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【番外編】結菜、小6最後の終業式の

 番外編そのいち。(けど“に”があるかは謎)

 これは私が小学校を卒業する少し前のこと。確か六年生の最後の冬休み前の、そう終業式の日。

 休みだぁ全てから解放されるぅ!、なんて受験のストレスよりも学校の、主にコトのせいでストレス過多な日々から逃れられると浮かれていた私。多分学校にいる誰よりも浮かれていた自信がある。顔には出てなかったけどね!

 ってそんなこと言いたいんじゃない。そう言えばあの時こんなことがあったなあと回想したかったんですよ。

 別に現実逃避してる訳じゃないですよ?


*****


 今日は六年生最後の終業式。明日から待ちに待った冬休みだ。

 内心のウキウキ気分を微塵も出さずにいつもと同じ時間にコトと一緒に登校すると、ナント私の下駄箱に真っ白い紙が入っていた。

(こ、これは少女漫画的展開であるラブレターか!?)

 と、一瞬でも思ってしまうのは仕方ないと思う。だって小学生だし。女の子だし。まあすぐにコトがいるのに私のところに来る訳ないじゃん、どうせ嫉妬に満ち溢れた呼び出し状か入れ間違えでしょと思い直した。……あーあ小学生っぽくない考え方だなあ……いつからこんなに擦れちゃったんだろう。特に呼び出し状の部分。

 まあいいや。考えたって仕方ないし。考えすぎても胃が痛くなるし。

「ユイ?」

 下駄箱を見つめて悶々と考えていたらコトが後ろから声を掛けてきた。どうやら思ったよりも固まっていたらしい。

 ハッと気が付くと素早く上履きだけを取り、お気に入りのスニーカーを入れるとバシンッと勢い良くフタを閉めた。さっきの紙が呼び出し状であれラブレターであれ、コトに知られたらヤバいと直感的に判断したが故の反射的行動だ。

(コトからの位置だと私の背中で中は見えなかったはず。大丈夫。落ち着け私)

「ユ、ユイ? どうしたの? 中に「あはは、ちょっとボーっとしてた」

 落ち着こうとするも、後ろから言わせてはいけない単語が聞こえ、慌ててくるっと向き直りながらありきたりな理由を言ってコトの言葉をぶったぎる。

「あっと、ゴメン。今何か言いかけてたよね? 何?」

 そしてすぐ不自然じゃないようフォロー。内心は胸がバックンバックンだけどね!

「んー……いや、何でもないよ。行こうか」

 私の様子に気付いた風もなく、にこっと笑って促すコト。良かった。改めて『中に何か入ってたの?』とか訊かれたら不自然にでも無理矢理教室に連れて行かなければならなかった。コトは結構シツコイ性格をしてるから、問い詰められて最終的には手紙だけでなく関係ないアレコレを洗いざらい喋らされるとこだった。おーこわっ!

「うん、行こうかー」

 無邪気さを全力で出し、教室へと二人で歩き出す。

(あーあ、後で隙を見て取りに来るしかないか)

 万が一のラブレターである可能性を捨てきれず、角を曲がる時にチラッと下駄箱を見る。と、そこには鼻を抑えて悶える人達が。多分さっきのコトの微笑みにやられたんだろう。ある意味ホラー。

(こんな変な学校ってウチだけだよなあ……)

 なんてつくづく思いながら、少し前を行くコトを小走りで追い掛けるのだった。




 ウチの学校の終業式の日は特に授業もなく、話を聞いて話を聞いて話を聞くだけで終わり午前中に帰る。……意味分かるよね? 校長の話から保健の先生に学年主任で最後に担任という風にずっと話を聞くだけの日ってことだよ。

 その途中でトイレ休憩はあるもののすごく疲れる。ちゃんと話聞いてる子っているのかな? 因みに私は夢の国に旅立つ派だ。

 まあそんなことはどうでもいいか。やっと隙を見てコトから離れられたんだから、早く例の手紙を取りに行かないとっ。

(………………あれ?)

 到着してすぐ意気揚々と下駄箱を開けるも、中にあるのは私の外靴のみ。そんなに広くもない中を隅から隅まで見回し、靴を持ち上げて下を見るも手紙があった痕跡すらない。

(……いや、たかが紙で痕跡云々は大袈裟だけど……)

 ない。どこにもない。

 ……これはアレか。入れるところ間違えちゃった系ですか。私はお呼びじゃないと。あーそーですか。

 フタをそっと閉めてボソッと「……教室に戻るか」と呟き歩き出す。

 いや、これでいいんだよ。面倒事じゃなくて良かったじゃん。そもそも小学生のうちからカレカノって必要ないじゃん。子供は子供らしく外で遊べば良いじゃん。大体付き合うと言っても遊びの延長みたいなもんでしょ。……多分。私にはそんな暇ないし、必要もないし。別にコトは告白されて良いなあとか少しも思ってないし。

 だから喩え私宛の手紙じゃなくても、く、悔しくないんだからねえ!




 あのあと半分魂が抜けている状態で教室へ帰り、特に問題もなく終わった。帰り道では話し掛けてくるコトに適当な相づちをしながら、受験生に恋なんていらないんだっ!とこっそりと落ち込んでいた。

 実はその時コトの方も心ここに非ずという状態で話しかけていたのだが、それに私が気付くことはなかった。

 それから冬休みに入ってクリスマスやら大掃除やらお参りやら数々のイベントを隣に住むコトと何故かほとんど一緒に過ごした。なんで休みなのにこんなにべったり一緒にいるんだろうとか思っているうちに下駄箱のことはキレイさっぱり忘れ、無事とは言い難いけれどまあ概ね何事もなく冬休みが終わった。

 うん。普段に比べたら格段に平和だったよ。ちゃんと冬休みを過ごせたよ。でもただ一つ、これだけは心に刻んでおく。

 コトとは二度と一緒にお参りはしない。

 何があったかは人混みの中にコト(トラブルメーカー)、ということから推して知るべし。今回初めて行ったんだけどさ……あー思い出したくもない。さてそんな教訓を胸に秘めて三学期初日の朝。

 ハハハ。あっという間だったわー、コトのおかげで休みが明けるのがすぐだったよ。

 いいけどね。それなりに楽しんでたしさ。数少ない友達に休み中の出来事とか変化を言い合うのも楽しみだったし。でもね。

 校内を歩いているだけで私へあからさまに目を背ける奴やコトに恍惚とした目を向ける奴が数名いるんだけど、そんな変化は知りたくなかったかなっ! くう、数少ないコトに毒されてない貴重な男子が……!

 ちょ、何で? 私何かしたかな!? 冬休み中に何の出来事があったのかなあ!

 引き攣りそうな顔を必死で抑えていたら、後ろで「っち、目障りな」なんて言葉がボソッと聞こえた。

 勿論言ったのはコト。君さあ、もうちょっと心の中に仕舞おうよ! 本音を! 隠せ全力で!

 幸いというかいつものようにコトの呟きは周りには聞こえていなく、愁いを帯びた(ように見える)表情に撃沈していく。

 もーやだ! 早く卒業してコイツから離れてやるうううう!


*****


 と、そんなこともあったんですよ。

 結局あの時は男子達の原因は分からないし、お腹痛いしで有耶無耶になって、卒業したらコトから離れられるしいいかと思ってたのに付いて来るし。……はあ。

 でね? 何でこんな回想をしたかと言うと、目の前にその似たような光景が広がっているからだよ!!

 中学三年生最後の年の正月明けに、頬を染めながら私とコトをガン見してくる子やまたもやコトに恍惚とした目を向けてくる子がね! ここ女子校で相手も女の子なんだけど! その目はなに、百合か? 百合を狙ってるのか!

 ……ああ、そうだよ、現実逃避だよ。いつものように逃避してたさ! つーか、思い出しちゃったんだよ、強制的に!

「……あーあ、女子校だったら野郎いないしユイを独り占めできると思ってたのにさー、いつの間にか女でも引っ掛けてるし。(強制魅了)が隣にいるのに惹き付けるユイってなんなの? それがユイの魅力のひとつでもあるけど、いちいち処理すんの面倒だし骨が折れるなあ。まあそれでもアノ時の男共よりはマシかな……」

 ――なんて呟いてるヤツの半分も理解出来ない言葉が聞こえてな! そう言えば今回も休み前に下駄箱に紙らしきモノが入ってたのを思い出したよ。後で取ろうと思ってたら無くなってたけどな!

 もーーー手紙も周りもコトもワケわかんない! というか解りたくもない考えたくもない!

 コトとの中学校生活は小学校よりも波乱万丈で神経休まらないんだからこのくらいは大目に見てほしい。

 だってさ地主の権力?とかで女子校に無理矢理コト(男子)を入学させたばかりか全寮制のせいで二人一組の同室は私になってたんだよ? ……あーあ、コネが届かない県外に行けば良かったなあ。

 そのせいで学校生活はおろか休みの日まで気を配らないといけなかったし。特に着替えとかトイレとか風呂とか。バレると本気でまずいから。なのに、なのによ!? なんでアイツ隙有らば私を襲ってくるの!? 自重しろよ、逃がさないって言ったじゃん、じゃないわ! あーもー中学のうちから貞操の危機なんて心配したくなかったなあ! 勿論私の貞操は全力で守った。

 ……こう考えると本当に二十四時間いつでも臨戦態勢だったんだなあ。よく胃に穴空かなかったなあ……。多分胃がストレスに慣れちゃったのかな? 何て言う肉体改造。ははっ、嬉しくない。

 でもそんな中学校生活ももうすぐおさらば。中性的な顔立ちは変わらない、むしろ更に磨き上がってきているけど肉体的には骨ばってきたから今度こそ高校は流石にコトでもこのまま女子校へ通えるはずない、はず。


 早く私を解放してよおおお!


*****


 ……しかしそんな願いも虚しく、結菜はまたしても気付いていなかった。

 流石に高校まで女子校に通うのは無理だと思ったコトが、あらゆるコネを駆使し結菜を然り気無く誘導して希望の進路であるこの学校の付属高校からこの学校の系列だけど共学の(・・・)高校に入学させようとしているのを。

(ユイには勝手に進路を変えさせて申し訳なく思うけど、やっぱり俺ユイとは離れたくないんだ。あの(小学生の)頃よりも絶対に逃がしてあげられないとこまで気持ちが育ってしまったから)

 コトがこんなに思っていることも。

(……だから、ゴメンな?)



 ――……結菜は、知らない。




 自分のことで精一杯過ぎて外堀を埋め尽くされているのに気付かないユイ。

 ユイに告白してから毎日アピールしてるのにスルーされて仕方なく周りを潰して固めているコト。

 ……二人がくっつくのはいつになることやら。


*****


 ということで二人の中学校生活が分かるような分からないようなお話でした!

 しかしユイは色々大変だなあ!(←他人事)



 いらないかもだけど一応。

 ユイは貞操云々について漫画とかである程度知ってるけど具体的にはよく解っていない。そこは普通の中学生。ただ襲われたらヤバいと本能的に理解していた。

 因みにコトはガッツリ知っている。いつ魅力が発症しても逃げられるように小学生のうちから嫌でも親に叩き込まれた。捕まったら終わりだぞと。

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