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「婚約破棄?喜んで!」元銀行員OLの絶対監査で辺境大改革!〜氷の公爵の極上溺愛と最強兎の物理ざまぁで元婚約者は完全崩壊〜  作者: 月神世一


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EP 6

地下帝国ルートの監査と論破ゲーム! 毒舌剣士の難題も、元・鬼監査OLの完璧な論理の前に完全降伏ですわ

ガバン商会を合法的に排除し、ゴルド商会およびタローマンという大企業との直接取引ルートを確立したことで、ポポロ村の財政はかつてないほどの潤いを見せていた。

しかし、元・メガバンクの鬼監査OLである私、ミレイユ・アークライトの改革はこれだけでは終わらない。

「次の課題は、村の防衛網の強化と、農地拡大のための良質な『農具・建築素材』の安定確保ね」

村の長閑な道を歩きながら、私は片手に持ったバインダーに目を落とした。

私の右側には「ミレちゃん、足元に石があるよ! 蹴り飛ばそうか?」と過保護に護衛してくれる親友のキャルル。

そして左側には、「君の仕事に取り組む真剣な横顔も、ため息が出るほど美しいな」と、今日も帝都の仕事を光の速さで終わらせてやってきた氷の公爵・ユリウス様が並んで歩いている。

「ポポロ村はドンガン地下帝国と友好条約を結んでいますよね。あそこのドワーフたちが作る最新技術や強固な素材を、もっと効率よく輸入できないかしら」

「それなら、適任者がいるよ! 村外れの工房に住み着いてる『ネギオ』先生なら、ドンガン地下帝国との太いパイプを持ってるから!」

キャルルの案内で辿り着いたのは、畑の隣に建てられた立派な鍛冶工房だった。

そこには、全身が緑色の植物で構成された人型の樹人ポーンが、優雅に椅子に座って『ポポロシガー』を燻らせながら、『ポポロ・コーヒー』を嗜んでいた。

「……ほう。キャルルの嬢ちゃんと、ウワサの公爵サマ。それに、最近村の金回りを劇的に変えたっていう、元伯爵令嬢の財務顧問サマか」

彼がネギオ。

エルフを守護する植物兵器『ポーン』の突然変異体であり、なぜか『ドンガン地下帝国鍛冶師通信講座1級』と『ルナミス帝国通信講座・経済講座1級』をダブル取得しているという、超インテリなはぐれポーンだ。

彼の傍らには、鋼鉄すら切り裂き、無限にニョキニョキと伸びるという伝説の魔剣『ネギカリバー(※見た目はただの巨大な長ネギ)』が立てかけられている。

「ネギオさん。初めまして、ミレイユと申します。単刀直入に申し上げますわ。ドンガン地下帝国からの最新の魔導建築資材と、あなたのネギカリバーから採れる超硬質ネギ素材を、村の定常取引ルートに組み込ませていただきたいのです」

私が名刺代わりに事業計画書を差し出すと、ネギオは紫煙をふぅっと吐き出し、口角をニヤリと吊り上げた。

「お断りだね」

「ネギオ! ミレちゃんのお願いが聞けないの!? トンファーでそのネギごと薪割りにしてやろうか!」

即座にブチギレたキャルルがマッハの速度で飛びかかろうとするのを、私は片手で必死に制止した。

ネギオはキャルルの殺気にも動じず、極めて理知的な、そしてどこか小馬鹿にしたような瞳で私を見る。

「アンタが優秀なのは知ってるさ。だがね、オレは論理と知略を愛するインテリ鍛冶師だ。ただ金を積まれたからって、大事な素材と地下帝国への紹介状を渡すほど安売りはしない。……オレの『論破・説法ゲーム』をクリアできたら、考えてやってもいいぜ?」

「論破・説法ゲーム、ですか」

「そうだ。アンタの知略が、オレの設ける『論理的課題』を凌駕できるかどうか、試させてもらおうか!」

ネギオの言葉に、ユリウス様が不快そうに眉をひそめた。

「無礼な植物だな。私が財務卿の権限で、地下帝国の王に直接話をつけてきてもいいのだが?」

「お待ちください、ユリウス様」

私はユリウス様を制し、ふふっと余裕の笑みを浮かべた。

前世のメガバンク時代、融資の引き剥がしや不正監査の折に、海千山千の悪徳経営者たちとどれほど「論争」という名の殺し合いをしてきたと思っているのか。

「面白いですわ。そのゲーム、受けて立ちます」

「威勢がいいね。じゃあ問題だ」

ネギオはポポロシガーの灰を落とし、鋭い視線を向けてきた。

「今のポポロ村の経済成長は、アンタの『絶対監査』と『大企業とのパイプ』という一極集中の属人的なバブルに過ぎない。もしアンタがこの村を去るか、あるいは病で倒れた時、村の経済は一瞬で崩壊する。そんなハイリスクな『砂上の楼閣』に、オレのネギカリバーと地下帝国の最新技術という『長期的な資本』を投資する正当な理由を、オレが納得できるように論理的に説明してみな」

確かに、村の発展が私個人の能力に依存しているという指摘は、投資家視点としては極めて鋭い。

だが、その程度の「リスクヘッジ」など、私の事業計画書にはとっくに組み込み済みだ。

「……ふふっ。ネギオさん、一つ前提が間違っておりますわ」

「何?」

「私が倒れたら崩壊する? いいえ。私が構築した現在のシステムは、『私がいなくても回る』自律型のサプライチェーンです」

私は【絶対監査】のスキルを発動し、空中に財務データと流通経路のホログラムを投影した。

「ご覧なさい。タローマンとゴルド商会との契約には、利益の15パーセントを『自動再投資ファンド』として村のインフラ整備と人材育成に回す条項が組み込まれています。さらに、ネギオさんから提供していただく地下帝国の最新防衛資材……これを組み込むことで、ポポロ村の『地政学的リスク(他国からの侵略や野盗の被害)』は現在の80パーセント減になります」

「ほう……」

「投資に対する最大のリスクは、村の崩壊ではありません。『今この安全かつ高利回りの独占市場に、あなたが資本を投下しないことによる【機会損失オポチュニティ・ロス】』です。あなたが投資を渋れば、私はルナミス帝国の本国から魔導資材を引っ張ってくるだけ。つまり、ネギオさんと地下帝国は、今後100年続くポポロ村の莫大な継続利益から完全に弾かれることになりますわ」

私はネギオの目を真っ直ぐに見据え、最後の一撃を放った。

「投資とは、不確実な未来への信頼ではなく、徹底した計算による『必然の勝利』に乗ることです。私が作ったこの完璧な勝利の船に、ただ乗り(フリーライド)する権利を差し上げているのです。……これ以上、論理的な正当性が必要ですか?」

しんと、工房の中が静まり返った。

ネギオはポポロシガーを咥えたまま、目を丸くしてホログラムのデータと私を交互に見つめている。

やがて彼は、フッと肩の力を抜いて、痛快そうに高笑いを上げた。

「……あっはっはっは! 完敗だ! こりゃあ恐れ入った。属人化のリスクをシステムで相殺し、さらにオレに『機会損失の恐怖』を突きつけてくるとはね! 見事な手腕だ、財務顧問サマ!」

ネギオは立ち上がると、自慢の『ネギカリバー』をスパパパンッ! と手際よく輪切りにし、大量の超硬質ネギ素材を麻袋に詰めて私の前に差し出した。

「オレの負けだ。このネギ素材と、地下帝国への特級紹介状はアンタに預ける。ポポロ村の防衛網だろうが地下シェルターだろうが、好きに作りな!」

「ありがとうございます。有意義なディスカッションでしたわ」

私が微笑んで受け取ると、ネギオはどこからともなく怪しげな小瓶を取り出した。

「アンタ、気に入ったぜ! 仲良くなった記念に、特別にこの『ロイヤル皇帝カンチョウ液』を尻から注入して――」

「結構ですわ!(即答)」

私は食い気味に拒否し、キャルルが「ミレちゃんの尻に何する気だ変態植物!」とネギオを蹴り飛ばすのを横目に、工房を後にしたのだった。

「……本当に、君という女性は底が知れないな」

帰り道。ユリウス様が、呆れと、それ以上の深い熱情を込めた瞳で私を見つめていた。

「あの偏屈なインテリポーンを、真っ向からの経済論理で捻じ伏せるとは。君が帝国の国庫に入らなくて、本当に良かった」

「えっ?」

「君が敵に回っていたら、私とて財務卿の座から引きずり降ろされていたかもしれないからね。……やはり君は、一生私の隣(手元)に置いておかなければならないようだ」

ユリウス様は私の腰にスッと腕を回し、自分の胸へと引き寄せた。

彼の心臓の音が、私の背中越しにトクトクと力強く伝わってくる。

「ゆ、ユリウス様……っ、キャルルが見てますから……っ!」

「構わないさ。私の君への愛は、すでに村中に知れ渡っているからね」

涼しい顔でとんでもないことを言う氷の公爵様に、私はもう顔から火が出そうだった。

 * * *

その頃。

私たちが平和な村の発展と、甘い(?)日常を謳歌しているポポロ村の国境付近。

「急げ! 目標はポポロ村の村長室! ミレイユ・アークライトを何としても捕縛し、我が領地に連れ戻すのだ!」

セドリックが全財産(借金)を叩いて雇い入れた、ルージュ家の非合法な私兵部隊・約三十名が、土煙を上げてポポロ村へと迫っていた。

彼らはまだ知らない。

この村には、絶対的な権力でミレイユを守る『氷の公爵』と、ミレイユを傷つける者を物理的にマッハで粉砕する『ヤンデレ最強兎』が待ち構えているという、絶望的な事実を――。

読んでいただきありがとうございます。

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