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異世界で人生を紡ぎたい  作者: も~じゅー
村での生活
36/41

冒険者

 学習塾の裏には、小さいスペースがある。

 そこにツムギはいた。


 座り込んで地面の土を手で掘りよかして、穴を大きくしていく。


「ね、何をしているの……ね」


 地面に穴を掘り始めたツムギに、追いかけてきたノナが質問する。


「……虫達のお墓を作っています」

「お墓……ね。……アル君が殺したわけじゃないし、そこまでする必要ないよ……ね?」

「する必要がある……ではなくて、僕が作りたいだけなんです」

(それに、僕が殺したようなものだから)


 この虫たちは、メードルが自分に嫌がらせしようとしたから殺された。自分がいなければ、殺されることはなかったかもしれないのに。災害や、食物連鎖の中で捕食されたわけではなくて、ただ、無慈悲に必要もなく殺された。

 それはメードルが悪いのだろうか。いや、本当はいるはずのない場所に生きている自分が悪いのだ。


 殺した要因は自分のせいだと、ツムギは結論付けていた。


 地面に掘った穴が虫達の入るくらいの大きさに出来たので、虫を入れる。

 入れているときに一匹、コオロギのような虫が蠢いた。


「っ! <癒しの光> 」

(まだ、生きている!)


 光属性下級補助系統魔法<癒しの光>

 火、水、土、光の四属性を適正に持つネールの魔力に変化させたら、使うことが出来る魔法。

 人間なら切り傷や擦り傷の軽いものを治すくらいしか効果がないが、人より小さい虫なら効果的面だった。

 コオロギのような虫はツムギが魔法をかけると、元気になった。


 それを見て、よかったとツムギは胸を撫で下ろした。


 その後、死んでしまっている虫を埋め、懺悔するように手を合わせる。

 それから、ノナと少し遅れてやってきたリーネに、少し森の入り口に行ってくると言って、引き止める隙も与えずツムギは駆け出した。


 森に行きコオロギ(?)を放したあと、学習塾に戻る。

 時間はギリギリだったが、授業時間には間に合った。そのことに胸を撫で下ろし、その後つつがなく授業を終えた。


 学習塾は午前中で終わる。

 そこにある本を読むために残ることも可能だが、リーン村の子供達は遊ぶなり、家に帰り家業を手伝うなりする人が多い。


 ツムギは一度帰った後、森へ生き物を殺す練習をするのだと、リーネとノナに別れを告げた。

 リーネは「狩りの練習って言葉を使った方がいい」と言っていたが、狩りの技能というより命を奪う経験を積もうとしているので、狩りの練習とはニュアンスが少し違う気がしたのだ。


 家に戻り、短剣と弓と矢を背負い森へ行く。


 しかし、やはりその日も何の成果もなかった。


 救世暦3990年10月1日。

 冒険者ギルドからアカクイドリ討伐の為に、パーティランクDの冒険者達がやってきた。

 ランクDと言ってもどのくらいの強さかツムギはいまいちピンと来なかったが、一人前の冒険者と言われるくらいの強さらしい。学習塾でそう話しているのを聞いた。


 その冒険者パーティ【ウェスタンホープ】は男三人で、二人が剣を主体で操り、もう一人か魔法主体だ。前衛二人、後衛一人のパーティだった。


 学習塾から家へ戻り、ツムギは噂の冒険者三人を見に行く。


「へー、あの三人が噂の冒険者なんだね」


 リーネが興味深そうに呟いた。


「そうみたいですね」

「ね」


 今日はリーネが野次馬根性で、一緒に戦うところを見ようと学習塾でツムギは誘われたのだ。

 なかなか獲物を狩れないツムギも、ヒントを見つけに頷き見に行くことにした。ノナも一緒だ。


「あ、剣構えた。そろそろ戦うのかな」

「そうですね。……大丈夫でしょうか」


 周りにアカクイドリが沢山いるから、今戦うのは不利になる。

 片手剣の1番大きな男が剣を構えた。

 と、思ったらしゃがんで石を持ち、思いっきり投げた。


「え? 剣で戦うんじゃないの?」


 アカクイドリの数はツムギが視認出来るだけでも14羽いる。飛んでいるもの9羽に果実を狙おうとしたもの5羽。

 果物を狙っていた1羽にあたり、その一羽は意表を突かれ地に落ちた。


 リーネの疑問に反応した声があった。


「違うだろ。ああやって1体1体狙って、果樹から遠ざけてから戦うんだ。冒険者は依頼人の要望に応えて仕事をするもんだ。今回は大方、果樹を傷つけずに倒してくれ、って村長に依頼されたんだろ。……そんなことも分からないのか?」

「知らないよ……冒険者の事情なんて。それよりなんであなたがここにいるの?」

「俺は将来ランクSの冒険者になる男だからな。どんな冒険者が来るのか見学だ。ま、やっぱ簡単に討伐出来る鳥如きに、強い冒険者はこないな」


 メードルもこの冒険者を見ようと来ていたらしい。他にも何人か見に来ている大人や子供がいる。メードルは眉を顰めながら話した。


「村の大人共にあの鳥を刺激するなって言われたが、あんなの俺でも狩れる」

「ふーん。そういう慢心してる人が、凄い冒険者になれるとは思わないけど」


 リーネはツムギを虐めるメードルを嫌っているので、刺のある言い方でボソッと呟いた。


「いってろ」


 ーー地に落ちたと思われた鳥は、空中で体制を整え石を投げた冒険者を見る。すると、キュイキュイっと鳴いた。


「アカクイドリは仲間意識が強いんです」

「そうなの? アルちゃん?」

「はい。今の鳴き声は……」


 鳴き声を上げたアカクイドリに仲間が集まってきた。


「攻撃を受けた鳥が他の鳥に知らせて、仲間を呼ぶときの鳴き声です」


 攻撃を受けたアカクイドリが速度を早めて上空へ飛んで何度も旋回する。


 見れば石を投げた大きな男は片手剣を構え、もう一人は魔術師らしいローブの男を守るように立つ。

 石を投げた男は盾を装備していないが、魔術師を守る男は大き目な盾を装備している。


(アカクイドリの性質的に、盾を持った人が石を投げた方が良かったんじゃ……)


 アカクイドリの性質を思い出しながらツムギは思った。


ーーーーー


『アカクイドリの習性が知りたい?』


 ツムギが獲物を狩れなくて思い悩んでいるとき、もしも、この課題が出来ずに耐えきれなくなって村を出るときの為に、生存率を上げるために危険な動物の習性でも分かれば少しは違うんじゃないかとおもい聞いたのだ。

 レイドには、少しでも弱点を知りたくて……と聞いた。


『うーん、アイツらは仲間意識が強くて、1羽が攻撃されると、周りにいた鳥を高い鳴き声で呼んで、攻撃した相手に襲いかかる癖があるんだ。だから、もしアカクイドリを狩ろうと思うなら、1羽でいるタイミングで仲間を呼ぶ隙を与えず仕留める。これが基本な』

『もしも、仕留められずに沢山の仲間を呼ばれたらどうするんですか?』

『逃げる』

『逃げる……ですか?』

『ああ。一斉のアカクイドリに狙われたら逃げられない、と思うかもしれないが、アイツらは一つの塊になって攻撃してくるんだ。同じタイミングに同じ方向から襲いかかるし、襲いかかるとき低い唸り声で鳴くから攻撃される瞬間もわかる。だから、意外に逃げやすい。まあ、実際に相対したら足が竦むこともあるが……』

『そうですか。……沢山狩ることが目的だったらどうするのですか?』

『一人で狩るのか、複数人で狩るのかで変わるが、一人で狩る場合は、丈夫な盾を用意する。そして、相対したら攻撃を加え相手を引き付て、盾を構える。すると、後続から来たアカクイドリの嘴が最初に襲いかかるアカクイドリに刺さって、自滅するんだ。それを何回か繰り返すと全体の鳥が傷付いて動きが鈍る。そこですかさずトドメを刺す。盾はボロボロになるけどな。複数人で戦う場合は、一人が引き付け、他の人が引きつけ役に攻撃してくるアカクイドリを狙う。このときは、やっぱり引きつけるときは動き回らないでやるといいぞ』

『他の人に攻撃をしないんですか?』

『アカクイドリは最初に攻撃した対象を周到に狙う習性があるんだ。引きつけ役が倒れると次に攻撃した奴を狙うけどな』

『……参考になりました。教えてくださってありがとうございます』

『……アルドーがどう思っていようが、俺はお前の父親だからな』

『そう……ですか』


ーーーーー


「そして、次に低く鳴くときが襲いかかるタイミングです」

「そうなんだ……ね」


 グギュゥゥ……と鳴き声が聞こえると旋回していた鳥が、剣を構えた冒険者に襲いかかる。


「あ、本当だ。アルちゃん物知りだね」

「たまたま少し前に聞いただけです」

(……なんか、いつもより嬉しそう)


 いつも浮かべているツムギの笑みより、傍から見たリーネは嬉しそうに感じられた。


「それは、お前を拾ったあの男から聞いたのか」

「はい」

「フン、そうかよ」


 ツムギの嬉しそうな表情に反比例したように、メードルは不機嫌になった。


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