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俺が『見』てるセカイ、君の生きるミライ  作者: 六錠鷹志
第二章 昇らない陽 と 静かな海
31/33

25R 凍死させてもいんじゃね

「痛ったぁぁぁ」

「足元気を付けろって言ったろ………タケルー! 生きてるかー?」


 「おぉー、生きてるぞー」と返す。バレルの顔は遠く、周囲を照らす手段を持たない俺はそれを確かめる手段はないが、頷いたような気がした。

 俺は崖に落ちた。いや、正確には穴か、クレータか。わからん。暗いので全くわからん。確かなことは、俺が足を踏み外して、数秒の間転がり落ちたこと。俺を助けるために、バレルとラウラが降りてきたこと。ラウラは調子に乗ってこけたこと。俺は擦り傷程度で大したけがはなかったこと。このあたりだろうか。

 そんなことを考えていたら、周囲が明るくなってきた。魔法で周囲を照らせる、バルトとラウラが近くまで来たのだ。


「ここは、何処なんだ?」


 俺の言葉に「わからん」とバレルが答えた。答えを望んでいたものではなかったので、問題はない。

 「あの爆心地じゃないの」とラウラがバレルに続いて言った。ラウラ曰く、ここ周辺には崖も穴もなく、起伏の少ない森が広がっているだけだったらしい。バレルもそれに頷いたのを見て、「そうかもしれないね」と3人に意見が合致した。


「って、タケル血が出てるぞ。口からタラタラたれとてるぞ」

「はっ?」


 口元に手を当てて、その手を見てみると確かに血がついていた。


「あぁ、なんか痛い。キモイ、きもうっ、ううぅ」

「どうしたっ、ッ!」


 ラウラ、バレルも頭に手を当てて、地面に膝をついている。俺も立っているのがつらい。

(何なんだ、何が起こってる?)


「おっおまぇら、少し、耐えるんだっ」と、バレルは言い、回らない舌で呪文を紡ぎ始めた。




 バレルの魔法によって、体力も回復し始めた俺たちは、とりあえず体制を立て直そうと、クレータの周りを調査することにした。バレルは、3人の身体を守護膜(バリア)で覆い、また、浄化(クリア)したらしい。詳しくはゴーグル先生でも知らないと思う。なんでイキナリこんな事になったのかは2人には分からないらしくーーもちろん俺もーー、爆発の被害者の魂が漂っているせいとか、この土地が呪われているかもしれないなどと言っていた。もし、クリスがここに居たら何か分かったかもしれない。

 とにかく、上へ戻る手段が見つからなければ、バレルが再び転移魔法が使えるようになるまで、バレルを休まさなければいけない。

 寝る、というのが一番だがこんな状態で寝ると凍え死にするに決まっている。雨風しのげる穴を探すか、たき火をするかだが、後者は難しいだろう。爆心地なのであれば木々は完全に灰となっているに決まっている。燃やせる材料なんて、どこにもないはずだ。

(どうしよ、)



「つぼぉぉぉ」

「なぁ、コイツ(ラウラ)って本当に寝てるのか。ネタにしか感じないんだが」

「静かになってくれてるだてありがてぇってもんだろ。それにこれで寝てないなら、俺がこま…いやなんでもねぇ」

「……そこんとこクワスク聞きてぇですねぇ」


 この会話の前に「ラウラを凍死させてもいんじゃね」という議論があったが、ここまで苦労したのがもったいないということでやめた。

 ラウラは苦労生産マシーンで、これからも苦労することを考慮すると先刻(さっき)の結論は適切だったのか疑問にも思い始めているのは、内緒にしておこう。

 なぜ、ラウラが凍死せずに寝られているのか。すなわち、どのようにして暖を取っているかというと、地面を掘り、地下に簡易的な部屋を作ったのだ。部屋といっても、正方に掘り進め固め、通気口を残しながら天井を作ったくらいの必要最低限の即席物だ。ラウラが魔法を使って体感3分経ったかそこらで完成させた。土の中は意外と暖かかった。

 そこから、当人が寝る? まで2分もかからなかったと思う。

 俺とバレルはそれをほげほげと見ながら、話をしていたのだ。


「なんだそれ? 食い物か?」

「食いもんじゃあねぇぞ。……鉄分は補給できるかもしんないが」


 俺は黒い板状の物体を手に持っている。これは、先刻(さっき)ラウラが土を掘っている間に見つけたものなんだが、明らかにおかしい。おっかしいと思う。だってーー


(どう見ても、モバイルバッテリーだな。定格も書いてあるし)


ーー異世界に似つかわしくないものだったから。

 俺はポケットからスマホを取り出す。親指で電源ボタンを押すが点灯しない。単なるバッテリー切れだろう。

 このモバイルバッテリーを使えばいい話のような気もするが、あいにくと俺はケーブルを持っていない。そもそも型がcだし、入らんなぁ、とバッテリーとスマホを右手に重ねて持ったその時、充電中のランプが点灯した。


(ワイヤレス給電? いや、俺の端末って対応してるやつだったけ? あれ~? カモ~ン、ごーぐるせんせ~)


 取り合えず充電ができたことはいいことだろう。疑似的なスタンドアロンでも、使えたら便利だしな。

 バレルは俺の行動には特に興味を示さず、俺自体について聞いてきた。


「なぁ、タケルはジンと同じ国の人間なんだよな」

「まぁ………俺はジンをよく知らないし、あったこともないからなぁ。確証は一切ないが、まぁ、状況からみてそれが有力ってか、ほぼ確定っていうかな」


 日本語を母国語にしているのは、日本だけなんで、日本語をバレルたちが知っている時点でジンという人も日本人なんだろう。

 というより、今になってだが気になったことがある。俺はどうやって、どうしてこの世界にーー


「なぁ、お前たちってどうやってここまで来たんだ?」


 --俺が思った疑問を読み上げるようにしてバレルが言った。



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