大人二人/リール視点
「少し散歩しませんか」というセリンの言葉もあり、プレーン村を散策することになった。
「私は夕食の買い出しに行ってきますので、ママと二人で行ってください」ということでプレミアとは別行動だ。
夕方にはまだ時間があり、観光客と思われる人々がたくさんいる。飲食店やお土産店も多く、呼び込みの声も聞こえる。
アクトスの銅像や記念碑を除けば、プレーン村はほどよく活気があり居心地がいい村だ。
家の中だからという理由で下着姿だったセリンは、もちろん服を着た。肌の露出は控えめだ。残念ではあるけれど、常識はあるようで少しホッとした。
「風が気持ちいいですわね」
セリンの長髪が柔らかく揺れていた。
「そうだな。22年前もそうだった」
「この村でリールと出会ったとアクトスは言ってましたわ」
「ああ」
「子供だったと聞いておりますが、おいくつだったんですの?」
「10歳だ」
「驚きましたわ……。そして、わたくしのが年上とは思いませんでしたわ……」
「今32歳だ。セリンは36歳だろ? この年の4歳違いなんてほとんど変わらないよ」
「いえ、変わりますわよ? 肌の質が全然違いますわ!」
セリンは両手で自分の頬を何度も揉む仕草をすると「むー」と唸った。
「プレミアと比べても見劣りしないと思うけどな」
「ふふっ、褒めても何も差し上げませんわよ。わたくしのが年上でもあるし、ちゃんと可愛がってあげますからね。覚悟していてください」
セリンは俺の顔を下からのぞき込む様に言った。冗談なのは分かっているが、色っぽさがにじみ出ているのが何とも悩ましい。
「お手柔らかに。しかし、俺の年齢を知らないのは意外だった」
「あまり言いたがらないようでしたわ」
「まあ10歳の子供を大人3人でボコボコにしたとは恥ずかくて言えないか」
「その話は初めて聞きました……。まさか暴力をふるっていたとは思いませんでしたわ……。どこまでも最低な人間だったのですね……」
その言葉に救われる。昨日プレミアにも話をした時も同じような反応だった。本当に優しい母娘だ。
「セリンも魔王と戦った時は16歳だったんだろう? 14歳でパーティに合流して、若くて当時話題になっていた」
「そうですわね。リールがパーティから離脱してすぐに呼ばれて、魔王と戦ったのは今のプレミアと同じ16歳。時が経つのは早いものですわ」
そんな話をしながら歩いていると、見覚えがある広場に出た。この村では一番の大きさを誇る広場で、村のシンボルである噴水がある。
「少し見ていかないか?」
「いいですわよ」
この場所だけ銅像も記念碑もない。観光客の姿は多いが、ほとんど当時のままの姿だった。
「ここでアクトスのパーティと合流したんだ」
「そうなのですね」
セリンは優しく微笑んだ。昔話ばかりしてもいけないと分かっているが、セリンの持つ包容力に甘えてしまいそうになる。絶対に男を駄目にするタイプの女性だ。
ふと、小さな魔力の気配を感じた。
セリンという強大な魔力の持ち主が近くにため感じにくいが、確かにある。綿毛が風に舞うようにフワフワと漂っている。なんだ? 1つ、2つ、どんどん増えている。
これは―――。
異変に気付いた瞬間、近くにいた男の観光客が、突然血を吐き出し倒れた。
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