16 捕虜の捕虜の復讐(捕虜は間違いです)
16話です。
後半の「34時間前から格納庫〜」あたりから最後まで、残酷な内容です。
行為事態はありませんが、苦手な方はとばしてください。
「みんな、今が一番危険だからな。何か変化があったらすぐに撃てよ」
タカチホノミネ丸は謎の戦闘艦4隻に対して無線通信と発光信号で降伏勧告を行ったが反応が無い。
とりあえず不意打ちに注意しながら、警備隊の生存者を探す。
謎の船団は敵確定だから後回しだ。
ナンナ星所属の警備艦だった。2隻ともエンジンが停止している。
バリアも展開していないところへ至近距離から主砲を撃ち込まれては長くは持ち堪えないだろう。
「呼びかけに答えないわね。生存者がいないのかしら?」
「さっきまで発砲してたよな。こいつ等から救難信号が発信されてるから、そろそろ仲間が来るだろ」
それぞれに作業ロボットを3体ずつ送り込んで、艦内を調査している。
「ドローンが来ても反応が無いって事は、武装がダウンしてんのか?」
「中はどうなの?」
「どちらも捜索中だ。まだ死体も見つからない」
「ねえ、マギー。小天体の近くで何か光ってるよ」
リノリの操作パネルには、本当に小さい光が、点滅して遭難信号を送っていた。こんな小さい光が見分けられるの?
「それは戦闘スーツの救難信号だ。2時間は酸素があるから放っておけ」
ドローンからのライブ映像で2隻の状態が判る。
「なんで脱出ポッドで逃げなかったの?」
(リノリの質問は言いにくい所をぐさって来るのよね)
「警備隊は盗賊から恨まれてるからな。逃げても捕まれば皆殺しだ。
前の艦のAIが生きていた。接続する……艦橋に3人生存。後ろも繋がった…艦橋に2人…1人…操舵システムの機械室だ。作業ロボットを向かわせた」
ニムとソウナのパネルにリノリからのデータが表示されて、2人が行動を開始する。
「誰か来るよ!4つ同時!1つ大きいよ」
「ソウナ、ニム、射撃用意だけだぞ。ナウナ、バリアだ!」
リノリが示した通りタカチホノミネ丸の後方に4隻の軍艦がワープアウトし、同時に威嚇射撃を行う。
ヤナカはすぐに事の顛末を高速データ通信で発信する。
AI同士の交信が数秒続き、音声通信が入った。
「こちらナンナ星防衛隊アイギス艦長グランダ・サージナ。貴艦の働きに感謝する。威嚇射撃の非礼を詫びたい。どうか警戒態勢を解いて欲しい」
防衛隊の戦艦達は、ヤナカが提出したデータを元に詳細を調査した後、謎の船団と夢の島の戦闘艦を爆破してしまった。
「君たちはサルベージ屋だったな。これも宇宙盗賊に対する規定なんだ、ゆるせ」
殆ど全ての戦闘艦が航行不能に陥っている中、たった1艦だけ無傷なのは怪しすぎる。訪問という体でグランダが部下2名を連れて臨検に来ていた。
警戒態勢を解除したタカチホノミネ丸艦内は、開放された子供達が走り回っている。いつもなら艦橋に幼年組は入れないのだが、グランダ達を困らせるために開放した。
その空きにヤナカは色々なログを捏造している。
「おじちゃん達はお客さん?」
「そうさ」
「ねえねえ。それ鉄砲って言うんでしょ。撃たせてよ」
「ちょっ、こら。危ないよ。触らない」
「ねえちゃん、エーチチしてまんな。揉ませてや」
「やめて!」
(誰だ!ノマにこんなこと教えたのは、ザグーの仲間か?)
「ジェイドの言う通りだな。本当に子供達が乗艦しているのか。カリナ殿、ナンナ星では兄が世話になった。フリント一家を壊滅させたとか」
「兄?もしかしてジェイドさんの弟さん?バザーの…7人ほどやっつけただけですよ。私達こそ憲兵隊にはお世話になりました」
世間は狭いが宇宙も狭かった。
(一家を壊滅って、やはり憲兵隊もそういう見解よね)
「そうだ、赤芋は凄いね。図書館市の孤児院はもう大丈夫だってセドルおじさんが言ってたよ。赤芋に合った気候の孤児院に分配しているのだ。各地でフライドポテトが好評だよ。美味いね。あれは」
「院長さんとも知り合いなの?」
「大先輩でね。軍隊で世話になった」
(そうね、元軍人だったわね)
「そうだ。軍艦のキッチンにはフライヤーがあったわよね?」
「ええ、あったな」
「赤芋がたくさんあるから500キロくらい持って行ってよ」
「それはありがたい!」
「わーっ」
後ろで戦闘ログをコピーしていた女性兵士から歓声があがった。
「失礼しました」
「解るわ。ビスケットレーションって不味いのよねえ」
「はい。いえ、そんな事はありません」
女性兵士は頷いた後で上官に気を使って、意見を翻す。
「よい。聞かなかった事にする。あれは俺も大嫌いだ」
女性兵士は胸をなでおろし、そこに大声でみんなを呼ぶリリアが現れる。
「みんなー、おやつだよー、遊んでる子は無くなるよー。マギーとお客さんも」
そう言ってリリアから紙袋入りの赤芋チップスと芋けんぴが渡された。
今まで不安になっていた子供達に、甘いものは正義だ。
本当に良いお母さんたちだ。
「リリア、頑張ったわね。ありがと。みなさんもどうぞ、温かいうちが美味しいのよ」
2人の隊員は上官と芋を見比べて、食べたそうにしている。
グランダは赤芋チップスを初めて見たのだろう、まじまじと眺めてから口に入れると頬がみるみる緩んでいく。
「美味い!2人も食べてみなさい」
「!」
2人は上官の「よし」の合図に赤芋チップスを口に入れた。…まま停止した。
(最初はそうなるのよね。バザーでも動かなくなった客を捌くのが大変だったな)
「今食べたのがスライスして揚げたチップスよ。味は塩だけ。こっちのが芋けんぴ。フライドポテトを砂糖を煮詰めてからからめるの。いろんなレシピがあるからデータで渡すわよ」
「「「是非!」」」
美味しそうにしていたので増量を提案すると、無重力なのに増員までして、赤芋2トンを連絡挺に積み込み、全員上機嫌でナンナ星に帰投した。
(賄賂が赤芋で済んで良かったのか?それとも最初から調べるつもりが無かったのか?)
タカチホノミネ丸は盗賊達の残骸をサルベージするために、さらに数日停泊することになった。
防衛隊の調査結果によると、
謎の船団は、終戦で仕事を失った傭兵が集まって結成した桃源郷という荒事請負集団だった。用心棒から戦闘、暗殺、盗賊行為と裏社会のなんでも屋である。今回の襲撃はその一部だという。
全4隻で総員74名全員死亡。
盗賊団夢の島は、やはり終戦時に忘れ去られた浮きトーチカを中心に敵味方関係なく集まった敗残兵や脱走兵の集団だそうだ。
4隻と浮きトーチカ1基、総員132名、生存者37名。
損害が少なかった1隻は防衛隊に鹵獲された。
全員おたずね者として登録されていた。
「また賞金が入るの?いくら?」
「そうだな。1人あたり帝国金貨10枚が最低ラインだ。それで計算すると帝国金貨で2,060枚だ。最低だぞ」
「もしかしてカリナの口座?」
「そうだ。戻って受け取るのも面倒だろ」
「ジアナ星の儲けだって5万枚は残ってるでしょ?」
「何言ってんだ。サルベージの儲けも入れてあるぞ。現金は狙われるからって言っていただろ?20万枚以上口座に入れてあるぞ」
鳥肌が体中に立って震えが起こる。
医療准将達の口座を移し替えた時以来だ。大金が入る喜びよりも、奪われる恐怖が先に来てしまう。知らなければ良かった。
「ところで話は変るのだが」
(ヤバい。ヤナカの勿体ぶった言い回しはろくな事がない)
「何?悪い事でも起きるの?」
「格納庫に脱出ポッドがあるだろ?」
「それがどうしたのよ。壊れた?」
「使った」
「?」
「34時間前から格納庫に捕虜が14人」
「14人って、夢の島の連中か。グランダ達がナンナ星に帰るまで待ってたの?けが人は?」
「負傷者はいたが大したことはない。問題は捕虜が捕虜なんだ」
「?私のことバカにしてるでしょ」
「ごめんごめん、捕虜は軍人に使う言葉だな。救出した連中に、盗賊と盗賊にさらわれた女達がいる」
「あーもー。何で防衛隊がいるうちに引き渡さなかったのよ」
「全員若い女とその子供だ。その意味は解るだろ?」
14人の内、夢の島のメンバーが2人。おそらく投降をスムーズにするための献上品だろう。9人が成人女性で、3人がトーチカ内で孕まされた子供だった。
4歳、3歳、2歳の子供がそれぞれ1人、4歳の子は終戦前からここにいた事になる。襲われた時にはいたのだろうか?
「1人ずつ希望を聞いてあげたいわね。ヤナカ、黙っていてくれてありがとう。今の政府じゃ保護された後も辛そうだしね」
女性達の一部が性病に、全員が感染症に罹患していたので、ヤナカが格納庫に隔離したままにしている。
「私達に伝染するのは避けなきゃね。第3格納庫に難民が使ってたパーティションと寝具があったでしょ。そこにしばらく住んでもらいましょ」
子供達を総動員して、パーティションを20区画組み立て、クッション材を敷き詰める。
予定より多いのは「楽しくなってたくさん組み立てたから」だそうだ。
すでに捕虜全員に投薬と幼児には注射を行った。カリナの子供達が接触しないように隔壁で遮断してから、さらわれた女性たちと子供を第3倉庫へ案内した。
「さて、こいつ等どう……。つうか何でボコボコにされてんのよ」
「女達にやられたんだ。復讐だ。男の方はすでに死体だ。女も放っとけば3時間だな」
2人は女物の細いベルトで後ろ手に縛られている。
(みんな捕虜だと思って盗賊と分けるの忘れてた。ヤナカは監視してたよね?止めないよなあ、ヤナカなら。何人も殺してきたんだから、殺されても当然か。今も戦争は続いてるのよ。人殺しは軍隊や犯罪者だけの特権じゃないし)
「死んでるのか、一緒にしといて良いの?」
「こいつら生かしといても危険なだけだぞ」
(ああ、やっぱり放置だったか。私が知ったら止めるから知らせなかったな。意外にも警備隊がほとんど始末してくれたもんね。生き証人はこの子だけ)
「それもそうか。こっちの女も盗賊なの?」
「それが首領だ」
(死んだ男の方が酷い有様だけど、これは処刑だね。彼女達や家族も同じ事をされたんだろうな。盗賊してたんだから覚悟はしてたろうけど。この子、生き残れたら生きて行くの大変だよ。人が怖くて物音がしただけで震え上がるのよ。拷問された捕虜と同じ…ああ、玩具にされた彼女達と似てるかもね)
「この子は助けようか…」
「どうした?マギー」
「これをやった彼女達によくやったって思ったのよ」
「そうか、治療を開始しよう」
「お願いね」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
後半で彼女達の復讐を書いたのですが、かなりエグいものになってしまい、大幅にソフトにしたつもりです。
読んだ後に不快だった方はごめんなさい。
現在のタカチホノミネ丸はナンナ星とジアナ星の間にいます。
新しい女性や子供が増えました。
次は楽しいお話しにしたいです。




