第52話 店長代理の別の顔
「家の弟が迷惑をかけて申し訳なかったわぁ、城野 聖人君」
「はぁ……あ、いえ……」
俺は今、社長室の来客用ソファーに坐り、対面の席には優羽さんが座っている。
そして自分の額からは何とも言えない妙な汗が流れていた。
「(店長代理が社長令嬢だったなんて……。俺、結構馴れ馴れしく話しかけちゃったぞ!?
で、でもあれは仕方がない。向こうが正体を隠していたんだから仕方がない。大丈夫だよな?)」
などと、俺の心境は穏やかではなかった。
「……」
「……」
そして、お互いに何も言葉を話さなくなり、ただ時間が経過していった。
気まずい……。
「ふふっ、やっぱり緊張しちゃうわよねぇ、ごめんなさい騙してしまったようで」
すると、俺の感情を読み取ったのか、気を使っているのか申し訳なさそうな笑いをしながら優羽さんは言った。
「あっ、いえ」
「気になるでしょ? いいわよ、なんでも質問してくれても」
「そ、それじゃぁ……」
何から聞こうか。優羽さんは何者? 翼が姉と言っていたからこの会社の社長の娘であることは確実だが、この会社の関係者なのか? それから、なぜそんな人物が模型屋の店長代理なんかをやっていたんだ。あと、翼の話では俺を本社に呼んだのは優羽さんのようだし、その理由も聞きたい。
俺はまず何から聞こうかと悩んでいると、
「ちなみに恋人は居ないわよ?」
「!? い、いやそれは……」」
いきなり何を言い出すんだこの人は。
俺が聞きたいことはそんな事じゃないぞ!?
「もうっ、そんな風にあからさまに聞きたいことと違うって顔をされても傷つくじゃない」
「うっ。す、すみません」
咄嗟に謝ったが、心の中で突っ込みをしたせいか少しだけ気持ちが落ち着いた。きっと優羽さんはそれを狙ったんだろう。
「冗談はさておき、本題に入りましょうか」
「はい……。おねがいいたします」
ようやく聞きたいことが聞けるのか。
妙な緊張感の代わりに変な汗が出て大変だったぞ。
「じゃぁ、こちらが聞きたかったこととして……。模型店の店長代理さんと同一人物なんですよね?」
「えぇ、そうよ。模型店『ピーチバレー』の店長代理でありながら、この会社の役員を務めている桃谷 優羽よ。よろしくね」
「よ、よろしくお願い致します」
やはり実は双子とかじゃなく、店長代理本人だった。
しかも店の名前がピーチバレーだった。ピーチは桃。バレーは谷。桃谷ってそのまんまじゃねぇか!
なんというかヤバいんじゃないか? いくら知らなかったとはいえ、俺あの店で結構失礼な態度をしていなかったか?
そうなると別の疑問も出てくるわけで、
「なぜこの会社の役員が模型店の店長代理をしていたのですか?」
この質問をするのも当然のものだろうと思う。
まさか会社の出世争いに敗れたからあの模型店に居たのか? いや、優羽さんのイメージに合わないな。どちらかと言えば出世争いをすれば翼の方が真っ先に脱落していそうだ。
「そうねぇ。説明して納得してもらえるかわからないけど、父の経営方針なのよね……」
「父? それって社長の?」
「そう。あの模型店に私が居たのは、桃谷商事の社長の後継ぎを任せるための最終試験をしていたからなのよ」
「???」
俺の予想とは全く違う答えに、どういうことだと首を捻った。
「あの店は父の父。つまり私の祖父であり先代の社長の生家なの。もともと桃谷商事はあの模型店から始まったと言っていいかもしれない。
元々あの模型店は私の祖父の兄の店だった。だけど、その息子の代でね……色々とやらかしてしまったらしく、経営破綻寸前まで行ってしまったのよね。そこで私の祖父から父に声がかかったらしいの。『お前の従兄が傾けた店を立て直して見せろ。そうすればお前を正式に儂の会社の後継ぎとして認めよう』ってね。
その条件を達成した父が、今度は私にってね」
「なるほど……。つまり、それから桃谷家では次世代の社長の試験の場としてあの模型店を使うようになったと?」
「その通り。代々と言うには歴史は浅いけど、試験の場としてあの模型店を無事経営できるようになったらこの会社を継がせるという約束をもうすぐ退院予定の父としたの」
「そうだったんですか……」
つまり役員でもなくあの模型店も任されなかった翼は、後継ぎとしては期待されていなかったのだろう。
なんだか悲しい話かもしれないが、あんな愚かなことをしでかすような人間には会社を任せられるわけもないので社長の判断は正しかったのかもしれない。
「期間は半年。長いようで短い期間だったけど、その間に売り上げを大きく伸ばしなさいってなかなか難しいことなのよ?
この試験は私一人でやることが決定されていたから、元居たあの店の店長には最低限なことしか聞けないし、地元の常連客の皆さんには本当に大きく助けられたわぁ。だって私、小さいころに見ていたアニメのガゾギアのプラモデルぐらいしか模型の知識ないのだもの。
必死に畑違いな勉強をして、なんとかお店を維持していたわ。
ちょうど試験期間も一昨日で終わって、あとは退院してきた父に報告するだけよ」
「なるほど……。ですが、維持できていたのであれば合格。ということになるんですよね?」
あれだけ立派に店長代理を務めたのだ。この会社の次期社長としての資格は十分得られただろう。
そんなことを思っていると、
「そうね。貴方のおかげで十分過ぎるほど合格ラインに到達できたわ」
と、俺を見てどこか引きつった笑みを浮かべながらそう言ってきた。
「わ、私ですか??」
「そうよ、貴方のおかげ。私の父はね? 無難な経営だけしていれば次期社長として認めるようなお優しい考えを持っている人じゃないの。父は『自分はお店を畳む寸前の店を立て直したんだ。しかし、お前が任される店はそのような状態ではない。つまり、売り上げを大きく上げる成果を出さない限り、正式な後継ぎとして認めることはない』なんて言ってきたのよ?」
クスクスと笑いながらそう話す優羽さん。
無茶ぶりすぎる。身内に厳しいんだな社長。
「とても厳しい方なんですね……。しかし、それがどうして私のおかげで合格ラインに到達できたと?」
「いや、貴方……どれだけあの店で買い物したと思っているの?」
「あー……。考えたくありませんねぇ」
一ヶ月ほどで数百体のガゾプラを優羽さんの模型店で買った。そう、一ヶ月で数百体だ。どこの問屋かな? というレベルだ。
連日通ってガゾプラを購入し、当初は俺を殺そうとする人形達。その次は黒地子の連中対策に充てたのだ。
いくら単価が安いガゾプラだと言え、数百体買えばかなりの金額に到達するだろう。
仮に1体1,500円だとして、100体買えば15万円。中には輸送機等の1つ8,000円するような高額キットだってあるのだ。
追加パーツや武器セットだって大量に購入している。合計いくら掛ったかなんて……うわぁ、本当に考えたくねぇ……。
「あのぉ、それだと合格判定大丈夫なんですか? 優羽さんがこの会社の上役の一人という事を先ほど知ったのは確かですが、社長はそれを知っているんでしょうか? 下手をすれば優羽さんが俺に圧力をかけてわざとあの店から大量に商品を買わせたと思われるんじゃ?」
俺が買いすぎたせいで不正をしているのではないかと判断されては元も子もない気がする。その辺の事情は大丈夫なのかと聞くと、
「そこは心配しなくても大丈夫よ。確かに城野君の爆買いは店長と社長に知られてかなり判断が難しかったと聞いたけど、私があなたに私の事情を伝えられる暇がなかったことは知られているし、あのお店の中で真実を伝えている様子も見られないって確認されているから」
「えっ、監視でもされていたんですか?」
「当然よ。試験期間だもの。あのお店の防犯カメラで私の行動は店長や人事部のお偉いさんに一部始終見られていたのよ。
まったく、プライバシーもなにもあったものじゃないわぁ」
優羽さんは疲れたように目を瞑ってそう言った。
いやいや、その一言で済ませている時点で優羽さんもかなり精神的にタフな人だと思うけどな。一日中監視されながら仕事するってやり辛いだろ。
そして話題は俺の財布事情に戻り、
「あの店の人間である私から言うのもなんだけど、貴方のお財布は大丈夫なの?」
「今までこれといって趣味もありませんでしたから、貯金はそれなりにありましたので……」
「そんなこと言いつつも今のあなたの顔、真っ青よ?」
「気ノセイジャナイデスカネェ」
俺が片言で返事をすると、「まぁいいわ」と憐みの視線を俺に送りながら話題は俺の財布事情から離れてくれた。
「私の父は本当に容赦がない人でねぇ。私がガゾギアのことしか分からないと知れば、『だったらガゾギアの商品だけで勝負をしてみるんだな』なんて無茶な条件を付けてきたのよ? あのお店の倉庫にあった在庫。殆どが父が仕入れてきたガゾプラだったんだから」
現在の社長は恐ろしく極端な方らしい。今は病院に居るらしいが復帰しても会うことがないことを願おう。
「えっ。そうなんですか? そういえば品切れになることがなかったですし、確かにあれだけの量があったことも不思議でした。なるほど、倉庫が近くにあったんですね」
仕事帰りに必ず3体から5体買っていったのだ。いくらなんでも仕入れが早すぎると思っていた。次の日に店に行けばちゃんと空いた棚には別のガゾプラが陳列されていたし。
「えぇ、店の裏手に店舗と同程度の大きさの倉庫がね」
「そりゃぁ大きいですねぇ」
「倉庫一杯にあったガゾプラも城野君のおかげでほとんど在庫が消えたわ」
そんな量を俺はあの短期間で消化したのかと思うとゾッとしてしまった。
恐怖を感じた俺はいい加減自分が作ったガゾプラ軍団の事から考えを離れようとして、別の質問をしてみることにした。
「そういえば、私をこの会社に呼んだのは社長と優羽さんとお伺いしましたが?」
「あぁ、そんな話も出てたわねぇ。真実よ?」
「ずっと気になってたんですが、なんで私だったんです? 今回翼を罠にはめるための人員として丁度良かったとかでしょうか?」
翼の目論見が成功した場合、もしくは優羽さんや社長の目論見が成功した段階でどうなっても問題ない人物として選ばれたならば、俺はきっと今後この会社を続ける気にはなれなかった。そんな質問をしてみると、
「欠員が出たのは事実なのよ。その人は貴方とは違って幅広く仕事をする人物ではなく、この会社に多くいるような専門部署で毎日同じ仕事をしている人物だったわ。もちろんそれが悪いってわけじゃないのよ?」
「俺が幅広く仕事を……ですか?」
帰ってきたのは予想外の答え。なんでもするってそんなわけないと思うのだが……。
「専門的な分野ではなく、広く浅くっていったところかしら? だけど、その実力はかなり高くてねぇ。
営業、企画開発、事務、サポート。貴方、この会社でこれらすべてができる人間がどれだけいると思う?」
「いや、そういわれても……それって支社では当然でしたよ? もちろん俺一人が特別ってわけじゃなく、誰もがやってたことです」
「それよ」
俺が支社の実情を話すと、ビシッと人差し指を俺に向けて優羽さんが言った。
「専門分野ではないけど、広く浅く対応ができる人材。元々城野君は技術者で入ったようだけど、支社で様々な経験を経て多くの能力を身に着けてきたのよ?
それは決して侮ることができない力。本来であれば私たちもそのようにあるべきなのでしょうが、なかなかとそうはいかなくてねぇ
もちろん特定の仕事一筋っていうのが悪いと言うわけではないけど」
「規模が違いますからね」
俺がもともといた支社と本社では取引先の量も違うし仕事量も断然本社の方が大きい。
様々なことをしても成り立っていた支社時代とは違い、ここでは専門窓口に就けば終わりが見えないほどの量の仕事が押し寄せてくるのだ。サポート部署に就いた俺のところには途切れることがない電話が鳴り続けるのである。
「城野君には期待していたの。新しい風を入れてこの会社の歪な状態を正常に戻してくれるのをね」
「歪……ですか?」
どういうことなのだろうかと首をかしげていると、
「今回の件でよくわかったと思うけど?」
と、優羽さんが試すような目で見ながら俺にそう言ってくる。
「今回の件って……まさかこの会社の各部署で派閥争いでも起きているんですか!?」
「そのまさかよ。恥ずかしい話だけどね」
悲しそうな顔になった優羽さんはそう言った後語り始める。
「元々……私の祖父の代ではこのようなことはなかったらしいのだけど、父が会社を引き継ぎ会社の規模も大きくなるにつれ派閥争いが比例して大きくなってきたらしいわ。
営業は自分たちが仕事をとってこなければ会社が回らない。営業が花形である。
開発は自分たちが商品を生み出さなければ会社は成長できなかった。開発は会社を支えている。
人事は自分たちが優秀な人材を確保し、管理し続けなけれ会社は生き残れない。人事こそが会社の頂点。
総務は会社の経営状況を一番把握しているのは自分たちであり、我らこそが会社の心臓部分。
なんて言っているのよ?
確かに各部署の前半部分は彼らの言い分も認められる部分もある。だけど後半に至っては誰がトップかなんてくだらない争いをしているの」
「そんなバカな……。各部署が協力し合わなきゃ会社自体成り立ちませんよ!?」
営業だって売るものがなければ商品を売り込めない。ゴミみたいな製品をあたかも素晴らしい製品だと言って売り込めば詐欺だと言われるだろう。
開発は売ってくれる人や管理してくれる人がいなければ開発だけ続けていても世に出なくて終わり。
人事は裁判官や警察にでもなったつもりか? いつでも人をクビにできるとでも思っているのだろうか。
総務だって各部署の人員がいなければ仕事すらないだろう。
「城野君のようにそのことが理解できる社員が今、この会社にどれだけいることやら……」
「いや、それ末期状態じゃ……」
優羽さんが語った事が本当ならこの会社の未来は明るくないだろう。いつ倒産してもおかしくない。
互いが互いの足を引っ張りあって共倒れする未来しか見えない。
ってか、社長も優羽さんに無茶な要求をしておきながら自分はもっと窮地に立たされていたのかよ。
常人ならストレスでおかしくなりそうだ。あっ、もしかしてそれで入院していたんじゃ……。
「そうなのよ。だからあなたには期待していたの。半年間はサポート。これは今この会社で一番力の弱い部署よ。何せ他人が作ったものを説明して終わるだけの部署だなんて陰口を叩かれている部署だからねぇ」
「ひどい謂われようだ……」
「そして、次は開発。次は営業、次が人事――――」
「ちょ、ちょっと待ってください!? まさか会社の部署全部をコンプリートさせる気じゃ!?」
「そのつもりよ? でも、異動なんて普通の会社でも同じことをしているわ」
「いやいやいや、期間が短すぎでしょ!? ふつうは2~3年……いや、もっと長く部署に勤めて別の部署に行くでしょうよ!? どこに1年も経たず変わる人事があるんですか! それじゃぁまるで俺があまりにも使えないからほかの部署へたらい回しにされているように見られちゃいますよ!?」
下手をすれば「あっ、あいつ今年はこの部署に来たのかよ!」「あーあ。せっかく新しい戦力が来たと思ったのにゴミが来たよ」と言われかねない!
「大丈夫よ。私たちもフォローする予定だったし、元々支社でいろいろとこなしていた城野君ならどこでもできるはずよ」
「根拠が薄くないですか?」
「私だって何も闇雲に運任せでこんな計画を立てているわけじゃないのよ? しっかり今までの城野君の功績を見てこの計画を立てたの。
大丈夫、今まで通りやってくれたらこんなくだらない派閥争いも収まるわ」
む、無茶ぶりだぁ。
どうやら社長令嬢は社長の血を色濃く引いているらしい。
「……なぜそう思うのですか?」
その根拠を知りたい。俺が普通に仕事をしていれば派閥争いが収まるなんて夢のような話、信じられるわけがない。
「あら、そんなの簡単よ。だって、他部署に居た人材が別の部署に移っても自分達とほぼ変わらない仕事をするんですもの。自分たちこそ選ばれた人材だといい気になっている連中の鼻っ柱を折るにはもってこいな計画じゃない?」
「うぅ~ん……」
そううまくいくかなぁ?
それってよほど俺が優秀じゃなきゃできないことではないだろうか。それと俺の予想では足を引っ張る人物が出てきそうな気がする。なぜかだって? そりゃぁ今回の事件で痛い目を見たんだからそういった事を考える連中が一定以上いることは分かったからな。
「そして、支社の実情もその時に話すわ。貴方たちが下らない勢力争いをしている間に、支社の人間はどんどんレベルが上がっているのよ。ってね。
彼らは恐怖を感じるでしょう。多くの人員が支社の社員たちと入れ替えさせられるという恐怖をね」
だったらもう支社の人間と本社の人間入れ替えた方が早いんじゃないだろうか? などとは口が裂けても言えないだろうな。
というか恐怖か。支社行きが恐怖なんて失礼な話だが実際問題本社近辺に住居がある人達にとってはいい迷惑だろう。
俺は実家住みだったため問題ないが、すでに家を買った人とかが転勤になれば悲惨すぎる。
「それでも今回の件で計画は早々に破綻しそうなのよねぇ……」
「翼がやらかしたことが原因ですよね?」
このタイミングで計画失敗の話に繋がりそうなことは翼の件しか思い当たらない。
「そうよ。あの子ももう少しあの行動力を会社の発展のために使ってくれたらよかったのに、会社自体を出世争いの道具に使うなんて、流石に父も見過ごせなかったようね。
今、ライバル企業への制裁が進行中よ? 下手をすればライバル企業は今後経営が難しくなるかもしれないわ」
どうやら社長はすでに今回の件に関わったライバル企業に何かしらの手を打ってあるようだ。
その手腕をどうして社内の派閥争いの激化を止める方向に使わなかったのか不思議なくらいだが、翼の父だけあるなぁ。と納得してしまった自分もいる。何せ大きく見れば相手を陥れるための策を練ることが上手いという事だ。翼は対象が俺や優羽さん、社長であったが、社長にとっては相手がライバル企業だったという違い程度だ。
なんというチグハグな経営手腕! その腕前をこの会社で生かせよ。
「父は『教育を間違えた。誰に似たんだろう』なんて泣き言を言っているけど、正直どっちもどっちな気はするのよねぇ」
ごもっともです。と思わず言いかけてしまったがなんとかこらえて見せた。
「私の計画では、貴方を使って会社の風通しを良くしようとしていたのだけど、風通しが悪い原因となっていた社員や役員が今回の件で一掃されそうなのよ……。特に派閥争いに躍起になって各方面に取り入っていた北見課長や小倉常務、他取締役員数名も処分できそうだし」
「うわぁ。北見課長ってそんな人だったんですね」
「それはそうよ。最も見下されている部署のトップですもの。成り上がるために必死に各方面に媚を売りゴマをすり。業務外のことでそれはもう忙しそうにしていたわ」
その努力が無駄になってしまうとは……。ご愁傷さまです(ザマァみろっ!)。
「えっと、それじゃぁ会社の問題も大方解決してしまったようですので……俺が本社に居る意味は?」
自分で聞いておいてなんだが、恐ろしいことを質問している気がする。
もしかしてお払い箱になってしまうのか?
「ふふっ」
意味ありげに優羽さんは微笑んだ。俺の顔も引きつる。
そして、
「これからも本社での活躍期待しているわよ?」
と言ったのだ。
「あ、私必要なくなったとかそういうのじゃないんですね」
「当然じゃない。今回の件で一番の功労者は間違いなく貴方よ? まったく、どこで調べたか知らないけど、父宛てにメールで翼や北見達が写った証拠写真なんて送ってきたりしたでしょ?」
「え? あ、は!? はいっ!」
あ、それきっとグイム達だ。嵌められた日の夜護衛をしていた隠密型グイム達が撮った画像を家のグイムの誰かが社長あてにメールを送ったんだ。
ってか、なんでグイム達は社長のメールアドレス知ってんだよ!
「はぁ……もう少しあの写真の重要性を知ってほしいわね。あの写真の写し方から考えて誰かに協力してもらったんでしょうけど、危機管理能力は一級品ね。聞いていた話ではかなり追い詰められたような表情をしていたらしいけど、それって全て演技だったのかしら?」
「い、いやぁ。まさかホントに嵌められるとは思ってなくて……」
嘘です。全然気づいていませんでした。
「へぇ、念のための行動ってことね。そうなるとその時から弟の事を怪しいと思っていたの?」
「……胡散臭いとは思っていました」
「そう。あの子も案外詰めが甘かったようね。それが今回功を奏したのだけども」
「ははは……」
今思えば野心が体から出ていたんだろうな。
「そういうわけで今後ともよろしくお願いするわね城野君。今回の件の報酬は期待しておいてね? それと、協力者の人にもね?」
「はい」
写真を送ったグイムならともかく、撮ったグイムは無事だろうか。生きていても引き合わせるわけにはいかないけど。
そんなことを思いながら話が終わった俺は、優羽さんに手を振られて部屋を出たのであった。
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※小話。
その1.店長代理こと桃谷 優羽は聖人が大量購入しなくても試験はクリアしていました。常連だけではなく、偶々来た人をその独特な雰囲気と話し方で魅了させ多くの顧客を獲得しました。また、近所の少年達も本来保有していた性癖を歪められ、彼らも少ない小遣いを握りしめ足しげく通うことになりました。そのため、お母さん方から苦情が行きそうになったとかならなかったとか……。
その2.ピーチバレーのお店は戦闘区域外にあったため無事でした。しかし、隕石落下の検査の為ピーチバレー近くの住民も避難対象になりお店には閑古鳥が鳴いております。もっとも翼がやらかした件で試験は終了したがお店を何とかしようとしていた優羽も、彼女の父から招集がかかったため現在はお店を開けていられる状況ではありませんでした。
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次話は2日後の予定です。




