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四話

「何をしているんだ?」


 事務員は相談事務所に向かうと玄関の近くで座っているリィスを見つける。

 自分が来るまでここにいたのかと、ため息を吐き腕を持って立ち上がらせる。


「へあっ!?」


 リィスからすれば姿を消しているのに見つけられて困惑している。

 効果は実証済みなのに嘘なのかと思ってしまう。


「リィスさん。事務所の前で座っていたら気になるので入って下さい」


 そして掛けられた声にリィスは一安心した。

 見つかったのは、これを作ったと言う本人だからだと。

 正直に言って、これだけのモノを作ったと言うことに信じられない部分はあるが、そうでもないとあっさり見つけるのは難しい。

 多少なりとも強引に納得する。


「やっと来たのね。相談に乗ってほしいんだけど」


 事務員はその言葉に頷いて、まずはと事務所の中に案内した。



「ありがとう」


 リィスは事務員の手を引かれるままに事務所の中に入り温かいコーヒーを出される。

 それを口にして身体を温め一息をつく。


「その……私の両親を殺した奴らが私の名前を子供に使っていたんですけど、どうやったら苦しめられますか?」


「子供も巻き込むなら両親のしたことを広めて苛めを誘発させたらどうでしょう?」


 リィスの相談に事務員は即答する。

 あまりにも早く応えられたのでリィスの方が困惑しているぐらいだ。


「………相談して良かったと思いますが、それで苦しみますか?」


「最初は何も思わなくても苛めを苦にして子供が自殺すれば後悔すると思いますよ?」


 またもや間髪入れずに答える事務員。

 たしかにそれなら後悔はするはずだと思ってしまう。


「自分の悪行のせいでいじめられていると気づいたら、それで後悔するでしょうし、気付かなくても理由を知ったら後悔する。どうやって広めるかが最初の問題ですね」


 詳しい説明を受けてそれは良いとリィスも頷く。

 あとはどうやって広めるかだ。

 リィスはここまで意見を出してくれているなら、広める方法も考えているのではないかと思ってしまう。

 下手に考えるよりは、プロに任せた方が良い案が出ると思っている。


「貴方は良い考えが無いの?」


「俺よりも貴女は考えなくて良いんでしょうか?貴女の復讐でしょう?」


「より確実に復讐を成功させるなら他人の意見を聞いた方が良いでしょう?少なくとも貴方の方が見て来ていて経験は豊富なんだし」


 リィスの言葉に何も言えない事務員。

 確かにそうなんだが、まさか実行するとは思わなかった。

 とはいえ望まれたからには答えるつもりだ。


「事件の画像とかコピーしてばら撒けば良いんじゃないんですか?そうすれば本当だと信じてもらえるかもしれませんし。それに本当だから専門家に任せても逆に真実だと理解してくれるかもしれませんね」


「そうね!そうさせてもらうわ!」


 聞いたのは間違いではなかったとリィスは事務員の手を取って喜ぶ。

 聞いているだけでも、これは成功しそうだと喜んでいて事務員はため息を吐く。

 もう少し自分で考えて欲しかった。


「あれ?リィスさん、早い……ね?」


 レイは事務所の中に入ると事務員がリィスに手を握られて振られている。

 状況から何か助けになることを言ったんだろうと察する。


「どうしたのよ?」


「相談に乗って応えたら、こうなったんですが……」


 やっぱりかとレイは納得して掃除の準備をする。

 たまに事務員が相談に乗ると、こういったことがあり慣れてしまっている。


「あとチラシとか配るのとか作るのを手伝ってくれない?」


 そのぐらい構わないと事務員は頷く。

 レイにも当然、手伝ってもらう。

 一人では手が回らないこともある。

 その点、前の依頼者たちは楽だった。

 複数人が同じ者に復讐しようとしていたから人手は十分に足りていた。


「その代わりチラシとかは貴女が作ってくださいね?ここでは、そういったものは準備できませんし」


 それならしょうがないと少しだけ不満に思いながらリィスは頷く。

 パソコンとかコピー機とか設置する気は無いのだろうかと面倒くさそうだ。


「わかったわよ。高いお金を払っているんだから、それ以外はちゃんと協力しなさいよ!」


 事務員は当然と頷き、もう一人は苦笑する。

 レイからすれば事務員を動かすとするなら、あの位は破格と言っていいほどに安い。

 それでも学生からすれば、かなりの大金だということも理解できていた。


「あっ、そうだ。復讐を成功したかったら学校にもちゃんと行ってくださいね。何時からいたのかは分からないが下手に休んだりすると復讐の途中で捕まりますよ」


「そうね。平日に学校を休んで復讐をしていたら誰が復讐しているのか直ぐに予測されるわ」


 ふくれっ面になりながらも納得はするリィス。

 復讐さえできれば今ままでも、そしてこれからの人生を捨てても良いと思っているが途中で復讐を止められるのは確かに嫌だ。

 明日は学校に行くことをリィスは決める。


「そういえば、貴方たちは姿を隠しているが学生何ですか?」


「そうなんじゃないか?」


 今日、学校を休んだことを知られていると思ってカマを掛けたが何の反応もなく返される。

 正体を知れば、脅してタダに出来ると思ったし復讐の復讐をされると思ったのに残念そうにため息を吐く。

 だが、もう一人の反応にもしかしたらと笑みを浮かべた。



 リィスが事務所から去った後、事務員はレイを呼ぶ。

 彼女が事務所を掃除している姿を何となく、もう少し見てみたい気分だったが必要な事だと自分を抑える。


「何よ?」


「事務所にいるときは今度からお前のことをセイナと呼ぶけど良いでしょうか?嫌なら別の名を考えますが」


「へ……?」


 突然の事務員の言葉にレイは困惑する。

 なんで、そういったのか分からずにただただ首を傾げて事務員を見る。


「これから客が来るたびに名前を呼ばないのは不自然ですからね。よく考えれば今まで無かったのがおかしかったので受け入れてください」


「えっと、はい」


 困惑しながらもレイはこれから事務所ではセイナと呼ばれることに頷く。

 どうせ偽名だから構わない。

 それに、そこまで変な名前でもないのだから。


「ところで事務員はパソコンとか用意しないのかしら?あれらがあれば、いろいろと役に立つと思うんですけど?」


「あれらの外部と繋がる道具は居場所も特定させれやすそうだからですね」


 あぁ、ハッキングかとレイは納得する。

 確かにこの場所を隠すなら電波など発するものを使うべきではない。

 置かないのも頷いてしまう。


「それもそっか。それはそうとして明日、デートに行かないかしら?」


「……良いですよ」


 話を変えてデートに誘われるのを了承する事務員。

 付き合ったというのにデートに行った様子が無いと言われるのも面倒だ。

 すでに生徒会とはデートの最中に会っているが他にも定期的にデートをしている姿を見せる必要がある。

 事務員はそこまで考えてため息を吐く。


「どうしたのよ?」


 私とのデートが不満なのかと怒っているようで心配そうにレイは質問する。

 それに対して事務員は首を横に振って否定する。

 当然のようにレイはそれを信じられない。


「正直、クラスメイト達がウザいなぁって思いまして。何でデートをしている姿とか確認させなきゃいけないんですかね?このままキスとかも人前でしないのかといけなくなるかと考えると本当に嫌です」


「何でよ」


 少しだけ怒気を混じって問いただすレイ。

 事務員の言葉が不満らしい。

 何に対して怒っているのか分からない事務員は思いつく限り言い訳をする。


「クラスメイト達に言われたからデートをするなんて言いなりになっているみたいでいやですし、人前でキスとか恥ずかしいんですが?」


「何でよ」


「え?」


 言い訳をして続けられた言葉に事務員は混乱する。

 もしかしてクラスメイト達に言いなりになっても良いのかと想像して不快になる。


「………まぁ、良いわ。私もクラスメイト達に言われてデートをするのは嫌だし今は何も言わないわ」


 事務員はレイが何を言いたいのかさっぱり分からずにいる。

 だが目の前にいるレイが自分を見て唇に手を当てて艶めかしい表情で見ていることに何となく予想は出来ていたが目を逸らした。





「おはよう」


「えぇ、おはよう」


 学校の敷地内に入る前にレイがいた。

 ディアロは少なくとも自分が来る前にレイが学校に来ていることを理解した。

 何せいろいろなところからレイは視線を集めているし、ずっとあそこに立って何をしているんだ?と言う疑問の声も聞こえてきた。


「で何をしているんだ?」


 流石に校門の前でずっと立って目立っていた理由は気になる。

 だが質問をしてもレイは何も答えてくれない。

 ただディアロへと黙って近づくだけ。

 その異様な光景に誰もが口を挟めない。


「ん」


 そしてディアロへの胸元をつかみ、自分の元へと引き寄せるとキスをした。

 そのせいで歓声が男女問わずに響き、ディアロは目が遠くなる。

 まさか学校の生徒全員に見せつけるためにキスをするとは思ってもいなかった。


「これで貴方は逃げられないし、私の男だって知らしめることができたわ」


 絶対に逃がさないと言わんばかりに抱きしめられ、口元には昏い笑みを浮かべている。

 レイの笑みが見えていた者たちは今までの聞いていた話とは違う笑みを浮かべたレイに一歩引く。

 それはクラスメイト達も同じでディアロと付き合う様にまくしたてていた者たちは後悔をする。


「ふぅん」


 そしてディアロはどんな表情を浮かべているのだろうと確認すると後悔をした。

 まるで愉しそうな嬉しそうな、それでいて幸せそうな笑みを浮かべているのを確認して、この二人がさっさと付き合って良かったと思った。

 片方は恐らくかなり重く、片方は何か犯罪者になりそうなヤバイ表情を浮かべている。

 あれを見ると別の誰かと付き合う方よりはマシだと思ってしまう。

 レイが別の誰かと付き合ったら重い愛につぶされそうだし、ディアロの方は散々に遊んで飽きたら捨てそうだ。

 レイなら幸せそうな表情も浮かべられているし捨てられないだろうと希望を持つ。

 取り敢えずはディアロがレイを捨てて犯罪に走らないように監視する必要があると考える。


「取り敢えず学校というか皆が見ている前でキスは恥ずかしいから、もうしないでほしいんだけど」


「いやよ」


 ディアロの頼みを否定するレイ。

 これからは二人のイチャツキを面白半分ではなく、身の安全のために見る必要があると思い足り目が死んでいった。


 学校の中にある教室の中に二人でディアロとレイの一緒の席に座っている。

 その姿に昨日までは、からかう者も昨日まではいたが朝のこともあり何も言えないでいた。

 その事にディアロは恥ずかしいが同時にからかわれないことでプラマイゼロかと思っている。


「………よぉ、ディアロ」


 声を掛けてきた者へとディアロは反応する。

 そこには心配そうな表情をしている者がいた。

 更に周囲を確認すると他にも同じ表情で見てくる者がいる。


「何?」


 ディアロはどうかしたのかと疑問の声を上げるが全員、何も言わない。

 ただ言いたいことは全員一致しているようで顔を見合わせていた。


「ふふん」


 レイはディアロの膝の上に座って抱き着いている。

 その姿に顔を真っ赤にしている女子もいた。

 ディアロの目の前にいる者たちも同じだ。


「お前って何か犯罪を犯してないよな?」


「いきなり何を言っているんだお前?」


 犯罪を犯したことがあるか急に聞いてくる相手にディアロは冷たい目で見る。

 何でそんなことを聞いたのか理解できないでいる。

 そしてクラスメイト達はそんな様子のディアロを見て大丈夫だな、と安心した。

 それだけディアロのしていた目に恐怖を覚えていた。


「……ごめん。レイさんがディアロ君にキスした時の目がすごく怖くて」


 そんなに怖かったかと自分の目元をいじくりまわす。

 レイはディアロに抱き着くことに集中していて話を聞いていない。


「悪い。変なことを聞いて」


「良いよ、それぐらいなら」


 ディアロも謝罪をされて直ぐに許す。

 軽い雑談みたいなものだろうと思ったのもあった。

 戸惑いがちに話していたのは今も自分に抱き着いている彼女のせいだと予想する。


「それにしても、恥ずかしくないのか?」


「恥ずかしいに決まっているだろ。何で急にここまで抱き着いてくるんだ?」


「まぁまぁ、女の子に抱き着かれているんだし役得だと思えば?」


 クラスメイトの言葉にディアロも黙る。

 そのせいで、なら抱き着かれても良いじゃんと思われてしまう。

 それで不満だけを抱いていたら男子からも女子からも総スカンだ。


「おはようって何をしているの!?」


 昨日は休んだリィスが来て、教室でディアロとレイがしている行動に顔が赤くなる。

 リィスから見てみれば明らかに入っている。

 学校でするような行為ではない。


「抱き着かれているんだけど、リィスからも離れるように言ってくれない?」


 平然としているディアロにリィスは困惑する。

 本当に離して良いのか、邪魔じゃないかと戸惑っていた。

 その様子にクラスメイト達は同情する。

 もし頼まれていたら自分達も同じように手を出すことを戸惑っていた。

 頼んだ相手が自分でないことに心底安心して巻き込まれないように顔ごと視線を逸らす。


「ちょっ……!」


 周りに助けを求めようとして視線を逸らされたことにリィスは絶望する。

 いちゃつくようにクラスメイト達と一緒に先導したが実際に見て止めるとなると、だいぶキツイ。


「リィス、いい加減に離れてくれ」


「嫌よ。せっかくだから見せつけるわ。いちゃつけって言ったのはクラスメイト全員だし、どうせ止めないわよ」


 レイの言っていることが事実だから何も言えない。

 からかいの言葉がここで邪魔をしてしまう。


「それでも、いい加減にどけて席に戻った方が良いと思うんだけど。授業も始まるし、ずっとそこにいたら注意されるよ」


 その言葉にレイは教室にある時計を見るとディアロの上から離れる。

 素直に従ったことにリィスは安堵し、ディアロは痺れた足をさすっている。

 その行動にレイは怒りを覚える。


「ねぇ。私が重いって態度で言いたのかしら?」


「何を言っているんだ?お前が例え軽くても、ずっと乗られていたら神経やら圧迫して足がしびれるに決まっているだろ」


 軽くても重くても変わらないと言うディアロにレイはとりあえず納得する。


「あぁ、そう」


 ディアロは重いと言っていないが軽いとも言っていないのだ。

 後で二人きりになったら問いただしてやるとレイは決意する。


「おはよう、皆。ディアロとレイ、職員室から見ていたぞ。仲が良いのはいい事だが学校内では自重するように」


 職員室からでも見られていたということにディアロは顔を赤くする。

 レイも顔を赤くしているが満足げだ。

 自分がディアロと付き合っているということを学校内でも広めれたことが出来たのだから。


「ふふふっ」


 これでお互いに別の異性と二人きりでいたら善意で誰かが報告してくれるはずだとレイは考える。

 自分もそうなるがディアロのことを聞けないよりはマシだと思っている。


「「「「「…………」」」」」


 教師も含めて教室にいる者たちはレイの笑った声が聞こえて背筋を凍らせる。

 そしてディアロの方を見ると聞こえていたのにも関わらず平然としていた。


「どうしましたか?」


 教室にいる全員が自分を見ていることにディアロが疑問を口にする。

 それを聞いて教室にいる者たちは何で疑問に思わないのだとディアロに対して頭を抱える。

 浮気をしないようにと学校の生徒を使って監視体制を作ろうとしているのに気づいていないのかと心配になった。



「はぁ」


 学校の午前の授業が終わり昼休みになるとリィスはパソコン室へと向かいため息を吐きながら作業をする。

 ため息を吐いた理由は簡単だ。

 一番の友達だと自負していたのにレイがあんなにヤバイ女だとは気づかなかった。


 リィスはレイが休み時間の間にディアロに引っ付いていたことを思い出してため息を吐く。

 休み時間の間に教師や先輩が用事で来て見ているのにも関わらずにまるで自分の男だと示すように引っ付く。

 あれでは、いつか捨てられそうだと思うし、捨てられたとしてもしょうが無いと納得できてしまう。


「リィス?」


 そう考えているとディアロの声が聞こえてくる。

 今から自分がやることを見られてしまう可能性があると警戒してしまう。

 レイもいるから近くで見られてしまう可能性がある。


「ってあれ?レイは?」


「女友達とご飯を食べているよ。それよりリィスもどうしてここに?昼休みはまだ始まったばかりだから、ご飯も食べてないんじゃないか?」


「それは貴方もでしょ」


 ご飯を食べずに来たのはディアロも同じだとリィスは返す。

 リィスの方が早かったとはいえディアロもすぐ後に来た。

 昼食を食べなくて良いのかと思う。

 男子だから女子よりも食べなきゃ保てないのは孤児院で暮らす年上の兄を見て知っていた。


「大丈夫大丈夫。知りたいものがあったから、それを調べてコピーするだけだし」


「そう。私もよ」


 まさかの同じ理由にリィスはどんな偶然だとため息を吐いた。

 同じ日に似たような理由でパソコン室に来る何て本当に偶然かと疑ってしまう。


「貴方は何について調べているのよ?」


「最近の事件についてかな?なんか正当な復讐とか八つ当たりな復讐とか多いみたいだし。何となく調べようと思って」


 それは絶対に直ぐに終わらないだろうとため息を吐く。

 だがリィスは自分もどういう復讐があるのか興味がある。

 さっさと事件の記事をコピーしてディアロの方へ行こうと考えていた。


「…………」


 リィスはパソコンを動かし図書館で見つけた情報を急いで探す。

 日にちはかかるが印刷したモノを色々なところで少しずつコピーしていけばバレないはずだとリィスは考える。

 当然、事務員にも手伝ってもらうつもりだ。

 一人だと数日はかかるが二人、三人になるとその分は減るうえに他のことにも時間を使える。

 事務員以外にも他に働いていた者もいたはずだから、その人にも手伝ってもらう。

 手伝ってもらうために放課後に事務所に行こうと決意する。

 復讐の一歩目だとリィスは嗤う。



 ディアロはそんなリィスを見て楽しそうに嗤った。

 復讐のために確実に行動していくのを見るのはとても楽しい。

 しかも、それに直接関われるのだから愉快でしょうがない。


「…………終わったわ。私にも見せてくれない?」


 リィスがディアロの画面を後ろから見てくる。

 興味津々な姿にディアロはあらかじめ準備していた正当な復讐を成した者たちの事件を見せる。


「へぇ、こんな事件があるんだ?」


 目を輝かせて見ているリィス。

 後ろから身を乗り出している。

 ハッキリ言って後ろから抱き着かれているように見えてもおかしくない格好だ。

 体温や匂いを感じるほど密着している。


「………まぁ、良いか」


 自分がどう思われるか、この後に何があるか想像してディアロは受け入れる。

 可愛い女の子に密着されていることも、この後にレイの嫉妬が見れることも役得だと考えた結果だ。


「次を見せて」


 取り敢えず後ろに引っ付いている少女の指示に従ってパソコンの画像を動かしていった。





「そろそろ次の授業が始まるから終わらせるぞ」


 ディアロはそう言ってパソコンをシャットアウトして終わらせる。

 リィスが何か言いたそうにしていたが無視して画像を閉じる。


「………それじゃあ購買に行くけど、付いてくる?」


 ディアロの質問にリィスは腹を鳴らして答える。

 顔を真っ赤にしているが、ディアロは手を引っ張って購買へと連れて行った。


「………え?」


「レイさんと……」


「しょうがないのか……?」


 当然だがパソコン室にはディアロとレイ以外も後から来ていた。

 つまりは後ろからリィスが抱き着いているような姿も見せていたし、ディアロが黙ってそれを受け入れていたのも確認している。

 そして今も手を引いている姿もだ。

 何人かはレイに報告しようと考えていた。




「パンを買ってくるから待っていろ」


 私はディアロに手を引かれて付いて行ったのは購買。

 そこで言われたとおりに素直に待っている。

 こそこそと言われて見られていることに気付き、そういえばと冷や汗を流す。


「リィス、飲み物とパン。授業が始まるまでには食べきれるだろ」


「………ありがとう」


 彼女のいる男から食料を渡されている女。

 傍目から見ると、どう思われているのか考えることすら嫌になる。


「金額は?」


「奢りだから良いよ」


 目の前にいるディアロはパンを食べながら歩いている。

 今度は手を繋いでいない。

 その事に少しだけ安堵する。


「ねぇ、ディアロ?それにリィス?」


 教室に入るとレイが輝くような笑顔でこちらを見てくる。

 私は死んだと思った。


「何だ?」


 ディアロはレイの呼びかけに何も疑問に思わずに返事を返す。

 その姿にクラスメイトたちやリィスは何も怪しいと思わないのかとディアロを見る。


「何だ?って、あのねぇ」


 ディアロの反応にレイも怒りを消してしまう。

 呆れて怒る気力も萎えたせいだ。


「何もないなら次の授業も始まるし準備を先にさせてもらうぞ」


 ディアロの言葉にレイは呻いていしまう。

 一緒に見ていたクラスメイト達もディアロには冷たい視線を送っていた。


「はぁ」


 ディアロは次の授業のために準備をしながら残念そうにため息を吐く。

 本当はレイの嫉妬した顔を見たかったのだが、途中で怒りも消えてしまう。

 見たかったことがバレたのだろうかと思っていた。


「??」


 ディアロの近くの席にいた者たちはディアロの残念そうな表情に首を傾げる。

 ため息を吐いていたのも聞こえていて、何を残念そうにしていたのか理解できないでいる。


「お前ら授業を始めるぞ」


 授業が始める。

 そのせいで何で残念そうにため息を吐いたのか考えることも頭から飛んでいた。



「ディアロ、帰るわよ」


 結局、授業の合間もレイは自分の男だと示すように引っ付いていた。

 その際には午前と違いリィスに警戒した視線を向けている。


「わかった」


 現に今もディアロと手を繋ぎながらもリィスを警戒していた。


「何をしてたの?」


 ディアロとレイが教室から出た後にクラスメイトの一人がリィスへと尋ねる。


「パソコン室で興味深い調べものをしていたから見せてもらっていただけよ……」


 相手からとはいえ他人の恋人と手を繋いでしまったことは後悔する。

 無理矢理にでも外せば良かった。

 そうすれば授業中にも睨まれることは無かったのに。


「次からは気を付けなよ。レイもかなり嫉妬深いみたいだし」


「うん」


 本当に嫉妬深いと実感させられていた。

 たまにレイがリィスを睨む視線に命の危険を何度も感じていた。


「それじゃあ私も帰るね」


 そしてリィスの言葉にクラスメイトの一人は疑問を持つ。

 部活動は良いのかと。


「待て、部活はしないのか!?」


「悪いけど、それより優先したいのが出来たのよ。それが終わったら復帰するわ」


 部活より優先したいこととは何だと聞く前にリィスは教室から走り去る。

 いつも真面目に部活に参加していたリィスの行動に教室にいる同じ部活の生徒は困惑していた。




「………それで何をしていたのよ?」


「復讐方法について乗っていたサイトをリィスに見せていただけ」


 レイはディアロにリィスと何をしていたのか強めの口調で確認する。

 正直、最初から浮気の心配はしていなかった。

 それでも自分以外の女の子と近いのは嫉妬してしまうが。


 ディアロはそんなレイの姿に満足する。

 リィスと浮気だと勘違いされるような行動は全てレイの嫉妬した姿を見たいからだった。

 やはり嫉妬した姿も自分のことが好きだからするのだと安心してしまう。


「本当にそれだけ?」


「当たり前だろう」


 何度も疑いの声を否定して、ようやく納得してくれる。

 この時間すらもディアロにとって幸福な時間だ。


「さてとマントを被るぞ」


 ディアロはレイにマントを被るように促す。

 目的の場所へと尾けられないように姿を隠す必要がある。


「わかったわよ」


 マントを被りレイは姿を消す。

 そしてディアロもお内情に被って姿を消した。


「ねぇ。これってどうやって作っているのよ。気付かれないなんて、おかしい性能をしているとしか思えないんだけど」


 レイはそう言うがディアロからすればそうでもないと思っている。

 このマントはあくまでも姿を消すだけなのだ。

 他人とぶつかればそこにいるのは分かるし、匂いも消したわけでは無い。

 それに音も消えているわけでは無いのだ。

 犬などを使えば、どこにいるかわかってしまう。


「ふぅん」


 そのことをディアロが話すとそこまで万能でもないとレイも納得する。

 特に姿が消えているからとぶつかったら捕まってしまう。

 マントがあっても気を引き締めている。


「それでリィスのこと、どう思う?」


「どういうこと?」


 リィスのことを質問されるが抽象的過ぎてディアロは答えられないでいた。

 復讐が成功するのかの話か復讐のためにどれだけ大切なものを捨てられるかの話かと想像する。

 もしかしたら、それ以外の話かもしれない。


「リィスは陸上で将来有望な選手としても有名よ。それを捨ててまで復讐をすると思う?途中で止められる可能性はあるじゃない」


「それなら全部を捨ててでも復讐するだろ」


 ディアロの即答にレイは目を見開く。

 分かり切った答えだというようなディアロにどういうことかと疑問を抱く。

 何で、そんなことがわかるのか謎だ。


「事務所には何を捨ててでも復讐を決意した者しか入れないからな」


 ディアロの説明にそういうことかと納得する。

 それなら確かに失敗するかもしれなくても復讐を止めないだろう。


「今回は俺達も直接、協力することになるだろうし成功を祈らないと」


 リィスが特別価格で協力者を求めたのを思い出す。

 どれだけ成功率が少なくても彼が協力するなら成功しそうだとレイは考えていた。

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