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「婚約破棄?喜んで!」元銀行員OLの絶対監査で辺境大改革!〜氷の公爵の極上溺愛と最強兎の物理ざまぁで元婚約者は完全崩壊〜  作者: 月神世一


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EP 7

夢を食い物にする悪党を、私は絶対に許しませんわ!【絶対監査】が暴く極小文字の罠と、元・鬼監査OLの絶対論破

朝の静けさを切り裂いたバインダーの衝撃音。

ポポロ川の河川敷に、散らばる羊皮紙の束と叩き落とされた羽ペンが転がる。

「きゃっ!?」

「ぬおっ!?」

「ミ……ミレイユプロデューサー……っ! キャルルさん……!」

呆然と目を見開くリーザの前に、ミッドナイトブルーの美しい衣装を身に纏ったミレイユが静かに歩み出た。

その隣には、ダブルトンファーを構え、全身から恐ろしい殺気を立ち上らせているキャルルが立ち塞がっている。

「ミレちゃん、大丈夫!? 泣いてない!?」

「キャルル……私……っ」

キャルルはマッハの動きでリーザの前に立ち、その華奢な身体をすっぽりと背中に庇った。

ミレイユは足元に落ちた契約書の中から一枚を足で踏みつけることなく、優雅な手つきでひょいとすくい上げた。

「ちっ……! なんだお前らは! 邪魔しにきやがったのか!」

ガルシアが肥満体の顔を歪め、不快そうに怒声を上げる。

「おい、人魚姫! 惑わされるな! こいつらはただの田舎の素人だ! 俺と契約すれば帝都で大スターになれるんだぞ! さあ、ペンを拾って――」

「黙りなさい、三流以下」

ミレイユの声は低く、そして氷のように冷たかった。

パチン、と扇子が開かれる。

ミレイユの網膜に、ユニークスキル【絶対監査パーフェクト・オーディット】の透き通るような青いホログラムウィンドウが展開された。

「リーザ。あなたに一つ質問しますわ」

「え……? は、はいっ!」

「あなたは、この契約書の『第7条・第3項』、そして『裏面の補足特記事項・第12条』を読んだ上で、ペンを握ろうとしていたのですか?」

「え……? 特記事項……? いえ、そんなところには何も書いて……」

リーザが困惑した声を漏らす。

ガルシアが差し出した契約書の表面には、「夢を叶える」「帝都でのデビューを約束する」といった魅力的な文言ばかりが、大きな装飾文字で誇らしげに躍っていたのだから。

「そうでしょうね。なぜならこの特記事項は、普通の人間には到底視認できないほどの『極小の魔導暗号文字』で印字されていますから」

ミレイユは冷笑を浮かべ、指先で契約書の羊皮紙を軽く弾いた。

【絶対監査】の魔力が羊皮紙に注がれると、そこにあった透明な隠しインクが青く光り出し、空中に巨大な文字となって投影された。

そこに浮かび上がったのは、悪魔すら青ざめるような凄惨な内容だった。

「ひっ……!? な、何ですかこの文字は……!?」

リーザが息を呑む。

ミレイユは流暢に、そして完璧な事務的トーンで、その隠された条項を読み上げ始めた。

「――『第7条・第3項。リーザは契約成立と同時に、自身の所有権および人身権をゴールド・エンタテインメントに永続的に譲渡するものとする』」

「……え?」

「『補足特記事項・第12条。甲の基本給与は永久に「零同粒(無給)」とし、生活費および衣装代、帝都への渡航費として、金貨一万枚の不可避な負債を甲に課す。甲は一日20時間、貴族向けおよび軍事施設でのバフ歌唱を強制される』」

「に……二十時間……無給……っ!?」

リーザの顔から一瞬で血の気が引いた。

「さらに極め付けはこちらですわ。『第15条。契約解除、または履行不能の場合、甲は乙に対して金貨十万枚の違約金を支払うものとする。なお、本契約は甲の死後も無効とはならず、その魂および魔力核は乙の所有物であり続ける』……」

しんと、静まり返る河川敷。

空中に浮かび上がった青い文字の群れは、あまりにも明白な『絶対的な奴隷契約』の証明だった。

「な……な……っ!?」

リーザはガタガタと全身を震わせ、自分の手を見つめた。

もし、あと数秒ミレイユの登場が遅れていたら。もし、この契約書にサインしてしまっていたら。

自分は一生、いや死んでからも、暗く冷たい地下室で歌を強制され続ける奴隷になるところだったのだ。

「ふ、ふざけるな! でたらめを言うな!」

顔を真っ赤にして叫ぶガルシア。

「そんなものは偽造だ! 俺様は正当なビジネスの提案をしに来たんだぞ!」

「ビジネス、ですか?」

ミレイユはゆっくりと歩み寄り、ガルシアの目の前でピシャリと扇子を閉じた。

「前世の……いいえ、私の知る世界でも、あなたのような害虫は腐るほどいましたわ。夢を持った若者の無知と純真さ、そして『自分なんて』という小さな自己否定の隙につけ込み、甘い言葉で騙して底なしの地獄へ引きずり落とす……最低最悪の搾取者」

ミレイユの瞳に、激しい怒りの炎が揺らめいた。

それは、前世のメガバンク時代、理不尽なブラック企業に使い潰され、過労死していった自分自身や同僚たちの無念。

そして、今まさに夢を追おうとしている可憐な少女を守るための、プロデューサーとしての絶対の誇りだった。

「自分のプロダクションが倒産寸前だからと言って、一人の少女の人生と魂を金貨10万枚の担保に差し出すなど……万死に値する愚行ですわ!」

「ぐ……っ、な、なぜ俺の会社の財務状況まで……っ!?」

ガルシアは恐れ戦き、後ずさった。

ミレイユは逃げるガルシアを鋭い眼差しで射抜き、凛とした声で河川敷全体に響き渡る宣言を放った。

「いいですか、三流プロモーター! 夢を食い物にし、努力する者を踏みにじる人間を、私は死んでも許しません!」

「ミ……ミレイユさん……っ」

「リーザは、ただのタレントではありません! ポポロ村の大切な『家族』であり、私が私の誇りをかけて世界一に育て上げると決めた、最高のダイヤモンドですわ!」

ミレイユは振り返り、涙をボロボロとこぼしているリーザへと、優しく、そしてあたたかい手を差し伸べた。

「リーザ。あなたには、お金の心配も、過去の貧しさへの引け目も、一切必要ありません。あなたが美味しくご飯を食べ、大好きな歌を歌い、ファンを笑顔にする……そのためのすべてを準備するのが、私の仕事なのですから」

「う……うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

我慢の限界だった。

リーザは声を出して泣きじゃくりながら、ミレイユの胸へと飛び込んだ。

「ミレイユプロデューサーぁぁぁっ! ごめんなさい! ごめんなさいっ! 私、不安で……私なんかがあんな豪華なステージに立っていいのか怖くて……っ! だから……っ!」

「いいのよ、リーザ。怖がる必要なんてどこにもないわ。私がついているのですから」

ミレイユは泣きじゃくるリーザを強く抱きしめ、その背中を優しく擦った。

前世の孤独なオフィスでは決して知ることができなかった、誰かを守り、守られる温もり。

ミレイユの胸の中で、リーザは子どもように声を上げて泣き続けた。

その温かい光景を、苛立ちと焦りでドロドロに汚れた目で睨みつける男がいた。

「く……くそがぁぁぁっ! 黙って聞いていれば、ガタガタガタガタ生意気な口を叩きやがってぇっ!」

完璧に論破され、悪事の全てを暴かれたガルシアは、ついに理性を完全に吹き飛ばした。

「おい! お前ら! なにぼさっと突っ立ってんだ! あの女どもを叩きのめせ! 契約書なんかどうでもいい、あの乞食娘リーザの手足を折ってでも車にぶち込めぇぇっ!」

ガルシアの狂気じみた怒声に応じ、背後に控えていた二人の大柄な用心棒が、下劣な笑みを浮かべて金属バットのような鈍器を構えた。

「へっ、口の減らないお嬢ちゃんだぜ。その綺麗な顔、ボコボコにしてやるよ!」

武力による強行突破。

すべてを暴かれた悪党が最後にとる、最も愚かで無謀な悪あがきだった。

だが――ミレイユは抱きしめたリーザの頭を撫でたまま、一切の動揺を見せなかった。

ただ、静かに一言。

「キャルル。……『掃除』をお願いできるかしら?」

ミレイユの背後で、ずっと静かに牙を研いでいたヤンデレ最強兎が、ニヤリと恐ろしい笑みを浮かべた。

「りょうかーい! ミレちゃんたちの感動的なシーンを邪魔したゴミ共……骨の髄まで『物理的』に砕いてあげるね!」

特注の安全靴が、カンッ!と強く地面を叩いた。

物理最強の逆襲ざまぁの幕が、今、上がる。

読んでいただきありがとうございます。

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