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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ スタンピード編 ~

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仕事、任されました!

「ちょっと手伝って欲しいことがあるんだが……」


 午後から絵を描こうと思っていたが、コックさん……もとい、九十九が迷いながらそう切り出す。


「え? 分かった」


 九十九からの手伝い要請!

 これは何を置いてもやらないとね?


「良いのか?」

「うん。絵を描くのは、雄也が帰ってからでも描けるしね」


 絵は趣味だ。

 彼らのような仕事ではない。


 それなら、優先すべきなのは当然だろう。


「それで? わたしは何をすれば良いの?」


 九十九の役に立てるなら嬉しい。

 特に最近は、ほとんど何もやってないからね。


 仕事を任されるのは望むところなのです!


 わたしが気合十分! ……の姿勢で待っていると……。


「兄貴から魔法の使用許可が下りた」

「おお、そっか~」


 祝・魔法解禁! だね。


 ここでその発言。

 魔法が関係するなら、どうやら絵を描く系の仕事ではないらしい。


 そうなると……。


「九十九がわざわざわたしに頼むってことは、『識別』かな?」


 この可能性が一番高い。

 有能な九十九に唯一できないことだもんね。


「話が早くて助かる」


 九十九が少しだけホッとした顔をする。


「それぐらいしか、わたしは、九十九に勝るものがないからね」


 でも九十九のことだから、いつか使えるようになると思うんだよ。


 彼はそんな能力がなくても、いろいろな動植物や鉱物、それ以外の様々な物を見極める目を持っている。


 何でも鑑定眼みたいな?

 それと比べると、わたしの識別はどちらかというと、反則な感じがしてしまうのだ。


「それで? わたしは何を視れば良いの?」


 わたしは久しぶりに銀色の拡大鏡(ルーペ)を取り出す。

 九十九から貰ったコレで視れば、分からないものなどないのだ!!


 流石、「識別」能力!

 ゲームの知識万歳!!


 ゲームといえば、鑑定みたいな魔法もあったよね。

 敵単体の固有情報を調べる魔法だった気がする。


 でも、あれはわたしの「識別」のようなものだから、鑑定よりも解析の方が近いかな?


 ―――― 鑑定と識別は違う


 いつか、目の前にいるコックさん……違う、護衛が言った。


 鑑定は、その領域における専門家が、様々な分析に基づいて行う評価や判別すること。

 識別は、特徴を見極め、物事の種類や性質などを見分けること。


 ……だっけ?


 経験による勘が伴うのが鑑定で、それ以外の手段が識別だったとわたしは結論付けた気がする。


 そうなると……九十九に合うのって……識別よりも鑑定なのでは?


 うん。

 識別よりも解析、分析、鑑定の方が、九十九にも雄也さんにも合う気がする。


 特に雄也さんは、解析魔法を極めちゃいそうだよね?

 白衣に眼鏡の雄也さんならば、知力も大幅アップしそうな効果もありそうだ。


「量が多いんだが……大丈夫か?」


 アホなことを考えていると、九十九がわたしを気遣うようにそう言った。


「大丈夫だよ。以前、やったようなことでしょう?」


 あの時、識別した量はいっぱいだった。

 九十九の所有物のほとんど……いや、彼が持っているわたしの私物も含まれていたか。


 あれから四ヶ月経つけれど、そこから多少増えても三年間集めた量ほどはないよね?

 多分、ローダンセに行ってから手に入れたモノがほとんどだと思う。


「あの時ほど量はない」

「それなら大丈夫だと思う」


 以前、識別した時は何日もかけて識別したからね。

 いや、それだけ九十九の所有物が多かったのだろうけど。


 主に食材。

 次いで、植物。


 薬師志望の青年は、やはり料理人に限りなく近いと思う。


「ただ……精神的に負担はあるかもしれない」

「精神的な負担?」


 はて?

 どういうことでしょうか?


 魔法力や体力ではなく、精神的な負担?


「魔獣の素材を識別して欲しい」

「おおう」


 確かにローダンセに行ってから手に入れたモノであることは間違いないだろう。

 魔獣の素材……つまりは魔獣の一部である。


「えっと……それは臓物とかそういったモノもあるかな?」

「ソレは流石にさせねえよ」


 この口ぶりから識別させる気はないけど、持ってはいるらしい。


 まあ、人間界でも熊の胆嚢とか薬になるらしいしね。

熊胆(ゆうたん)だっけ?


 ちょっと可愛い名前だったから憶えていた。


「そうなると……皮とか、爪、角……肉?」


 なんとなく、食材として出されそうな気がした。

 いや、九十九のことだから、処理して肉以外のモノには見えない状態で出されるだろうけど。


「それ以外だと骨や羽、(から)だな」


 羽や殻はともかく、骨もあるのか。

 わざわざ肉を削ぎ落とすのだろうか?


 そうなると……。


「神経なんかは?」

「神経を引き抜くことは考えたこともねえな」


 骨も相当だと思うけれど、確かに神経を抜き取る侍女(ヴァルナ)さんの姿は絵面が酷い気がした。


「手や足は?」

「あるけど、きつくねえか?」


 あるのか。

 でも、確かにいきなり魔獣の足をどんっと出されてもきついかもしれない。


「少しずつ慣らそうか。まずは、大丈夫そうな部位からお願いします」

「気分が悪くなったら言えよ? 処理はしているけど、匂いは少なからずあるからな」

「分かった」


 そう言って出されたのは……細長く金色の……何? 

 ぶっとい釘?


「これ、何?」

紅毛馬魔獣(ケルネアン)と呼ばれる魔獣の角だな。紅い毛皮に金色の五本角が特徴の魔獣だ」

「角、邪魔そうだね」


 髪の毛がボンバー! ……って話でもないだろう。

 でも……綺麗だ。

 キラキラしている。


 そんなわけで……。


「識別」


 久しぶりの識別開始。

 拡大鏡(ルーペ)を通して視える青い吹き出しのようなモノに書かれた白い文字を読み始める。


「ケルネアンの第三の角。生え変わって三週間経った後に根元から切られた。疲労回復、魔法力回復、血流促進、勃起補助効果」


 そして、何も考えずに読み上げると……メモを取っていた九十九が突然、頭を抱えた。


 はて?

 わたしの識別は、浮かび上がって読んだ言葉を覚えていられない性質がある。


 一度、目に映った吹き出しの文字を口にし始めると、まるで識別能力の一部になったかのように、視えている文字を読み上げるだけの機械になるのだ。


 何度か、それを止めようとしても止まらなかったから、これがわたしの識別能力なのだろう。


「悪い。後半の効能は知らなかった」

「ぬ? 何の効果があったの?」

「……お前には必要のない効果だ」


 はて?

 でも、九十九が頭を抱えたのなら、彼にとって口にしにくい効果があったということだろう。


 媚薬系かな?

 それならば、確かにわたしには不要だ。


「一つ確認するが、お前は前と同じように、識別結果は頭に残っていないんだよな?」

「うん。今回も残らなかったね」


 そして、表示されている文字を見ていると読み上げたくなるのだ。

 書かれている文字に誘われると言うか……。


 そして、何度読んでも記憶に残らない。

 本当に不思議な能力である。


「栞の頭に残らなくて良かった」

「ふ?」

「高く売れるのは見た目だけじゃなかったのか」


 どうやら、わたしが知らない方が良い効能らしい。


 それなら、知らないままでいよう。

 好奇心は身を滅ぼすのだ。


「それなら、次に行くぞ」

「らじゃ」


 次々に九十九によって、出される魔獣の一部と思われるモノたちを識別していく。

 そのたびに、彼はスクワットのようにしゃがんだり立ったりを繰り返した。


 それも結構な頻度である。


 たまに九十九がびっくりして再確認するものもあるので、彼が知らない効果を持つ魔獣の素材は結構多いようだ。


「魔獣についてはやはり勉強不足だってことだな」

「いやいやいや、名前が一致しているんだから十分でしょう」


 少なくとも、一度も名前を外していないことだけは分かる。

 それだけで、彼がウォルダンテ大陸にいる魔獣について勉強しているということだろう。


「だが、ここからは名前が一致するかが分からない」

「ほへ?」


 九十九の顔が険しいものになっている。


「これまで出した魔獣の素材は、ローダンセに来て魔獣退治を始めたばかりの頃、水尾(ルカ)さんと退治した魔獣が中心だった」

「ここからは違うってことだね?」

「そうなるな」


 そして、始めに出された金色の釘のようなモノにそっくりな素材を取り出す。


「ここからは、ロットベルク家第二子息に同行して出会った魔獣。恐らくは、集団熱(s t a m)狂暴走(p e d e)の影響下にある魔獣から取った素材ばかりとなる」


 その言葉にわたしはゴクリと唾を呑み込む。


 わたしはこれまでローダンセの集団熱狂暴走(すたんぴーど)とは全く関係ない場所にいた。

 その一部に触れることになるのだ。


 改めて、その素材を見る。


 金色の釘のようなモノは……最初に見たモノよりも少しだけその色が薄い気がするが、それは個体差かもしれない。


「どんな影響が出るか分からない。それでも、識別してくれるか?」

「うん」

「奇妙な変化があったら、()めさせるからな」

「お願いします」


 識別している時のわたしは普通ではない。

 それなら、客観的に見ている九十九に判断を任せた方が良い。


「行きます! 『識別』」

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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