4 少しの平和
「平和だな〜」
甲板に寝転びながら俺は呟く。
港を離れた俺達は海を順調に進んでいた。
今から怪物出没地域に行くとは思えないぐらい平和な空気が静かな船に流れている。
隣では今にも眠ってしまいそうになっているレピが一生懸命本を読んでいた。
眠いなら寝ればいいのに、どうしても本を今読みたいらしい。
ぼんやり見えていた港はだんだん遠くなって、ほとんど見えなくなっている。
「あの、ほんとに寝なくていいんですか?」
目がほとんど閉じかけている、レピに思わず聞く。
「大丈夫です。」
レピはそう言うが、ほとんど閉じかけた目では、本をちゃんと読めているか怪しい。
レピがポツリと呟く。
「.....いつ死ぬかわからないので。」
その言葉に俺は黙り込む。
その一言には寂しさが滲んでいるような気がした。
今まで普通に生きてきて、俺はあまり死というものを意識したことはなかった。
レピは、たくさんの死を見てきたのだろうか。
重たい沈黙を破るように、甲板を歩いていたエラが突然目の前で転倒する。
「大丈夫ですか!?」
俺は思わず立ち上がる。
「大丈夫、大丈夫〜」
エラはムクリと立ち上がる。
船の操縦をしていたスミス少尉が急に、
「なぁエラ、お前この船に乗るたびに1回はコケてねぇか?」
「そうだねー甲板が滑りやすい材質なのかな〜?」
「コケてんのはお前だけだから違うだろうな。」
スミス少尉の隣で謎の機械をいじっているアズル中尉が言う。
「え〜?そうかなぁー?」
「お前の靴がダメなんだろ。」
スミス少尉があくびをしながら言う。
緊張感のなさすぎる会話を聞いていると、怪物出没地域という危険すぎる場所に行くという気がしない。
ふとあることに気がついて俺はスミス少尉に聞く。
「この船に乗るたびにっていうことは他の船に乗るときはコケないんですか?」
「いや、エラはこの船にしか乗らねぇ。」
「そうですか.....」
ふと突然スミス少尉がアズル中尉に
「アズル。今日何時に起きた。」
タ、タメ口!!?
「4時半。」
アズル中尉はタメ口について何も言わず返事をする。
「相変わらず早起きだな....」
アズル中尉のほうが階級が上なのになぜタメ口.....?
驚いている俺に気づいたレピが、
「二人は昔から仲がいいらしいです。」
「なるほど.....」
てか、4時半ってはや!
穏やかな空気の中で、怪物出没地域に向かうという緊張感を漂わせているのは険しい表情で水平線を見つめ
ているアズル中尉と、武器の手入れをしながらピリピリした空気を発しているルズだけだった。
チェリーは俺と同じように、甲板に寝転んで暇つぶしによく遊んでいるルービックキューブを手の中でクル
クル回している。
穏やかな空気と1%の緊張感を乗せた船は海を進んでいった。




