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第28話 カリーヌ=サルヴェールの行く先


 鎌田から古森へと渡され、古森から鎌田の家族に送られた荷物の中に、そのフランス人形はあった。



「うわぁ。お父ちゃんからのお人形だ」


 鎌田トメ。

 人形が行き着いた先は、フランスに派遣された鎌田の6歳になる娘の手である。



「古森さんが言うには、お父ちゃんも帰る準備をしているって」


 と、トメの母親は子供3人に言うのである。


「まったく。古森のおじさんと一緒に父さんも早く帰ってくればよかったのに」


 そう文句を言うのは14歳になる長男、幸助こうすけであった。


「おとーさん。まだ帰ってこないのー?」


 と、聞くのは3歳になる次男源吉であった。


「お父ちゃん忙しいんだって。もうちょっと我慢しようね?」


 鎌田の妻であり、子供たちの母は、子供たちに心配をかけないよう笑顔でそう言った。

 こうして何気ない日常が過ぎていくのであったが、ある日……。




「カリーヌ。今日はあなたが子供の役よ」


 その日、トメは父の土産と共におままごとをしていた。

 カリーヌと名付けたのはトメであり、サルヴェールはこの人形を売っていた店の名前である。

 その他に複数の日本人形と共に、遊んでいたトメであり、トメは人形達を大切にしていた。

 特にお気に入りの人形は寝室に飾ってあり、普段遊ぶことはあまりない。もっぱらその人形は就寝する際見守っている係りである。


「――――からです!」


「なんだと!?」



「父さんが――!? ――んで」



 すると、部屋の外で激しい口調で家族が話しているのが聞こえてきた。

 何事かと思い、遊びを中断したトメは部屋から外に出る。



「お母さんどうしたのー?」


 トメはただならぬ様子の雰囲気に不安を感じ母に問おうとした。

 だが、母は座り込み泣いているようであった。



「トメか!」


 兄の幸助がトメの姿を確認し、慌てて飛んでくる。そして、抱きしめながら、


「大丈夫だ。何も心配はいらない」


 と、泣いていた。


「親より先に死ぬとは……馬鹿者がっ!」


 そして、トメの祖父であり、鎌田の父が泣きながらそうこぼしていた。






 鎌田家の跡取りが死んだ。

 その訃報は瞬く間に村中に広がる。

 鎌田家の葬儀は遺体が無い状態で粛々と進められ、彼らは悲しむ暇もなく明日を迎える。


 そんな折、慌ててこの村へ飛んできたのは鎌田の親友、古森であった。



「申し訳ありませんっ! 自分が無理にでも連れ帰っていればこんなことには!」



 到着した早々、古森は土下座をせんばかりに頭を下げ謝罪をした。しかし、それを鎌田の父が止め、


「古森君のせいじゃない。倅の手紙にも書いてあったよ。奴はあえて自分の意思で残ったとな。

 部下や取引先の日本人の避難を最優先にし、自分を後回しにしていたと。だから誰のせいでもないんだ……。

 あえて言うなら、戦争が悪い。それだけだ」


 そう鎌田の父が言った。

 そして、何かを思い出したかのように鎌田の父は立ち上がり、


「あぁ、そうだ。君が送ってくれた倅の手紙には、もし君が訪ねてきたら出してあげてほしいと言っていたものがあったんだった」


 と言うと、彼は台所へ急ぎ足で行き、皿にのせた大量の梅干しを持ってくる。

 赤シソが大量に乗った自家製梅干しであった。


「倅が古森君に対する最期の願い。あいつが漬けたものだ。遠慮なく持って行ってくれ」


「うぅぅ……すみません」


「いいんだ」


 こうして彼は1時間ほど親友鎌田とのフランスでの思い出を鎌田の父、そして妻に語った。

 そして、帰る際玄関にて、



「おじさん。なんで父さんを殺した原因を作った奴らと同盟を結んだんだよ! おじさんは外交官なんだろ? どうしてなのさ!」


 と、幸助が涙ながらにそう訴えかけた。

 これには古森も言葉に詰まる。


「それは……」


 国が決めた事だ。と、言ってしまえば簡単であった。だけど、それでは幸助に対しても不誠実であると感じた古森は、


「すまない……」


 と、代表できる立場でもないが謝る事しかできなかった。


「なんでだよ! こんなのおかしいよ!」


 なおもそう言う幸助であったが、


「やめなさい! 古森さんが悪いわけじゃないでしょう! 古森さんは一所懸命お父さんを帰らせようとしてくれたんよ?」


 と、鎌田の妻がぴしゃりと言うと、幸助はそれ以上何も言えなくなり悔しそうに口を噤むだけとなった。

 その光景を見てやるせない気持ちになった古森は、


「それでは……」


 と、その場を逃げるように去ろうとする。

 しかし、




「古森のおじちゃん」


 と、フランス人形を大事に抱えたトメが声をかけてくる。

 その人形をを見た古森は目を見を大きく開け、まじまじと僅かな時、それを眺め続けた。

 古森が鎌田に頼まれて送ったフランス人形であった。


「あ、あぁ。なんだいトメちゃん」


 我に返った古森は、人形の事を気にしつつトメに声をかける。


「うん。おじちゃん、人形届けてくれてありがとう」


 そうトメが古森に礼を言った。その言葉で救われたのかはわからないが、古森は泣きそうになりながら、


「いいんだ。こちらこそありがとう」


 と言うのであった。









 3年後。

 最初は優勢であった日本軍の戦線は、次第に劣勢へと追い込まれていった。

 日本の本土にはアメリカ軍の爆撃が日常的に行われ、田舎へ疎開へ来る子供も多く存在していた。


 その中で、鎌田家の遠い親戚の子供が疎開してくることとなる。

 名前は『貝田かいだ 知恵ちえ』。トメと同じ11歳となる女の子であった。


 鎌田家がある村でも疎開してくる子供を多く迎え入れていたが、鎌田家に来た子供は一人だけであった。

 知恵は慣れない田舎暮らしであったが、文句ひとつ言う事もなく、鎌田家に世話になっていた。


 この時、17歳となった鎌田 幸助は兵士となるべく教育を受けるため、この村から離れていた。



「今日は、帰ったらいいものを見せてあげる!」


「ほんと!」


 トメと知恵はすっかり仲良くなり、まるで本物の姉妹かのように共に行動をしていた。

 娯楽が少ない田舎では、子供は学校が終われば家の手伝いが当たり前のように行われる。


 帰宅をすると、まず知恵はトメの部屋へと招き入れられた。

 鎌田家に限らず、この地方の田舎の民家は部屋数も多く、一人一つの部屋が割り与えられていた。

 トメも10歳になると遊び部屋ではなく自分の部屋が与えられ、そこで勉強や就寝をしていた。


「トメちゃんの部屋に入るの初めて!

 すごい。お人形がいっぱい!」


 知恵が言う通り、この家にきて初めてトメの部屋の中へと入る。

 素朴な部屋ではあったが、辺りに日本人形が多く置かれており、知恵は圧倒された。


「えへへ。実はね、これ……」


 照れ笑いをしながらトメは一体の人形を出してきた。

 日本人形とは違い、金髪碧眼のフランス人形カリーヌ=サルヴェールである。


「うわぁ。これってもしかして?」


「うん、外国の人形」


「すごい……初めて見た」


 この時代、トメが持っているほどの出来栄えのを持つフランス人形は、トメが住む地域ではなかなか見ることはできないだろう。

 しかしそれは知恵が暮らしていた都会でも同じことである。


「これ、お父さんがフランスから送ってくれた人形なの」


「フランス……それにお父さんってもしかして」


「うん。戦争に巻き込まれて死んじゃったお父さん。死んじゃう前にお父さんは日本に持って行ってもらえるようお父さんの友達に頼んでくれたの」


「そう……大切な人形なのね」


「うん。お父さんが最期に送ってくれた大切な人形」


 綺麗な人形を前にしてなんとも重苦しい話であるが、人形を見ただけで大切に扱われている事だけはわかった。

 しかし、それ以上何を言っていいのかわからない知恵は、


「名前はあるの?」


 と、聞いた。


「うん。カリーヌ。カリーヌ=サルヴェールっていうの。

 カリーヌは私が付けた名前。サルヴェールはお父さんがこのお人形を買ったお店の名前」


「そうなんだ。フランスにはこんなに可愛い人形が沢山あるのかな」


「うん……。戦争でどうなっているかはわからないけど……」


「あ、うん……」


 またしても暗い話題に行き着いてしまい、知恵は目を泳がせてどうしたものかと考える。


「あ、でもフランス全土が滅茶苦茶になっているわけじゃないはずだからきっと職人さんも人形達も無事だよ!」


「そ、そうだよね! そりゃそうだよね!」


 トメも暗い話をしてしまった自覚があったため、明るく大丈夫だと言えば知恵も全力で頷く。

 そして、このフランス人形を前にすればまた暗い話題になるかもしれないと判断したトメは、


「そうだ! 実は一番のお気に入りの人形がお母さんの寝室にあるの!」


 と、言った。


「そうなの?」


「うん。他の人形はお父さんやお爺ちゃんが買ってくれた人形だけど、お母さんの部屋に飾られている人形は代々受け継がれてきたものなんだ」


「へぇ。そんなに由緒ある人形があるんだ」


「どのくらい歴史があるかまではわからないんだけどね。

 少なくとも私のお祖母ちゃんが子供の頃からあったらしいよ。見に行こうよ!」


「行く行くぅ!」


 歴史あるものに興味があった知恵は喜んで飛びつき、トメと一緒に部屋を出たのであった。







 そして、戦争は終わった。

 日本の本土は滅茶苦茶になり、知恵の家があった地域も空襲の被害を受けたらしかったが知恵の家自体はなんとか無事だったらしい。


「ぢえ"ぢゃぁぁあん」


「ドメ"ぢゃぁぁあん」


 ようやく知恵も自宅に帰ることができるようになり、トメとも別れる時が来た。

 この時の二人はワンワンと泣き、別れを惜しく。


「うぅぅ。今までありがとうねトメぇ」


「こっちこそ。ありがとう」


 短い間であったが、二人の間に確かな絆ができた。


「向こうに着いたらお手紙頂戴ね」


「うん。きっと。きっと送るから」


 幸いにも、知恵の両親も無事でありこれから元の家で生活できる状態になったことから、お互い手紙を送りあうことを約束する。


「そうだ!」


 トメはふと思い出し、家の中に走って戻り、慌てて戻って来た。

 そして、手に抱えられていたものを、


「これ」


 と、知恵に渡す。


「え?」


 手渡してきたものはフランス人形であった。


「これ。私だと思って持ってて。あげる」


「そんな! これ、お父さんからトメがもらった大切な……。駄目だよ! こんな大切なもの貰えないよ!」


「なら、次会う時まで持ってて。次会えるようにおまじないだと思って?」


「……そういう事なら……」


 人形を受け取った知恵の目には再び涙が溢れ、絶対にまた会うことを心に誓った。



「さぁ、そろそろ行こうか」


 知恵の両親もこの場に知恵を迎えに来ており、知恵の父がそう促す。

 子供たちの別れをもらい泣きをしながら見ていた。


「わかった。それじゃぁトメ。またね」


「うん。また」


 こうして二人は別れることとなる。




 そして、知恵達一家が鎌田家から少し離れると、


「しかし、本当に鎌田家にはお世話になった……。海外へ行っていた旦那さんを失ってさらには……」


「えぇ、幸助君だったわよね。長男の幸助君も学徒動員で……」


「あぁ。その後空襲で亡くなってしまった。本来であれば知恵の面倒を見ることができるほど余裕なんかなかっただろうに」


「そうよね……。鎌田さんには帰ってからもお礼を考えないと」


 そんな両親の言葉を聞きながら知恵も将来もしトメに何かがあれば絶対に助けになろうと思った。







 1年後の夏。

 トメが3か月前に亡くなった寝たきりであった祖母とフランスで亡くなった父、そして動員先で空襲に遭い亡くなった兄の位牌がある仏壇の前で手を合わせていた。

 毎日行っている習慣ではあったが、その日は何か胸騒ぎがしていつもより長い時間手を合わせていた。

 その胸騒ぎの原因がとてもよくないことのような気がしていた為である。



「トメ! トメ!」


 と、トメの母が緊迫した様子でトメを呼んだ。

 何事かと、トメは母の所へ駆け寄ると、

 母は玄関のところに立ち、一通の手紙を握りしめていた。



「大変よ! 貝田さんの家が強盗に入られて放火もされて! 知恵ちゃんのお父さんが亡くなってしまったそうなの!」


「えっ! そんなっ!?」


 やはり嫌な情報であったとトメは力なくその場へ座り込む。


「知恵ちゃんは……」


「無事だそうだけど、知恵ちゃんと知恵ちゃんのお母さんはお母さんの実家に帰るらしいわ……」


 手に持っていた手紙にそう書かれていたのだろう。トメの母は手紙を何度も確認しながらそうトメに教えてくれた。


「そう……」


 トメは残念ながら知恵の母方の実家の住所は知らない。

 それまで手紙はやり取りは継続していた為、また落ち着いたら貰えると思い待っていた。

 しかし、この日以降知恵や知恵の母から手紙が来ることはなかった。


 トメは心配であった。以前知恵から知恵の母と母方の実家は折り合いが悪いと聞かされていた為だ。


「(どうか。幸せになってください)」


 トメにはそう願う事しかできなかった。




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―城野 聖人のアパート―


「それから私のお祖母ちゃんは、放火された際、倒れてきた家具の下敷きとなって足を折りながらも曾おばあちゃんと一緒に家から逃げ出せたそうです。

 家を失い、曾お爺ちゃんの実家は戦争の影響でもうなかったらしく、曾お祖母ちゃんはお祖母ちゃんと一緒に実家に連れ戻されました。

 そこで満足に足の治療を受けさせてもらえなかったお祖母ちゃんは、二度と元のように歩くことができなくなってしまったようでトメさんの家に行けなくなってしまったと泣いていたそうです」



「そんなことが……」


 俺は萌恵さんから話を聞き、怒りで拳を握りしめた。


「ワシがまだ別室に居た時にそのような交流があったとはのぅ。

 そういえば、お涼達が外国の仲間が居たとか話しておったな。

 じゃが、そんなことよりも知恵という者も苦労したのじゃな。ワシだったら愛する者を傷つけられた瞬間どう出るかわからんぞ」


 と、お菊も物騒な感想を語った。

 しかし、俺やお菊以上に怒りを感じていたであろうカリーヌは、今まで黙っていた口を開き、


「あいつらは! あいつらはねぇ。知恵の足を治さなかったくせに、満足に歩けない出来損ないだって知恵をいじめていた!

 知恵のお母さんは毎回かばってくれたけど、知恵のお母さんも毎日働きに出ていていつも家に居ない。

 その時を狙って知恵をいじめるんだ!

 知恵は毎日泣いていた! だけど、私を見てトメから勇気をもらったと言って日常を過ごしていった。

 私も何度も捨てられそうになって、その度にトメはボロボロになりながら私を守ってくれたの。

 だけど、確実に神経はすり減って行ってた。だから私は許せないの。知恵をいじめた連中。知恵を馬鹿にした連中は絶対に殺してやると思った。

 だけど、その時の私はまだこんな風に自由に動くことも話すこともできなかった。

 見聞きはできるけど知恵を励ますこともできないの!

 私がどれだけ悔しかったかわかる!?」


 少し話を聞いた俺でも悔しい気持ちでいっぱいになった。

 長年一部始終を見ていたカリーヌは俺以上に辛かったのだろう。

 それを簡単に理解できるとはとてもじゃないが言えない。


「それに、知恵は無理やり好きでもない男と結婚させられて、足が悪いのに本家のいう事が聞けないのかといろいろ命令されて……。

 知恵の息子も苦労をしたわ。

 そして、その子供。萌恵も大学へ上京する時、あの一族から女が勉強できるなんて生意気だ。本家よりも優秀なんてありえないとか頭がおかしい事言われてさんざん妨害してきた!

 知恵はそれでもと、長年コツコツ貯めていたお金で萌恵を送り出して、私を萌恵に預けて安心したかのように死んだ!

 最期に、『トメちゃんと会いたかった』と言い残してね!!」


 女だからとか本家よりもとか確かにおかしいことを言っていたんだな萌恵さんの実家は。

 いや、そもそもその家から知恵さんは元々出て行っていたんだから本家とか関係ないだろう。そして、結婚もしたから完全に別の家の人間では?

 そんな知恵さんや萌恵さんを縛り付けていたとか常識では考えられない。


「だから決めたの。この家にきて動けるようになった時、絶対に萌恵を狙ってくる連中は許さないって。

 特に、私は外に出たらいろいろと問題だから、この家を狙って侵入してくる連中は全員ぶっ殺すって!」


 と、カリーヌは激しい口調で心の内を述べた。



「なるほど。だから俺がこの家に引っ越してきた時、あれだけ敵対的だったんだな?」


「えぇそうよ。だけどまさかアンタがトメの孫だったなんてね……。取り返しがつかないことになる前に、知ることができてよかったわ」


 ヤレヤレといった様子で、溜息を吐くカリーヌ。

 いや、本当に互いに素性を知ることができてよかった。いくらお菊やガゾギアのプラモ達が居るからと言って、家の中に殺す気満々の敵対者がいるとか心が休まらない。


「まったく。おぬしはそそっかしいのぉ」


 などと言う最初から俺の事を殺す気だったお菊。


「何よ! アンタだって聖人の事殺す気だったでしょ!」


「な、ななななにを言うか! ワシはほら。最初からトメの孫かなーと思っておったぞ?

 ワシの嗅覚は鋭いのじゃ」


「嘘吐け! 孫かなーって思う奴に対して、私以上に『絶対に殺してやる!』って息巻いてたのは何処のどいつよ!」


「なんじゃと! トメの孫はワシの孫同然。聖人を害しようとしている奴が居たとは驚きじゃ! 何処のどいつじゃ!?」


「お前だよお前ぇえええ!!」


「んん~~~!? な、何のことかさっぱりじゃ。おぬしが何を言っているのかわからん。最近歳をとると耳が……」


「その耳飾りなら、今すぐそぎ落としてやるよ!」


「うおっ!? 何をする。止めるのじゃ!」


 などと人形達が取っ組み合いを始めた為、プラモ達が慌てて止めていた。


「しかし、こんなところで繋がりがあったなんてねぇ……」


「はい。私も驚いています」


 俺と萌恵さんは互いの顔を見ながら苦笑いをした。


「でも、これですっきりしました。約束は果たせなかったけど、カリーヌを元の持ち主の場所に帰らすことができるって」


「うぅん。それは……」


 今更返してとも言えないのではないだろうか?

 というか、返されても俺が困る。

 そもそも俺とカリーヌは縁はあっても、実際に共に過ごしていたわけではない。

 それに祖母も絶対にカリーヌを返してもらおうだなんて思っていなかったはずだ。


「いや、いいよ。わざわざカリーヌを俺の所や祖母の実家に置くことはしないよ。

 俺の祖母も死んでしまっているんだ。もし萌恵さんが良ければカリーヌは萌恵さんと一緒に暮らしてくれ」


「そんな……いいんですか?」


「もちろん。というか、今カリーヌが俺の家族の所に行っても知っている人は……あぁ、一人いるけど興味ないと思うよ?」


 源吉じーさんに聞けばわかるかもしれない。


「で、でも……」


 ちらちらと量産型グイム達に抑えられるカリーヌを見ながらどうしようかと迷っているようだ。


「そうは言っても、これからどうするかは本人次第。

 カリーヌに今後どちらについて行くか聞こうか」


「そう……ですね。そうですよね!」


 やはりカリーヌと別れたくは無いのだろう。

 萌恵さんは優し気な目でカリーヌを見ている。


「畜生! 安価な量産品共め、離せ! 離せぇぇえええ!!」


 口汚くグイム達を罵りながら押さえつけられている安価な量産品に負けっぱなしのカリーヌを見ながら、萌恵さん達の新居はどうするか考えることにした。




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