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8/22

8 懲りないマルグリットと大図書館

8話です。

冒頭から3割くらいちょっとエロいシーンがあります。


「ねえ、ザリー。週末にはナンナ星を出ていくんだ。しばらく会えないと思うから朝まで一緒にどう?」


 ハイ市の港を一望できるラウンジで、女友達のザリーとナンナ星特産のオレンジ色のワインを飲んでいる。

 私の誘いに、ソファから起き上がって私のタンクトップをまくり上げる。


「カリナ、傷口は塞がったの?次は中谷に愛想つかされるよ」


 ジアナ星で使った設定でこの星でも生活している。だから今はカリナ山田。


「無理しないようにすればなんとかね。ヒッ!何するのよ!」


 ザリーは私の保護シートが取れたばかりの傷口を舐めあげて、悪戯な目で見上げる。

 少し痛かったけど、次に何をされるのか期待で頭の中がいっぱいになる。


「無理しないんだ?つまらないなあ」

「わっ、わかったわよ!ヒャー!」


 ザリーは私が話しているのに、傷口から脇の下まで舐めあげた。

 思わず大きめの声を出してザリーに怒られた。


「大声出さないでよ!変な目で見られるでしょ」


 耳が熱い。


 私は両足を力いっぱいすぼめて、高まりそうな身体を抑え込もうと必死になる。

 ザリーが唇を近づけて、楽しそうに吐息を吹きかけてきた。

 私はザリーと唇を合わせたい衝動に駆られて口を開いて行く。

 次に来る快楽の予感で、すぼめている足が震えている。


「ウッ」

「だらしないわねえ。行くわよ。あれ?」


 ザリーは立ち上がって私の手を引いたけど、動かない私を振り返る。

 フェイントで耳に舌を入れられた私は、腰が抜けて起き上がれない。


「仕方が無いなあ。おぶってあげるから。後でサービスしなさいよ」

「うん、サービスしゅる。ちょっとチビッちゃった」

「えーっ!」





 ヤバい、傷口から血が滲んでる!

 保護シートを当てて応急処置はしたけど、白いタンクトップが台無しになってる。


「マルグリットさん?その傷はどうなさったんですか?」

「ごめんなさい。力が入りすぎちゃって」


 私は血が滲んだタンクトップの左脇を押さえてヤナカに原因を追求されている。


 ザリーと過ごした昨日の夜は、本当に楽しくて我を忘れてしまった。


 途中でお腹の辺りがヌルヌルするのを、下になっていたザリーが気がついて分かった。

 見つけた時はかなり慌てたけど、痛みは無かったし、どうせ怒られるなら最後まで楽しみたかったから、ザリーは躊躇してたけど、バスルームで血塗れになりながら続けた。


「どのようにしたら力が入りすぎるのかな?」

「えっと、その、ザリーとその、ごめんなさい」

「化膿する前に帰ってきたから、これ以上は聞かんが。ナンナ星の腐敗菌は他の星から来た人間には強いんだよ。抗生剤はちゃんと飲んでたのか?隠してないで傷口を見せろ!」


 ヤナカは私を診療台に寝かせて医療ロボットに手当をさせた。


「傷口が12mm開いてるな」

「痛、ガーッ!んーっ!」


 傷口を摘まれた感覚があったから、接着剤を塗るのかと思ってたら、縫合用のステープラーを2発打ち込まれた。


「酷い!」

「あばれるとまた開くぞ」


 膝を抱えて痛みに耐えようと息を止めて力んだけど、ヤナカの言葉に必死に力を抜く。


「そんなに痛くないんだがな。黴菌のせいで腫れてたのか?次はステープラーだって言ったよな。そろそろ医務室は諦めて明け渡せよ。監視カメラは全部撤去したんだから。子供達の診療が面倒なんだよ。」

「……」

「どうした?あっ、さっき女の名前出してたよな」

「うえっ」

「泣くな!驚いただけだ」



 リノリは終始黙って無表情に作業を手伝っている。

 ヤナカに怒られるより精神的ダメージがキツイ。


「ワッ!うっ、ギャー。優しくして!ごめんなさい。リノリ、やめて!」


 リノリは乱暴に抗生剤を塗って保護シートをパンッと押しつけて貼り付けた。


「マギーのバカ!」






 次の日、ヤナカの誘いでナンナ星最大の図書館に来た。


 子供達は童話館に行った。

 リノリ達年長者が、年少組の面倒見が良いので、安心して任せられる。


「今日はマギーの知識が必要だからな」

「学会の論文アーカイブがあれば助かるわね」


 ナンナ星最大の図書館、正式には大賢者英知記録書館は3600年前の建設から増築を重ね、各時代の建築様式が貴重な文化遺産にもなっている。

 大賢者サンが「この世の英知を蒐めて広く知らしめよ」と遺言を残してから現在まで続いている。


「250年前までの論文は全て電子化されていますので、こちらの端末を使ってください。終りましたらこの窓口に返却お願いします」

「ロボットの入館は可能なの?」

「危険物を持ち込まなければ大丈夫です。危険物はクローゼットでお預かりできます」

「ありがとう」


 私達は司書から端末と言っていたタブレットを受け取り、広大な館内の閲覧エリアでテーブルに着く。


「まずは考古学の本が何処にあるか調べよう」

「そうね、えっと館内図っと、…うえっ!」

「どうした?うわっ!」

「シャトルで移動って、町ね。こんなにある」

「しゃーねえな。論文は移動中に探すか」


 図書館の増築が始まって500年が過ぎた頃に、中央付近が老朽化で崩壊した。以降は増築をやめて分館を新築して行ったという。


 古くからあるジャンルは本館に所蔵されているが、そのジャンルのスペースが無くなると、新しい分館に追加される、膨大な量のジャンルでは10以上の分館が存在するらしい。


「斎藤教授の書籍は最近の分館だな。他の文明となると数ヶ月は掛かりそうだな」

「斎藤教授の論文はコピーしたよ」

「こっちに送ってくれ。画像検索は出来るか?」

「図の入ったファイルをこうやって。おっ?たくさんヒットしたわよ」

「凄えなあ。そんな感じで片っ端からコピーしてくれ」

「エーッ」





 それから2人はシャトルで本館まで行き、ヤナカは私の送ったコピーを参照しながら、最も古い文献から閲覧を始めた。


「3000年以上前に研究された考古学って不思議な感じだ。考古学を研究する考古学がありそうだ。」

「何か言った?」

「独り言だ、気にするな」


 本館の所蔵品の全てがレプリカで、直接手にとって閲覧が許されている。

 複製品自体が古く、それさえもお蔵入りになるケースも多く、数十代目のレプリカも多い。

 本物に触れるには申請が必要だけど、実績のある学者でないと許可が降りないそうだ。

 石碑や石版、粘土板、木簡などは立体画像データで閲覧できる。


「このリストの中で、データ化されて無いのは459冊だけど地図や巻物とか拓本が114あるから全部でざっと11万ページね」

「ほとんどが絶版だな。地道に手でコピーするか」

「えー」


「でしたら有料コピーサービスはいかがですか?こちらも助かりますし」


 近くで棚に本を戻していた司書さんが教えてくれた。

 コピーサービスのデータは、2ヶ月後には閲覧用に無料で開放されるそうだ。

 コピーの費用を寄付している事になり、それなりの特典も得られる。


「多いですね。これですと20日後くらいの完成ですね」


 司書さんは私の持っている端末を覗き込んでリストを確認して答えてくれる。


「いくら必要なの?」

「書籍のサイズにも依りますが、この量なら帝国金貨8枚は超えないと思います」


 帝国大金貨1枚=帝国金貨10枚 10万デル

 帝国金貨1枚=銀貨10枚 1万デル

 銀貨1枚=小銀貨10枚 1千デル

 小銀貨1枚=銅貨100枚 100デル

 銅貨1枚=小銅貨10枚 1デル

 小銅貨 0,1デル=1デデル


 だから、1ページにつき小銅貨7.36枚。

 バザーなら銅貨1枚で謎肉の串焼きが買える。

 高いような安いような。


「コピーを依頼してくれ。そろそろリノリ達と飯だろ」


 見積りは8万1千デルだった。

 大きい本の料金が高いと言う説明だった。


「デルって何なの?」

「帝国銅貨1枚が1デルですよ。その下の小銅貨は1デデルです。戦争が終わってから金属の価値で計算するようになったので、帝国金貨8枚と銀貨1枚と呼ぶのが普通になりました。紙幣もありますが、お支払はお断りします」


 知らなかった。デルなんて貨幣単位があったなんて。

 これは連合国通貨ソルも無くなってるのかな?

 連合国の通貨はみんな銅貨か銅の合金だから重さでは数えられないかな。


「メモリーでもらえるの?支払いは当日で?」

「メディアは指定できますがメモリーが簡単です。お支払は前金でお願いいたします。大金ですから手付金を頂いて、完成までにご用意して頂いても結構です」

「全額払うわ」

「へっ?」

「えっ?」

「失礼しました。まさか一括でお支払されるとは思いませんでした」


 司書さんは目の前の金貨を見て、固まってしまう。

 ジアナ星では金貨4枚あれば1人が1年楽に暮らせるらしいけど、ナンナ星では3枚で贅沢に暮らせるらしい。


「引換券みたいのは無いの?」

「…………。」


 後ろから他の司書に突かれて我に帰った担当さん。


「し、失礼したした」


 まだ金貨から目が離せない司書さん、持ち逃げしないわよね。


 ちゃりーん。


「申し訳ございません。当館の司書長マーサが代わって担当させて頂きます。」


 3回も謝った上に金貨を落とした司書さんに代わって、私くらいの年齢の巨乳女性がカウンターに出てきた。


「それで引換券みたいなのは無いの?」

「そうでしたね。この明細書と全額お支払い頂きましたので、領収書が証明になります。量、種類ともに多いですから、明細書をお持ち頂くと確認が速いと思います。それから解像度ですがどうなさいますか?」





 これから欠食児童達と昼食をするために童話館に向かう。


 童話館では文字の読めない子達を集めて年長の子が絵本の読み聞かせをしていた。

 本当に面倒見の良い子達だ。


 知らない子供も混ざって仲良く聞き入っている。


 お話しの腰を折るのは憚れるので、入口付近の児童書の販売エリアを覗く。

 育児書から教科書や参考書まで売られている。年齢的には中学生くらいまで網羅しているようだ。

 新書もかなりの数並んでいる。終戦から1年半経っている。出版業も復興が始まったのだろう。


 書店内をロボットがウロウロしている。ヤナカなんだけど、違和感で目で追ってしまう。表情を作れないロボットだけど、ヤナカが操っている時の動きや目線で、何を考えているのか分る事がある。


「マギー。あいつ等に勉強をさせたいんだが解るか?」

「そうよね。何歳まで学校に通えたかで教科書を選べば良いけど、小中学校の全学年分は必要よね。幼児は解らないな。店員さんに聞いてみる?」


 読み聞かせが終わったところで、みんなが集まってきた。

 ヤナカは全員に好きな本を選ばせて一冊ずつ買い与えた。

 まだまだ本は高価だけど、小中学校の教科書と参考書と幼児教育用の文字と数字の教材も購入した。帝国金貨2枚と銀貨1枚だった。

 コピーを依頼したときに渡された金色のスポンサー会員カードを提示すると店員が口を押さえて驚いていた。

 5%引きになった。


 こいつの子煩悩さが本当にAIなのか不思議に思う。


 童話館を出て、歩いて10分ほど離れたバザーまで、電車ごっこのように輪になった綱の内側に年少組を並ばせて移動した。先頭と周りを年長者で囲み、最後尾で私とヤナカが監視と護衛についた。


 道行く大人たちは笑顔で一行を見送る者が多い。


 飴売りのおじさんがみんなの口に一つずつ飴を放り込み、最後尾にいる私が飴代を払う羽目に陥ったりして、なんだか落ち着かない。


 広場を囲む様にバザーのテントが並ぶ。

 クズ野菜とネズミ肉のシチューを売る屋台でみんなに一杯ずつ振る舞う。


「熱いからな。みんなフーフーして食べるんだぞ。誰もとらないからな、ゆっくり味わって食べろよ」


 中央の広場でみんなで石段に座ってシチューを食べる。

 年長者には少ないので持参したビスケットレーションを分け与える。


 最近は落ち着いたけど、やはり食事中の子供達は静かだった。

 背中を丸めて一心不乱に食べる姿は、少し不憫に思える。


「おかわりあるぞー」

「はーい」

「わたしも」

「はいはいはい」


 次々に子供達がスープ皿を出してシチューのおかわりを貰っている。

 また屋台のおじさんにやられた。

 1人2杯の代金を払った。


 次はおかわりは無しと最初に言っておこう。

ここまで読んで貰って本当にうれしいです。

マルグリットが2度目?の暴走です。18禁に抵触していたら指摘お願いします。

今度はリノリに本気で叱られました。


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