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第29話 敵対する者


「ほっほっほ。聖人、菓子でもどうじゃ? 沢山あるぞ?」


「いや、さっき朝食を食べた後だから今はいらないかなぁ」


「萌恵~。今日は何するの? 遊ぶ?」


「えっと。私は居候させてもらっているから遊んでいるわけには……、あのぉ、家の掃除をしてもいいでしょうか?」


「あ、うん。ありがとう。あと、居候だとか気にしなくてもいいぞ? カリーヌと会えていなかった分しっかりカリーヌと遊んでくれ」


「さっすが聖人。話がわかる人間ね!」


「お気遣いいただきありがとうございます」


 カリーヌの過去の話を聞かせてもらった翌日。

 俺達は平和な朝を迎えていた。

 しかし、安心安全な日常生活を迎えられたかと言われたらそうではない。

 一番重要な問題として、萌恵さんを誘拐したという謎の連中の動きが不気味であった。

 なにせ、萌恵さんの情報から警察も敵の仲間である可能性が高いため、萌恵さんには今しばらく家の中に引きこもってもらうしかない。

 そうなると萌恵さんは自分に必要な物を得るために買い物に出ることもできない。つまり――――下着などは俺が買うしかないのだ。ショップで女性物の下着を下着を選ぶ俺……。ずっとこのままではまずい気がする。早く神澤さんとやらと連絡がついてほしいものである。


 うん。そのことは思い出さなくてもいいだろう。ずっと不安を抱えていては精神的に参ってしまいそうだから別の事を考えようか。

 別の話題と言えば人形たちの件。お菊とカリーヌの件だ。

 というか、人形達の態度が軟化しすぎだろ。あれほど敵対していた頃の状態が嘘のようだ。


「それじゃぁ、行ってくる」


「「「行ってらっしゃい!」」」


「「「「「議長閣下、よい一日を!」」」」」


 今日も大勢に見送られながら俺は会社へと向かう。

 引っ越すにしても、萌恵さんを優先に転居させた方がいいだろう。

 その際は、グイム達の一部を一緒に連れて行ってもらった方がいいか?

 現状、萌恵さんの実家にもグイム達が居るわけだから、戦力をかなり分散させなくてはいけない。

 ワープゲートの実験も順調らしいから、近い将来各家にて緊急事態が発生した場合、駆け付ける時間が大幅に短縮できることだろう。


「はぁ、いろいろと試さないとな。なにせどこから敵が現れるかわからないんだし……」



 などと独り言を呟く。

 ある日突然俺の目の前に現れて俺をも誘拐しようとするかもしれないのだ。

 気を引き締めて行動しないと、萌恵さんのように人気が無い場所で誘拐されかねない。



「その敵って私達の事かしら?」



「んえ?」



 それはあまりにも突然のことだった。


 道を塞がれ、バッと4人の男女に俺は囲まれてしまった。

 一瞬の事であり、考え事をしていた俺は退路を無くしてしまう。

 4人の中でも一番豪華そうな服装をしているのが高校生ぐらいの少女で、髪型がツインテールでありなんとも生意気そうだった。


「うわ。どちら様だ!?」


 そう問うと、高校生ぐらいの少女がキッと俺を睨みつけながら、


「それはこちらの台詞よ。禍々しい妙な気配を感じ取ってみれば、あの家から出てきた人間がこんなにも平凡な奴だったなんて」


 などと初対面な人間であるはずの俺に対し、とんでもない罵声を浴びせてくる少女。

 なんだこいつ。

 その少女はまるでコスプレをしているかのように、なんというかまるで和風PRGに出てくる陰陽師のような恰好をしていた。

 まさかこいつら! 萌恵さんを誘拐した連中か?



「まぁいいわ。あなたもいきなり私達と会って混乱している事でしょうから、質問に答えてあげる。ありがたく思いなさい」


 と、高飛車に宣言をした。

 その様子から、まるでカリーヌを大きくしたような感じだ。という場違いな感想まで抱いてしまう。


「私はこの国を守る退魔術使いの一族、可部和見かべわみ家の亜矢子あやこ。はっきり言わせてもらうけど、貴方。妙なものに憑りつかれているでしょ?」


「みょ、妙なもの?」


 どうしよう思いっきり心当たりがある。

 本来であればこんないかにも怪しいコスプレ集団など気にも留めないのだが、現在の我が家は究極の心霊スポットと化している。

 惚けてみせるのが最良の答えなのだろうかと迷ってしまう。


「えぇ、それもとびっきり厄介な。どうかしら? 最近家で妙な物音や物が勝手に移動したり飛んでたりしない?」


「え? い、いやぁ……」


 勝手に人形が動いたり喋ったりしていることはある。ついでにビームライフルもぶっ放すことが可能だ。

 だが、よく考えてみてほしい。そんなことを馬鹿正直に言えばどうなるだろうか。

 俺の考えでは萌恵さんを誘拐した一味がこいつらと関係があるのではないかと睨んでいる。つまり、こいつらは敵の可能性が高いのだ。そんな奴らに正直に話せばどうなるかぐらい簡単に想像できる。


「本当? 正直に言ってくれないかしら?」


 と、鋭い目で再度問う可部和見 亜矢子。

 ここで惚け続けてもいいのだが、少し踏み込んだ質問をしてみてもいいだろうか?

 こいつらがどういう存在なのか調べたい。

 もしかしたら萌恵さんを誘拐した一味とは違う連中なのかもしれないし。


「なぁ、ちょっと聞きたいんだが、もし家に心霊現象が起きたとかいう話だったら、俺をどうするんだ?

 誘拐して暗い場所に閉じ込めたりするとか、衰弱するまで食事を与えないとか?」


 これは萌恵さんから聞いた情報だ。

 萌恵さんはこれにプラスして、何かしらの術で体中を締め付けられ苦しめられたという話だった。

 彼女を誘拐した連中は立派な拷問をすることもいとわない奴ららしいので、俺も警戒を強めながら質問をした。

 そして、亜矢子の答えは、


「そんなの。悪霊に憑りつかれたなら当然でしょ?」


 と、言ってのけた。


「は、はぁ?」


 俺は驚いて間抜けな声で聞き返してしまう。


「聞こえなかった? 当然だって言ったのよ。

 悪霊に憑りつかれた経験があるなら、完全にその悪霊と縁を切らなきゃいけないでしょ。

 その為に、絶食をしたり、退魔術が施された部屋に閉じ込めるとかもちろんあるわよ」


「う……ん?」


 物は言いようというのはこの事だろうか。

 いや、この場合本気でそれが正しいと信じているような感じだ。

 確かに悪霊に苦しめられている人間がそういった専門家から助言を貰えたりすれば納得できることなのかもしれない。

 ただそれは悪霊に対してだろう。

 今となってはお菊やカリーヌがただの呪いの人形だとは思えないのだ。


「というか貴方、ずいぶんと詳しく聞いてくるのね?

 なにかそう言ったご経験がおありなのかしら?」


 と、疑う視線で俺を見ながら言ってきた。

 そもそも、そんな恰好で話を聞いてきている時点で不審者なのはこいつらの方だ。

 近所の目に留まれば確実に通報されるだろう。

 よくお前達その格好で集団でここに来ることできたな。



「亜矢子さん、こいつの家例の……」


「ん? あぁ、逃げ出した除霊対象者が住んでいた家よね?」


「えぇ、除霊対象者は近くの公園で悪霊に取りつかれたと自己申告をしていましたので自宅は調査対象から外していましたが、本当はあの家が原因だったのかもしれません。ですからこいつも危険かもしれないです」


「そうね。なら強制的に……」



 うおい。なんか不穏な単語が聞こえてくるぞ?

 強制的にってなんだよ。


「な、なんだよ。俺に何をしようっていうんだよ!」


 俺は後退るが、後ろにも連中の仲間がいる。

 両横は塀だ。

 逃げ場所は上空しかない。そして上空は逃げ場所には含まない。


「ちょっと状況が変わっただけよ。これ以上の問答は不要になったから」


「何を!?」


 亜矢子の仲間が後ろから俺をがっちり二人係でつかんだ。


「車を回して」


 そう言う亜矢子の命令で、横に居た部下らしき男がスマホでどこかと連絡を取り合う。

 拙い。誘拐される!?


「やめろ! 大声を出すぞ!」


「無駄よ。結界で音が周辺に漏れないようになっているから」


「はぁ!?」


 なんだよ結界って。ふざけんなよ。そんなのチートだろ!?


「畜生、離せ! 俺を捕まえてもお前達に何の得も――――」


バシュゥゥウウウン!


「「「「!?」」」」


 俺が抵抗をしていると、ビームライフルの音と共に光線が俺を掴んでいた男の頬を掠った。


「な、なに!?」


 狼狽える亜矢子。

 俺を含めて全員がビームが飛んできた方向を見ると、



「動くな! 議長閣下を離せ」



 と、『グイム隠密型』が『拠点強襲兵装B』を装備して塀の上に立ってた。


「な、なにあれ!? ロボット!? 今のロボットってこんなことまでできるの!?」


 亜矢子は慌てたようにグイム隠密タイプに指をさしながら叫んだ。


「亜矢子様、あれは違います! あれも霊気を帯びています! ロボットではありません!」


「亜矢子様、おそらくあれは霊力で動いている人形です! 梅岸家に行った者達の報告にあった奴らと同じ特徴です」


「亜矢子様、あれは『戦機兵記ガゾギアLegend』の地球同盟軍が使用する『グイム隠密型』です! 奴が持つステルス機能の一つ『同化ステルス機構』は、視覚にも作用し、周りの風景と同化します!

 対同化ステルス粒子を散布しなくては対処が難しいです!」


 おい、誰か一人俺と同類が居るだろう! こんなことがなければ一緒にいい酒が飲めそうだ。



「くっ。グイムだかなんだか知らないけど、たった一匹で――――」


バシュゥゥウウウン!


「ひゃぁあ!?」


 亜矢子が動こうとすると、別方向からビームが飛んできた。

 そして、その方向にはやはりグイム隠密型が居た。

 そういえば萌恵さんの家に向かわせた個体以外にもグイム隠密型は複数作っていたなぁ。


「な、まだいたの!?」


「再度通告する。大人しく議長閣下を離せ!」


「議長閣下って誰よ!?」


 まったくもってその通り。俺は別に何処の議会の議長になった覚えがない。

 まぁ、この場で対象は説明しなくてもわかるだろうが……。


「ま、まさかこの冴えない男の事を言っているの!?

 それに考えたくないけど、これだけ高度な式神術をこの男が使えるとでも言うの?」


 この状況にかなりショックを受けているだろう亜矢子は、ぶつぶつとそんなことを呟きながら俺を化け物を見るかのような目で見てきた。

 心外すぎる。それに冴えない男って大きなお世話だ。


「ビーム兵器を実用化させる式神術ってなんだよぉ……」


 やたら『戦機兵記ガゾギアLegend』に詳しい亜矢子の仲間がグイムの攻撃方法に震えている。


「亜矢子様、拙いです。このままでは我々の方が不利です」


「亜矢子様、敵があとどれだけあるかわかりません。なにせ奴は視覚的にも完全に風景と同化しているのですから!」


 戦機兵記ガゾギアLegendを知っている者と知らないものでは驚異の認識度は違うだろうが、共に不利だとは悟っているようだ。


「くっ。こんなことになるなんて……。いいわ、今日はあきらめてあげる! だけど、毎回こうなるとは思わないことね!」


 そんな捨て台詞を亜矢子は吐くと、いつの間にか近づいてきたボックスカーに他の術者達と共に乗り込みその場を去って行った。


「な、なんだったんだ……」


 嵐の後の静けさ。

 そう現すのにぴったりなほど連中が去った後は静かであった。


「議長閣下、ご無事でしたか?」


「あ、あぁ……」


 塀の上を伝い、近づいてきたグイム隠密型の一機が俺にそう問いかけてくる。


「ご安心を。連中の後は、ステルスフライトユニット装備のグイム隠密型が追っています」


「あ、あぁ……」


 そういえばそんなものも作ったなと思いながらそのグイムの報告を聞き流すのであった。







 今朝の一連の出来事は、会社でも影響があるかと思えばそんなことはなかった。

 電話対応は通常通りにできたし、お客様からの評価も問題ない。

 一応あの後俺の護衛をしていたグイム達に我が家に報告をしてもらい、厳戒態勢へと移行してもらうようにしたので、あれだけビーム兵器に驚いていた連中による家への襲撃の心配はそこまでないだろう。

 だが、表情には出ていたようで、昼休み仁井山係長が俺の所にやってきて、


「どうしたんだ城野。今日もなんだか様子がおかしいぞ?」


 と聞いてきた。


「わかります?」


「いや、その顔を見てわからない方がおかしいというか。

 前までは何処か世捨て人のように達観していた表情をしていたが、今は追い詰められた逃亡者のような顔だぞ」


 と、言われてしまう。

 逃亡者とは違うかもしれないが、追い詰められているというのは間違いないだろう。

 せっかく人形達からの恐怖から解放されたかと思えば、突然謎の組織から狙われることになったのだ。


「いやー。退魔師を名乗る連中から、命を狙われているんですよ!」


 などと言えば心神喪失を理由に遠回しに首になるだろう。


「何かあったなら相談に乗るぞ?」


 と言う仁井山係長に本当の事を言えるわけもない。ただ、


「係長は、もし身内の件で自分まで狙われることになったらどうします?」


「おいおい。それって……借金か何かか?」


 仁井山係長は驚いたような顔をする。


「あぁ、当然仮にの話ですよ? それに借金でもないです。

 ただ、条件として身内は全く悪くないはずです。相手が強引で、お前悪い奴の関係者だからひどい目に遭ってもいいよね? と言っているとします」


「警察に言うべきだろう……」


 至極当然の事をアドバイスしてくれる仁井山係長。そうなんだけど、いや、本当にそうなんだけどね!


「一応警察に知られたりした場合拙い事があるんです。

 例えば嫌がらせをしてくる親族から匿っている同居人が居たりとか……」


「……女か?」


「え? あ、はい……」


 俺がそう言うと、うーんと困ったように悩む仁井山係長。

 そしてしばらく悩むと、


「つまり、警察に知られたくない。なるべく穏便にお前の身内を目の敵にする奴を追い返したい。そして二度と近づけさせない。そういう事か?」


「まぁ、そう言う事です」


「ならば、味方を多くつけておいた方がいいな。一度弁護士とかに相談した方がいい。

 俺ももし何かあれば駆け付ける。もう少しその厄介者も情報をくれないか?」


「あ、いえ。現実の話ではないので……。一応弁護士というのも視野に入れておきます」


「うぅむ。手遅れにならない内にな」


「はい……」


 完全には誤魔化しきれていないので、心配そうな目を仁井山係長から向けられた。


 あー。転勤早々問題を抱えている奴だと思われているよー。

 どうしよう。


 だけど味方を多く付けるか……。

 考えてみるか。







「という事があってな」


 俺は定時に帰り、寄り道した後帰宅した。

 手には袋に6箱のグイムと2箱のグイム用換装装備のプラモデルがある。『グイム偵察型』が2機。『グイム隠密型』が2機。『グイム拠点防衛型』が2機だ。

 そして、『ステルスフライトユニット』が2つあるため、計8箱だ。



「本当に申し訳ありません! 私のせいで!」


 と、謝る萌恵さんであるが、


「いや、萌恵さんが謝罪する必要は無いよ。

 連中、萌恵さんの事が無くてもここに住んでいるだけで俺を狙ってきたんだ」


 そう言って萌恵さんの責任の重圧から解放させようとする。


「ならば早々に引っ越せばどうじゃ? 連中もここの土地目的なのじゃろ?

 グイムを増やすよりも引っ越しの方にお金を使った方がよいのじゃないか?」


 と、お菊が質問をしてきたのだが、


「当然それも視野に入れている。だけど連中この土地に関わった時点で除霊対象とか言って誘拐しようとする勢いだぞ? 引っ越した後も付け狙われるんじゃ堪ったもんじゃない」


 そう言って希望観測はしないようにしようと言った。


「だけど、それじゃあどうしようってのよ?

 連中をあきらめさせるの?」


 次にカリーヌがそう質問をしてきたので、


「それが一番現実的な方法だろう。

 ただし諦めさせるのは、俺達の誘拐だ。

 グイムの戦闘力は相手も驚いていた。つまり、グイムの数を揃えれば、相手も迂闊に手を出しては来ないだろうと思うんだ」


「それは……そうかもしれんがのぉ……」


 と、お菊はうーむと俺の意見に頭を傾げ納得していないようだった。


「それと聞きたいことがあるんだが、お前達は俺達を殺そうとかそういうことはもう思ってないんだよな?

 呪いの人形じゃ無いって思っていいんだよな?」


 確認のためにも人形達には聞いておかなくてはならない。


「いやぁ。それはワシにもよくはわからんのじゃ。呪いの人形と言えば、人を襲ったり人を恐怖に陥れたりするものじゃろ?

 ワシは聖人に危害を加えようとする輩が居れば、遠慮なく人を襲ったり恐怖を与える呪いの人形になるぞ?」


 と、自信たっぷりといった様子で答える。

 自ら呪いの人形ですと申告してくる人形も珍しいのかもしれない。


「私も聖人や萌恵を襲おうとするやつは許せないかなぁ。というか、現時点で萌恵は誘拐されたからもう許す気なんか無いけどね!」


 と、カリーヌも答える。


「そもそも、ロボットでもない人形が動く自体異常な事ではないでしょうか?」


 そうグイムの総司令がポツリと言った。

 うん、その通りだと俺も思う。


「今後の方針としては、できるだけ仲間を多く作って連中に対しどれだけ優位に交渉できるかだな。

 俺達はここの土地から出ていくのは全く異論はない。

 問題があるとすれば……」


 俺は言葉を途切れさせ、動く人形達を見る。

 そして、人形達に告げた。


「この土地を離れた瞬間、お前達が動かなくなる可能性があるという事だ。現状会社までの距離を行き来するのは大丈夫であることは今日証明できたし、梅岸家に駐在している部隊から異常は報告されていない。だけど、梅岸家に一年、いや1ヶ月居続けた場合はどうだ?」


 人形達は互いの顔を見合わせ、


「聖人。それは自然の摂理というものじゃ。

 本来人形は動かん。まぁ、ワシはちょっと特殊かもしれぬがこの土地に来てから動くことができた者は特に、本来動くことはできんのじゃ」


 と、お菊は言う。

 お菊は元々動く人形だったという話なので、カリーヌやグイム達とは少し違うだろう。

 だけどお菊は動かない方が当然なのだと言う。


「そうねぇ。本当なら動かない方がいいのかもしれないけどね。

 直接萌恵を守れなくなるかもしれないけど、この件が解決すれば聖人が萌恵を守ってくれるんでしょ?」


 と、カリーヌは言った。


「う、うぅん……」


 俺は歯切れの悪い答え方をする。

 いや、守るったっていつまで守れるかわからん。

 この一連の事件が解決すれば俺と萌恵さんは別々に暮らすことになるだろう。


「これっ、そこはハッキリと一生かけてお前を守るとか言う甲斐性は無いのか。全く最近の若者は……」


 などと年寄り臭いことを言うお菊。


「あの、えっと、その……」


 萌恵さんもいきなりそう言った話になったものだから、恥ずかしさからか赤面していた。


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次話は明日の予定です。

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