18 レーレの秘密
18話です。
予約投稿を試してみました。
誤字脱字を訂正しました
「レーレの魔法って威力が強いけど、魔力も強いのよね?」
「強いな。この船で一番だ」
「やっぱり人種的に強いと思うわ」
「詳しく調べれば良かったと今は思うよ。あの頃は魔法なんて知らなかったからな」
「あの時からよね。レーレが積極的におしゃべりするようになったの」
「ああ、推測なんだが、村の経験で魔力も増えたんだろう」
「あの子の特殊能力はまだ解らないけど、発現するのが楽しみだわ」
「俺もレーレのケースは気になっているよ」
「ナンナ星に戻るのも良いけど、武器の補給が難しいのよね」
半年前、ナンナ星の地方都市キンカラに滞在した日、ヤナカから提案があった。
「この町はレーレの故郷に近い。帰ってみるか?」
本人の反応は薄い。
レーレーは7歳になっていた。
「レーレがお父さんとお母さんと住んでた村に行くんだよ」
リノリがレーレを抱き上げて優しく教えている。
「うん」
「覚えてる?」
「わかんない」
レーレはナンナ星の原住民ンナイア族のニルー村出身で、両親とジアナ星に出稼ぎに来ていた時に戦闘に巻き込まれて孤児になった。
終戦の1年数ヶ月前、レーレは4歳だった。
リノリは、墜落した戦闘機にレーレ親子が巻き込まれるところを目撃している。
戦闘が止んでからレーレ親子を探したが、レーレは両親の遺体の間に守られて瓦礫の下から見つかった。
その時のレーレは、驚くほど普通にしていたとリノリが教えてくれた。
リノリはレーレ親子の私物を掘り出し、両親の遺品と3人の身分証を大事に保管している。
レーレが孤児になった頃から、自分からは話さない静かで手間は掛からないが、何を考えているかわからない子だったという。
「お母さんといた村に行く?」
「うん」
なんとなく行く気になった感じの答えだった。
ニルー村は平野部の端にあるキンカラから、低い山地を30キロ入った場所にある。基幹産業は農業と宝石の採掘。人族がナンナ星に入植する遥か昔からこの星に住み、動物と会話する能力があった。
村人を刺激しない様に村の周りを旋回してから、村外にシャトルを着陸させる。
屈強な若者が槍と銃を一緒にしたような武器を構えて現れた。
「何者か?戦いの意思が無くば両手を上げて出て来い」
「私達はジアナ星から来た。私の名はカリナ山田、この村に住んでいたフーナ夫妻を知っているか?」
「フーナは俺の師匠だ。師匠とはどの様な関係だ」
数人の男が駆けつけ、最初の若者が近づかないよう合図をする。
「フーナ夫妻は戦争中にジアナ星で亡くなられた。孤児になっていた夫妻の娘を私の養女にして育てている。レーレ、来て」
レーレがタラップをテトテトと降りて、私の足にしがみついて男達を眺めている。
男達とレーレの間に睨み合いの様な緊張が続いた。
「おお!お前は確かにフーナとナーシの娘」
そう叫んだ初老の男が、走りよってレーレを抱き上げた。
レーレも両手を広げて待ち構えていた。
(何が起きてるの?)
残った男達は感動の涙を流している。
(何が起きてるのよ?)
「済まなかった、カリナさん。同族の娘を助けてくれてありがとう。歓迎する」
「何が起きたの?」
私とリノリとレーレの3人と、警備ロボットがニルー村の集会所に招かれた。
4人の初老の男がテーブルの一番奥に温和な表情で座っている。
「私が二ルー村村長ジャーカだ。フーナとナーシの件は聞いた。カリナさん、詳しく聞かせてください」
「私がジアナ星でレーレ達に出会ったのは1年半くらい前よ。いろいろあって孤児だったこの子達12人を私の養子にしたの。それ以前のことは孤児のリーダーだったこの子、リノリが話すわ」
男達は紹介したリノリに会釈をして、微笑んで話を待つ。
少し緊張気味のリノリはレーレの方を見てから話し出した。
「カリナお姉ちゃんに引き取られる前は、ジアンナ市の廃墟で12人で暮らしてた。レーレを拾ったのは3年前だと思う。その時は8人で暮らしてた。……」
リノリは一生懸命当時の出来事を語る。
最初はリノリの家に5人で住んでいたこと、近所の住人がリノリの家から金品を目の前で持ち去ったこと、孤児の家にも強盗が何度も入り、仲間が殺されて放火されこと、しかたなく残飯が拾える都市で暮らすようになったこと。
そして戦闘機が墜落して倒れた家の下敷きになり、レーレを守るように死んでいた両親のこと。その日からリノリと一緒に苦しい暮らしをして来たこと、戦争が終わり、カリナと出会った日の事。
村長達の表情はどんどん暗くなり、うなずくのも忘れて聞いている。
話が終わる頃には村長は流れる涙も拭わず、まばたきもしなくなっていた。
私は2人の遺品を彼等に差し出して続ける。
「レーレのご家族はいますか?」
「レーレの祖父母の代まで遡れば親戚が何人かいる」
「そうですか。近い肉親がいたら合わせたかったんです」
レーレはいつものように空を眺めて黙っていたが、いつもより何となく楽しそうだった。
「さっきレーレと話さなくても解ったようだけど」
「ああ、そうだった。ンナイア族は貴方達が言うテレパシーが使えるんだ。人族の連中は動物と話が出来ると思っているが、動物はほとんど言葉が通じない。映像のようなもので伝えるが、下等なものは理解できない」
「レーレがちょっと楽しそうなのは、この村の誰かとテレパシーで話している?」
「さすが、察しが良い。外にいる子供達と話しているよ」
レーレの祖父母の代の兄弟達やその子孫が呼ばれ、顔合わせをした。
2歳くらいまでこの村で暮らしていたらしいので、覚えている村人もいた。
あまり言葉を発しない彼らの前でレーレは楽しそうにしている。
私達が見ても目線や表情しか判らなかった。
「レーレにそんな能力があったのね」
「私も知らなかった。無口で動物が寄って来る子だったよ」
「最近は喋るようになったわね」
「もしかしたら船に乗って心で話す相手がいなくなったから?」
「そうかもね。誰と話してたんだろ?」
歓迎の宴も終わり、この村に何泊かすることになった。
その日の深夜。
飼い犬達が一斉に吠えている。
「外が騒がしいわね」
「来るよ。怖いやつが来る」
横で寝ていたレーレが教えてくれる。
何人もの怒鳴り声がする。外に出るとすでにヤナカが武器を構えて立っていた。
「どうしたの?」
「解らん。村人が騒いでいるが、俺のセンサーでは反応がない」
ヒューッ。ヒューッ。ヒューッ。
数百メートル離れた場所から照明弾が村の上空に発射された。
「みんな伏せろ。撃って来る!」
ヤナカが音量を最大にして、照明弾を眩しそうに見上げる村人に知らせたが、言い終わる前に一人撃たれてしまった。
腰の辺りの高さを、たくさんの曳光弾が過ぎていく。
「みんなに知らせたよ」
「レーレ!」
気がつくとレーレとリノリが横にいる。
「何が来たか判るの?」
「怖いおじちゃんがたくさん」
「ヤナカ、賊らしいわよ!」
「ここまで近づけば俺にも判る。20人以上いるぞ。シャトルを発進させた」
「レーレ、村の人はなんて言ってるの?」
「盗賊だって。宝石を狙ってるって」
轟音とともに乗ってきたシャトルが上空に現れて、村の周りに向かって機銃掃射を始めた。
村の男達も各々迫撃砲のような武器を地面に突き立てて応戦を始めた。
彼等は敵の位置が判るようだ、適当に撃っている感じがしない。
大きな火の玉が幾すじも放物線を描いて、真っ暗な森の中に落ちて爆ぜ、一瞬の閃光の中に吹き飛ぶ人影が見えた。
我々の後ろから突撃部隊が現れた。挟撃を狙ったのだろう、レーザー銃を乱射するが、とっくに居場所が判っている敵は驚異ではなかった。
戦闘は15分でこちらの勝利で終わった。
シャトルに村人を乗せて索敵をしてもらう。
掃討戦も1時間で終了した。
3キロ程先で敵の車両を複数発見し、重力域用ミサイルを使って殲滅した。
「この村の人ってテレパシーだけじゃないのね」
「ああ、人間レーダーだな。警備ロボットにも欲しいセンサーだ」
翌朝、賊の遺体と装備を回収し、遺体と賊の生き残りを警備隊に引き渡した。
村人には死亡者は出ず、負傷者は命に別状はなく、病院に搬送されて行った。
盗賊団の中に指名手配中の犯罪者8人がいたそうで、近く賞金が村に入るらしい。
「軍隊みたいな装備で襲撃して来るほどの宝石ってどんな物なの?」
「ああ、誤解なんだ。大きいのは確かだが、輸送機でもなかなか動かせないよ」
「輸送機って300トンくらい運べるわよ」
「そうだ、800トンくらいはあったが、今では半分くらいだ」
「え?」
「エメラルドの原石というか鉱山になっている岩だ」
村長は村の裏手を指差して、家の屋根の二倍はありそうな岩を見せる。
「あれが全部エメラルド?」
「殆どが石だよ。普通の鉱山よりも破格の量が取れるがね」
近くまで行って見せてもらった。
白い岩に足場を組んで、鉱脈に沿って採掘をしていた。
「こんな物盗めるはずが無いでしょ。盗めたとしても誰が採掘するのか?数年に一度は勘違いしたバカどもがこうやって襲撃して来るんだよ」
「はあ」
口を開けて呆れるばかりだった。
村も後片付けで忙しくなり、滞在を続けるのは難しいという村長の判断で村を離れることになった。
村長の家で別れの挨拶をする。
「レーレを村で育てたいのだが、カリナさんどうかな?」
「レーレが残りたいと言うなら反対はしません」
「リノリはそれで良いの?」
リノリは少し逡巡した後で頷いた。
「それがレーレの幸せなら」
村長も頷いてレーレを呼ぶ。
「レーレ。この村で私達と一緒に暮らすかい?」
レーレはじっと目を閉じて考えているようだった。
「解った。カリナさんと行くんだね」
「「え?」」
「レーレの意思は固いようです。村のみんなも納得しました」
「レーレがそう言ったんですか?」
「カリナさんやリノリさん達と一緒に行くそうです。この意思は村の全員に共有されました」
レーレが嬉しそうにリノリに抱っこを要求している。
リノリは自然にレーレを抱っこして頬にキスをした。
「ンナイア族の同胞を託すために、いくつか知って頂きたい事があります」
「一晩ここで過ごしただけで、驚きの連続だから、何か他にあってもおかしくないわ。私達に教えて良いことなの?」
「やがて知ることですから。その時に驚くより良いでしょう」
「解ったわ」
「レーレはあまり驚かないでしょう?」
「そうです。いつも平然としていて感情が少ないの」
「そうだね、リノリさん。私達は未来が分かるんだ」
「未来?予知ができるの?」
「昨晩の戦闘で、遠くの人物を見つける能力を見たでしょう?」
2人は頷く。
「我々はほとんどの生き物を見つけられる。小さな虫でも、中を舞う黴の胞子でも見つけられる」
「見ただけでこの先何が起こるか分かるの?」
「生き物には生まれて死ぬまでいろいろな状態があるでしょ」
「ええ、病気や怪我の跡が判るなら透視に近いかな」
「詳しいね。その状態がたくさん集めまると一人の人間の様に見える」
「個人の未来ではなくて集団の未来が判ると?」
「話が短くて助かる。この村の人数だと1年くらい未来が判ります」
「という事は一つ一つの事件が判るというより、1年後の状態が判ると言いたいんですか?」
この会社は経営不振だとか、野球チームの勝敗だとか、戦争が始まる社会の雰囲気が判る事よりも、ずっと正確な予知が出来るのだろう。
「「「おお」」」
そこに居合わせた数人の村人から歓声が上がる。
「凄いですね。その通りです。この短時間でそこまで理解する方は初めてだ。事件を予知するのは前兆を感じてからです。前兆からすぐに起こる事件は予知が間に合わない」
「昨夜の様な事件は、レーダーの様な感覚で知ることが可能だと理解してるわ。気象衛星なら数週間前から天気が分かるから」
「「「おお」」」
(あまり褒められると何も言えなくなりそう)
「その比喩は使わせてもらいますよ。解りやすいです。私達はテレパシーで意思疎通が可能ですが、相手が使えなくても感情や体調や位置が分かります。この感覚を総合すると、集団の未来が分かったり、天変地異の予兆を知ることが可能です。この能力は遠い祖先が狩猟生活で培ったものだと言われています」
「凄い能力だわ。宝石よりもこの能力が貴重ね」
「私達と深く関わる人族は少ないので、悪用されずに済んでますよ。あと3つあります」
「まだ凄いのが?」
「1つは私達は大人になるに連れて各々に違う特殊能力が付きます」
「能力?」
「多いのは危険察知ですね。行きたくないと思うとそこで事故が起きたりします。珍しいものでは病気や怪我の治癒ですが、何の能力が付くかは解りません」
「みなさんもあるんですか?」
「私は鉱石の場所が判ります」
村長が言った。
「俺は危険察知だ」
「わしは病気を見つけられる」
確かにバラバラな様だ。
「2つ目は、全員ではなくて、100人に一人くらいで、前世を思い出せる者がいます。人によって違うのですが、記録だと1億年前まで思い出せたとありますが、それ以前は時間がかかり過ぎてやめてしまったそうです」
「1億年!何の記憶なんだろう」
「役に立つような立たないような能力でしょ」
「すぐには利用方法が思いつかないわね」
「3つ目ですが、これはどの種族でも似たようなものでしょう。私達は他の種族との子供を作れません。レーレが大人になって子供が欲しくなったら、同族を探すように教えてやってください」
18話まで来ました。
個人を題材にするエピソードを初めて投稿しました。
レーレがこれからどんなふうに成長するのか楽しみです。




