィスたちがポストに入れた紙。
素人目には捏造だとは思わない上に、信じなくても調べれば事実だとわかってしまう。
その上、犯罪者の家だけでなく、その近所の家にもスプレーで人殺しだと書かれている。
洗えば落ちるだろうけど手間や金がかかるかもしれない。
その元凶に敵意を強く向けてしまう。
「でも子供は可哀想だし引き取って保護をした方が良いのか?」
「止めとけって。こんな事件を起こした奴らの子供だぞ。金欲しさに殺されるかもしれないだろうが」
「そうそう。子供たちにも近づかないように言い含めないと」
「それもそうだな……」
大人たちは今も泣いている子供に対しても冷たい目を向ける。
可哀想と思う気持ちも少しはあるが、それよりも自分達の子供と自分達の身の安全の方が大事だ。
子供たちは仲が良いが、今度からは近づかないように言い含める必要がると頷き合う。
そして家の中にいる者たちが出てくる前に解散した。
「…………マジか」
家に戻った一人は早速、ネットワークで事件を調べる。
すると手に持っている紙と一字一句同じ記事が載っている。
「どうしたの?」
男の妻が朝食の準備を終えて急に部屋でパソコンを起動した夫に尋ねる。
まだ家の壁やポストに入っていた紙のことを知らない。
丁度良いと男は妻と娘を部屋に来るように言う。
「えぇ?ルカー!!お父さんの部屋にちょっと来なさいー!!」
「はーい!!」
母親の言葉にドタバタと足音を鳴らして近づいてくる。
リィスと仲が良いが距離をとるように言って悲しませると思うと辛いが娘のためだと自分に言い含める。
そしてそれは妻も同じだ。
相手の母親と仲が良いからショックを受けるだろう。
「どうしたの?」
「さぁ?」
首を傾げている二人にパソコンに乗ってある記事を見せる。
それに妻は驚いた顔をし娘はわからずに首を傾げる。
記事に書いてある名前は大人のものだからしょうがないのかもしれない。
友達の母親や父親の名前何て普通は聞かないだろう。
「これって……!!」
「そういうこと。あと彼女たちのせいで家の壁も汚れているから洗う必要がある」
妻は記事に書いてある名前に夫が何を言いたいのか理解する。
そして家の壁が汚れていると聞いて確認のために外へ出た。
「ルカ、もう二度とリィスちゃんとは遊ばないように」
「えっ、何で!?」
娘の反応に父親は予想通りだと思って説得する。
「これはリィスちゃんの両親が金の為に人を殺したという記事なんだ。その二人の娘だから一緒にいるのは危険なんだよ。もしかしたら殺されるかもしれない」
「そんなことないもん!リィスちゃんも、リィスちゃんのお父さんもお母さんも優しい人だもん!!」
「本当に優しい人だったら事件なんて起こさないよ。だから近づくのはもうやめなさい。お父さんはルカが死ぬのもお母さんが死ぬのも嫌なんだ」
「…………本当にリィスちゃんのお父さんとお母さんが人を殺したの?」
必死な父親の表情に確認のために質問する娘。
父親はそれに対して真剣な表情で頷く。
「お父さんもお母さんも、お金の為に殺されるかもしれないの?」
「そうだよ」
「……………………わかった」
自分だけでなくお母さんやお父さんも殺されるかもしれないと聞いて娘は父親の言い分に頷く。
リィスと仲良くしなくなるだけで家族が死なないのなら、もう二度と近寄らないことに決めた。
「………行ってきます」
泣きはらした娘が学校へと行くのを二人は見送ってレイトは拳を握って机へと叩きつける。
ライムも夫の気持ちがわかり深く頷く。
「今更、何で!?」
あれらから十年近く経っているのに今更襲い掛かってくることに不満を抱く。
出所して直ぐに似たようなことは襲い掛かってくると予想していたが今来たことに絶望する。
「…………本当に誰がやったのよ」
警察からは既に子供もいたが死んでいると聞いた。
それは逆恨みの復讐、もしくは相手に辛い過去を思い出させないための警察の嘘だ。
だが二人からすれば警察を疑う考えていないせいで誰が、こんなことをしたのか分からなくなる。
「可能性としては彼らの友人たちか………。今更、行動を起こすなんてな」
他人を金の為に殺したのだ。
未だに恨まれているとは心の片隅に思っていたが、記憶に薄れ始めるころにやってきたことに、それだけ恨まれているのだと理解していた。
「取り敢えずは、これらをやった犯人を見つけよう。そしてリィスだけは許してくれるように頭を下げないと」
レイトの言葉にライムも頷く。
自分たちが罪深いのは知っているが子供は違う。
何も知らないのだから許してほしいと二人は祈る。
「近所の人たちはどうする?」
「…………どんな誹謗中傷を受けても無抵抗でいよう。それだけのことをやったんだ」
「そうだよね………」
今更、過去の自分たちが嫌になる。
もし過去に戻れるなら殺してやりたい。
過去の自分達のせいでリィスがどうなっているのか想像もしたくもないが目の前で見せられてしまう。
「………悪いが、もしリィスが目の前で怪我をさせられそうになったら俺は反撃するぞ」
「何を言っているの………?」
レイトの言葉に信じられない目を向けるライム。
そんなことをしたら更に敵視させられてしまうのに。
「逆に娘に手を出したら人殺しが報復に来るぞ、と思わせた方が安全だと俺は思う」
「……………」
レイトの言葉に考えこんでしまう。
ただの暴力を振り回すと男と人殺しでは明らかに後者の方が怖い。
それに一線を越えているために、ある意味では最高のバックだ。
「そうね。私たちはともかくリィスのことに関しては反撃するようにしましょう」
自分達の過去は責められて当然だし、誹謗中傷を受けても当然だと思っている。
それでも娘だけは関係ないと二人は頷き合った。
「…………リィス!お前って人殺しの子供なのかよ!?」
一人の男の子が最初に学校の玄関に着いたリィスへと話しかける。
この男の子は普段からリィスにちょっかいを出していて嫌われている。
だからリィスも無視をして教室へと向かう。
「何これ!」
リィスは教室のドアに貼ってある紙を見て怒りを露わにする。
両親のことを人殺しと書いていて新聞のようにしていることに手の込んだ悪戯だと不快になっていた。
「なんだ。やっぱり嘘だったんだ」
リィスに近づいて最初に話しかけた男子がそう言ってくるが、やはり無視。
嘘だと思っていながら質問してくる態度に腹が立つ。
「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」
教室に入るとみんながリィスを警戒するような目で見てくる。
まさか、本当だ信じているんじゃないかと裏切られた気持ちになる。
「もしかして、皆信じているの?」
「………何を言っているの?その紙に書いてあることは本当じゃない。お父さんもパソコンで調べて見せてくれたし」
リィスへと一人が反論すると俺も、私も、僕もと声が上がってくる。
全員が近所の子供たちだ。
「ごめんね……。もうお父さんたちからリィスちゃん達には近づくなって言われたの」
そう言ってリィスから近づいても離れていく近所の友人たち。
友人たちの行動にショックを受ける。
それを見ていた近所に住んでいる以外の友人たちも本当だったと距離を取り始める。
昨日までは一緒に遊んでいた友達が自分から一斉に距離をとったことにリィスはショックを受けていた。
「…………」
そのまま席に座ろうとすると、それまでの距離でもクラスメイト達は距離を取り座った後も、それぞれの近くの席の者たちも出来る限り離れようとしていた。
その光景に泣きそうになりながらグラウンドを見る。
そこには昨日までは無かった穴だらけで、人殺しの娘など明らかにリィスを指示した文が書かれている。
それを確認してリィスは涙を流した。
「………っ」
涙を流したリィスを見てルカは父親と母親の言うことに聞くのが本当に良いのか悩んでしまう。
少なくとも今まで一緒に遊んできて、リィスは人を殺すような者には見えなかった。
確かにリィスの両親は人殺しかもしれないが、彼女は違うだろうと思う。
むしろ最近のアニメで人殺しの子供と罵られて育った子供が本当に人を殺すようになった姿とリィスがダブってしまう。
「…………来て!!」
そこまでルカは考えるとリィスの手を取って教室から出ていく。
途中で教師の声が聞こえてきた気もするが無視だ。
廊下を走り、玄関を駆け、そして学校の外へと走り出していった。
「はぁ……、はぁ………、はぁ…」
「………ルカちゃん?」
突然に腕を捕まれて学校の外へと連れ出されたことにリィスは困惑する。
そして感謝していた。
学校の皆から警戒と敵意と怯えられる目から逃げられたのだから。
「私はともかくルカちゃんは学校は良いの?サボったって怒られるよ」
「良いよ。アニメで今と似たような状況を置かれた子供が大人になって人殺しになるのを見たばっかりだし」
ルカの言葉にそういえばとリィスは思い出す。
自分も見ていたが、今の状況はたしかにそれだと顔を見合わせて笑ってしまう。
「これから、どうする?」
「お父さんとお母さんに関わるなって言われたから家はダメかもしれない。そっちはどう?」
「私の家も止めた方が良いと思う」
二人の少女は顔を見合わせて、どうするか悩む。
どちらの家も連れてきたことに怒られるかもしれない。
「………君たち、どうしたんだい?」
そんな二人へと一人の少年が話しかける。
その声に反応すると少年のほかに隣には少女がいた。
どちらも自分達よりは年上で心配そうに見える。
「私たちが言うのも何だけど遅刻?それとも何かあったの?」
心配そうに質問してくる二人に少女たちは何も言えずうつむく。
その態度に二人は顔を見合わせて頷く。
「お兄さんたちも学校をサボるから一緒に何処か行こうか」
「色々奢ってあげるから着いてきなさい」
二人は強引に少女たちの手を取り自分達の通う学校とは正反対の方向へと歩いて行った。
「私の名前はレイで、こっちがディアロ。よろしくね」
二人の自己紹介にリィスとルカは頭を下げる。
ファミレスでパンケーキを奢ってもらって恐縮している。
「えっと私はルカって言います」
「リィスです」
リィスと聞いて二人は驚いた顔を浮かべる。
自分達の友人と同じ名前を聞いて、こんな偶然があるのかと苦笑する。
目の前の年上の反応に自分たちのことを知っているのかと二人は身体を強張らせる。
「それで何で、あんなところにいたの?」
「えっと、その………」
女の人からの質問に本当は知っているんじゃないかと睨むが不思議そうに見られるだけ。
もしかして知らないのだろうかと疑問も浮かぶ。
だとしても知ったら自分の両親たちのように近づくべきではないと言われるのを警戒してしまう。
「あの?さっき、何で私の名前を聞いて反応したんですか?」
「あぁ、あれは私の友人に同じ名前を持った子がいるから、驚いたのよ」
レイの言葉にディアロもうんうんと首を縦にふって頷く。
その行動に嘘ではないと判断して二人も怪しむのは止める。
「もう一度聞くけど、どうしてあんなところにいたの?」
質問を再度、繰り返すレイに二人は口ごもってしまう。
時間はまだまだある。
話す気になるまでレイもディアロも待つつもりだ。
だが同時に話したくないと言うなら聞かないつもりでいた。
それをしないのは話したくないと目の前の少女が言わないからだった。
「実は………」
「うん、ご両親の気持ちは私も分かるわ」
「そうですか………」
「もし私の子供が生まれて過去に事件を起こした者の子供と付き合いがあると聞いたら不安で拒絶するように言うわ」
子供が生まれてという部分にレイはディアロへと視線を向け、そのことに気付いた二人の少女はショックよりも顔を赤くして見てしまう。
一緒に歩いていたし、もしかして付き合っているのかと想像してしまっていた。
「でも偉いわね。人殺しの娘ではなく個人としてちゃんと見るなんて。私の子供も貴女みたいに育ってほしいわ」
そう言って頭を撫でるレイにルカは顔を赤くする。
「そうね。せっかくだし私の友達のリィスにも会っていく?貴女と同じ名前だし、もしかしたら気が合うかもしれないわよ」
そして子供のリィスにも良い友達を持ったわねと頭を撫でながら確認する。
家族のことを聞きながら拒否する様子を見せることなく受け入れてくれたレイに心を許していた。
「それまでは何をしようかしら?」
何か良い案は無いかとレイはディアロへと向く。
自分よりは同性のレイの方が話しやすいだろうと黙って見ていたディアロは、その質問に考え込む。
正直、平日に小学生の女児二人と一緒に連れ歩いている高校生を見て怪しいと思われる。
今もきっとファミレスの店員も怪しいと思われながら見られていても、おかしくないと考える。
そんな視線も無い場所を考えるが思いつかない。
「…………ごめん、全然思いつかない」
正直に言うとレイは残念そうにため息を吐く。
いつもなら応えてくれるのに、それほど難しいのかと理解していく。
「小学生が平日に遊んでいることに視線が向けられるかもしれないけど、それでも良いなら何処でも大丈夫なんだけど」
「「…………」」
子供扱いされていることの小学生たちは不満な表情を浮かべ、レイは深く頷く。
「それでも良いなら一緒にゲーセンでも行くか?可愛いお人形とかあるし、それをクレーンゲームで取ったりリズムゲームなら好きそうだし」
可愛い人形と聞いて少女たちは目を輝かせる。
それを見てディアロはゲーセンに行くことを決めた。
ゲーセンにたどり着くと怪しい者を見る目で見られる。
高校生のディアロとレイはサボりだと理解しているが小学生がいることに首を傾げてしまう。
普通、小学生はサボりなど考えられないと思っている。
「さてと何をする?」
「えっと、アレをやりたい……」
ディアロの質問にルカはクレーンゲームに指を指す。
そこには可愛らしい人形がたくさん入ってありディアロもレイも微笑ましそうに頷く。
そしてレイと先に行ってもらい、ディアロは遊ぶために金を両替していく。
「可愛い人形がいっぱいね。私も遊ぼうかしら」
レイの言葉に少女たちは目を輝かせる。
年が違うのに同じものに対して可愛いと感想を抱いていることに同調意識を持ってしまう。
「はい。一人、十回まで」
「「「えぇ~」」」
ディアロは金を三人に渡すが回数を指定したこと不満の声を出される。
それでも変える気が無いことに残念に思いながらも頷く。
今日、初めて会ったのに我が儘を言いすぎるのはダメだと小学生なりに自重する。
「十回でも結構な回数だと思うけどなぁ………」
「そう?取れたらいわよ」
「取れなかったら?」
「………」
レイの言葉にディアロは確認すると目をそらされてしまう。
何度もやっても取れなかったら当然、悔しくなる。
取れないと投げ出したくなりもする。
「…………惜しい!」
「次は絶対に取る!」
少女たちは目を真剣にさせてクレーンゲームをしている。
両者合わせて二十回もやるのだ。
もし取れなくても満足するだろうとディアロは考えていた。
そして
「すごいな……」
「「えへへ」」
ディアロは本気で感心した声を上げる。
そのことに二人の少女は満足げに笑みを浮かべる。
二人の両手にはそれぞれ大きな人形を抱えていた。
「私もやるわ」
それを見てレイもやる気を出す。
自分も欲しいとディアロから渡された金を手にクレーンゲームへと挑んでいった。
「残念だったね………」
「えっと………。今日は運が悪かっただけです!」
レイは目当てのものが取れずに落ち込んでいた。
あまりの落ち込み様に少女たちは思わず慰める。
そして恋人のディアロを探すが女性店員に話しかけていてイラっとする。
「………何をしているの?」
「お姉さん、お兄さんナンパしているよ」
レイへとディアロのことを報告する。
そうすると確認のためにディアロを見て女性店員と話していることにレイは目を鋭くさせる。
ディアロはそのまま女性店員を連れて、レイたちの元へと来る。
「レイは何を取ろうとしていたんだ?」
女性店員を連れて来ての質問にレイは黙って指を指す。
そこには大きいペンギンの人形があった。
「らしいです。お願いできますか?」
「えぇ、構いませんよ。かなりの回数チャレンジしていただいたみたいですし」
ディアロの言葉に女性店員は頷く。
急に何の話をしているのだと首を傾げる。
「さてと………」
女性店員がクレーンゲームに近づくと、おもむろにケースを開けて人形を取り出す。
「え?」
「どうぞ」
「え?」
「ありがとうございます」
「え?」
「いえいえ。これからも当店で遊んでいただければ幸いです」
「え?」
女性店員はケースから取り出した人形を手渡すとディアロから離れていく。
そして渡された人形を手にしながら、何が起きているのかとレイはひたすらに困惑していた。
「良かったね」
ディアロの笑顔の言葉にレイは頬を引き攣らせ、思いきり殴った。
「何をしているんだお前は?」
ディアロは殴られたのに平然としており、レイは殴った手を抑えている。
まるで壁を殴ったような感触にレイはディアロを睨む。
「うるさい」
殴ったのに全く相手にされていないことにレイは不機嫌な表情を浮かべ、ディアロはそれを見て苦笑する。
「それじゃあ二人とも次は何をする?」
ディアロの言葉に二人の少女はこの状況で私たちに聞くのかとディアロを見る。
そして心配そうにレイを見た。
殴ったのはレイだが、殴られた本人は平然として殴った本人が手を抑えているせいでレイの方を心配してしまう。
「レイなら大丈夫。少しすれば痛みも治まるからね。ほらレイも行こう」
そう言って指し伸ばされた手をレイはつかむ。
まだ手は痛いが動かせない程ではない。
少女たちはこの二人は手を繋いでいるが本当に付き合っているのか疑問だ。
当たり前のように殴ったり手を痛めているのに心配しないでいたりと恋人同士に見えない。
「ねぇ、二人って付き合っているんですよね?」
「………えぇ。あれ?私、付き合っているって言った?」
「あれ?違うの?」
子供の話をしたときにディアロの方を向いたが付き合っているとは言っていないことを少女たちは思い出す。
それでも肯定をされたから付き合っていることは当たっている。
「それなのに殴ったり、怪我をしたかもしれないのに気にしないんですか?」
「…………えぇ。それでも私は彼が好きだし、彼も私のことが好きよ。本当に怪我をしていたら心配してくれただろうし」
怪我をしていないと判断したから、そこまで手を心配をしていなのかと少女たちは納得しようとする。
でも、どうやってあの一瞬で判断したのか謎だった。
「もしもし?」
『もしかしてディアロ?レイもいないけど、もしかして二人で学校を休んだの?』
「そうだよ。それでお前と同じ名前の小学生と知り合ったんだけど、学校が終わった後でも来ないか?」
『…………行くわ』
高校生のリィスは自分の名前と同じ小学生と知り合えると聞いて行くことを決める。
十中八九、憎い相手の子供だと想像し、どんな偶然だろうと口元を歪める。
『今は何処にいるの?』
「駅近くのゲーセンだけど?まだ学校は終わってないだろ?俺が言うのも何だけどサボるつもりか?」
『………そうね。学校が終わったらまた連絡するわ。その時に居場所を教えて』
偶然だろうと引き合わせてくれるお礼に高校生のレイはノートを二人の分まで取ろうと決める。
「わかった。急な予定が入って無理になっても連絡してくれ」
『わかっているわよ』
最優先は小学生のリィスと会うこと。
もし急な予定が入っても無理するつもりだった。
「あなたがリィス?私と同じ名前何て偶然ね」
学校が終わり、放課後になってから居場所を聞くとデパートだった。
そこには憎い相手の子供と、その子と同じくらいの年齢の子供、そしてディアロとレイの四人がいた。
憎い相手の子供を見て笑顔で偶然と言いながら頭を撫でる。
偶然というのは嘘だ。
私と同じ名前をワザと使われていることを知っている。。
私の両親を殺した者たちの子供が私と同じ名前を使っている事実に反吐が出そうになる。
「そこのお兄さんやお姉さんもだけど、小学生のころから学校をサボるのは良くないよ。明日からは学校に行くこと」
「「いや、お前(貴女)もサボったことあるじゃん」」
私の言葉に子供たちは不満そうに顔を逸らすがレイたちの言葉に顔を向ける。
その視線には呆れが混ざっている。
サボったことのある私に言われたくなかったのだろう。
片方はともかく、もう片方の視線には非常に腹正しい。
ディアロとレイにも余計なことを言うなと睨む。
「ごほん。………とにかく何で学校をサボったのか私に話してみない?同じ名前だし助けになるかもしれないわよ」
嘘だ。
本当は思い出させて辛い気持ちにさせるために聞いている。
思い出して泣いたりしても全く止める気は無い。
辛くても人殺しの子供として生まれたことに憎んでほしい。
「急にね……。みんなが私から距離を取ってね……」
段々と目に涙が浮かんでくる。
このぐらいの年頃の子供が味わうのは辛いのだろう。
それでも止める意思は全くなく、意図して優しそうな顔を維持して心の中では愉快だと嗤う。
「それでムカついたから私が学校から連れ出したの!」
もう一人の少女の言葉を聞いて忌々しく感じる。
この子さえいなければ、もっと絶望をしていたはずだと思うと邪魔でしょうがない。
そして、こんな良い子がリィスちゃんを助けたことに嫉妬を抱く。
そして可哀想に思う。
「あなたは優しい子ね。リィスちゃんも良い友達を持ったわね。一生の自慢ものよ」
こうして助けなければ、きっと苛められることもなかっただろうに。
人殺しの娘を助けたのだ。
きっと、この子もいずれ人を殺すかもしれないと排除のために動くかもしれない。
それを想像して同情し愉快な気分になる。
「普通は助けることなんて出来ないわよ。どうして行動できたの?」
そして興味を持つ。
他にも助ける者がいたら苦しめれない。
一人ならともかく、複数人がリィスを排除しようとしないなら心にダメージを受けないだろう。
そういう意味では彼女だけなら、むしろ幸運に思えてきた。
自分を味方してくれるたった一人の友達が自分のせいで傷ついたら酷くショックを受けるはずだ。
「その………テレビで見て……」
「は?」
思わず真顔になってしまった。
本音が出てしまったと焦るがディアロとレイも何度も首を縦に振って頷いている。
どうやら私と同じ気持ちらしい。
「テレビで人殺しの子供が将来、人殺しと罵り続けてきた人たちに怒って殺してしまう話で……。最後に人殺しの子供だからって、人殺しと罵り続けなければ人を殺すことは無かったかもしれないってあったのを思い出したんです」
「………」
そんな内容のテレビを今どきの子供は見るのかと時代の変化を感じてしまう。
私なんて夢いっぱい希望いっぱいのテレビを見るのが好きだったのに……!
「それってドラマ?」
「はい」
昼ドラを母親と一緒に見ていたのかな?
ドラマと聞いて、それしか思いつかない。
「そうなんだ。なら頑張った二人に私が服をプレゼントしてあげる。なんでも良いわよ。これを着て明日から学校も頑張りなさい」
「うん!」
「はい!」
それはそれとして学校へと行かせるように策を打っていく。
苛めらせるにせよ、まずは学校に行かなくては何もない。
どんなに辛くても学校に行かせるようにする必要がある。
「それじゃあ行くわよ」
二人の手を取って私はデパートの服屋へと向かう。
一緒に歩いている二人も嬉しそうで笑顔を私に向けている。
憎い相手の子供が絶望をするのなら、出費何てどれだけ掛かっても気にもならなかった。




