14 未確認だけど敵
14話です。
兵器や戦闘の話が中心です。
残酷なシーンはまだ無いので、苦手な方もどうかお付き合い願います。
よろしくお願いします。
金属反応型弾頭を換装したミサイルが発射された。
小天体を爆破するのもありだが、破片がタカチホノミネ丸に飛来するのは避けたい。
タカチホノミネ丸が秒速240キロで直進し、ミサイルはその3倍の速度で発射されるが、足して4倍の速度になる。
手前で秒速20キロメートルまで減速し、目標の小天体の上スレスレを通過するように設定している。
そこまで減速しても点火が間に合わない可能性があるが、迎撃される可能性も上がる。
「(小天体までの距離が173万キロで発射したから相対速度を考えても30分弱で着弾かな)ついでにシャワー浴びてくるね。何かあったら呼んで」
「了解。」
ヴィーン。
エンジンの回転数が上がり、タカチホノミネ丸が臨戦体制に入っていく。
戦闘準備体制を知らせるヤナカの声が艦内に響き渡り、子供達が一斉に避難区画に集まっていく。
(訓練通りにやってる。すばらしい)
「マギーお姉ちゃん!何が来るの?」
シャワールームの前で避難中のリリアがレーレの手を引いて近づいて来る。
(リリアはレーレ担当なんだね。不安そう)
「大丈夫よ。この船の通り道に大きな隕石があるからよ。ぶつかったら危ないでしょ」
「大きいってどのくらい?」
大きな子供用辞書を抱えたレーレに質問された。
「このお船を10個並べた大きさだよ」
「このお船より大きいのかあ。凄ーい凄ーい」
レーレの驚きのスイッチが面白いと2人は思った。
「レーレ、避難場所に行くわよ」
リリアは避難マニュアル通り、ずっとレーレから手を離さなかった。
(本当に良い子達で良かった)
「何か変化は?」
「あ、またパンイチだ!しかも裏返しだよ、もうー。警戒態勢なんだから戦闘スーツ着てよ!」
すでに戦闘スーツを着てレーダー操作卓に着いているリノリがプンプンしている。
「スーツ?すっかり忘れてたわ」
「3分で着弾だな」
素肌に直にスーツを着ながら、ヤナカと話を進める。面倒だからパンツはそのまま。
「反応は無いの?気が付かないなんて素人なのかしら?」
「もしくは実際に何も存在しないかだ」
「ねえ、ヤナカ。先にミサイル撃ったけど、本当に敵なの?」
リノリの質問に私は戸惑う。
私もヤナカも軍人だからか、最初から敵と認定していた。
確かに敵と認定するには情報が少ないが、小天体に隠れて接近する戦術はゲリラや盗賊の常套手段だ。
「リノリの言う通りだ。間違って敵じゃない相手を攻撃するのは間違いだ。隕石の近くを飛ぶなんて普通の船はやらないんだ。隕石に隠れて接近するのは盗賊がよくやる手だ。だから先手を打った。それにリノリが見つけた船の影が本当は無かったら、ミサイルは通り過ぎて誰も傷つかない」
ヤナカの優しい返答に、リノリは微笑んでゆっくりと頷く。
そのままリノリが操作を続け、レーダーの反応は変わっていない。
超望遠カメラなら5千キロの距離まで近づいて見られるが、暗くて判別できないし、無理に明るく調整すると画像が荒くなって悪化する。
真空状態ではっきり見えるとしても、5千キロ離れたところから3キロの物体を見るのは無理がある。
「あっ!小天体の横に何か見えるよ」
超望遠カメラの映像が、明るく鮮明になっている。倍率は変わらないが、確かに右横に何かがある。
「これ何が出てるの?」
「無視かよ!ちゃんと突っ込み入れろよ!」
「もう驚かないわよ。この子達は私と違うのよ」
「そうは言ってもまだ本物と証明されてないぞ」
「この映像をコピーしてから拡大すれば?」
私が言い終わると同時に拡大静止画をスクリーンに表示する。
「何だろう?」
「あっ!」
カチッ。
ピーーーーーー。
アラートボタンを押すと、けたたましい警報が艦内に響く。
「どうしたマギー!」
「全員戦闘準備!みんな、安全な所に集まって隔壁を閉めて!撃ってくるよ!」
振り返って見ているリノリに継続を促す。
「リノリ、監視を続けて。今ならこっちが有利よ」
「星間連合軍の隠蔽型トーチカよ!昔ね、あれと同じ型の砲台に配属されたことがあるのよ。誰が指揮してるか判らないけど、小さい砦ね」
「「ここはまだ帝国の宙域だろ?…これか?201型浮遊トーチカ隠蔽式」
「それよ、この距離じゃ主砲は拡散して効果が薄いわ。敵も同じ条件だけどミサイルには気がついたみたいね。のこのこ頭を出さなきゃ、こっちだって気がつかなかったのに」
ヤナカは一瞬躊躇したようだ。まだ完全にリノリの能力が証明されたわけではない。
時間は1時間ほど戻る。
「レーダー波を受信した。こっちに近づいてるな」
「バリル、見えるか?」
「えー、どっちだ?」
「後方だ。200度周辺」
バリルと言う男が面倒臭そうにカメラを指示された方向に向け、操作パネルに赤い点を見つける。
AIが普段の星図との差分を見た結果だ。
「何かいるな。地元の船じゃねえだろ。俺達を知らねえバカな奴等だ」
「注意しろ。こんな所でレーダー撃つなんざ頭がおかしい奴等だ」
「ああ、何かあったら知らせるよ。ザグ」
ここでレーダーを使うのは、敵にこちらの位置を教えるのと同義だ。バリルはレーダーを使いたい衝動を押さえて、望遠カメラのセンサーを変えて赤い点を調査する。
(温度が高いな。やはり宇宙船だ)
「左手後方168度、距離173万キロ、秒速250キロってところだ」
「了解した。こちらも同じ結果だバリル。まだレーダーを撃ってるぞ。何考えてんだ」
あり得ない事だと思いながら、自分達の居場所を検知されたのではないかと疑い、苛立つザグ。
「首領。こちらナス、レーダー室のバリルです」
「何かようか?」
「カモを発見しました。200度173万キロです」
「解った。」
ピーーーーーー。
「こちら首領。後方からカモがやってくる。全艦ナスの前に隠れろ。追って指示を待て」
形が茄子菜の実に似ているから浮きトーチカをそう呼ぶ。
ナス周辺を航行中の海賊船団が一斉に進行方向に移動していく。
これから盗賊稼業の始まりだ!
「あ?ザグ、何か分離したぞ。小さくて何が出たか判らん。こっちに向かってるぞ」
「確認した。サーマル画像を解析する」
スクリーンに表示される小さな白い点が、急激に赤、オレンジ、黄色に変化する。温度が急激に低下している。
(これはミサイル発射のあとに、エンジンを止めて滑空を始めたばかりだ。何でこんな遠くからこちらの存在が解った?)
「ミサイルだ。今は遠距離モードで滑空中だ。あれは戦闘艦だ、首領に連絡してくれ」
「何ぃ!」
帝国軽巡洋艦トドロキ、今は宇宙海賊旗艦タカラブネに警戒体勢のサイレンが鳴り響く。
この警報は海賊全艦にも通知される。
「何があった?」
レーダー室のスピーカーから首領の怒鳴り声がする。
「やべえ、機嫌が悪いぞ」
「おい!レーダー室!」
「ひぃ」
「こちら、レーダー室、ミサイルが接近中です」
「何だとぉ!何でこちらが判った?」
バリルはますます小物っぽい雰囲気を出して首領を怒らせないように務める。
「そ、それが、着弾まで29分でして」
「何だとぉ。バリル!薬やってねえよな?」
(やっぱこうなるよなあ。首領、怖え!)
「滅相も無え」
「何?ちょっと待て、こっちでも確認する。おい!……」
首領はそういったきり、マイクを繋げたまま艦橋の部下に指示をしている。
「総員、緊急配置だ!」
「着弾まで28分」
「バリル!レーダーは撃ってないよな?」
「撃ってません。ですが奴はずっとレーダー波を照射し続けています」
「よーし、良くやった!ナス砲手!1万まで接近したら撃ち落とせ」
「了解です」
「ミサイル撃墜からレーダーの使用を許可する。主砲で反撃しろ!目潰しだ」
「1発目は正面からジャミングとレーザー拡散片のミックス弾で、狙撃対策に被弾と同時に自爆すれば効果があるでしょ。2発目は小天体中央に装甲貫通弾でどう?」
「そうだな。着弾10秒前ならリセットも可能だ。同時に警告して置こう」
「まだ余裕があるから魔力持ちの子にバリアと砲手を練習させようか?」
ソウナ、ニム、ナウナが艦橋にやって来る。みんな不安そうだ。
「これ見て、この船の先に正体不明の敵がいるの。それでね、魔力があって魔法が使える3人に手伝って欲しいの」
「はい」
「怖くないなら良いよ」
「ふーん」
3人3様だ。
「ソウナは魔力が多いから攻撃の砲手、ニムは敵を迎え撃つ方の砲手、ナウナはこの船を守るバリアーよ」
「は、はい」
「うん、敵が来たらやっつける」
「バリヤー?」
砲手は2人並んだ操作卓に着いてヤナカが指示をだす。
バリアー手はレーダー手の後ろに操作卓があり、私がナウナを見ながらリノリに指示を出す。
ジュヴォー。
ジュヴォー。
マルグリットの提案通りの爆雷型ミサイルが発射され、ヤナカが国際通信呼び出しチャンネルで呼びかける。
「こちら中谷商会所属の護衛艦タカチホノミネ丸。前方の浮遊トーチカに警告する。直ちに戦闘態勢を解除せよ。繰り返す、……」
「最初のミサイルが消えたよ!」
レーダースクリーンから友軍を示す青い点が消えている。
「迎撃されたみたいね」
ビービービービー。
「「やる気だ(ね)」」
「五月蝿い。何?」
敵からの照準用レーダー波を浴びた警報が鳴っている。
「敵が主砲を打つためにレーダー波を打ってきたのよ。リノリ、変化があったら教えて」
「うん」
「ヤナカ、敵の反応は?」
「何チャンネルか同時に送信しているが、反応が無い」
「マギー、小天体の向こうから何か出てきたよ」
艦橋のメインスクリーンにリノリに鮮明化させた映像が表示される。
全員が上を向いてスクリーンの中央を凝視する。
「小天体を盾にして打ってくるのかしら。下にも出てきたわね」
「リノリ、もっと大きく出来るか?」
「やってみる」
少しずつ拡大されていく小天体。
「おお、凄い。やるわねリノリ。戦闘艦の砲台のようね。ヤナカ型式判る?」
「上に出てる艦橋は帝国の小型巡洋艦に似てるな。本当ならやっかいだ」
(巡洋艦かあ。航続距離が長くて速いから逃げ切れないかも。火力も大きそうだけど小型というところが判断に困るなあ)
「ねえ、ヤナカ。この赤いのは何の意味があるの?」
ニムが照準用のスクリーンを指差している。
「ニム、それはサーマルカメラの映像だ。赤い所の温度が高いんだ。動力炉だろう。間違いない。これは浮きトーチカだ」
スクリーンを見ると、突出した砲台の近くに赤い塊があり、黄色から無職へのグラデーションになっている。
「こんなに遠いのに温度差が解るの?」
「そ、そうだな。この分解能は異常だ。あり得ない」
ヤナカが間違えるなんて!
「なんとなくだけど、内部構造まで判るのよ。これは認めるしかないでしょ」
「そうだな」
「なんか色が変わってるよ」
スクリーンには赤からピンクに変わって行く砲台が映っていた。
レーダー操作卓からアラームが鳴っている。
「やる気ね!ナウナ。もうすぐ撃って来るからバリアを出して」
「解ったぁ」
砲台はみるみるピンクから白に変わって行く。
ナウナがレバーを押してバリアを展開する。
「何か近づいてるよ!」
リノリが叫ぶ。
ジリジリジリジリ。
レーダースクリーンが一瞬暗くなり、すぐ後にもう1つの近づく点を映し出した。
「もう1つ来るよ」
ジュン、ジリジリジリジリ。
拡散したレーザー2発が船体に当たり、バリアを相殺した音だった。
「みんな良くやったね」
「認めよう。これは魔力か魔法による現象だ」
「先に気づかれたけど、不意打ちで目潰しに成功したと思ってるわよね。どう反撃しようか」
「お姉ちゃんの笑顔が怖いよ」
ニムが振り返って私を見ている。
「次のミサイルはまだ生きてるぞ。着弾まで11分だ」
「レールガンなら同時に着弾するかなあ」
「今からなら数秒遅れだ」
「ソウナ、小天体の出っ張ってる砲台に照準を合わせてレールガン発射」
「はい」
バンッ。
「砲身冷却後に上にはみ出してる艦に1発、次も砲身冷却後に下にはみ出してる艦に1発それぞれ発射」
「はい」
バンッ。
「ニム。ソウナの代わりに主砲を小天体の真ん中に合わせて発射」
「はいな」
ギュー、ウィー。
ジュ!
バンッ。
「ソウナ、ニムありがと」
およそ6秒後。レーザービームが着弾し、敵のセンサー類がダウンするはずだ。
上手く行けば後ろの艦にも影響が出る。
ちょっと長いですが次回も戦闘シーンになります。
できるだけ説明文を少なくしたいのですが、つい語りたくなってしまいます。
ここ数日間、ランキングが上がり幸せです。
ありがとう御座います。
運を使い果たしたのではないかと、車の運転が怖くなりました。
これからもよろしくお願いします。




