22 2人の名声と拠点引っ越し
22話です。
いつの間にか10万文字を超えていました。
よろしくお願いします。
「ナンナ星で売れた赤芋料理だ。ジアナ星でも売れるか確かめる」
翌日、廃墟に調理道具を持ち込んで、リノリ達が実際に赤芋チップスとフライドポテトを作って見せた。
最初は見た事も無い色の芋に眉をひそめていた連中も、出来上がった料理を口に入れた途端に目の色を変えた。
今日はマルグリットも来て、廃墟の博物館計画の話しを進めている。
「スー、美味しいでしょ?」
「確かに美味い!」
「下拵えも調理も簡単だ。揚げ時間さえ分かれば誰でも出来る」
片足の元調理人が太鼓判を押す。
「これから表通りで売ってみよう」
ホームレス達はリノリ達の調理を真似て作業を始めた。
今日のところは時間のかからないチップだけだ。
樹脂の番重に紐を通して首にかけ、その中に出来た商品を並べて売り歩いた。番重には商品が50個以上入る。
パン屋の老夫婦の店にも置いてもらう。
「赤芋のチップスはいかがですか〜」
「美味しい美味しいお芋だよ」
「甘くて美味しい赤芋のスライスフライはいかが?」
1個を銅貨2枚で売ると、番重1つで小銀貨1枚になる。
3人が番重で売り。
年長組が呼び込みをした。
「いくらだい?」
二十歳くらいの女性の2人組が興味深そうにやってくる。
やはりここはリリアの独壇場だ。
「お友達に紹介してくれたら1つおまけするよ。2人で3つ」
2人で1つの料金ではなく、3つで2つ分。
それだけ現金が入る。
「良いの?」
「1つ銅貨2枚だから3つで銅貨4枚!」
「ちょっと高くない?味見できる?」
1人が上目遣いにリリアの袖を引く。
相手が違うだろ!とツッコミを入れたくなったが、2人の口にチップを放り込む。
「「!」」
やはり客は固まった。
「買う!買います!買わせて!」
「まいどー」
割とまともな服装にエプロンを着させた街娼達が、番重3つを売り切り、パン屋の分もほとんど売り切れた。
小銀貨4枚弱の売上だった。大人1人が4日楽に暮らせる金額を半日で稼いだ計算だが、ジアナ星の方が物価が高いので、そうは行かないだろう。
廃墟で調理を担当する者達に朗報がもたらされるが、喜びよりも疲労が凄かった。
「これでジアナ星でも売れることが解ったな」
「ねえ、中谷。なんで私達に良くしてくれるのさ?」
スーが少し意地悪そうに聞いた。
「リノリ達の恩人だろ?」
「それだけ?」
本気でバカを見ているような表情にヤナカはスーが信じそうな理由を付け足した。
「俺達はジアナ星の有名人だぞ。中谷や山田の名前で儲けてる輩が大勢いるだろ?本家に金が入っても良いよな?」
「そりゃあ違えねえがよ。私達は関係無えぞ」
「「「「恩人だよ」」」」
年長組がスーの周りに集まって抱きつく。
「繕いものとか服のサイズ直しを教えてくれたね」
「おじさんにも残飯の拾い方を教えてもらった」
「釣りも教えてくれたよね」
「食べられる草も教えてもらった」
「ほら見ろ、お前達はリノリ達の恩人だろ?」
そのあと中谷は山田と何か話し合っていたが、腹も減っていたので持参した調理器具を使ってバーベキューをした。
「ヤッター。バーベキューだよ!」
「いいのか?こんな贅沢何年振りだか分かんねえよ。味も覚えてねえ」
「何だい、バーベキューってのは」
スー達に質問されたが、それ以外の言い方を思い出せなかった。
星間連合の言い方なのか、ナンナ星でも同じ感じだったのを思い出す。
金網と鉄板を出して解凍しておいた肉を焼き始める。
「こっちじゃ何て呼ぶんだ?」
中谷が逆に聞き返してスーが答えた。
「タレで食べるなら焼肉、串に通すなら串焼き、こっちの鉄板は鉄板焼きとか焼きそばに使うな」
「タレの味が違うかもしれないな。まあ食べてみろよ」
スーが最初に六本足猪の薄切りを口に入れた。
黙って目を閉じてゆっくりと咀嚼している。
「おい!スー!どうなんだよ」
方足のおじさんは我慢できないようだ。
「ナンナ星で獲った六本足猪と猫耳兎の肉だ。元は只だから遠慮するな」
「「「「いっただっきまーす」」」」
「あーっそれ私の!」
大人達も加わって激しい肉の争奪戦がはじまった。
「ねえ、スー。娼婦ってどのくらい稼げるの?」
「なんだい、カリナ?」
「ここで商売を始めたらどのくらいのお給料が必要か聞きたかったのよ。
それに娼婦ってどのくらい稼げるか興味があったし」
「そうかい。客の話じゃあ週に小銀貨5枚あったら家族4人でギリギリらしいよ。ダウンタウンは家賃が安いからなんとかなるんだとよ」
「小銀貨5枚かあ。1人だと週に小銀貨1枚と銅貨26枚ね。今日の売上なら仕入れを考えてもなんとかなりそうね」
(ここにいる連中を博物館が完成するまで食べさせるには、やっぱり赤芋だよね。)
「うち等の稼ぎは時間でも違うし、曜日でも違うし、天気でも変わるからね。稼ぎが無い時は無いし、多い日は10人相手する日もある。私等は場末の立ちんぼだから1人1回銅貨30枚だよ」
「へー、1回銅貨30枚かあ。2年位前に金貨4枚で大人が1人が1年贅沢に暮らせるって聞いたけど、今の物価はどうなの?」
「落ち着いて来てるよ。食料増産とかいって、食料は安くなって来てる。日用品は横ばいだね。前よりは楽な感じがしてるよ。戦争の前なら金貨1枚あれば家族4人で普通の暮らしができたさ」
「ここで働かない?」
「え?」
「中谷もみんなに仕事をやるって言ってたでしょ」
「………」
「ほらァ、泣かないでよ」
「うっ」
「スーがやってくれるならみんなも一緒に雇うわよ」
「みんなぁ。来てくれ。カリナが…」
「どうしたんです?スーさん泣かせて」
娼婦組のみんなに計画を説明する。男達には別の仕事をやってもらうつもりなので後回しだ。
「そういうわけで、リノリの名義でこの辺りの土地を建物ごと買ったから、工事が始まるまではここで暮らしても良いし、明日からお給料が発生するから安アパートにでも引っ越すものいいわね」
「「「「「うわーっ!」」」」」
「何よ。くっつかないでよ。うわっ鼻水!」
娼婦組、元娼婦組はカリナに抱きついて大泣きをしている。
「約束して欲しいことがあるのよ」
「「「「「え?」」」」」
5人は不安な表情になってしまう。こういう時の後出し条件は詐欺かと思うようなことが多い。
「私達と一緒に働くなら、今のお仕事は止めて欲しいのよ。1番の理由は貴女達の健康よ。私達の船に行って健康診断するからね」
「船って?」
「私達は戦艦に乗って旅をしながらジャンク屋をしてるの。この町でいい医者があったらそっちでもいいわよ」
「船に乗ってみてえよ」
「それなら船で。それでね、男が止められないなら、お金はもらってもあげてもだめよ。ちゃんとお付き合いするか、プロを買うのよ。カリナとジョージっていう英雄が経営する店だから、お客さんの理想は壊したくないのよ」
「そんな事言ってるけど、おねえちゃん男に刺されたんだよ」
「「「「「え!」」」」」
リノリが楽しそうに私のシャツを捲くりあげて、腰に残った傷跡を見せる。
「まじかよ?」
「男をひっかけたつもりが強盗だったんだよね。心配したんだから。二度とあんな思いさせないでね!」
「へへ、あの時は心配かけたわね」
リリアナは、救出された時から、公爵家には戻らず子供と2人で自立すると決めていた。
「マルグリット」
「何?リリアナ」
「カリナ山田ってザザからもらった戸籍でしょ。私ももらえるかな?」
「もらえるとは思うけど、一度私の戸籍に入った方が簡単ね」
「そんなこと可能なの?」
「戦争が終わって2年でしょ。両親も親戚も消息不明の人が多いし、空襲で町ごと無くなると、証明できる隣人も職場もないことが多いの。だから今なら役所も簡単に養子縁組してくれるよ。危ないけどお金を出せばもっと簡単よ」
「危ないってどういう事?」
「なりすますわけだから、借金とか犯罪者だとかあるとね」
リリアナは頷いて考え込んでいた。
「公爵家にバレないようにしたいのね」
「そう。妹達には会いたいけれど」
「もめそうな人物はいるの?」
「国王家族や他の公爵家の人達がいるわ。後継者候補が1人増えるんだからね」
「それは不味いわね。ザザに頼んでサーラ王家にバレるのも不味いし…」
「ジョージ中谷と結婚してすぐに離婚ってのもありよ」
「ヤナカの戸籍もあるの?」
「実はあるのよ。財産狙いで来られるのも迷惑だから隠してるのよ。まだ時間あるし、博物館の開業で滞在期間も伸びそうだし、リリアナも手に職付けるんでしょ」
「うん、ありがとう。マルグリット、大好きよ」
「私はいつでも良いわよ」
「え?どういう意味?」
新人ちゃん達も同じ様な理由で悩んでいる。
ゼーリシア、マリエ、ゾフィのジアナ星出身の3人は、ジアンナシティに滞在中は、ばったり知り合いと遭遇する可能性もある。
ルシアはナンナ星出身。
アーケはサラン星出身。
ジアナ星にいる今なら故郷に帰ることも容易だ。
1番遠いサラン星でもワープ航法可能な旅客船なら3ヶ月の距離だ。
アーケの故郷サラン星は常に戦争状態だ。子供と2人、帰ったところで生き延びられるかも分からない。
戦争という意味では、帰らない選択をしたリリアナとは敵同士だが、お互いに思うところは無いようだ。
「明日は朝から引っ越しよ。自分の荷物はちゃんとまとめて置いてね」
「バスで行くの?」
「車を4台買ったわ」
「買ったの?」
「運転出来るでしょ?」
「「「「どんだけ金持ってるのよ」」」」
「最後に聞いた時には20万枚?」
「何が?」
「何がって?」
「何が20万枚だ?」
「ああ、帝国金貨よ」
「「ふーっ」」
「おい!グレタ、マリエ、大丈夫か?」
2人が倒れてしまった。
「どうしたの?医療さん呼ぼうか?」
「どうしたのって、お前なぁ。ツクヅク底の知れない女だなあ。40年落ちの中古とはいえ駆逐艦を持ってんだから大金持ちには違えねえな」
「ああ、タカチホノミネ丸?帝国大金貨4千枚だっかなぁ?(嘘だけど)」
「「「「「ふーっ」」」」」
引っ越し先は今は使われていない帝国軍の駐屯地だった。
大型輸送車が通るので、道路は整備されているが、バスも通らない人里から少し離れた荒野にある。
200人以上収容出来る兵員宿舎が私達のジアナ星での本拠地になる。
武器こそ撤去されているが、撤去できない警備システムなどはそのまま使え、敷地は広大でイロイロな施設が点在する。
「あれ、シャトルもこっちに来てるの?」
「そうよ。これからはどこでも行けるよ」
宿舎は4棟あり、一般棟、士官棟がそれぞれ男女に別れていた。
「盗賊の襲撃を考えて、全員一般女子棟で生活するのよ。使える子は武器を携帯して」
「士官棟に泊まりたいの」
「ごめんね、ゼーリシア。子供と一緒だから広い部屋が良いよね。盗賊なんかの襲撃があったら守り切れないから、集まって住んで欲しいのよ」
ちょっと不服そうなゼーリシアだったが、理由は納得したので何も言わない。
「昼間はどこを使っても良いわよ。警備ロボットに知らせてから出かけてね。食事の時間に居ないと探しに行くから」
「そんなに警戒するの?」
「桃源郷から2回襲われたでしょ?」
「そ、そうよね」
「念のためよ。ヤナカが警備ロボットを指揮してるから大丈夫だけど、基地内は広いから目が届かないのよ」
夢の島で酷い目にあったのだろう。ゼーリシアは暴力の予感に蒼くなる。
その日の深夜、ヤナカに呼び出された。
「何よ、こんな夜中に?」
「これを見てくれ」
ヤナカはタブレットを見せる。
「何?、え?これってドローンのセンサー?」
「そうだ。6人いる」
それはドローンのサーマルカメラ映像だった。ぼやっとした点が幾つか見える。
「動物の可能性は?」
「奴等から携帯端末の電波が出ている。盗賊ならビギナーだな」
ドローンの存在に気がつかない時点で素人丸出しだが、襲撃にしては人数が少な過ぎる。こちらの人数を知らないのか?
「ど素人ね。どの勢力かな?あれ?何よ、人が増えた!こっちは基地の反対側」
ヤナカがドローンを操作しているうちにモニターから消えてしまう。
「気が付くのが遅かったけど、こっちは本物ね。やっちゃう?」
「法治国家の領内だ。反撃なら文句は言われないだろう。タカチホノミネ丸はいつもこの上にいるから瞬殺だが…」
「みんなは起こす?」
「そうだな、みんなで防空シェルターに避難だ。元軍人組に参加してもらおう」
元軍人組が現れた後ろを、みんながゾロゾロと防空シェルターに歩いていく。
ここまでありがとう御座います。
たまたま基本情報を見ていて10万文字を超えていたことに気が付きました。
自分でも驚きです。
次の目標は30話15万文字でしょうか?
ちょっと鬼がほくそ笑んでいるような気もします。
これからもよろしくお願いします。




