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8 霧の中



「おかしいな。」


「どうしたんですか?」


霧が立ち込めている中、不吉なことをつぶやいたアズル中尉に俺は聞く。


「怪物が出てこない。」


言われてみればもう夜は明けているのに、まだ一回も怪物に襲われていない。


出てこないほうが嬉しいが、それはそれで不気味だ。


その後も襲われることなく進んでいくうちに、


「島だ。」


ルズが呟く。


霧の中から現れたクレオメ島は異様な雰囲気を放っていた。


「下船の準備をしろ。」


アズル中尉はそう言うと、船の中に降りていった。



*** ***


クレオメ島の港に降り立った俺は静かすぎる光景に違和感を覚える。


隣にいるレピがポツリと呟く。


「.....誰もいない.......」


人の気配も無ければ怪物が暴れたような跡や、血の跡などもない。


「とりあえず、基地に向かう。固まって動け。」


アズル中尉はそう言うと歩き出す。


チェリーのうしろを歩きながらあたりを見渡す。


人の気配っていうかまず、生物の気配がしない.....


だだ、風の音だけが聞こえてくる。


舗装されている道を歩いていると突然アズル中尉が立ち止まる。


「?」


アズル中尉が立ち止まった理由はすぐに分かった。


「人.....」


銃を持った一人の男性が倒れていた。


思わず息をのむ。


エラがしゃがんで脈の確認をしていたが、立ち上がると首を振る。


「そうか。」


アズル中尉は呟くと歩き出す。


俺の銃を握る手に力が入る。音が周りに聞こえるんじゃないかというぐらい、心臓がドキドキしている。


しばらくするとアズル中尉がボソリと言った。


「ついたぞ。」


霧の中にただずむ巨大な基地が俺たちを見下ろしていた。



*** ***



近くまで来て、最初に気づいたのは変な匂いがすることだった。


なんと言えばいいかわからないが、何かが腐ったような匂いだ。


チラリとうしろを振り向くと、レピがなぜか少し険しい顔をしている。


「?なぁ、レピ.....」


どうしたのか聞こうとしたとき、チェリーが


「扉が開いてる.....」


ふと気づく。匂いは扉の奥からしている。


アズル中尉は開いたままの扉を見つめていたが、


「裏口から行く。」


「?」


なんでだ?扉開いてるのに。


同じく、チェリーとルズも不思議そうな顔をしている。


少し歩くと、裏口の扉にたどり着く。


スミス少尉が扉を開けるとアズル中尉を先頭に、全員基地の中へと入る。


荒れてるな.....


床には何かの道具や食事、武器など様々な物が散らかっている。


だがやはり、血の痕などはない。


アズル中尉について行きながら階段を上ったとき、さっきの悪臭が鼻に届いた。


一歩一歩進むたびにひどくなっている気がする。


アズル中尉が急に、とあるドアの前で立ち止まる。


何か考えるような顔をしていたが、意を決したようにドアを静かに開けた。


ドアの先には網目状の歩廊が左右に続いていて、真ん中が吹き抜けになっていた。その先の一階を見た瞬間

ーー


なんで.....こんな.....


吐き気を催すような光景に全身から血の気が引く。


目の前には、二階まで届くような大量の死体が山のように積み重なっていた。



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