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3/22

3 拾い物と戦犯と触らぬ神に祟りなし

3話です。

長くなってしまいました。

できれば4千文字以内に収めたいです。

20260823修正しました。

 さらに半年が過ぎた。


 ヤナカの詳細な調査で、より近い惑星を発見した。

 人間がいる証拠に微弱な電波を検出した。

 現在はその惑星方向に向かっている。

 現在速度で195年後の到着まで短縮した。ちょっと考えると嬉しくない。


「前方に異物発見。全長350m。30分後に撮影可能距離に接近。船ならあっちはもう気がついているはずだ。第一次警戒態勢に入る」

「熱探知はどう?」

「センサーがぶっ壊れてるよ、情けねえ」


 レーダー画面の解像度を上げて形状を確認しようと試みる。

 細長い、やはり宇宙船かな?


「マルグリット」

「なに?」

「あれが宇宙船で、人が乗っていたらどうする?」

「え?助けを求める」

「そのかっこうで?」


 私が全裸なのをヤナカに指摘された。最近は警告すらしない。

 胸と股間を隠すが今更な事に気が付いて、自分の阿呆さに赤面した。

 何日シャワーを浴びて無いんだろう?

 脇の下の匂いを嗅ぐ。


「うわっ!」

「みっともねえなあ。早くシャワーを浴びてスーツを着ろよ」


 シャワールームに向かって駆け出すが、考えがまとまらずに足が縺れた。


 どうやって挨拶するんだっけ?社交辞令を思い出せない!

 ヤナカの修理作業が落ち着いてから、すっかり気が抜けていた。

 PCを見つけてから引き籠もりがさらに悪化している。

 自分でもこんなに自堕落というかふしだらだとは思いもしなかった。

 作業をする時以外は、全裸で食堂と自室を往復する生活。

 我ながら恥ずかしい。


 ドライヤーで髪を乾かしながら、鏡に映る自分を見る。

 久しぶりだった。

 顔の筋肉が緩んでいるのが判る。別人のように無表情だった。


「見えたぞ」


 戦闘用スーツを着て艦橋に戻る。


「友軍の駆逐艦かな?」

「機関は全て停止している。もっと近づかないと損傷箇所は解らない」

「あれに近づけるの?」

「相対速度が少ないから近づけるが、敵の偽装なら危険だぞ」

「3世代前の駆逐艦だね。あれだけ外観が綺麗なら部品取りが期待できるよ」

「期待は大きいな。アンカーを打ち込んだ時に制御を失うと、永遠に回り続ける。俺もまだ経験不足だ」

「このままだって死ぬんだから、行ってみよう」


 ヤナカはゆっくりと方向を変えて行く。

 近づくにつれて艦影がはっきりする。


「記録があったぞ。第2艦隊所属の駆逐艦ネヅ、D208ーD G 型45年前の建造だ。28年前のサラン星の内戦で消息不明のまま抹消されてる。頂きだな」


 ネヅは難民輸送の任務に就いていたが、難民に紛れたスパイにコンピュータウィルスを仕込まれた。

 その後、駆除に失敗した制御AI が、機密保持のために自壊した。


「サラン星って5光年以上離れてんのよ!何回ワープしたらここまで来れるのよ」

「ワープ開始と同時に自壊シーケンスが起動したと記録にある。2週間ほど捜索したらしいが、結果は見ての通りだ」

「自壊モードって自動でも働くのね。敵に鹵獲されそうな時に使うってマニュアルにあった」

「システムが危機的状況の時にも起動する。自壊モードは我々AI を強制的に削除して、物理的にも薬品で溶解する。自壊モードならトラップは無いから近づけるな」


 ヤナカは1000mまで接近したところで電磁アンカーをネヅの左舷に打ち込んで、姿勢制御に専念する。

 ヤナカの電力使用量が急増して、合わせてエンジン出力が上がって行く。

 ワイヤーが張られ、ネヅを軸にヤナカの船体が弧を描き始め、遠心力で反対側の壁に軽く押し付けられる。


 ギギギギ。

 シュー、シュー、ボーボー。

 ヤナカの姿勢制御バーニアの噴射音が連続している。

 ネヅもヤナカに引かれて回転を始めた。


 ヤナカの姿勢制御が始まって10時間が経過した。

 普通に歩ける程度の遠心力にまで回転数が落ちている。

 重力って落ち着くなあ、遠心力だけど。


 既にヤナカは整備ロボットを放って、ネヅ艦内の調査を始めていた。

 整備ロボットが設置したワイヤーにウィンチを噛ませてスイッチを入れる。

 歩く程の速さで私を引っ張って行く。

 ネヅは無傷のように見えた。

 まるで幽霊船のように静かで不気味だ。


「到着したよ」

「ロボットが案内するから艦橋の艦長専用の操作パネルまで行ってくれ」


 エアロックに入る。

 バルブが作動して、室内が加圧されていく。バッテリーは生きている。

 艦内は1気圧に保たれていた。30年近く前なのに頑丈だ。


 真っ暗な艦内を整備ロボットが照らしていく。

 船室の扉は全て開いていた。

 自動停止プログラムが起動すると、低圧部位以外の扉が全て開く。

 正常な段階を踏んで停止したのが見て取れた。


 ポールを登って艦橋に入る。

 ヘルメットに装備されたライトの絞りを広角にする。

 ネヅの艦橋はヤナカの3倍くらいの広さだった。

 見渡すと全てのシートに遺体が座っていた。


「艦橋に着いたよ。全員シートに座ったまま死んでるよ」

「艦長専用の操作盤は奥だ。右手前にコネクタがあるから整備ロボットのケーブルを接続してくれ」


 コネクタを見つける。ヤナカよりずっと立派な操作盤だった。

 整備ロボットがケーブルをニュ〜っと伸ばし、私が接続する。


「いいよ」

「あいよ。しばらく待て」


 艦長の遺体はシートに座ったままだ。

 難民輸送任務と記録にあったけど、どこに居るんだろう。


「OKだ、5秒で起動する」

「了解」


 メインスクリーンに電源が入り、起動プログラムが流れる。

 メインシステムの起動が終わるとサブシステムの起動、最後に末端装置のパネルが光る。


 スクリーンに艦内情報が表示されると、照明が点灯した。


「制御AI 以外は異常無い。艦内を調査する」


 ヤナカが操作しているのだろう、スクリーンが次々と新しい情報を表示していく。


「乗組員22名、難民は243名。全員艦内で確認した。死体だぞ。エンジンは全て正常。燃料は91%。全兵器正常。生命維持装置も正常に稼働している。こちらからネヅを操作して姿勢制御を安定させる。全エンジンが50秒後に起動するぞ」

「解った。私の端末に遺体の場所を送って」

「ほいよ」


 サブモニターに艦内の見取図を出す。

 ネヅには整備の他に警備と作業のロボットが配備されていた。

 ヤナカと比べて本当に豪華だなあ。

 遺体を空っぽの第3格納庫に集めるよう作業ロボットに命令した。


 艦内カメラで作業を見守る。

 死んでからすぐに空調が止まったらしく、遺体は腐敗せずに第1格納庫に難民のために設えたパーティション内でそのまま凍っていた。着の身着のまま脱出したのだろう、少しばかりの手荷物も一緒にあった。


 やはり苦しんだ形跡が無い。全ての遺体が生きていたままの姿だ。

 歩いていた姿のものまである。


「ヤナカ、死因は解る?」

「調査中だ。ヤバそうだな。詳細が判明するまでネヅの外部通信は使用禁止にするぞ。それからメットはまだ脱ぐなよ」

「そうね、それが良さそう」





 私達は録画された監視カメラ映像をメインスクリーンに再生していた。


「ワープ航行中にみんなが死んで、跳躍ポイントに出てから自壊プログラムが起動。自壊完了後、艦内に生存者が残っていないと判断して、艦の機能が自動停止。の順番かな?」

「そうだな。跳躍座標が書き換えられてる。そこから28年間彷徨ってるな。そのポイントで何かをするつもりだったんだろう。何も無い宙域だからやりたい放題だ。システムログを見ると、ワープの294分前に娯楽室の端末からウィルスが侵入しているが、警報が出ていない。その時の映像も残っている」


 男が端末の操作をしている映像が表示される。端末のカメラにもしっかり顔が写っている。

 難民の1人で、身分証もある。


「なんだそれ?端末は誰でも使えるけど、制御AI には繋がらないよね」

「こいつのID、上級インスペクターで登録されているぞ。これなら制御AIにも入れるな。難民登録されている上級インスペクターって何だよこれ。連合軍に手引きした奴がいるな。第2艦隊の基地でしか書き換えられないファイルだぞ。変更日は犯行の6ヶ月前だ。基地での整備記録もあるからその日で確定だろ」


 スクリーンに表示される身分証の男は、遺体の中に居た。


「このスパイさん、怪しい所持品はウィルスが入ったメモリーだけだったんでしょ?誰かと楽しく話しているけど、死ぬ間際にこんな心境になれるのが不思議ね。何が目的だったんだろ?」

「制御AI が無いから詳細は解らないな。支援AIはログだけだ。 死体を数体簡易スキャンしたが、毒物、病原体、ウィルス、電撃の痕跡は検出されなかった」


 どの人も何かをしている途中で動画をスチルした様に停まってしまう。

 死体の表情だけが無表情に変化していくのが判る。


 何も解らないままだけど、艦内の見回りを始める。

 私達は空き巣をしている最中なのだ。使えそうな物を物色していく。


 私以外生き物がいない艦内を、作業ロボットと一緒に回る。

 私達がたてる音以外が全く無い不気味さに、ヤナカの艦内と同じだと気づいて震え上がってしまった。


 使えそうな物を作業ロボットにリストアップさせながら、医務室にたどり着く。


「えっ?」


 医務室の壁に赤茶色の何かが大量に付着していた。

 室内では拳銃を握った2人の人間が浮かんでいる。

 どちらも胸部が損傷していて流れた血がそのままの形で氷ついていた。


「ヤナカ。医務室だけど」

「酷えなあ。そこの記録は残って無いぞ。監視カメラも無い。顔を撮れるか?」


 遺体の顔を作業ロボットに向ける。


「1人は軍医の登録があるが乗艦記録が無いな。佐々木麗子准将だ。そんな偉い奴がお忍びで駆逐艦に乗艦してるのは変だろ。もう1人の男は不明、乗艦記録も無い。スキャンしたが認識票も無い。2人は仲間なのか?ネヅが自動停止してから乗船してるな。エアロックに記録がある。作業ロボットを2体送るから調べてくれ」

「解った」


 医療准将と言えば、大型艦にすら配属されない。普通の兵隊なら旗艦あたりの幹部クラスかな。

 今は3体のロボットが、医務室内を調べている。

 整備ロボットと違って腕が人間に近いのでサクサクと作業が進んでいる。

 私は隣の医療用倉庫に入って気がついた。


「本物の医療担当者はどこ?」

「え?医療担当者は……、3人いて、2人は第3格納庫に輸送中だ。1人はサラン星を出港する前に感染症で下船してる。死んだ2人もサラン星で入れ替わってっるなあ」

「元から居た医療チームは全員生きてるの。あやしい」


 ロボットが医療廃棄物の中から300本近い使用済み注射針を発見した。


「シリンダー内にナノマシンが残ってた。サラン星風土病のワクチンって事だが。医療用ナノマシンはワクチンには使わない。怪しすぎて鳥肌ものだ」


 その後、未使用の注射器も見つかり、数十万個のナノマシンが封入されていた。


「解析が終わったぞ。このナノマシンは体内に入るとそのまま体内を回る。特定の信号を受け取ると、脳幹に集まる。10時間くらいで数万個が脳幹に集まる計算だ。その後、違う信号を受信すると高電圧パルスを1度だけ印加する。100個や200個じゃあなんとも無いが、1万も集まったら即死だったろう」

「新兵器の人体実験なの?」

「兵器にしては体内に仕込む手段が注射なのがお粗末だよな。証拠は見つからないが、医療准将が秘密裏に乗艦しているのが証拠だ。ランダムに30体の脳幹からサンプルを取ったが、全部からナノマシンが出た」


 スイッチになった信号も特定された。

 設定した時刻に艦内放送から人間の聞こえない周波数で発射される様に仕組まれていた。


 艦内のログに予防接種の記録は無かったが、医務室前の行列が撮影されていた。


「医務室の2人はなんで殺し合いをしたんだろう?」

「准将の詳しい記録を閲覧するには、本部サーバーにアクセスが必要だ。こんなヤバい奴を調べたら、俺達は消されるな」

「そうだね。間違いない」


 話は終わりだ。

 犯人を特定する証拠はないけど、調べた証拠は綺麗にまとめて保存した。


 遺体は全て第3格納庫で低温保存というより放置した。


こんなに読んで頂いて感謝します。

あらすじを書いていたのですが、どんどん外れてしまいます。

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