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俺が『見』てるセカイ、君の生きるミライ  作者: 六錠鷹志
第二章 昇らない陽 と 静かな海
32/33

26R それくらいは許されてもいいと思った

 俺はバレルの目を見つめる。その目が何を言っているのかを探る。

 「どうやって」という事は、そういうことなんだろう。『別の国』から来たという文字通りの意味ではなく、バレルは俺とジンが居た日本、『異世界』のことを言っているのだろう。

(興味本位って、顔じゃねぇもんな)

 彼の表情(かお)は普段のにやけたものではなく、唇を引き締め顎を引いていて真剣だということを主張していた。

 彼のなにがそれたらしめているのかは分からないが、ここは素直に真っすぐ答えるべきだと思った。


「すまないが、俺にもよくわからないんだ。向こうの世界で、いきなりまぶしい光がでて、閃光ってこうゆうのかってくらいヤバイやつだった。んで、眩暈がしたかと思ったら、土の中にいた。お前と出会ったあの森だ。ミーシャともあそこで出会った」


 理系の中でも、特に説明力の無さに定評のある俺なりに、頑張って説明した。

 俺は申し訳なさそうな顔をしながら、彼に大雑把に『異世界転移』した時の状況を言った。


「…やっぱりか」

「ん?」

「いや、なんでもねぇ」

「なんでもねぇ、ことねぇだろ。何だよ」

「はぁ。いや、今まで、ジンが『別の世界から来た』って言ってたのが半信半疑だったんだが、それがお前の言い草で確定しちまったなぁって、深い意味とかなんもこれっぽっちもねぇ。気になって聞いただけ。んだけだ」


 人は嘘をついているとき急に饒舌になると聞いたことがあるが、彼の発言にこれは当てはまるのかどうか。

 だけど、実際問題、相手が嘘をついているかなんて、どうやってもわからないから、指をこね始めたらとか、まばたきの回数が増えたからとか、そんなことで判断するのは不毛だと俺は思っている。どうせ分かりっこない、相手(たにん)の本当に考えていることなんて。


 バレルは俺がこの世界に来る前についてより詳細な情報を求めてきたが、俺もよくわからない。

 強いて言えば。


「全力で能力を使ったことくらいか、な?」


 俺は屋上から飛び降りる幼馴染(ショウ)の姿を『()て見て(・・・)、止めようと、ショウが助かるようにと、ショウが『無事だった』ことを願って、能力(・・)を使った。

 使ったといっても、自分でもよくわからず、無意識(かんじょう)が勝手に能力(・・)全力(フルパワー)で起動した。

 無意識下といっても俺には、何かが、体の中で何かが起こっているような、ただ事でないような、力というか、パワーを感じた。言葉で表現できないなにかが、確かにあった。

 言葉にできないのは、俺の語彙力の圧倒的不足とか、このパワーに慣れていないだけだとかいった、本質とは別のものなのかもしれないが。


「お前の能力って、あの未来視のことだよな」

「おう」

「………だけだよな」

「えっ、あっあぁ。そうだな…」


 バレルは急に声音を変えるからヒヤッとする。


「今変なこと聞くが、いいか」

「どんとこい」

「死んだことあるか」

「えっ?」

「死んだことあるか」


(Don't 来い、でお願いします)


「死n」

「いや、聞こえてる。何度も言わなくて、いい」

「ないのか」

「あったら、今ここには居ねぇ(はず)だろ。<リザレクション>でも使えるなら話は別だが」

「<りざれくちょん>って何だ」


 説明中………完了。

 ⇒リザレクションはないらしい。

 肉体という器に他人の魂を移す、肉体に疑似的な魂を宿すなどはできるらしいが、完全に『死んだ』人間を蘇らせることは出来ないらしい。

 バレル曰く、人間は死ぬと魂が肉体という器から解き放たれる。魂は一度肉体を離れると、他者の魂と区別がつかなくなるという。その中から特定の『誰か』の魂を、元の器に戻すことはできない。よって、『死んだ』人間は生き返らせることは不可能である、ってことだった。

 例えるならこうだ。

 --ここに2本のとあるペットボトルA,Bと1つのバケツがある。2本のペットボトルにはそれぞれ似たような成分の水A,Bがそれぞれ満タンまで入っていて、大きなバケツの中にある。2つのペットボトルをカタナでぶった切ったり、壊したりすると、バケツの中には2つ分の水がたまる。

 さてこの時、ペットボトルAに水Aを戻すことはできますか? という問題である。答えはもちろんNo。完全に同じような成分のものが混ざっちゃってるのだから、区別も蒸留もなーんにもできないってことだ。ペットボトルは場合によっちゃ元の状態に復元できるかもしれないけどね。

 このペットボトルが肉体で、水が魂。バケツが私たちがいる『世界』って言ったところだろうか。


 この事を聞いて、俺の疑問は余計膨らんだ。なんで、魔法がある世界で蘇らせられないのに科学でできると思ったんだと。

 ーーいや、これは俺の主観での話か。

 魔法があるのが当たり前の世界で、魔法にないものが<科学>にあるかもしれないと思ったのだろうか。

 それにしても、バレルの質問は不可解だ。なんでいきなり「死んだことあるか」って、唐突すぎる。

 「無いのか」とバレルは呟きながら、ラウラが寝ている隅と反対の隅っこに寝っ転がった。


「明日はまた転移連発することになるかも知れねぇから、先に失礼するわ。お前も早く寝ろよ」

「ああ、<おやすみ>」

「<おやすみ>」


 俺も寝ることにしよう。

 土部屋の隅は2人に陣取られているので、余った真ん中で寝る。幅の広い川の字だな。ちょっと、落ち着かない。布団も枕もないので余計寝る態勢が決まらない。

 俺のそんな様子に気づいたのか、バレルは「すまねぇな。俺もそんな心に余裕がある奴じゃねぇから、ラウラの隣で寝るなんで、我慢できなんだわ」といった。どう反応していいか分からず、鼻息交じりの「うん」で答えた。




 ーー数時間後。

「つぼわぁ、いいぞぉ。つぼぉ」

(痛ってえ! ちょっ、コイツ! マジなんだよ!)

 バレルの「我慢できない」は、ラウラの寝相アタックのことを言っていたらしい。

 ラウラに反撃するとどうなるかサッパリなので、目が覚めたらバレルをボコろう。

 それくらいは許されてもいいと、俺は思った。



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