17 一蓮托生とリノリに怒られる刑
17話です。
ちょっと間があいてしまいました。
よろしくお願いします。
3週間が過ぎ、抗生物質や抗菌剤が効いて、彼女達は全快した。
しかし、サルベージが進んでいない。進んではいるが、量が多すぎる。対策を考えるか、諦めるか、決め時が来ている。
なにせ子供達が飽きてしまったのだ。
ヤナカが3人の母を呼んで話しをした。
「子供達の生育について話しがある」
女達は頷いて話しが進む。
「親子では狭いと思うが居住区画に移ってもらうんだが、そこは少しだけ重力が作られている。ナンナ星で言えば65%の重さだ」
「子供の無重力症の話でしょ」
リーゼシアと言う名の痩せた女が答える。
「そうだ、ここにいる子供達は中度の無重力症だ。重症になっていないって事は何か対策していたのか?」
「夢の島が襲った金持ちの船から盗んだのよ。宇宙旅行用の保育器」
「まだ使えるのか?」
「判らない。逃げた時は壊れてなかった」
「お前達は何処で暮らしていた?」
浮きトーチカ、ナスの見取り図をメインスクリーンに出す。
「多分だけど細い方だよ」
(アーケだったかな?大きいなあ半分欲しい)
「この辺りよ」
リーゼシアが指差すと、その階層の見取り図にかわる。
「うん。ここ」
「そうだよな。リリアナ」
もう1人の幽霊のような長い髪の女も頷く。
「解った。作業ロボットで探して見よう。
着替えだが、元乗組員の物しか無いんだ。好きな物を使ってくれ。マルグリットが案内する。他に欲しい物が有れば言ってくれ。質問はあるか?」
「私達はこれからどうなるんだ?」
「アーケだったな。俺達は今、サルベージ中だが、終わったらジャンクを売りにジアナ星に行く。そこで降りても良い。ナンナ星に行きたいなら、ジアナ星で定期便に乗ることを勧める。その先までこの船で行っても良い。格納庫に戻ったら他の者にも伝えてくれ」
「あのう」
「何だ、リリアナ」
「この船では何をすれば良いのでしょうか?」
「特に注文は無いぞ。ゆっくり過ごせばいい」
「ちゃんとご奉仕をすれば長生き出きるってあの男が…」
「ったく盗賊ってのは…この船に男はこいつだけ、専用の無菌室で寝たきりだから作業ロボットを遠隔操作してるのよ」
そうだとは思っていたが、リリアナの様に彼女達は売られたと思っている。なぜ防衛隊に引き渡さなかったのか教えなければ。
「どう言う意味だ、マギー」
「男と寝るって事よ!売られたと思ってるの!」
「ああ、すまない。想像もしなかった。お前達は自由だ。売られたんじゃないぞ。救助されたんだ。まあ何かしたいなら子供達の勉強を見てやって欲しい」
「「「子供達?」」」
「隔離していたから知らなかったな。この船には俺達2人と12人の子供が乗ってるんだ。他には誰もいない」
3人は抱き合って涙を流していた。
「小さい子は2歳だからワープは無理ね。妊婦も駄目だから検査しないと」
「ジアナ星までワープ無しで1ヵ月弱、ナンナ星でも1ヶ月強だ」
「補給が必要なのは弾丸とミサイルね。それもすぐに必要じゃないし。そうそう、弾で思い出した、リノリ達の魔法よ!」
「それだがな。戦闘ログを見てもリノリ含めて魔力が異常に多いだけだ。これといった特徴が無えんだよ。弾が曲がって相手に当たるとか、バリアが物理攻撃に効果があったり。ワークポイントが電位変化が現れる遥か前に分かるなんて神だろ。何か別の要素があるはずなんだ。何か気がついた事はあるか?」
「気づいたってよりも、引き取った頃から感じてたんだけど、あの子達が何人か集まると、独特の雰囲気?みたいのがあってね。姿が見えない所からでも居るのが判るのよ」
「ほー、気配とか殺気とかオーラって表現する感覚のことか?生き物同士では察知可能らしいな。そっちの観点からも調査と観察を続行する」
「そうね。新人も入ったから、健康診断と魔力測定をやり直してみたら。リノリの例もあるし」
「予定は無いと思うが、日時は希望を聞いて決めてくれ」
「了解」
健康診断は慌ただしい事に当日行われた。
「はーい、みんな並んで。医療さんの指示に従うのよ」
(もしかして私の出番は無い?)
リノリ達が新人含めて上手く健康診断を進めてくれる。
「アイナちゃん。セリアちゃん。コーネちゃん。こっちに来てね」
新しい子供達の引率はノマが担当している。妹が出来て嬉しそうだ。
新入りの子供達も、何の違和感なく付いて歩いていた。
他の女性達も子供達しか居ない船内に馴染み始めている。
「ニムおばちゃん、これなあに?」
「ニムお姉ちゃんだよ。これはね…」
ニムはおばちゃんと呼ばれて引きつりながら、お姉さんをなんとか演じている。
きっと周りに近い年齢の子供が居なかったからおばちゃんなのだろう。
ニムは実年齢で15歳だが、10歳くらいに見えなくもない。
(ニムがおばちゃんって、ノマが言ったら怒ったね)
マギーの子供達は全員健康。
新人さん達は全員軽度の慢性疲労と栄養失調で、生理不順を起こしている女性が多かった。
子供は軽度の栄養失調にくわえ中度の無重力症。幾分か知能の発達が遅れていた。
当然だが、船内の全員が運動不足。これも無重力症の症状だ。
魔力の測定結果は、新人の子供も含めて全員に魔力が認められた。特にマギーの子供達は魔力が無かった子も含めて、全員が上位で士官学校をパスする結果だった。
「え?私にも魔力があったの?」
「そうだ。4年以上マギーと一緒に仕事をして来たが、魔力が上がるなんて現象は初めてだ」
「まあ、一応は魔力装置が使える程度だね」
「新人ちゃん達は?」
「なぜか全員に魔力があるんだ。ギリギリな程度だが、確率的にあり得ない」
「そうなの、私のは糠喜びか。それで傾向は掴めたの?」
「彼女達の中で母親達の魔力量が多い」
ヤナカの推論では、出産経験が魔力増大のトリガーではないか。
育児をする過程で安定的に増えるのではないか。
ということだ。
問診の結果に符合するのは、全員に妊娠経験があったということだ。
「これを裏付ける科学的根拠はあるの?」
「女性に魔力持ちが多いのは統計的な事実だが、妊娠に結びつけたデータが無いな」
「年齢別データはあるの?適齢期の女性が多いとか」
「そうだな。人種によって適齢期が違うが、人族が多い帝国中央に絞るとこうなる」
スクリーンに魔力量と年齢の分布図が投影される。
20歳から35歳あたりまで少し上昇して、そのあとからはずっと微減が続く。
「微妙だけど妊娠と魔力は関係ありそうね。子供の年齢が意外に変化しないのが不思議だね。うちの子達が特殊なのかなあ?」
「あいつ等については本当に謎だ!計算が途中で立ち往生してゴミ箱がいっぱいだ」
「子供達全員が魔法の素質があるのは判ったけど、バレるのは時間の問題だよね。アーケは元軍人よ。他に軍関係者は居たっけ?」
「あと2人いたと思うが、彼女達は様子を見ないとわからんな。子供達に箝口令と練習以外で使用禁止くらいしかないな」
「あの子達に箝口令なんて不安しか無い」
不安が的中したのは4日後だった。
「キャーッ」
食堂から悲鳴が上がった。
レーレとファナが、食事の後でトランプをしようと、テーブルの上の食べかすを、覚えたての風魔法で吹き飛ばして片付けた。
予想外に大きな風が吹き上がり、側にいた新人ちゃん4人が巻き込まれた。
「「ごめんなさい」」
「もう、床がトランプだらけよ。外で魔法を使っちゃダメって言ったよね。魔法の勉強は無しになるよ」
「「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」」
「もういいから。食堂を掃除しなさい。作業ちゃんを使っちゃダメよ。自分達でやるのよー」
「「はーい」」
(やっぱり外で使ったか。禁止しても使うよねえ)
「それで、あなた達なんだけど、今の見てたよね?」
「「「「見てません!」」」」
新人ちゃん達は大真面目に頭を振る。
「仕方ないわね。新人全員第3倉庫に集めて」
「ゆるしてください」
新人の1人、マリエが涙目で訴える。
「別に焼いて食ったりしないわよ。15分後ね」
(全員来たかな、2、4、6…)
「話を聞いて知っていると思うが、さっき食堂でちょっとした事件があった」
(それじゃあ朝礼でこの子達を叱る校長先生よ)
「2人の子供が食堂で魔法を使ってお前等4人を驚かせてしまった」
室内に驚きの声が上がる。
「魔法が分からないのだろう。説明する前に実演してもらう」
ソウナがみんなの前に出て魔法の実演を行う。
人差し指をみんなに向けて、強めの風を彼女達に向けて吹かせる。
「「「ワーッ!」」」
「「「えー」」」
「「「キャーッ」」」
悲鳴を無視して、炎に風を纏わせて炎を2メートルくらいの高さまで吹上た。
「助けて!殺さないで!」
「そんなことしません!」
ソウナが怒ってしまった。
「これが魔法のほんの一部だ。この技術は我々だけが知る秘密だ。絶対に外に知られてはならない」
彼女達の雰囲気が急激に固くなる。震えている子もいた。
(この話の流れだと殺されると思うわよね)
「レーレとファナが約束を破ってお前達に見せてしまった。これは俺達のミスだ。だから仲間になってもらう。残念だがこれは強制だ。決定事項だ」
殺されないと判った事で力が抜ける新人ちゃん達だが、強制的に何かに加担させられる事になって、また不安そうになる。
「もう、ゆるして」
マリエが呟いている。
「お前達も魔法について学んでもらう。魔法の存在を知ってしまった以上、これが長生きする道だ」
「そんなこと出来るわけが無いだろ!」
「そうよ!バケモノ地味てるわ!」
「バケモノなんて酷い!」
ソウナをまた怒らせてしまった。
「ごめっ、そんな意味じゃ」
「魔力があれば誰でも使える可能性がある」
「「「「「ええ?」」」」」
「「「「信じられない!」」」」
「さっきのレーレ、ファナ、ここにるソウナ、他にも魔力がある者は全員使えるようになった。レーレとファナは昨日使えるようになった」
室内が無言になる。
誰もが疑心暗鬼なようだ。
「それじゃあ、試しに魔法の練習をしてみよう。使えるものが1人でも出たら信じられるだろ」
「そんなに簡単なの?」
「そうだ。3人は最初の1時間で弱い風が出せた」
最初から魔法を教えるつもりだった。出来てしまえば否定できない。その後でこの技術の危険性を教えることにしている。
ソウナ、ニム、ナウナの魔法教師3人組が、指導する。
「スクリーンの文章通りにやるだけだから、誰でも簡単よ」
2時間で効果が現れた。さすが魔法教師3人組、魔法を初めて見てから2時間で使えるように指導した。
「何これ!指から風が出てる!」
「私もよ。ほんの少しだけど風が」
「凄い!」
「私どうなったの?」
アーケ達に魔法の危険性を教えるのは簡単だった。
大人である。しかも戦争を体験している。人生経験からその恐ろしさは想像出来るのだろう。
宇宙旅行用の保育器が見つかった。
高さ4メートルくらいのハムスターが大好きなあれと同じ形をしてモーターで回転する。
年少組なら10人は乗れそうな広さだ。
それだけ乗ると、人間が最初に手伝わないと起動が遅い。
ヤナカが第3格納庫に設置した。
「さーみんなこの中に入って、楽しいことが始まるよ」
回り車の側面は透明の壁になっていて、外に手足を出せない。
「じゃあ行くよ」
「「「「「はーい」」」」」
「「「いいよー」」」
リリアナが操作パネルにタッチして回転が始まる。ゼーリシアは回り車の縁を押して速度をあげた。
「ワーッ!」
「まわるまわるまわるまわるー」
「キャーッ、スゴーい」
「うーっ」
「「「?」」」
(速くない?)
「キャーッ、はやーい」
「うえー」
「「「?」」」
「リリアナ!止めて」
リリアナが操作パネルを連打しているが変化がない。
(これはもうあれしかない)
「こらー。魔法を止めなさい!おやつ抜きだよ!」
回り車は速度を落とし、中の様子が見えてきた。
リンが昼食をリバースして、ノマとメノウが真っ青な顔で横たわっている。
アイナ、コーネ、セリナは落ち着いている。慣れてるのだろう。
しょんぼりして、座り込んでいる3人がいた。
(こいつ等か!)
「レーレ、ファナ、タータお前もか?」
「「「ごめんなさい」」」
「さて、2人は二度目だよな。リノリに怒られる刑だ」
「「イヤーッ!止めてー」」
新人に魔法が知られたので、解禁しても良いが、町に出た時にうっかり使われるのが怖かった。習慣が身に付くまで様子を見ている。
タータがリノリに怒られるの刑にブルブル震えている。それくらいリノリの怒りは恐ろしい。
「タータはどうする?」
「もうしない、うっ、うわー」
泣き出してしまった。
(これは効果絶大ね。孤児の頃は本気で叱らないと命に関わったんだろうな。リノリ、この子達を守ってくれてありがとう)
「魔法は勉強の時だけって約束したよね。分かった?」
「うん。ヒック、分かった。うえっ」
回り車から具合い悪そうな3人が、よろよろと降りてきた。
「リン、ノマ、メノウ、大丈夫?」
「「「……」」」
「リリアナ、みんなでお茶しましょ」
回り車の中の3人を抱き上げたリリアナが振り返って、笑顔で頷く。
「はーい」
ゼーリシアが返事をして笑顔でやって来る。
(赤芋恐るべし)
読んで頂いてありがとうございました。
「ミドサー男」の方に力を入れたらこちらがおろそかになってしましました。
楽しみだった方がいらしたらすみませんでした。
これからもよろしくおねがいします。




