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20 元軍人組の驚愕と懐かしいジアンナ

20話まで来ました。

ここまでありがとうございます。

 ジアナ星まではワープ航法を使わないとおよそ40日間。

 たっぷり勉強の時間が使える子供達だった。


 年長組の4人は艦橋で機器の操作をマルグリットとヤナカが教えている。

 理論ばかりでは飽きてしまうだろうと考え、機器操作の訓練をしている。


 人数が倍増した魔法訓練は、基礎コースを大人と子供の2つに分けて行っていた。

 子供の方が覚えが速いので分けたのが事実だ。


「今日は大人組の訓練だから、私はしばらく居ないわよ」

「いってらっしゃーい。あ痛!」


 操舵訓練中のニムが返事をしてくれたが、ヤナカにデコピンをされていた。

 今日はソウナ一人が教師だ。


「今日はヤナカが作ったゲームの実験をします。上手く動いたら子供達に開放します」


 ソウナが台車の上に乗った装置を2台見せた。


「1つ目は風魔法。このプロペラを風で回すと発電して発電量が表示されます。風力、継続時間、同じ風力の維持、風力の変化など、いろいろな遊び方が考えられます。みなさんも思いついたら提案してください。そしてメンバー登録すると個人の成績やグラフとランキングが表示されます」

「「「オー!」」」


 元軍人組が盛り上がっている。


「次の透明の箱は、中の金属棒の温度を上下させるゲームです。触ると危険ですから箱の中に入っています。温度魔法ですね。使い方は風魔法とだいたい同じです。練習すると料理やミルクの温めにも使えそうですし、冬や夏でも快適かもしれません」


「「「へー」」」


 今度はお嬢様組が関心を示した。


 ソウナが風魔法の実演を始めた。

 微風から始め、だんだんと風量を増やしていく。

 やがて数値の色が黄色になり「まだまだ!」とソウナが気合を入れてさらに風量が増える。

 練習場の倉庫内に強風が吹きすさび、デジタル表示が赤になってエラーが点滅した。


「ふーっ、こんな感じです。子供用ですからみなさんもこのくらいは出来るようになってください」

「「「えー!」」」


 ソウナの実演に表情が青くなっていた元軍人組が、そんなの無理だという感じで手を降っている。


「これを戦闘で使ったらどうなる?」

「そりゃー、…」


 私の質問の意味が身にしみて理解できたアーケだった。

 温度魔法のゲームは、金属棒を溶解させるほどの力がソウナにあったので実演しなかった。


「それでは皆さん、得意な方を伸ばすのも、苦手な方を鍛えるのも自由です。魔力が尽きるまで練習してください。私から訓練を受けるのも有りですよ」


 各々がゲームの前に並び、楽しみながら練習が始まる。


「ソウナ、電気の魔法を教えてよ」

「マギーお姉さん、なんか悪い顔してるよ」

「ちょっとビリビリしたら気持ち良いかもって」


 私は下腹部を指差す。


 パシッ。

 顔を真っ赤にしたソウナが、私の尻に小さな雷を落とした。


「いったー!」

「マギーのエッチ!雷は中級なの!」

「ごめんなさーい。じゃあ指を振動させる魔…」


 バシッ。


「もう、嫌い!」


 マルグリットは電撃を食らって、その場に頽れてしまった。


「ああやって使うんだな」

「男に襲われたらあれよ」

「中級って言ってたわよね」

「「「「「「「「「速く習いたい」」」」」」」」」





 2時間前にジアナ星の制宙圏に入った。

 リノリが宇宙管理局と交信し、ソウナが操舵を担当している。


「こちらジアナ政府宇宙管理局、タカチホノミネ丸の軌道上停泊を許可する。ようこそジアナ星へ」

「ありがとう、こちら中谷貿易所属、護衛艦タカチホノミネ丸。了解しました。軌道上到着予定時間はジアナ時間で28.3時間後です」

「こちらジアナ政府宇宙管理局、28.3時間後のタカチホノミネ丸を到着を了解した」


 ソウナが恒星間航行速度を惑星間速度に変更して、逆噴射による制動がタカチホノミネ丸にかかり始める。少しだけ進行方向に身体がもって行かれる。

 そしてジアナ星の座標を再チェックした。

 これでタカチホノミネ丸は自動でジアナ星の公転に合わせて航路を設定する。


「問題ありません。リノリ船長」

「了解、ソウナ航海長」

「良くやったぞ。2人とも」


 ヤナカが2人の実践を褒めて頭を撫でている。


「たくさん船がいるね!」


 レーダー手の訓練をしていたリリアとナウナがレーダー操作パネルに映る船影の数に感動している。旅客船なら窓から肉眼で見られる距離の船もあった。


「ジアナ星から離れる時は艦橋に入れなかったからね。楽しそうね?」

「「うん、マギーお姉ちゃん」」


 ヤナカがメインスクリーンをレーダー映像に切り替える。


「「たくさんいるね」」


 リノリとソウナがスクリーンを見上げて感動している。

 ピンクが旅客船で緑が輸送船、たまに戦闘艦や惑星間中継アンテナが見つかる。


「何か来る!後ろから!」


 急にリノリが叫んでニムが指示も無くバリアを展開し、ミナが主砲のエネルギー充填作業に入る。

 艦内に警報が発令された。


「速い!」

(この子たち無敵だよ。熟練クルーでもこんな芸当できない)


 私は身元不明の戦闘艦と戦闘中という伝文を無限ループで周囲の船に送信する。

 こうすれば事故と間違えて無闇に接近する船を止められる。


「どうした?」


 元軍人組が艦橋に飛び込んで来る。この子達も速い!


「敵襲だ。黙って見ていろ!」


 ヤナカが3人を制止する。


 リノリはレーダー操作パネルを凝視してミナに伝える。


「左右後方5時と7時に1隻ずつ」

「了解」

「機銃掃射開始。主砲発射と同時に迎撃ミサイル発射。よーい………」

「何もないぞ!」

「黙っていろ!」


 アーケの発言にヤナカが怒鳴る。

 ダダダダダダダ。


 機銃が何もない空間に向かって放たれた後、やっとレーダーが電位差を捉えて警報が鳴る。


「撃てー!」


 ジュボー、ジュボー。

 ミサイルの発射音の後、予定の場所に出現した戦闘艦が、弾幕の中で火花を散らし、レーザーが横殴りに艦側面に長い亀裂を入れていく。


 敵艦は出現した瞬間に左が主砲、右がミサイルを発射したが、ニムのバリアとミナの弾幕で切り抜ける。


 まるで判で押した様に敵2隻が被弾して、活動を停止した。


「何で解るの?」


 ルシアが真っ青な顔で呟くが、誰も答えない。隣の2人も口をあんぐりあけたまま動かない。


「次6時方向、大きいの2つ来るよ。右旋回開始」

「右旋回開始」


 ソウナが命令を繰り返し、左に強い横Gがかかる。


「送ったデータの地点に機銃掃射開始。ミナ、前と後ろの主砲で1つずつ当てて。敵は止まってるのと同じよ。大型ミサイル準備完了次第発射」


 ダダダダダダダダダダダ。

 ジュボー、ジュボー。

 ジュンジュンジュン。


 敵の出現と同時に1隻目が主砲を連射する。3射目でバリヤが突破され、機銃が1機被弾した。


 同時にこちらの3段攻撃で1隻目が沈黙する。


「ちっ」

「「ごめんなさい!」」


 リノリが舌打ちすると、近くで見ていたリリアとナウナが震え上がった。


 2隻目はミサイルを発射したが、近接信管式砲弾の弾幕に阻まれて至近距離で大爆発起こした。レーザーが後を畳み掛ける。


「もっと後ろにもう1つ!凄く大きい!」

「了解!」


 ミナはまだ着弾していない大型ミサイルの進路を、一瞬で書き換えた。

 大型ミサイルはほんの少し軌道を変えて、何もない空間へ飛んでいく。


 さらに前後両方の主砲を発射した。


 前の2隻を盾にするつもりでワープアウトポイントを選択したのだろう。指示通りのポイントでレーダーが警告を発する。


「大きい!……え?ええ?どうなってんの?わっ!」


 大型艦に向かったミサイルが消えてしまった。

 ちょうどそこに大型艦がワープアウトして、数秒後に内部から火を吹いて爆発を起こした。


「あれじゃあまるで転移じゃないか!」


 ヤナカが思わず呟いている。ロボットだから表情はわからないが、かなり驚いてるに違いない。


 おそらく爆発の衝撃でずれたのだろう、2射目の主砲攻撃が味方の艦に命中して、艦橋が消失してしまった。


 こちらの攻撃は全て命中してしまい、何となく無抵抗の敵をやっつけてしまった感じになる。


「リノリ!まだ来る?」

「もう来ない。…けど見張ってるやつがあっちにいるよ」


 リノリがレーダー画面をスクロールする。

 望遠レンズで確認できる距離に停泊している船籍不明の小型戦闘艦がいた。


「試してみるか?」


 ヤナカが主砲をそちらに向けてエネルギーを充填した。

 小型戦闘艦は急発進して、同時に主砲とミサイルをこちらに発射した。


「正解だな。ミナ、迎撃を頼む」


 ヤナカはそう言って、そのまま主砲を発射した。

 あっけなかった。


「「「今の何なの?」」」


 3人は抱き合ってヘタり混んでしまった。気持ちは痛いほど解る、私もそうだったから。


「これも魔法よ?」

「「「よ?」」」

「多分ね」


「困ったな」

「何が困ったの」

「格納庫が一杯でサルベージできない」

「あら、そうね」


 ヤナカが場違いな事を言ったせいで、戦勝気分が白けてしまった。





 警備隊が近くまで来てるぞ。時間がない、どうやって誤魔化す?

 パトロール中の警備隊と、ジアナ星守備隊の戦艦が集まってくる。


 タカチホノミネ丸は駆逐艦だが1隻で上げる戦果としては有り得ない。

 小型戦闘艦 ×1

 駆逐艦クラス ×2

 巡洋艦クラス ×2

 旗艦クラス ×1

 これは同等の艦隊戦の戦果だ。


「誰も魔法が証明できないんだから、そのままログ見せちゃえば?」

「え?」


 私の提案にヤナカが数秒間停止してしまった。


 ジアナ星守備艦隊が、威嚇射撃をして接近してくる。


「また威嚇射撃よ。何様のつもりよ!撃ち返してやろうか!」

「やっちゃう?」


 私の怒り半分な冗談に、ニムがニヤニヤしながら引き金を引く真似をする。


「こちらジアナ星守備隊旗艦ディアマンテ艦長シモン・ロペス。タカチホノミネ丸艦長に応答願う」

「こちらタカチホノミネ丸艦長ジョージ・中谷」

「中山艦長こんにちは。戦闘回避情報を発信したのは貴艦かね?」

「そうだ。正体不明艦にいきなり襲われ、周囲に注意喚起を行った。謎の艦隊はどこの所属か知っているか?」

「おそらく傭兵団、桃源郷だ。見たところタカチホノミネ丸は殆ど無傷だが、この残骸は全て貴艦がやったと?」

「桃源郷ならば復讐だろう。2ヶ月ほど前に襲撃されたので殲滅した。ナンナ星警備隊に問い合わせれば解る。今回の戦闘ログを送る。査証願いたい」

「了解した。このまま待て」


 ヤナカが少し手を加えた戦闘ログを送信してから40分ほど待たされた。

 警備隊が到着し、正体不明艦隊の調査が始まっている。


「中谷艦長。確認が終了した。まるで、ワープアウトポイントを知っていた様な手際だな。素晴らしい。我が艦隊にスカウトしたいくらいだ」

「前回の戦闘と全く同じ戦略だった。ロペス艦長でも結果は同じだろう」

「しかし最初の2隻はどうやって判ったんだ?」

「こちらから見て98度の位置に残骸があるだろ?以前の戦闘で見た小型戦闘艦だ。あれを発見して先手を打った(嘘だが)」

「本当に素晴らしい。前代未聞だ。それから桃源郷の戦闘艦だと判明したよ」

「ありがとう。我々はこれからどうすれば良い?」

「ジアナ星周回軌道の停泊許可が出ているな。必要ならまた連絡する。協力に感謝する。貴艦は自由だ。ジアナ政府に代わって君たちを歓迎する」

「ありがとう、ロペス艦長」





 この後、元軍人組に説明するのが大変だった。

 1隻の駆逐艦では絶対に勝てない相手を、反撃もさせずに勝利したのだ。

 目撃した者でも信じられない。


「桃源郷の復讐って、何で浮きトーチカの近くでやらなかったんだろ」

「確かにそうだ。それにワープ無しで40日も航行してたら、いつでも襲えたはずだな」

「何がしたかったんだろ?勝つつもりなら警備隊と交戦になる場所は避けるわよね」

「わざわざ旗艦まで持ち出したのも解せない」

「あの大型艦って旗艦なの?なら幹部が指揮してたはずね」

「後でシモンから話があるだろう。賞金も入りそうだしな」

「またあ!」


 ジアナ星周回軌道に停泊したタカチホノミネ丸はミナがサブパイロットを務めてジアンナシティまで操縦した。


「あー、久しぶりね。風が気持ちいい」

「ジアンナだ。帰ってきた」

「ノマは小さかったのに覚えてるのね」

「覚えてるよ。お姉ちゃんと初めて会ったところだよ」

「嬉しい。覚えててくれたのね」


 初めて重力を体験する子供達は、気持ち悪そうに一生懸命足を上げてぎこちなく歩いていた。頭を下に向けると前に倒れそうになる。


「この子達の重力治療をするから、最低でも2ヶ月はジアナ星に滞在するわよ。リノリ達はどうする?」

「まだ決めてないけど、住んでた廃墟を見てみたい。みんなが知ってるのはそこだけだから」


 リノリ達には勝って知った故郷だから心配ないだろう。


「解ったわ。みんなで好きな事をして良いわよ。遠出をする時はヤナカに護衛を頼むのよ。それからお金の心配はいらないからね。大人組はどうしたい?」

「まだ決めてないが、街を歩きたいってみんなが言ってるな」

「ジアナ星出身の子が3人いたけど、船を降りて帰ってもいいのよ」

「家に帰るのも怖いらしいんだ。決心に時間がかかりそうだ」


 家族には言えないような体験をしているし、家族を目の前で殺された子もいる。


「私とヤナカはどちらでも歓迎よ」

「いちいちタカチホノミネ丸に帰るのも面倒だから伝手を使って家を借りるから、それまではホテル暮らしよ」

やっと20話まで来ました。

ここまでありがとうございます。

みなさんのおかげです。

リアクションを頂いている方々ありがとうございます。


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