10 続ヤナカのやらかし
10話です。
ヤナカのやらかしの内容です。
中盤に少し残酷なシーンがあります。
訂正、最後のあたりの院長の言葉で意味がからなる所を削除しました。同じ行で、しごと→仕事、に直しました。
ファナの言葉に、?、を入れました。
「責めているんじゃない。周りにいた連中からも突然倒れたと報告が来ている。どうやって奴らを殺ったんだ?」
「えっと。て、偵察のその…」
「偵察のなんだ?ロボットにそんな機能があるのか?」
「こら!動くな!」
憲兵の威嚇にみんながそっちを見る。
リノリが憲兵隊長に向かってスツールを上段に構えていた。
「お姉ちゃんは悪くない!」
隊長は驚きもせずに部下が手荒な真似をしないよう合図をして、立ち上がってリノリに頭を下げた。
「悪かった。カリナさんは悪くなかったな。悪者みたいに扱ってごめん」
「解った。私もごめんなさい」
リノリは隊長の紳士的な態度に警戒を解いて、スツールを足元に下ろしてその場に座った。
(リノリは怒ると怖いなあ)
「本当にいい子達だ。カリナさん。孤児の養母になったと記録にあるがジアナで?」
「ジアンナで知り合ったの。私に似てない、良い子達よ」
「何っ!」
シュー、トン。
噴射音の後に攻撃ドローンが着地して、マーカーランプが消える。
それを見た憲兵達が慌てて物陰に退避する。
「あれで殺ったんだね?」
隊長はまた驚きもせずに電源の切れたドローンを指差した。
警備ロボットのふりをしているヤナカが合図を送ってくる。
「そうよ。子供達を守るために偵察に使ってたの」
「調べても大丈夫か?」
「ええ」
隊長はため息をつくと、1メートル以上あるドローンを掴みあげて部下に渡した。
「あれならここにいる全員を瞬殺だな。あんな物騒な物をどこで手に入れたんだ?」
隊長はどんよりとした表情に変わり、ボールペンを転がし始める。
「今日は食べ物を売ってるけど、いつもはジャンク屋をやってるから、手に入るのよ。これは30年前の物だけど(元はネヅの装備なのよ)」
「そうかジャンク屋なのか。連合軍のかなり高級な装備だな。私も前線では仲間を何人も殺られたよ。こんな安全な土地でまたあれを見るとは、私もついてない。暫くは悪夢に苦しめられる」
「ええ、私もドローンには何度も…(私達だって殺られたわよ!)艦に突っ込まれたわ」
事情聴取はドローンの登場ですぐに終わった。
後日、憲兵隊長がバザーに訪れて報告してくれた。
攻撃ドローンは違法だが、戦後の人材不足で取り締まっていられない。
生死不問の賞金首を退治した事で恩赦的な意味も含めて不問にする。
私達が外国人で、しかもジアンナ元老院が身元保証人になっている。
政治家との面倒事は避けたいと、ため息をつかれた。
「ナンナ星では、あのドローンは二度と使いません」という念書を書かされたうえに、厳重注意で済まされた。
本当はヤナカが全て実行したことだ。
アジトを攻撃したのは惑星偵察用無人艦載機で、ステルスだのジャミングだのと隠密装備の塊だ。1発ではなく10センチメートル間隔の面射撃を、攻撃ドローンの30倍のエネルギーで打ち込んでいる。
あらゆる場所にハッキングを掛けて、一家の居所を掴んだ。
まずは憲兵隊の手配書と隊内サーバーから犯罪者の調査情報を盗み。市街の監視カメラ、交通システムや店舗の利用履歴などから居場所を特定した。
実行は攻撃ドローン15機を使った。
「おい!どうした?行き先はそっちじゃねえぞ!」
「車が勝手に…おかしいな。行き先は合ってますよお客さん。この先で事故でもあったのかな?」
歩行者のいない路地でタクシーが勝手に停車した。
カーン。
「なんでこんなところで停ったんだ?返って修理だな。お客さん、すみませんが。お客さん?。ウワーッ」
「お客さん。このカード無効になってるよ!現金はある?」
「んなわけ無えだろ!」
「ほら、スキャナ見なよ。無効だって。払えないなら警察呼ぶよ。ワッ、逃げた。誰か捕まえろ!」
ガチャ。
ドサ。
男はドアの外側で倒れた。
「おい!どうした?酒がまわったか?おいって」
「店長、こいつ死んでるんじゃ」
「店長ー!このカード偽造よー」
「ドアをロックします。指紋認証をお願いします」
「はいはい、毎回面倒くせえな」
カチャチャチャチャ。
「ロックに失敗しました。もう一度始めからお願いします」
「何だ?変な音がしたな。何か挟まってるのか?」
ガチャ。
「みんな逃げろ!」
リノリ達は拍子抜けするほど平静だった。知らない男に殺されそうになったのに、子供達が全員集まってスープとレーションをお茶請けにして、楽しそうにおしゃべりをしていた。
ジアンナではこれが日常だったのだろうか。だったら生き残っただけで奇跡の様なものだ。
そう言えば、盗みで捕まって殴り殺される路上生活者が増えたとザザが言っていた。それは子供だろうと容赦しないという事だ。
「ナーナさん、大丈夫だった?」
「ええ、子供達は何が起こったのか解らなかったみたいです。みんな本当に強いんですね。リノリちゃんには驚きました。」
みんなでお茶を飲んで心を鎮める。大人だけかも。
もう日が傾いて商売をする時刻でもないので、店は再開しない。
もうすぐ迎えをやった図書館組が合流する。
「なにも起こらなかったのに盗賊達が倒れていったと聞いた」
「そうです。子供達にはあんな残酷なところを見せてしまってごめんなさい。私が引き止め無ければ良かった」
「この子達もそういう場所で生きている。逆に守ってくれてありがとう。奴等には子供を拉致された事があってな。それから1人では外に出さなかったんだ。君達も気を付けてな」
私はテーブルの上にあるドローンを指差して説明する。
ナーナや子供達は反応が無かったが、この攻撃ドローンはソフトと装備の入れ替えで地上用対人兵器にもなる。この街で使われ無かったなら幸いだ。
しかし院長さんもこれが何か解ったようだ。
「これを偵察に使ってたのよ。……」
動作ログはこんな感じだった。襲撃される直前に犯罪者だって判ったけど、手遅れだった。武器を子供に突き付けていなかった5人を射殺して、その後にリノリの安全を考慮してドーゴの手を切断、人混みから銃で狙っていた兄を射殺して、警備ロボットに引き継いで偵察に戻った。って感じを2人に説明する。
(ホントはヤナカがドローンからの警報に対して射殺命令を出したんだけど。それにドーゴだけ生きてるのは変よね。)
院長は黙って私の説明を聞きながらドローンを見つめている。
「院長さんも兵隊だったの?」
「ああ、開戦の翌年に徴兵されてね。運良く肩に当たって、命に別状なかった。」
院長の話では、負傷兵としてナンナ星に帰国して孤児院に戻った。2年後にまた徴兵されて戦艦の砲手として終戦まで戦った。
終戦で引き上げて来た頃の孤児院は悲惨だったそうだ。食べ物も衣類も無く、何も出来ずに死んでしまう子供が多かった。
「ナンナ星も大変だったんだね。リノリも同じだったみたい。話はかわるけど、孤児院に寄付してもいい?」
「ああ、嬉しい話しだが、無理をしないで欲しい。」
「大丈夫、ドーゴ達の賞金だから」
「いくら出るのかね?」
「フリント兄弟がそれぞれ金貨100枚、手下の5人がそれぞれ金貨10枚よ」
ひーっ。
ナーナが立ち上がって息を吸ったまま呼吸を止めて動かない。
(ナーナの持病なの?さっきもなってた)
院長がナーナを軽く抱き締めて、何か喋って落ち着かせている。すぐに呼吸が戻った。
「驚かせて済まない。ナーナは戦争のトラウマで驚くとこうなるんだ。なぜそのような大金を私達に寄付する?」
「孤児院て経営が大変なんでしょ?」
「そうだが、君達にも金は必要だろ?聞けば12人もの子供を養っているそうではないか」
「ここだけの話だから小さい声で話すけど、誰にも言っちゃだめだからね」
2人は頷いて、3人でいかにも内緒話をしている体勢になった。子供たちがこっちをチラ見している。
「私達は旅をしながらサルベージで稼いで金持ちになったの。はっきり言えないけど帝国金貨で数万枚よ。あの子達、孤児院にも入れずに自分達だけで生きてた。仕事を何度か頼んでるうちに可愛くなっちゃったのよ。全員を助けるほどのおカネは無いし、知り合った子供くらいは……ね。(嘘は言ってない)」
「そんなに稼げるなら、この子達に仕事を教えてください」
金貨数万枚に驚いたのだろう、ナーナが呼吸を整えながら、真剣に私の手をにぎって言う。子供達の将来を考えたらそう思うのは十分に理解できる。
「将来性が無いのよ、サルベージって。……」
こう続けた。
戦場跡で残骸を集めて売るのがサルベージ屋。宇宙空間で危険な作業をして残骸を集める。子供用の船外作業スーツは無いから、集めた残骸を選別するのが子供達の仕事。破片の尖った部分で怪我が絶えないし、有害物質や残弾、不発弾は危険で、ミサイル推進剤の中には触れても吸っても危険な物がある。残骸が採れ無くなったら、また旅に出て次の戦場跡に行く。
(作業ちゃんが全部やってくれるから嘘なのよね)
「それでね、世の中の復興が進んで戦争前に生産力が戻ったら、ジャンク品は売れないし、鉱山や金属工場の再開が始まって、クズ鉄の値上がりが止まって安定してきてる。5年すれば稼げなくなるのよ」
がっかりしているナーナがなんだか可愛く見えた。
「そうだな。船外活動は危険だ。それに工業製品も需要に追いつくまで10年はかからんだろうな」
「そうなんですか?院長」
「戦争前にはその辺りを走っている配達用の小さい電気トラックが銀貨2枚で買えたんだ。」
「え?ボロボロのトラックだってその値段では手に入らないのに!」
「そうだな、それだけ物が不足しているんだ。だからいづれはジャンク屋もサルベージ屋も無くなる仕事だ」
「そうなんですね」
2人は黙って考え込んでいるようだった。
「マギーお姉ちゃんただいま」
「あら、おかえり、ファナ。図書館は楽しかった?」
「うん。誰ー?」
ファナが私の膝に座りながら2人の大人を見比べる。
「このおじちゃんが院長さんで、こっちの女の子がナーナっていうの。私のお友達」
10話まで来ました。
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