17R ちょろまかされたんじゃ…
「やだぁぁぁぁぁぁぁ、そんなら行きたくぬあぁぁぁぁぁああい」
「実家へ行く」ことについて、ラウラに詳しく聞いた。
それをまとめるとこんな感じ。
〇実家はユルランド大陸(世界で最大の大陸)の東に位置するブリーズという国にある。海が近くにあり、漁業や貿易で栄えている。海岸沿いから離れると山に囲まれているが、山は急こう配なため、開発はあまりされていない。
〇行き方は主に2つで、山を迂回するルートと、船で海上から行くルートに分かれる。
[迂回ルート]ノトールという北東にある国を通る。そこを経由して、ブリーズへ。
[海上ルート]港から船を使い海上を進み、直接ブリーズへ。港はスレッドにもあるが、現在、陰の偽刻であるため港は使えない。
○なぜ、俺がついていかなければならないのか。理由はまだ言えないらしい。
→(まぁ、ここはどうでもいい、重要なのは次だ)
●ミーシャは連れていけない
⇒はあああああああああああああああああああ?
(ありえないだろう? なぁ?)
「だから、ミーシャを連れていくと危ないの」
「それは………まぁ、だが」
(正論かもしれないが、そんなら)
「俺は行かないからな」
「魚食べさせてあげるから」
「行かないからな、絶対!」
「貝も食べたいの? いいわよ!」
「そんなもん知るかい、俺はミーシャといるんだ。お前なんか、どっかいけぇぃ」
「そんなこと言わなくてもいいでしょ」
「<ミーシャ、あの人は危ない人だから、近寄ったらダメだからね>」
「<わかった>」
「ちょっと、今なんて言ったの、ねぇ。おい、おいおいおい、ねぇ」
俺はラウラという悪魔をほっぽって、ミーシャと部屋に戻ることにした。
その日の夜。
(って言っても、ずっと暗いので、月が出ているときと言った方がわかりやすいかねぇ)
俺はミーシャが眠りについてから、扉を開け外に出る。
ミーシャは眠りにつくのが早く、また、ちょっとやそっとじゃ起きないのだ。この前、とある事件があって、大きな音が出たのに、ミーシャは余裕で寝ていたことからいえる。
(ミーシャって、結構大物かもしれないな)
きぃきぃと、音をあまり響かせないように、廊下を進み食堂に出ると仕事中のバルトとレイカがいた。
「やっほ~、タケルん」
「<こんばんわ>、バルトさん、レイカさん」
レイカは机に伏せるようにしながら、、、てか実際に床に伏せた状態で手だけを動かしてお金を仕分けて数えていた。
たぶん、足音とか気配とかなんかで、俺のことに気が付いたんだろう。
レイカはのほほんとしているようで、まわりの環境とか人の心情の変化に聡いのだ。
俺は、レイカのいる机の椅子に座る。作業の手を止めさせてしまったので、俺も少し手伝うことにした。
仕事を手伝い始めて間もなく、レイカが俺の持つお金を見つめて唸った。
「ん~、んっ? タケル~ん、それちょっと貸して~」
「えっ、はい」
俺は素直にそのお金を渡すと、ミリスはふむふむとお金を手で遊ばせる。
「ふむふむ、ふ~むふむ、ふむふむ? ん~、これは~? お父ち~ん」
「なんだ?」
洗い物の手を止め、エプロンで手についた水をふき取りながらバルト。
「手伝ってくれてたのか、タケル。<さんきゅー>だな」
「いえいえ。<どういたましてです~>」
(ごつい男が拙い感じでさんきゅーってっクスクス、なんて思ってないからな)
「んで、どうしたんだ?」
「あー、それが…」
「***はっけーん、なのだ~」
(***って?)
バルトは「見せてみろ」とレイカが今にも巨大化して怪獣と戦いに行きそうなポーズで持ち上げていたお金をひったくる。
「ほんとだな。こりゃダメだ」
「でしょ~」
「前にもあったよな、こんなん」
「だね~、最近たま~に、あるね~。今まではなかったと思うのに~」
「……いや、お前がちゃんとしてればいいんじゃないか」
「そんなこと言わないでよ~。いっそがしいときは、いちいち見てられないって~」
(やばい、話についてけない)
「………***って何なんですか? それより、何かあったのですか?」
わからんものは仕方ないので、何があったのか聞くことにした。
「***、まぁ端的に言って、カネの中にニセモンが混じってたんだ」
「えっ、それって………騙されたんですか?」
「騙されたってもな………これ見てみろ」
(ちょろまかされたんじゃないのか、、、よ)
そう言って、バルトは2枚のコインを俺の前に置く。
「この2つ。違い、わかるか?」
「ん………、何が違うんですか」
(ほぼ同じじゃね。てか、同じ。………こんなんじゃ、わかんねぇだろ。ホンモノとニセモノって)
「そりゃ、同じやつだもんな」
(一発殴りたい)
「いじわるはいけないよ~。ねぇ~、タケルん」
「そうですね~。バルトさんは意地悪です」
バルトは袖に隠していたニセモノを取り出し、2枚の横に置く。
「ちょっとした冗談だって。見てほしいのはこれとこれだ」
「あっはい」
俺はそのホンモノとニセモノに目を凝らすとーー
「あ~、なんかちゃいますね」
ーー違いがわからんので、適当ぶっこきました。
「まぁ、タケルには難しかったか」
(速攻ばれたやんけ)
バルトはそう、ニセモノだというコインをブツブツと呟きながら持ち上げる。
すると、コインを持ったバルトの右手が青白く光りだしーー
(あっ、やべっ)
ーー俺は嫌な予感がしたので、ちゃっかり『見』てみた。
そして、「ほい」と、バルトが投げてくる前に俺は、椅子から飛ぶように離れた。
俺のさっきまでいた場所で、コインは白い光をギュィィィンと甲高い音とともに放った。
バルトはタケルを頭に疑問符をいくつも浮かべながら、少しの間ぼうっと見ていた。
タケルはしばらくの間、激しい光によりなかなか視力が回復しない。
バルトの呆け顔は見られずに済んだのだが、妻であるレイカにはガン見され、生あったい視線を送られている。
(あぁぁ、目が目がぁぁぁ)
目が痛い。眼球に瞼が張り付いているようだ。
バルトが独り言のようにつぶやく。
俺はその言葉に、目を開くとーー
パリン!
--窓ガラスがナニカによって割られた。




