第十五幕 仕事
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トオルは、新たな仕事を始め…
何故、こんな事になったんだろう?
トオルは考えつつも、ギアナ町にあるディランの屋敷にある、マキナ・アーサー製造現場で、マキナ・アーサーを造っていた。
電子回路模様が広がる、石柱の遺跡のような装置と、それを覆う木製屋根の工場。
まるで、産業革命時代の飛行船を造る場所のようなそこで、石柱の遺跡のような装置の前にある台座にトオルは立ち、両手を左右に広げると…。
石柱の柱から紫電が放出され、トオルの両手に集まる。
それが大きな電撃を纏う光球になると…
それを、トオルは石柱の装置の中央に向ける。
光球は離れて中央で一つになり、粘土が混ざるように人形を創造する。
これがマキナの下位版、登録者なら誰でも乗れるマキナ・アーサーとなる。
トオルが造るマキナ・アーサーは巨大で30メートルと大型だ。
通常のマキナ・マイスターがこのサイズを造るには、もの凄く体力を必要とするはずなのに、トオルは軽々と大型マキナを造る。
それも一つではない。
これで二十機目だ。
二十機も造り終えて台座から降りると…
「お疲れ様です」
獣人族の十代後半のメイド、ルリナが三時のおやつと紅茶を台車で持って来た。
トオルは肩をほぐして
「これで注文にあったマキナ・アーサーを造り終えたぞ」
壮観な三十メートル級のマキナ達が整列する工場倉庫にルリナが
「流石ですね」
トオルは渋い顔をして
「こんなに大量に造って何に使うつもりなんだ?」
ルリナが
「大きなドラゴンとの戦いがあるそうで…一般の兵士達にも配備したいというお願いがありましたから」
トオルは嫌な顔をして
「これが戦争に使われない事を願うよ」
どこか皮肉な言い方に、ルリナは暫し困った顔をするも
「さあ、どうぞ…」
と、三時のティータイムを用意した。
マキナ・マイスターは、人造のマキナ、マキナ・アーサーを造る事が出来る。
トオルは、特にデウスマギウスという機神を持っているが故に、大型のマキナ・アーサーを造るのがお手の物だ。
その才能をアルドが生かす事を提案して…ディランの屋敷で製造をしている。
王都のゴッドジオ級のドラゴンを倒したトオルの手腕は、かなり広まっているらしく、トオルに対してドラゴンの討伐を頼む者達が来る事がある。
だが…なぜか知らないが…トオルはこの国、ウィルフト王国の国王ルイード直轄の騎士団の騎士にもされていて、トオルを派遣するには国王ルイードの許可が必要となっていた。
勝手に。
何となくは…分かる気がする。
おそらく、アルドが国王に相談したのだろう。
アルドは貴族だ。国王ルイードと繋がっているのは当然だ。
別にそれが悪い訳ではない。
ただ…自分の知らない所で、自分の事が決められる事が気に入らない。
じゃあ、逆らって自分勝手にやっては、死ぬだけだ。
人はどんな大きな力を個人で持っても、結局は他人がいないと生きられない。
逆賊になって一生、追い掛けられる生活よりは、全然いい。
本も買えるし、ショッピングだって出来る。
住む場所は、あのエルフの里のままでいさせてくれる。
家はトオルの事を良く知っているフェーリルの家の隣だ。
フェーリルの子供達も遊びに来る。サリーアが良く来るが…まあいい。
平穏な生活の対価として、何処かに属す程度の対価なら十分だ。
仕事を終えてディランの屋敷で汗を流して帰ろうとする途中、主のディランが
「どうですかな? 夕食でも…」
トオルは玄関に手を掛け
「そんなに気を遣って貰わなくてもいいですよ」
ディランが
「独り身なのでしょう…。寂しい食卓で美味しい夕食を食べているとは思えませんな」
トオルは、ディランを向いて
「大丈夫です。隣に親戚のような友人がいますので…」
ディランが鋭い目に口元の笑みで
「何時までの隣の家の家庭に入り込んでは…迷惑なのでは?」
トオルが鋭い目をして
「どういう事を言いたいのですか?」
ディランは笑みながら
「貴方はいい大人だ。誰か伴侶を得て家族を持つべきでは…」
「余計なお世話です。じゃあ…」
と、トオルは玄関を開けて帰る。
ディランはフンと少し呆れた顔だ。
屋敷の外へ出る道を歩くトオルの前に、玄関までの道を仄かにテラスの魔導灯に魔力を込めているルリナが
「あ、お帰りですか…。お疲れさまです」
トオルは肯き
「ああ…お疲れ様。またな…」
「はい」
と、ルリナは微笑み見送った。
トオルは、玄関の門を潜って町に消えていく背中をルリナが見詰めていると、玄関の手入れをしていたディランの妻のマリアンが来て
「ルリナ。今日は…どうでした?」
ルリナが固い笑みで
「今日も、何時も通り、マキナ・アーサーを造って、食事して…終わりです」
マリアンがはぁ…と溜息を漏らし
「全く…どういう性格なのでしょう。まるで修行僧ですね」
ディラン達は、ワザとルリナにトオルの世話をさせている。
そうする事で、トオルの気持ちを和らげ行く行くは、ルリナを引き取って貰う算段だ。
マリアンが屋敷に入り、夫のディランを見つけて
「アナタ…あの根無し草の金を産む鶏は…。まだ…根付かないのですか?」
トオルの事だ。
ディランは額を抱え
「マリアンよ。ああ…いう男は、難しいのだ」
マリアンが呆れた顔で
「アルド様より、この地に根付くようにしろ…と頼まれたのでしょう! やはり、こちらから挑発するように…」
「止めろ! 余計に嫌気が差して、居なくなるぞ」
マリアンが
「ゴットジオ級を倒すマキナに、ネオデウスと、数多のマキナ・スティグマを持つ血族が…ここで絶えてはこの世にとって大損害ですよ!」
ディランが苛立ち気味に
「分かっている! 分かっているが…暫し待て」
「何時まで…ですか…」
「暫しだ」
そんな二人の企みを余所に、トオルはスチールフォースに乗ってエルフの集落、アラサーナの里に帰ってくる。
そして、最近、お金を出して立てた新築の家と馬車小屋にスチールフォースを入れると
「お帰り!」
と、隣のフェーリルの家からサリーアが出て来た。
「ただいま」
トオルは迎えて暮れたサリーアの頭を撫でる。
サリーアは嬉しそうな顔をして
「今日は、どんなお仕事をしたの?」
「ああ…ギアナ町にある大きなマキナ・アーサーの工場倉庫で、大型のマキナ・アーサーをたくさん造ったよ」
「すごい!」
と、純真な子供の驚きを向けてくれる。
そのまま、夕食を一緒にさせて貰っているフェーリルの家に行き、フェーリルの家族と共に食事する。
これが、トオルにとっての日常になっている。
夕食後、サリーア達と共に色んな本を読んだり、話をしたり、トオルが面倒を見ているように見えるが、トオルにとってはとても気楽な時間なのだ。
前の現代社会の日本では、何時も売り上げが厳しい事に嘆き、どこにも活路がなく、厳しい生き方しか出来なかった時代がどこか遠くに感じる程の、暖かく穏やかな日常があった。
異世界に来て、まさか…そんな日常を過ごすとは…存外、人生とは分からないモノだ。
子供達が寝る時間になって、トオルは家に戻ろうとするとフェーリルが
「なぁ…トオルが産まれた別の世界、日本ってどんな所だったんだ?」
トオルは頭を掻き
「こんな世界でしたね」
フェーリルとの昔語りが始まった。
自分の人生、その当時の世相、そして…産まれた世界がどんな仕組みで回っていたか…夜は更けていった。
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