15 謎の船団からの攻撃
15話です。
戦闘シーンです。
痛そうなシーンは無いと思いますが、苦手な方は注意してください。
ガツンッ。
一瞬で砲台がせり上がる。
「バリル、また撃って来たぞ」
「首領!ミサイル、2発来ます!着弾まで28分」
「最初のミサイルはどうなってる?」
「15秒後に迎撃予定地点」
バリルの代わりに砲手が返答した。
「敵ミサイル撃墜しました」
「主砲、5秒間隔で2射」
「了解」
(敵の目潰しは出来たはずだが。あり得ない距離で撃ってくる連中だ。用心に越したことはない)
「全艦バリア展開。レーダー常時監視に移行」
「高エネルギー接近」
ジュン、バリバリバリ。
ナスの表面に、拡散したビームが直撃して小天体を覆い尽くし、近くにいた艦にスパークする。
「おーっ、バリアが1秒遅かったらやられてた」
「3番艦レーダーやられました。復帰まで3分」
「何か来ま」
バリルは高速の飛翔体を発見し、報告の途中で止まる。
スンッ。
何かすっぽ抜けたような音がしてザグも沈黙した。
ごーーーー。
ボンッ。
轟音がナスの内部に鳴り響き、破裂音が来た。
「何じゃこりゃ。第一砲台が消し飛んだぞ!」
「こちら4番艦。後部機関砲被弾。何者かに攻撃されました」
「何が起きている?」
(今のは何だ?光速の80%だぞ。見つけた時には手遅れじゃねえか。砲台を貫通して4番艦に命中したのか?)
バリルは理由の解らない事態にパニックになりかけている。
「全艦ナスから頭を出すな!新兵器だ!」
首領の問いかけを無視してザグが緊急事態を知らせた。
「ザグ!どういう意味だ」
「首領!光速の8割で何か飛んで来る。発見した時は手遅れだ。早く逃げろ!」
ボンッ、ゾーッ。
ナスの上側に出していたタカラブネの砲台が、強風に飛ばされる木の葉のように消える。
通話中のザグにも、被弾したタカラブネのパニックが伝わった。
「緊急退避だ!頭を下げろ!」
「2番主砲消失、原因不明。レーザー用コンデンサ出火!隔壁閉鎖」
「損害報告はまだか?」
「上甲板に軽微な損傷。船体に異常なし」
「2番整備士1名重症、1名行方不明」
(爆発しないって事はレールガンのメタルペレット(弾丸)だな。何なんだあの船は。オーバーテクノロジーにも程がある。まさか未知の文明?)
首領の分析は正解だが、未知の文明ではなく、古代文明が相手だった。
すぐにナスの下から砲台を出していた2番艦にもメタルペレットが命中するが、退避中だったために砲台はかじられた様に一部が欠損した。
「ナス。全砲門開け。各個反撃せよ」
ほんの5分程の間に3隻とナスがやられた。
「何?あれ?ミサイルより遥かに速く着弾したよね?何なの?魔法なの?夢なの?」
マルグリットは目を大きく見開いたまま、独り言の様に呟く。
「マルグリット姉さん、私何か間違った?」
ソウナは心配そうにマルグリットを見ている。
「大丈夫だ、ソウナ。凄え戦果だからマギーが目ん玉飛び出るくらい驚いてんだ」
「お姉ちゃん、そんなに凄いの?」
ソウナは胸を撫で下ろすように安心し、ナウナが姉の戦果に反応する。
「ソウナは凄いぞ。普通のレールガンの100倍の速さで弾を撃ったんだ」
「ふーん、何か凄いね。100倍なんだ100倍」
100倍の速さで飛ぶ弾丸なんて13歳のナウナでなくても現実味がないだろう。ヤナカだって夢なら覚めて欲しいと思っている。
「マギー、ミサイルの着弾まで6分を切った。浮きトーチカ最接近まで1時間25分」
「何これ、かわいい。トーチカが面白いよ」
小天体のあちこちから砲台が飛び出し、レーザーが発射され、ぽっかり空いた穴からは、花火の様にミサイルが飛び出していた。
リノリはこれがかわいいらしい。
「ありゃりゃ。ニム、ナウナ、出番よ」
「アイアイサー」
「オッケー」
「リノリ、敵ミサイルの着弾までどのくらい?」
「んー、23分かな。こっちより速い」
6秒あまりで到着する拡散してしまって効果が落ちたレーザーがジリジリと相殺されている。
リノリのレーダー画像とリンクした操作パネルを、ニムは鼻歌を歌いながらツンツンと両手の人差し指で照準をセットして行く。
「ミサイルめ!やっつけてやる。まとめて発射!」
ギュイン、ダンッ。ギュイン、ダン。ギュー、ダン。
40ミリ機関砲が1発ずつ単射されては次の照準に向かって単射を繰り返す。
(速射して弾幕を作らないの?全部1発で仕留める気?あっ、教えてなかった!)
「ソウナ。さっきの要領でレールガンを撃ち続けて。好きに狙ってね」
「はい」
ジュンッ、ジリジリジリジリ。ジュンッ、ジリジリジリジリ。ジュンッ、ジリジリジリジリ。バリバリ。
「もう!五月蝿いよ!」
バン。
ナウナがバリアの相殺音が不快で、操作パネルに八つ当たりする。
ーーーーー。
「あー静かになった、良い子だね。バリアちゃん」
「ほんとだ。ナウナ凄い!何で五月蝿いの無くなったの?」
「バリアちゃんを叱ったの」
迎撃用のカメラに切り替えると、敵のレーザーがタカチホノミネ丸の前方で何かにぶつかって周りに散っていく。
「おー、バリアって凄いね。みんな避けてくよ」
ナウナとリノリが楽しそうに話している。
こんなメチャクチャなバリアなんてあり得ないが、2人は異常だと感じていない。
「ナウナ、良いぞ。がんばれ!」
(あれ?ミサイルが飛んでこないけど……え?)
近接信管式砲弾が、敵ミサイルに向かって軌道を変えて行く。
(誘導ミサイルじゃないのに曲がるの?)
「どうした?マギー」
「目眩がして…。座って休むね」
「ああ、その気持ち解るよ。俺の本体はオーバーヒート気味だ」
私は操舵手のシートに座って浮きあがらないようにベルトを締めた。
「マギー、トーチカが割れちゃった」
「「エーッ!」」
私とヤナカがハモってしまう。
「やった!」
リノリの報告にスクリーンを見上げると、横でソウナがガッツポーズをしていた。
超望遠映像には、茄子の形の真ん中がぽっかり割れて、破片やらガスやらを吹き出している浮きトーチカがあった。
「どうやったっんだソウナ?」
ヤナカは何とか冷静なようだ。
私はあまりの理不尽さに頭から血の気が引いていくのが判る。
「小天体の真ん中に当てたら大きな凹みが出来たのね、同じ場所に当てたら向こう側が見えるかなって。凄いでしょ」
「「「「ウオーッ」」」」
次のミサイルが、浮きトーチカの割れ目を通過して、後ろにいた1隻の海賊艦を大破させいたが、みんながそれに気づくまで数分必要だった。
浮きトーチカ内はパニックになっていた。
発射したレーザーは命中しているはずだが敵艦は健在で、ミサイルは敵艦の手前でレーダーから消えていく。
レーダーも赤外線も超望遠でも判別が難しい距離で、ミステリーが恐怖に変わって行く。
ドーンッ。ガラガラガラ。
物凄い轟音と何かが崩れるような音がトーチカ内を揺るがす。
「何があった?」
「解りません」
「……天体中央にクレーター!」
ナス司令室のモニターには、破片を撒き散らす巨大なクレーターが映っている。やがて飛んできた破片がカメラに近づいたところで映像が途切れた。
(兵器の常識じゃない、物理的に不可能だ。これは逃げの一択だ。もう軍人じゃないんだ盗賊だ!)
「緊急脱出を発令しろ。船外に脱出だ!早く逃げろ」
ナス司令官は決断した。盗賊は逃げ足で長生きできる。
トーチカ内に緊急脱出のサイレンが鳴り響いている。
ドーンッ、バリバリバリ。キー、ギギギ。
(遅かったか)
部下が震え上がって動かない。
「助けてぇ!」
「さっさと逃げるんだ!」
2度目の衝撃で送電が停止し、暗転した室内が非常照明に切り替わった。
通路に風が吹いている。どこかから空気が抜けているのだ。
てんでな方向に逃げ惑う戦闘員で通路がごった返していた。
隔壁が閉じてリークは止まるだろうが、被害が大きければ時間の問題だ。
脱出ポッド回収のために、各艦がナスに接近している。
非常口から船に向かって飛び出す者もいた。
ドーンッ。
小天体はゆっくりと中央から割れて細い方の半分が回転を始めて、救出に向かった2隻を巻き込んでしまった。
(逃げるか、降伏か。化け物に追われて逃げ切れるのか?いや無理だ。あんな遠くからレーザー並の速さで弾丸を当ててくるんだ。しかも相手は無傷だろう。全長3キロもある小天体を僅か3発で真っ二つにする奴だ。)
首領は考えるが、敵が非常識過ぎて思考が勝手にループする。
カーンッ、カンカン、ドーン、ギギギ。
衝撃音に目を向けると、目の前の2番艦の艦首が吹き飛んでいた。破片がタカラブネに激突する音だった。
(こんな隙間を狙い撃ちだと?いや今のはミサイルだ、偶然だ、まさか)
「者共聴け!このままだと全滅だ。降伏交渉をはじめる。お前たちの処遇が良くなるよう頑張るつもりだ。みんなご苦労だった。全艦武装を解除しろ、絶対に発砲するなよ!」
首領が全艦に降伏を知らせる。
「回線開け」
「え?」
「降伏だっつってんだろ!回線開きゃ良いんだよ!それと救難信号も出せ」
(救難信号を出しておけば警備隊が来る。まさか警備隊の前で俺達を皆殺しなんて事はないだろう)
「中谷商会護衛艦タカチホノミネ丸。こちら盗賊団夢の島、リーダーのレーナだ。我ら盗賊団は全面降伏する。攻撃を中止してくれ。けが人の収容をしたい。船の運用の許可を願う」
「レーナ団長了解した。こちらタカチホノミネ丸艦長中谷だ。負傷者の救出を許可する。だが不穏な動きがあれば攻撃を再開する」
「中谷艦長、貴殿の配慮に感謝する」
まだ盗賊船団まで1時間の距離でタカチホノミネ丸は勝利した。
ヤナカは盗賊団を皆殺しにしないと面倒事が増えると結論を出していたが、子供達の前でそれは出来ないとも結論をだす。
こんな異常な戦闘に生き証人を残すのは危険極まりない。
「マギー、相談なんだが」
「何?」
「盗賊団を生かしておくのは危険と判断した」
「そうよね。他で喋られると危ないよね。かと言って子供達の前で殺るのはちょっと…」
「手遅れだ。警備隊がワープアウトして来る」
「あーあ、処置なしね」
警備隊の船が、ワープアウトと同時にあさっての方向に威嚇射撃をした。
(面倒くさそうな連中ね)
戦闘の意図がないことを示すと、続けて2隻と3隻目の警備艦がワープアウトする。
(こっちまで武器を向けなくても良いのよ!あっちが盗賊でしょ。あれ?3隻目?)
「ナウナ!バリア展開だ撃たれるぞ!ソウナ!操作パネルに魔力を込めろ!」
主砲が勝手に急旋回し、回転が終わらないうちに発射される。
バリバリバリバリ。
至近距離でのレーザー照射でバリアとの激しい反応が起こる。
3隻目の警備艦が、ほぼ同時に前の2隻とタカチホノミネ丸に発砲した。
ヤナカの操作で発射されたレーザーは3隻目のどてっ腹に筆で書いたような線状の穴を空けた。
ワープ中はバリアにエネルギーを回せない。敵はレーザーを発砲するために、バリアを展開する余裕が無かったのだ。
ニムが機転を利かせて機関砲を撃ちまくる。
「ニム、ここにミサイル発射して!」
リノリが何もいない空間を指示したレーダー画像をニムに転送した。
ニムは返事もせずに迎撃ミサイルを2発撃ち込む。
ワープアウトした戦闘艦が、いきなり四方に発砲した。
3隻目に当たらなかったのは、戦術だ。手馴れている。
4隻目が発砲したと同時に迎撃ミサイルが命中し、機関部に爆発が起こった。
「「「やったー」」」
「リノリ。まだ来るか?」
「あと2つ。ニム、送ったよ」
「「了解」」
すでに3隻目はソウナによる攻撃で鎮圧されつつあった。
ニムが再び迎撃ミサイルを発射。
5隻目と6隻目は、リソースを殆ど使わない機関砲を斉射しながらワープアウトして来た。
だが4隻目の時よりタイミングが悪く、ミサイルの鼻先にワープアウトしてしまった。
弾幕の意味が全く無い。
最初に撃たれた本物の警備艦2隻は瀕死の状態で、なぜか盗賊団と交戦していた。
「く、る、な!」
ナウナが怒って操作パネルをつんつんしている。
「ミサイル3つ来、る、よ?」
リノリが変な事を言う。
6隻目が放ったミサイルの軌跡が、ネズミ花火の様に螺旋を描き始める。
1発が4隻目の艦橋に真上から命中し、残りのミサイルも巻き込まれた。
4隻目が大爆笑を起こしてしまう。
「みんな掴まれ!破片が飛んで来るぞ」
「「「「?」」」」
4隻目とタカチホノミネ丸の間にいた3隻目が爆発に巻き込まれ、いくつかの破片に別れて炎を吹いて飛んで来る。
破片は船の手前で何か見えない壁のような物にあたり、ゾービングのようにタカチホノミネ丸が反対側に押し出された。
「「「「ウワーッ」」」」
「何が起きてるのよ?」
「バリアちゃんにお願いしたの」
「……」
「「「バリアちゃん凄ーい」」」
「おい!マギー!しっかりしろ!」
4席目の爆発5、6隻目も巻き込まれ、船体が穴だらけになってガスを吹き出している。
動いている船はタカチホノミネ丸だけになっていた。
ここまで読んでいただいてありがとう御座います。
いいねくださった方、励みになります。
戦闘シーンはここで終わりですが、次回は後片付けから始める予定です。
苦手な方はごめんなさい。




