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異世界で人生を紡ぎたい  作者: も~じゅー
村での生活
37/41

パーティランクD、冒険者の戦い

 低い唸り声をしたアカクイドリは、石を投げた片手剣の男に向かう。


 片手剣の男は剣で捌いて、切り裂いてと、上手く鳥の群れを躱している。


 ローブの魔術師は魔石の付いた杖を持って何やら詠唱しているようだ。

 魔術師は魔石の付いた杖で魔法を補助することが出来る。例えば、同じ<火球>の魔法を使ったとしたら、杖を使った方が安定感が増し、結果威力も安定して高威力を持つ。魔物が近くにいるときなど焦って、魔法を失敗することも減るので、近接戦闘をしない戦士は大抵持っている。


 片手剣の男に攻撃をしたアカクイドリはまた上空へと舞い上がり旋回することで速度を上げている。


「ねぇ、アルちゃん。どうしてあの盾を持っている人は戦わないんだろう? 分かる?」

「……いえ」


 それはツムギも気にかかったことだ。


「単に実力が低いからだろ。魔物じゃないからって油断したんじゃねーか? どんな獣か調べもせず依頼を受けてる可能性もある」

「そんな事ないでしょう。冒険者は戦いのプロなんだから」

「今回きた冒険者はパーティでランクがDなんだろ? 雑魚に決まってる」


 メードルが冒険者ギルドの仕組みを話した。

 冒険者ギルドにランクDの個人とパーティが居るとする。個人は一人でランクDを持っていて一人前と言われるが、パーティでランクDだと、パーティ全員の能力あわせて一人前というわけだ。

 つまり、今回来たランクDの冒険者パーティは、三人で1人前と認められたというわけだ。


 つまり、


「今回来ている三人は、三人でようやく一人前の雑魚集団だ」

「はあ、相変わらず口悪いけど、それって不味くない……? アルちゃん……あの人凄い出血してる気がするんだけど」

「そうですね……。でも、次の突撃で決まると思いますよ」


 最初に攻撃した剣士はズタボロになっていた。


 アカクイドリの低い鳴き声……。突撃の合図だ。

 ズタボロの剣士が構え、迎撃しようとした前面に二メートルくらいありそうな水の球体が出現した。

 アカクイドリの飛んでくるスピードは速くて脅威だが、急に曲がることは出来ない。

 水の球体にアカクイドリが飛び込む。ここまで届いてくるような入水の音。反対側から出てきた頃には、鳥は失速していた。

 そこにズタボロの剣士は鳥の首を撥ね、命を奪う。


 首を撥ねられたアカクイドリは、胴体側から血を噴射させながら絶命した。


 それを見た盾を装備した剣士も慌てて近寄り、同じようにアカクイドリの首を撥ねていった。


「ね、アル君」

「なんですか」

「あの魔術師の人が魔法を発動するってわかったの……ね?」

「はい、<魔力視>を使いましたから」

「え! アルちゃん、あの魔法を成功させたの!?」


 無属性中級補助系統魔法<魔力視>

 ツムギは一度に使える魔力の量が限られている。そんな彼は、中級魔法の中でも消費量が多いこの魔法を使えなかった。


「はい。片目に限定して使ったら、出来るようになりました」

「また差を作られた……!」


 なので、普通は両目に使うところを片目に限定したのだ。


 雑談に花を咲かせていると、冒険者パーティ【ウェスタンホープ】の面々が近くにやって来た。


「くそっ! 体中痛え! ここまでいくと笑えてくるな」

「自分が弱すぎてか?」

「あぁ? んだと、全然加勢してこなかった奴が!」

「パーティメンバーのお前を信頼していただけだ」

「おい! 俺の目を見て言え!」

「ハハハ、そんだけ喚けるなら心配は不要そうだな!」

「お前も! 魔法を使うの遅すぎだろ! 死ぬかと思ったわ! 最後は助けてくれてサンキューコノヤロォ!」


 なんだか、仲が良さそうな冒険者パーティだな。とツムギは微笑む。


「あー、と、そこの人、どこかに治療院はないか」


 魔術師の男が近くの村人に尋ねた。

 治療院は地球でいう病院と同じだ。回復魔法を使える人や、薬草がありそれを使って施術する施設。

 村人は村の西側にあると説明した。


「そうか、ありがとう」

「いや、治療院はイイって! この程度の傷、甜めときゃ治るっ……つっ」

「今は戦いに高揚して痛みを感じ辛いだけだ。安静にしてろ」


 魔術師の男がリーダーだろうか。ツムギはなんとなくそんな気がした。


 メードルはそれを眺めて、踵を返す。


「つまんねぇ」

「ちょっと、あなたはもう見ないの?」

「想像以上に弱すぎてな」

「ふーん、あなたよりは強いだろうけどね」

「ねぇよ。あんな無様な戦いしねぇし」

「アルちゃんに嫌がらせして、ことごとく失敗してる人のセリフには思えないね」


(ね、って同意を求められても……)


 リーネはメードルに対し、だいぶ鬱憤が溜まっているみたいだ。

 ツムギは苦笑いをした。


 しかし、大きな声で喋ったのは不味かったようだ。


「あぁ? おい、そこのガキ……今なんて言った」

「はい、カストロ、落ち着いて。弱いのは本当の事だし相手は子供だぞ」

「そうそう」


 大きめの剣士はカストロというらしい。

 かれは喧嘩っ早いのだろう。

 そんな彼をメードルは煽った。


「弱すぎてつまらねぇって言ったんだ」

「ああっ!?」

「三人でランクD程度なんだろ? しかも、見た感じパーティランクDの中でも弱い部類だろ」

「ぐぐぐ、このガキィ……! ケチョンケチョンにしてぇー!」

「よせ、手は出すなよ」


「あーあ、村長も馬鹿だな。金の無駄遣いだろ」

「あの、言い過ぎだと思います」

「悪魔の子供は黙ってろよ」

「さっきまで普通に話してたのに、なんでまたアルちゃんのことそう言って貶すの!」

「うるせぇな、気分だよ。気分」

「気分で虐めるなんて最低よ!」


 あっちで争いが起こったと思ったら、こっちで争いがおこる。

 それに魔術師の男が割って入った。


「ハイハイ、そこまで! いやぁ、コイツが済まなかったね! 君たちまで喧嘩する必要はないぞ」


 メードルは鼻を鳴らして、村の中心部の方に去っていった。


「アアア! アイツ腹立つ!」

「ほーら、どうどう」

「傷だらけのお前だけじゃなく、ノーダメージで乗り切った俺達も悪く言われたんだからな」

「コイツも大概腹立つ!」


 傷だらけの剣士は、盾を持つ剣士の尻に蹴りを入れようとしたが、盾を持つ剣士は逃げて空振りに終わった。


「逃げんなっ!」

「やだ」


 そんな騒ぎの横でツムギは頭を下げた。


「騒ぎを鎮めて下さり、ありがとうございます」

「ん、ああ。気にするな」


 苦笑した魔術師。


「あの、これから治療院に行くのですか?」

「まあ、出来るだけ万全な状態で戦闘に臨みたいからな」

「……僕が治しましょうか?」

「え?」

「回復魔法は使えますよ。初級までですけど」


 ツムギは疑念の目を向けられる。

 回復魔法は、光属性の魔力を持つ必要がある。光属性自体はそこまで珍しいものではないが、回復魔法は他の魔法より難易度が高い。

 魔力の維持が難しいのだ。


「本当に使えるのかい?」

「はい。……って、それより、カストロさん? はあんなに動いて大丈夫なんですか?」

「ハハハ、確かに安静にしてろっていったのにな。聞きやしないな」


 魔術師の男は「ハイハイ、そこまで」と止めに行く。

 大変そうだなと思った。


 魔術師の男が喧嘩を止めた後、この子が傷を治してくれるらしいと、カストロに説明した。小声で「女の子はごっこ遊びが好きって言うだろう? 付き合ってやれ」と付け足して。

「そんなの依頼に含まれてないだろ」とカストロは言ったが、仕方ねぇ、とやることにした。


「先生ぃ……。体が痛いんすよ。どうにかしてくれぇ!」

(ど、どうしたんだろう。急に)


 ままごとに付き合うと決めたカストロの演技に戸惑うツムギ。


「ね、あの人、頭もつつかれたのかな……ね?」

「そっか。それで、おかしくなっちゃったのかも?」


 コソコソとノナとリーネも話した。


「はい。それではまず血を洗い流しますね <洗浄>」


 水属性初級補助系統魔法<洗浄>

 体や服だけではなく、埃を被った物も洗い流してくれる魔法だ。

 汚れた水は、魔法を解除すると消える。


「!?」

「ん? 無詠唱!?」

「……あれ? 俺は夢を見ているのか……?」


 魔術師は頬をつねった。


「痛い」


 どうやら現実のようだ。


「それでは傷を癒していきますね。<癒しの光>」


 始めは体全体に魔法を薄くかけて、その反応で傷の場所を探り当てる。

 傷の場所を把握したら酷いところから重点的に癒していく。

 そして、ーー


「終わりました」


 傷はなくなる。


「ウォー! 速ぇ! すげぇな、お前!」

「ちゃんと治っていますか?」

「ああ! 万全も万全! 調子いいぜ!」


「あれ? もしかして、俺より優秀……?」


 その様子を見守る魔術師が唖然と呟いた。


「もしかしてもなにも、一目瞭然だな」


 盾を持つ剣士は同意を示した。


「いや~、最初はおままごとに巻き込まれたのかと思ったぜ! あいつが、女の子はごっこ遊びが好きだから付き合ってやれ。って言っていたからな!」

「え……」


 リーネはそれを聞いて、くすりと笑った。


「やっぱりアルちゃんは女の子だよね。多少、髪を切ったって」

「……そう見えるよ……ね」


「ぼ、僕は女の子じゃありません……! ……多分」


 最近、性別を間違われ過ぎて、男だと断言する自信がなくなってきたツムギであった。

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