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綺麗な月/プレミア視点

 見渡す限りの平原。どこまでも続く青空は、少しずつ赤味を帯びている。


 そろそろ太陽が沈む。


 何度も、何度も大切な人が死んでいく。覚めない夢を呪いながら、私は怒りと憎しみを原動力に同じ時間を何十年も生きている。

 

 そんな夢を見た。


 太陽の光で私は目を覚ました。そうこれは夢なのだ。最近、どんどんリアルになっているような気がする。今日はせっかくのお祭りなのに、なんだか残念な気分。


「お、今日は早く起きているな」


 「パパ!!! 部屋に入る時はノックしてって何度も言ったじゃない!」


 「はっはっはっは。そろそろプレーン平原に向かうからね」


 パパは全然気にする素振りがない。まったく……。


 「ちょっとライト! ランス軍団長とレイダー副団長がいらっしゃってるわよ!」

 

 ママがパパの腕を掴み連れて行ってしまった。ランスさんとレイダーさん来てるのね。早く着替えなくちゃ。


 今日は魔族長であるスパルナさんも来るし、冒険者ギルドのマスターであるガーディンさんも来る。『お月様を囲む会』はパパが企画した初めて開催されるお祭りだけど、なかなか大規模なお祭りになりそう。


**********************


 見渡す限りの平原。どこまでも続く青空は、少しずつ赤味を帯びている。


 たいまつに火がともり始めた。屋台ではお肉とお魚が焼けるいい匂いがし始めている。お腹が空いてくる。クリスちゃんはすでにお酒を飲んで気持ちよくなってしまった。


 辺りを見回すと、ライト国だけでなく、周辺の村や遠くはミシリー国からも多くの人が来ているようだった。

 

 「やあ! プレミア久しぶりだねっ! また大人っぽくなったんじゃない?」


 「スパルナさんこんちは! やだー1か月前に会ったばかりじゃないですかー。そんなに変わらないですよ。ラサヤナちゃんこそすっかり大人になっちゃって。二人ともかわいい」


 「ありがとっ。ラーちゃん相変わらず忘れものが多くってね」


 「むう、最近忘れてないもん。そういえばね、あっちにリール様がいて、プレミアちゃんのこと探してたよ」


 「ありがとう、ラサヤナちゃん。お姉ちゃん、今日時間を戻す魔法を教わっちゃうんだよ」


 「えー! 凄い! あとで見せてね!」

 

 私は二人とまた会う約束をし、マスターのもとへ向かった。


 *******************

 

 王国関係者のテントの前で、マスターはパパとママと話をしていた。


 「よお、どこに行ってたんだ?」


 「ちょっとクリスとぶらっとしてた。ねえねえ、早く『時を戻す魔法』を教えて」


 「そうだなあ。残念だけど、俺はその魔法を使えないし、教えることもできない」


 「え、だってこの祭りに参加することって」


 「気まぐれで欠席されたら困るから念を押しただけだよ。プレミアが勝手に勘違いしただけで、教えるなんて一言も言ってないぞ」


 「え~~~~~ひどい」


 マスターがお腹を抱えて笑っている。まったく、とんでもない男だ。これは結婚できない。はあ、やっぱり私が婿にするしかなさそうだ。


 「それよりさ、この時間にプレーン平原にいて何か感じないか」


 マスターが突然真面目な顔をして言った。


 「え、う~ん、たしかに最近よく見る夢に出てくる景色に似てるけど……。お祭りみたいな明るい夢じゃないし……」


 私は、ふと空を見上げた。夜空に浮かぶ『二つの目の月』がいつにも増して大きく輝いている。今日はあのお月さまを祝うお祭りなのだ。


 でもなんだろう。お月さまが、どんどん大きくなっていく。大きくなっている? 違う! こちらに迫って来ているんだ。


 そして―――私は『あれ』をよく知っている―――。夢の内容がより現実感を帯びてくる。そう……。『あれ』が世界を滅ぼすんだ。

 

 マスターが私の手を強く握った。「安心しろ」と言っているような―――。


「あれはメテオだ」

 

 空を覆いつくすように広がった『メテオ』と呼ばれる星を見た時、私の見ていた夢が、現実の記憶であることにようやく気が付いた。


 気付いたんじゃない。完全に思い出したのだ。


 ―――――――私は、ここでアクトスに殺されて―――。でも、もう時間を戻すことができなくて―――。

 

 そうだ―――メテオを止めてママを助けるため、何度も何度も時間を戻し、同じ時間の牢獄の中で私は戦ってきたのだ。

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