夢/プレミア視点
夢を見ていた。
「俺が時間を戻す!!! 数秒程度でも……プレミアが生きている時間を見つけてやる!」
その言葉で目が覚める。これで何度目だろう。最近、何度も何度も同じ夢を見る。
男の人は少し年上で、ちょっとかっこいい感じ。なんで起きたら忘れちゃうんだろう。どこかで会ったことがあるような、ないような。
でも凄く悲しい夢。凄く大きな月が空を覆って、なぜか私は死んじゃう。男の人も凄く泣いてた。
ベッドから起き、遅めの朝食をすませた。メイドさんいつもありがとうございます。
「全くいつのまで寝てるのかしら。王女としての自覚は必要よ? もう16歳。結婚も考える年齢になっているのに」
ママがぷんすかと怒っている。
「いっつも王妃なんか辞めたいって愚痴ってるくせにさ」
「それはそれ、これはこれですわ。パパが引き受けちゃったんだからしょうがないでしょ?」
ママは元々王家の人間ではない。パパもそうだ。
私が生まれる前に『魔王』を倒し、その功績が称えられてミシリー国の一部であるこの国を貰ったと前にパパが言っていた。
当時のことは分からないが、世界中大騒ぎだったそうだ。
「パパは少し分かるけど、ママが強いのはピンとこないなあ」
「あら? だったら一度戦ってみる?」
「やめとく~」
食後のコーヒータイム。朝はやっぱりこれだよね。
「今日のお稽古はどうするの?」
「友達と約束。クリスちゃんと」
「あら、じゃあいつもの喫茶店?」
「うん。また魔法を教えてもらうんだ」
「クリスちゃん優秀だからね。マスターは教えてくれないの?」
「たまに教えてくれるけど、なんかレベルが高くて難しい」
「あー……それはしょうがないね」
「教え方下手くそだから結婚できないんだよ。前に直接それを言ったら笑ってた」
「まったく、あんたの頭が悪いのもあると思うわよ」
「え~~。でもマスターいい人だから、今後も結婚できなさそうだったら、私がもらってあげるんだ」
「何それ」
「私の玉の輿に乗れるんだよ。きっと喜ぶよ」
「はあ、まったく凄い自信ね。マスターだって人を選ぶ権利があるのよ?」
「そんな権利ないよ!!」
「ふふっ、ないんだ」
少しゆっくりし過ぎてしまった。もうすぐクリスちゃんとの待ち合わせの時間だ。服を着替えて城を出た。
**********
「あ、きたきた。やっほー」
喫茶店のカウンターにはすでにクリスちゃんが座っていた。私より10個くらい年上なのに、凄く親しみやすい綺麗なお姉さんだ。
「お待たせ―。今日もお綺麗ですね」
「相変わらずいい子だね~。でもおごらないからね」
「分かってますよー」
「てなことで、マスターオリジナルのコーヒー二つね」
「おう」
マスターが軽やかに返事をする。
いつものやり取りってなんでこんなに安心するんだろう。今日も楽しい一日が始まるって感じがするね。
「プレミア、なんか魔法の成績悪かったらしいな」
前言撤回。楽しい一日は始まらない。
「え、なんでそんなこと知ってるの?」
「マスターの情報収集力をなめるなよ」
「くっそー……そうよ! だからクリスちゃんに教わるの! ねっ!」
「プレミアちゃん筋はいいんだけどねえ」
「ですよね! そうです! 才能はあるんです」
「俺も教えてやろうか?」
「え~マスター教えるの下手じゃん!」
「そんなことないよ、ね、マスター」
「クリスの言う通り。まあ、今回駄目だったのは実技じゃなく筆記なんだろ? ちゃんと頑張れば点数は上がっていくさ」
そんなこんな会話をしていると「こんちゃーす」とドルビーが入ってきた。ドルビーはこの喫茶店のアルバイトだ。冒険者見習いらしいけど、スパルナ様がしっかりと魔物をまとめ上げているので、最近は仕事が減っているとのこと。
「プレミアじゃん。テストの点数低かったらしいな」
「なんであんたも知ってるのよ!! はあ……時間を戻してテストやり直したい……」
「時間を戻す……ね。はい、サービスのサンドイッチ」
「わあ! マスターありがとう! マスターのサンドイッチ大好き」
マスターのサンドイッチは卵とお肉とマヨネーズの組み合わせが最高なのだ。婿にしたら毎日作ってもらおう。
「そういえばさ、マスターっていちおう勇者だったんでしょ?」
「まあね。みんなが知ってるように、ライト達について行ったおまけみたいな感じだけどさ」
どういう理由かは知らないけれど、マスターはこの店だけ報酬としてもらい、他の物は受け取らなかったそうだ。「面倒なことはライトに押し付けた」と笑って話していたことをよく覚えている。なので、最近はマスターが勇者だったことを知らなかったり、忘れてしまった人も多いらしい。20年って私の生まれる前だし、しょうがないよね。
「マスターの活躍見たかったなあ」
ふと名案が浮かんだ。
「そうだ! 時間を戻したり過去に行ったりする魔法ってないかな?」
「え~そんな魔法聞いたことないな。マスター知ってる?」
「どうだろうね」
苦笑いしてる。マスター何か知ってるのかな。
「まあ………そろそろなのかな」
やっぱり知ってる。
「教えて!」
「――――――来週、国を挙げてのお祭りがあるだろ?」
「お月様を囲む会だよね。それがどうしたの?」
「そこに参加すること」
「え~すぐに教えてくれるんじゃないの? ね、リール様!! 教えて!!」
思い切り媚びを売る笑顔をする。ただ、マスターは軽やかにそれを無視した。なんで!?
私ってそんなに魅力ないのかな……。まあいいわよ。あ~あ、お祭りまでのお預けか。
読んでいただきありがとうございます。また、ブックマークありがとうございます。




