↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/64

46章 救済を求めて




「はぁっ……はっ……!」


 罪悪感から思わず彼女を置いてきてしまったが、拙い事になった。あの聖族が早目に戻って来てくれればいいが、もし運悪く姉達と遭遇してしまったら……。

 僕の魂に救いがあるとすれば、それは最早あの人の存在だけだった。けれど、この身はとうに人喰い化物の巣。到底側にはいられない。

 パーティー会場をフラフラ彷徨いながら、心を占めていたのは圧倒的な孤独だ。監禁されていた時とは比べ物にならないぐらい、今の僕は独りだった。

 ゲスト達は皆、料理片手に楽しそうに談笑している。あなた達は知らないから、そうやって笑っていられるのだ、この屋敷で起こっている悲劇を。教えられればきっと、恐怖で我先にと逃げ出す―――あの人なら一体どうするだろう?あの静寂の瞳にも嫌悪が宿るのか。それとも、


「兄貴!」後ろから声がした。「何やってるんだよ?」「あ……」


 我に返った僕を、弟は心配そうに覗き込む。

「どうしたんだよ、顔真っ青だぞ?あの子の介抱はどうした?」視線を落としギョッ!「!?とにかくこっち来い!!」

 腕を引かれるまま大広間を抜け、奥の居住区の廊下へ。

「?どうしたんだ……?」

「どうしたじゃねえよ!袖、血だらけじゃねえか!?」キョロキョロ。「誰も気付かなかっただろうな……!?」

 指摘された箇所を見てみると、さっき掴まれた手首から下が真っ赤になっていた。傷自体はもう塞がっているが、確かにどう見ても異常だ。

「まさか自分でやったのか?いや、前に自殺は出来ないって俺教えたよな……とすると、誰にやられたんだ?」

 縋るような目。

「こんな酷え真似、俺ぜってー赦さねえ!なあ、頼むから教えてくれよ!?」

「……姉、さんに、掴まれて」

 抉られた感触が蘇り、無意識に震えが起こる。

「なあ。お前も、僕と結婚したかったのか……?」

 その囁きで察したのか、やれやれと頭を振る。

「姉貴の奴……おい、他には何処も乱暴されなかったのか?」

「僕はされてない。でも父さんと、彼女が………あぁっ!!」

 フラッシュバックに震えた僕を、変温体質の腕が抱く。そうされていると何故か、普段乱暴される時よりも温かく感じた。

「あのアマ、兄貴の目の前で何つう事を……」ギュウッ。「俺の輪廻転生のくせに、気でも違ったのか?」

「僕が、全部悪いんだ……姉さん以外の人に目を向けるから、だから」

「何も悪くねえよ、兄貴は。あいつは頭おかしいんだ。下手に女に生まれちまったせいで、家庭を育めるかもなんて妄想を持っちまった。俺みたいな男だったらんな事、想像する余地も無かったのによ」

「じゃあお前の愛情は、姉さんとは違うのか?」

「ああ。俺の希望はあくまで恋人同士だからな。そりゃあ可愛らしいから、偶にドレスを着せたりはするけどさ。でも、俺はあの子と結婚しても素直に祝福するぜ?兄貴が好きなら無理に引き離したりしない」

 頭をボリボリ掻きつつ、腰に手を回す。


「だからさ―――俺を選べよ、兄貴?あんなヒス女はとっとと始末して、あの子と三人で面白可笑しくやろうぜ、な?」「止めろっ!!?」


 口付けを手で制止した僕を、『雄蛇』はニヤニヤ見つめてくる。今更純情ぶってどうするつもりだ、と言わんばかりに。


「何しているのアス?捜したわよ」「!!?」


 続いて聞こえた氷柱のような姉の声に貫かれ、一瞬頭が真っ白になった。慌てて弟がフォローに回る。

「姉貴!いや、これはその、兄貴がまたいつもの情緒不安定を起こしちまったからさ」

「あんたには訊いてないわ。―――アス、不死族をちゃんと見張っておくように言ったわよね?まさか私の言いつけを破ったの?」

「不死!?マジかよ、あの可愛い子ちゃんが!?」

 爛々と卑しい欲望に瞳を輝かせ、弟が低く叫ぶ。

「ええ、そうよ―――まあいいわ、その事であんたを呼びに来たの。付いて来なさい」

 そう命じた『雌蛇』は冷笑を浮かべ、俊敏な動きで僕の首筋に毒牙を突き立てた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。