11 フライドポテトと原料と古文書の真偽
11話です。
よろしくお願いします。
そろそろナンナ星のお話しも終わりです。
院長さん達はどうなるのでしょう。
賞金が支払われるのが1ヶ月後という事で、子供達のバザー体験学習を続ける事にした。
バザー自治会も私達の功績に応えて、1ヶ月間無料で中央に場所を提供してくれた。
「用心棒代わりだろ」とヤナカが皮肉を言っていたが、近所の人々からアネゴと呼ばれてから「確かに」と思った。
売り物のスープが残り4,000食を切っている。1日で200食くらいだから途中で売り切れるのは間違いない。ビスケットレーションは60パック入りの箱が5000箱以上残っている。ヤナカにも大量にあったが、ネヅにはその数倍積まれていた。ウンザリする。
何か売れる食物はないか、みんなにアイデアを求め、実際に食べてみた。
1、レーションを砕いてクルトンみたいにスープに入れる。
レーションの甘味が強調されて好き嫌いが別れた。銅貨3枚にして1本付けるのも良いかも知れない。
2、レーションを粉にしてオートミール風にする。
お湯で溶いても美味しくない。粉ミルクを使うと子供達には好評。しかし粉ミルクが高価で売れない。これはご褒美用のおやつかな。
3、ニムの故郷で栽培していた弦性の芋に似たものが、この辺りの野山にも自生しているのを見つけたと言う。甘くて美味しいらしい。
ニムの両親は、その芋から白い粉を採っていたと言う。澱粉だよね。
ヤナカは作業と警備ロボットを引き連れてニムと一緒に山へ行ってしまった。
私達はバザーでスープ売り。売り切れを引き伸ばすために、カップ売りに専念した。
中央に越して来た事で、カップの売り上げが1日で400杯になってしまった。大急ぎで孤児院から3人応援に来てもらった。
これでは時間稼ぎをしても結果は同じだ。
翌日、ヤナカは200キログラム以上の赤い芋と、6本足の猪らしき動物を18頭、体長1メートルの耳が猫のようなウサギらしき動物を30頭狩ってきた。しかも数頭ずつ電撃で気絶させて縛り上げてある。
孤児院の敷地で繁殖させて肉を食べればいいとヤナカは考えていた。
ニムによると、サラン星の芋は赤芋といって、皮が赤い。そしてこの星の芋より葉が少し細長いそうだ。
ヤナカの分析ではこの星で最低でも50年は繁殖を続け、品種の分化が始まっているそうだ。この辺りの気候が温暖だった事で、土中の芋が枯れずに生き残ったのだろうとヤナカは見ている。
200年後には伝統野菜的な作物になるだろう。だが、ナンナ星では作物としての認識が無く、野生化が進みつつある。栽培して美味い物だけを選別しないと、不味くて強い物だけが生き残る可能性が高い。
サラン星が近いのに誰も気が付かなかったのか?
ヤナカは赤芋が自生している山野を私名義で買い取ってしまった。何もない原野だったので、1万2千ヘクタール程の土地で帝国金貨360枚、1ヘクタールあたり小銀貨3枚。
安いのかな?それに山で掘ったんじゃないの?
「でかしたぞ、ニム」
ヤナカがニムの頭を揉みクシャにしている。
「止めてー、くすぐったいでしょ、はは、ははは、はははは、……、はあはあ」
ニムが笑い過ぎて呼吸困難になったところで止めてもらえた。
「この赤芋は栽培が簡単な上に収穫量が多い。1平方メートルで2.5キログラム採れた。これを栽培したら飢饉でも大丈夫だ」
さっそく調理してみる。
取り敢えず柔らかくなるまで煮る。
「甘味があるはね」
「レーションよりずっと甘いよ」
「あたいこれ好き」
「「「「「好きー」」」」」
なかなか良い反応。
次はフライドポテト。ちょっと塩を振る。
「なにこれ!美味しい」
「すごい!なんなのこれ」
「サクサクして、甘くて、しょっぱくて、んー」
「「「「!」」」」
「お姉ちゃん、おかわり無いの?」
あっと言う間に無くなった。子供達が無言でがっつくところを久しぶりに見た。
蒸かしたり焼いたりしても、とにかく火を通すだけで美味しかった。
ニムは焚火の熾火で1時間程度焼くのが1番美味しいと豪語している。
艦のキッチンでは手の込んだ調理が出来ないので、ここまでにして、澱粉を作ってみる。
「これなら売れるわね。街で売ってる物より良い」
次の日、評判の良かったフライドポテトとレーションを砕いて衣にした赤芋だけのコロッケを売ることにする。
1つの鍋で調理出来るので、どちらも揚げ物にした。
今日は孤児院の子供達も5人来ている。
料理が出来る子に加工と調理を任せた。
「赤芋のフライドポテトだよ」
「甘じょっぱくて美味しいよ」
「赤芋のコロッケはいかがですかあ」
「スープと一緒に食べたら最高ですよ」
「赤芋ってのはどんな芋だい?」
リリアがフライドポテトを1本、男の口に放りこむ。
(客の扱いが上手いなリリアは)
「旨いな!1ついくらだ?」
「美味しいでしょ。紙袋1つ銅貨2枚よ」
「そうだな、人数分くれ」
「毎度ありぃ。3人だから銅貨6枚よ。赤芋なら鍋の横にあるよ」
「ホントに赤いんだな」
その日、50キログラム用意した赤芋が午後の早い時刻に売り切れた。
みんなへとへとになるほど忙しかった。
明日は調理組を増やそう。
「みんな頑張ったわね。ご苦労さま」
「おつかれ!今日の売上は?」
リノリが赤芋のヘタを熱い油に放り込みながら聞いて来る。
(食べちゃえばゴミが減るわね。なんだか美味しそ)
「えっとね。
スープが291杯で小銀貨7枚と銅貨27枚と小銅貨5枚。
フライドポテトが431個で小銀貨8枚と銅貨62枚。
コロッケが112個で小銀貨1枚と銅貨12枚。
全部で小銀貨17枚と銅貨1枚と1小銅貨」
(何これ!信じられない。どうしよう、この子達に大金を渡すのは教育に良くないし)
「仕事をしたみんなに銅貨3枚ずつお小遣いあげる」
「銅貨3枚も貰えるの?」
「銅貨3枚もー?」
「銅貨3枚だー!」
「「「やったー」」」
「「「「肉串だ!」」」」
その後、リノリが揚げたフライドヘタと鍋に残ったスープを分け合い、ビスケットレーションを1パックずつ渡す。
「そのフライ、図書館組の子達にも取っておいてね」
「そうだね。わかった」
「これを食べたら後片付けだよ、みんな良い?」
「「「「「はーい」」」」」
「「「「「えー、疲れた」」」」」
日が傾きかけた頃、ナーナが様子を見にやって来て、全部片付いていた事に目を丸くしている。
「赤芋は全部売り切れて片付けも終わりよ」
「凄いですね。全部売れたんですか?」
「ナーナ、僕たち頑張って売ったよ」
孤児のサグーが貰った銅貨を自慢気にナーナに見せる。
このバザーの露店ではちょっと良い肉ぐしが1本銅貨1枚で買える。
子供にとってはご馳走が1日働いて3本も買えるのは天にも登る気持ちだろう。
大人になって行くに連れて感動もしなくなってしまうんだ。
「お給料貰ったの?頑張ったね。サグー」
「私も頑張ったよ。ほらっ」
「「「銅貨3枚!」」」
「みんなすごいね」
ナーナは孤児院の一人一人の頭を撫でて、ねぎらっている。
子供の嬉しそうな表情が眩しい。
「こんなに頂いていいんですか?」
「良いのよ。多いと教育に良くないから、本当のお給料はこれよ」
ナーナは私の手に乗った小銀貨を見て息が止まりそうになるのをなんとか堪えている。
「驚かしてごめん!大丈夫」
ナーナは苦しそうにうなずいて、孤児のミリが出してくれた水を飲む。
「ナーナはいつもこうなんだから。落ち着いた?」
「ごめんなさい。1日でこんな大金が稼げるなんて信じられなくって」
「赤芋だけで小銀貨10枚売れたの。赤芋は野原で掘ってきたから手間賃だけで、元手は鍋と燃料だから山分けすると小銀貨4枚かな」
ひーっ。
「ちょっとナーナ!落ち着いて!もう、カリナさんもナーナを驚かさないの!」
「ごめん、ごめん、ごめなさーい!」
孤児院の子供達に囲まれて睨まれてしまった。大事なお姉さんだよね。
「赤芋は野原から掘って来るだけだから、仕入れ価格は私達の労働力なのよ。
明日も手伝ってね。今日の2倍は売れると思うのよ」
「2倍、ひー、ふー、凄いです」
「だーかーら!カリナさんってば!」
「ごめんなさい!ミリ。でね、明日から孤児院で下拵えをお願いしたいの。この1区画じゃ狭くて芋を切ったり、コロッケを成形するのが間に合わないんだ」
嬉しそうにナーナが考えている。
「でも、どれくらいの量が必要なんですか?」
「そうね。赤芋が100キロよ。80キロがフライドポテト用に細く切るだけで、20キロがコロッケ用に茹でてから潰すの。鍋とか包丁はある?」
「包丁が足りないですね」
「段取りと調理の仕方を教えるから、明日の朝早く芋を持って行ってもいい?」
その夜、ヤナカから古文書について相談があった。
「図書館で論文を手に入れただろ?あれで古文書のほんの少しだが翻訳出来たんだ。だがな、信じられないってかガラクタな内容なんだよ」
「ガラクタって神話とか?」
「それに近いな。魔法書だ。3冊翻訳出来たんだが、解りやすい1冊が基礎魔法の教科書だ」
「教科書って私でも出来るの?」
「出来ん。どうも魔力の事を神通力って言っているらしいんだが、それが無いと使えない」
「それ、見せてよ」
スクリーンに50ページくらいのテキストが映し出される。
「これは絵は入ってないの?」
「無いな」
目次があったので内容が解りやすい。
最初に魔力とはから始まり、どうやって魔力を具現化するか等の基礎の基礎が書かれている。
次に実践で、風を吹かせる、土や水の様な柔らかい物を変形させる、次に温度を変化させる、次に火を発生させる、次に水を作る。
なんとなく物理的に軽くて操作しやすい順番になっている様だ。無から生じさせるのか火と水は違う感じだ。
最初の魔力を身体に通す方法なんかは魔力を使う装置の使い方に似ている。
魔力が発見されてから150年。実際に応用が可能になったのは40年くらい前だ。
もしかしてもしかするのかな?
「魔力の強い子にやらせてみる?何も起こらなかったら、眉唾ものって事ね」
他の2冊も魔法の教科書らしいのだが、専門用語が基本語彙で表現される場面が多く、その現象や結果を表しているようで何が言いたいのか解からないところが多い。
2日後、孤児院の段取りが上手く行ったので、店をヤナカ(基本、警備ロボットの振り)とナーナに任せて、院長と私は街の外に出掛けた。
食品のサンプルと生芋を持って農村に行き、栽培を依頼するためだ。
協力してくれる農家には作付面積に合わせて種芋を渡し、収穫後に次の作付用の芋を除いた半分を院長が1キログラムあたり銅貨1枚で買い取る。
残りの半分は農家の自由だ。全部院長に売っても良い。最初の種芋は無料なのでコストも少ない。
目聡い商人は、もっと高く取引するだろう。
この契約は最低2年、その後は農家の判断で更新出来る事にした。
栽培と加工の方法は印刷して渡したが、原産地サラン星の情報を参考にするように伝えた。ネットで調べればすぐ解るだろう。
概ね料理の反応は良く、加工品に使える澱粉が造れる事が喜ばれた。
輸出できる作物は、穀類や豆類、一部の高級食材なので、地元での換金作物として認識されると良いと思う。
院長さんの交渉のお陰で、半分の農家が受け入れてくれた。やがて多くの農家が栽培を始めるだろう。
ヤナカがこの情報をジアナ星のザザに問い合わせたところ、サラン星からの移住者が細々と栽培している事が判った。
この芋の有用性を悟ったザザは、政府が旗を振って増産する事を決めた。
1年後にジアンナ元老院から中谷と山田に感謝状が届けられた。
ジアナ星政府が赤芋栽培に力を入れた事を発表し、ナンナ星の政府も興味を持っている。近くサラン星に調査団を派遣する事が決まった。
ここまでありがとうございます。
ヤナカが買った土地が倍になっていたのに驚きです。
誤字脱字が増えている様です。ご迷惑おかけしています。




