綺麗な月/プレミア視点
見渡す限りの平原。どこまでも続く青空は、少しずつ赤味を帯びている。
そろそろ太陽が沈む。
何度も、何度も大切な人が死んでいく。覚めない夢を呪いながら、私は怒りと憎しみを原動力に同じ時間を何十年も生きている。
そんな夢を見た。
太陽の光で私は目を覚ました。そうこれは夢なのだ。最近、どんどんリアルになっているような気がする。今日はせっかくのお祭りなのに、なんだか残念な気分。
「お、今日は早く起きているな」
「パパ!!! 部屋に入る時はノックしてって何度も言ったじゃない!」
「はっはっはっは。そろそろプレーン平原に向かうからね」
パパは全然気にする素振りがない。まったく……。
「ちょっとライト! ランス軍団長とレイダー副団長がいらっしゃってるわよ!」
ママがパパの腕を掴み連れて行ってしまった。ランスさんとレイダーさん来てるのね。早く着替えなくちゃ。
今日は魔族長であるスパルナさんも来るし、冒険者ギルドのマスターであるガーディンさんも来る。『お月様を囲む会』はパパが企画した初めて開催されるお祭りだけど、なかなか大規模なお祭りになりそう。
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見渡す限りの平原。どこまでも続く青空は、少しずつ赤味を帯びている。
たいまつに火がともり始めた。屋台ではお肉とお魚が焼けるいい匂いがし始めている。お腹が空いてくる。クリスちゃんはすでにお酒を飲んで気持ちよくなってしまった。
辺りを見回すと、ライト国だけでなく、周辺の村や遠くはミシリー国からも多くの人が来ているようだった。
「やあ! プレミア久しぶりだねっ! また大人っぽくなったんじゃない?」
「スパルナさんこんちは! やだー1か月前に会ったばかりじゃないですかー。そんなに変わらないですよ。ラサヤナちゃんこそすっかり大人になっちゃって。二人ともかわいい」
「ありがとっ。ラーちゃん相変わらず忘れものが多くってね」
「むう、最近忘れてないもん。そういえばね、あっちにリール様がいて、プレミアちゃんのこと探してたよ」
「ありがとう、ラサヤナちゃん。お姉ちゃん、今日時間を戻す魔法を教わっちゃうんだよ」
「えー! 凄い! あとで見せてね!」
私は二人とまた会う約束をし、マスターのもとへ向かった。
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王国関係者のテントの前で、マスターはパパとママと話をしていた。
「よお、どこに行ってたんだ?」
「ちょっとクリスとぶらっとしてた。ねえねえ、早く『時を戻す魔法』を教えて」
「そうだなあ。残念だけど、俺はその魔法を使えないし、教えることもできない」
「え、だってこの祭りに参加することって」
「気まぐれで欠席されたら困るから念を押しただけだよ。プレミアが勝手に勘違いしただけで、教えるなんて一言も言ってないぞ」
「え~~~~~ひどい」
マスターがお腹を抱えて笑っている。まったく、とんでもない男だ。これは結婚できない。はあ、やっぱり私が婿にするしかなさそうだ。
「それよりさ、この時間にプレーン平原にいて何か感じないか」
マスターが突然真面目な顔をして言った。
「え、う~ん、たしかに最近よく見る夢に出てくる景色に似てるけど……。お祭りみたいな明るい夢じゃないし……」
私は、ふと空を見上げた。夜空に浮かぶ『二つの目の月』がいつにも増して大きく輝いている。今日はあのお月さまを祝うお祭りなのだ。
でもなんだろう。お月さまが、どんどん大きくなっていく。大きくなっている? 違う! こちらに迫って来ているんだ。
そして―――私は『あれ』をよく知っている―――。夢の内容がより現実感を帯びてくる。そう……。『あれ』が世界を滅ぼすんだ。
マスターが私の手を強く握った。「安心しろ」と言っているような―――。
「あれはメテオだ」
空を覆いつくすように広がった『メテオ』と呼ばれる星を見た時、私の見ていた夢が、現実の記憶であることにようやく気が付いた。
気付いたんじゃない。完全に思い出したのだ。
―――――――私は、ここでアクトスに殺されて―――。でも、もう時間を戻すことができなくて―――。
そうだ―――メテオを止めてママを助けるため、何度も何度も時間を戻し、同じ時間の牢獄の中で私は戦ってきたのだ。




