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「婚約破棄?喜んで!」元銀行員OLの絶対監査で辺境大改革!〜氷の公爵の極上溺愛と最強兎の物理ざまぁで元婚約者は完全崩壊〜  作者: 月神世一


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EP 14

その違法爆弾、ただの不良品(詐欺)ですわ。愚か者へ下す、氷の公爵の絶対審判と最強兎の物理的フィナーレ

「死ね! ミレイユ! お前も、俺の人生も、全部ここで終わりだぁぁぁっ!」

ポポロ村の中央広場。

煌びやかな魔導ランタンの光に照らされたその場所で、泥と悪臭にまみれたセドリック・ヴァン・ルージュが、狂気に満ちた笑い声を上げながら『違法魔導爆弾』の起動スイッチを押し込んだ。

ドクンッ、と不気味な赤い光が爆弾のコアに灯る。

周囲の村人たちが悲鳴を上げて逃げ惑う中、セドリックは勝利を確信し、醜く歪んだ笑顔で両手を広げた。

「あははははっ! さあ、吹き飛べ! 俺をコケにした報いを受け――」

プシュゥゥゥゥ…………。

「――え?」

爆発音、ではない。

まるで、古くなったタイヤから空気が抜けるような、ひどく情けない音だった。

赤く明滅していた爆弾のコアは、線香花火の最後のようにチリチリと力なく火花を散らしたかと思うと、一筋の黒いススを吐き出して、完全に沈黙してしまったのだ。

「……は? あ、あれ?」

セドリックは間抜けな声を漏らし、手元にある黒い鉄球をバンバンと乱暴に叩いた。

「おい、どうした! 爆発しろ! 動け! なんで動かないんだよぉっ!」

「動くはずがありませんわ」

自暴自棄になって爆弾を振り回すセドリックに対し、私は扇子をパチンと閉じ、冷ややかな、そして心底呆れ果てた声で告げた。

「先ほど【絶対監査】でその爆弾の構造と流通経路を確認させていただきました。……セドリック、あなた、また見事なまでに『詐欺』に引っかかりましたね」

「さ、詐欺だと!?」

「ええ。あなたが帝都の闇市で、ヤミ金から借りた最後の資金『金貨10枚』を叩いて買ったその爆弾。中に入っているのは違法な魔力圧縮コアではなく、ただの『廃棄された安物の魔導コンロの着火石』です。導線はサビだらけ、外装の鉄球はただのスクラップの寄せ集め。原価にして、同粒50枚(約50円)にも満たない完全な不良品……ただのガラクタですわ」

私の無慈悲な監査結果ネタばらしに、広場に一瞬の静寂が落ちた。

「な……な、なんだと……?」

「あなた、本当に最後までお買い物が下手な方ですね。私が領地の帳簿を管理していた頃から、業者の口車に乗せられて無駄な高額商品ばかり買わされていましたが……まさか、自分の命を懸けたテロの道具までボッタクリの偽物を掴まされるなんて。監査役として、もはや哀れみすら覚えますわ」

「う、嘘だ……! 俺の最後の金が……俺の復讐が、こんな……っ!」

セドリックは膝から崩れ落ち、手の中のガラクタを呆然と見つめた。

彼に残されていた最後の切り札は、帝国の闇商人すら「こいつなら偽物でも騙せる」とカモにされるほどの、彼自身の『無能さ』によって完全に無力化されていたのだ。

「ふざけるな……! ふざけるなぁぁぁっ! ミレイユゥゥゥッ!」

すべてを失い、完全に理性を飛ばしたセドリックが、獣のような咆哮を上げて私に向かって突進してきた。

爆弾がダメなら、素手で私の首を絞めるつもりなのだろう。

だが、彼が私に指一本触れることなど、天地がひっくり返ってもあり得ない。

「――汚い手で、私のミレちゃんに触ろうとしないで」

ゴォォォォンッ!!

セドリックの体が私に届くより早く、マッハの残像を残して割り込んだキャルルが、特注の安全靴を履いた足を高く振り上げた。

放たれたのは『月影流 鐘打ち(寸止め)』。

セドリックの鼻先わずか数ミリを掠めたその蹴りは、恐ろしい風圧と衝撃波を生み出し、セドリックの背後にあった広場の巨大な岩のモニュメントを粉々に粉砕した。

「ヒッ……!?」

背後で爆発したような岩の砕ける音と、顔面スレスレを通り抜けた死の恐怖に、セドリックは情けない悲鳴を上げてその場に尻餅をついた。

彼の股間から、生温かい液体が地面に広がる。恐怖のあまり失禁したのだ。

「ちっ。殺さないように寸止めするの、結構難しいんだからね。……ミレちゃんに免じて顎を砕くのはやめてあげるけど、次に動いたら、首から上を吹き飛ばすよ?」

キャルルは絶対零度の瞳でセドリックを見下ろし、ダブルトンファーをチャキッと鳴らした。

セドリックはガチガチと歯を鳴らし、涙と鼻水と泥で顔をぐちゃぐちゃにしながら、後ずさりすることしかできない。

そこへ。

「キャルル殿の言う通りだ。これ以上、その汚悪な存在で、私の愛しい婚約者の視界を汚すことは許さない」

氷のような冷気と、帝国全土をひれ伏させるほどの絶対的な威圧感を放ちながら、ユリウス様が静かに進み出た。

彼が軽く指を鳴らすと、広場の周囲を取り囲むように、闇の中から重武装の帝国近衛騎士たちが一斉に姿を現した。

すでにセドリックは、完全に包囲されていたのだ。

「こ、公爵……閣下……っ!」

「元・ルージュ伯爵令息、セドリック。お前の領地における数々の公金横領、そして先日の非合法武装集団によるポポロ村への侵略教唆。これだけでも爵位剥奪と終身刑に値するが……今宵、私の目の前で、私の『婚約者』を爆発物で殺害しようとした罪が加わった」

ユリウス様の透き通るような青い瞳が、虫ケラを見下ろすような酷薄な光を宿す。

「国家反逆罪、および皇族に準ずる公爵家へのテロ未遂。……もはや、お前に法廷での弁明の機会すら与える必要はない。貴様の罪は、この場で私が確定させる」

「ひぃぃっ! ま、待ってくれ! 違うんだ! 俺はただ、ミレイユを……俺のミレイユを取り戻したかっただけで!」

自分が完全に終わったことを悟り、セドリックは見苦しく這いつくばりながら、今度は私に向かって必死に手を伸ばしてきた。

「ミレイユ! 助けてくれ! お前が公爵に口利きしてくれれば、俺は助かるはずだ! 俺たち、婚約していた仲じゃないか! 愛し合っていただろう!?」

愛人を作り、冤罪を着せて私を追放した男が、自分の命が惜しくなった途端にすがりついてくる。

そのあまりにも身勝手で醜悪な姿に、私は感情を動かすことすら馬鹿馬鹿しくなった。

「……セドリック」

私は彼を見下ろし、冷たく、そして完璧な事務的トーンで宣告した。

「私とあなたの間にあったのは『愛』ではなく、ただの『契約ビジネス』です。そして、その契約を不当に破棄したのはあなた自身。……現在のあなたを助けることによる費用対効果コストパフォーマンスは、完全にマイナスですわ。不良債権は、大人しくゴミ箱へ入ってくださいな」

「あ……あああ……っ」

「さようなら、セドリック。二度と私の前に姿を現さないでちょうだい」

私が背を向けると同時に、ユリウス様が近衛騎士たちに冷酷な命令を下した。

「連行しろ。ドンガン地下帝国の最下層、マグマが噴き出す『死の採掘所』へ放り込め。……二度と地上へ這い上がれないよう、厳重な鎖を繋いでおくことを忘れるな」

「はっ!」

「いやだぁぁぁっ! 助けてくれぇっ! ミレイユゥゥゥッ!」

近衛騎士たちに両腕を掴まれ、ズルズルと引きずられていくセドリック。

その絶望の叫び声は、夜の闇の奥深くへと吸い込まれ、やがて完全に聞こえなくなった。

静寂が戻った広場。

呆然としていた村人たちが、事態が完全に解決したことを悟り、やがてワァッと歓声を上げ始めた。

「ミレイユ先生、万歳!」

「公爵様、村長、ありがとう!」

温かい拍手と歓声が私たちを包み込む。

その中で、ユリウス様がそっと私の腰を引き寄せた。

「不快な思いをさせてすまなかったね、ミレイユ。……だが、これで本当にすべてが終わった」

「はい。ユリウス様、キャルル。……私を守ってくれて、本当にありがとうございました」

私が心からの感謝を込めて微笑むと、ユリウス様は愛おしそうに私の目元にキスを落とした。

「お礼を言うのは私の方だ。君という最高の宝物を手に入れることができたのだから。……さあ、祭りを再開しよう。君の好きな『ずっ友ロコシ』の屋台が、まだ開いているようだからね」

「あっ、ずるい公爵! ミレちゃんとずっ友になるのは私なんだからね!」

キャルルがぷんすかと怒りながら、私たちの間に入り込もうとする。

そんな彼女の頭をユリウス様が楽しげに撫で、私は二人のやり取りを見ながら、心の底から笑い声を上げた。

愚かな元婚約者は地下深くへと落ち、私は最高の仲間たちと共に、光り輝く未来へと歩き出す。

元・鬼監査OLの私の異世界ライフは、今ここから、完璧な黒字ハッピーエンドに向けて再スタートを切ったのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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