第8話 【完全ざまぁ】俺を追放した勇者パーティーがボロボロの姿で泣きついてきた。今更「戻ってこい」と言われても、王女と女騎士に溺愛されて忙しいので冷酷に切り捨てます
「アレン様、あーん♡」
「ずるいぞシルフィア! アレン様、私がお手製で作ったこちらのマカロンも是非!」
辺境都市ファルマスにある俺の広大な邸宅(ログハウスから大豪邸へと勝手に増築された)の、美しく手入れされた庭園。
俺はふかふかの特注ソファに寝そべりながら、右からはエルフの王女シルフィアに、左からは王国最強の女騎士クレアに、交互にお菓子を口に運んでもらうという、極上のティータイムを満喫していた。
SSSランクのダンジョンを消滅させて以来、俺の扱いはもはや「神」を通り越して「創造主」レベルになっており、毎日が信じられないほど平和で、そして甘やかされる日々だった。
「ん、美味しい。二人とも料理の腕が上がったな」
「「あっ……アレン様に褒められましたわ(ぞ)……!!」」
二人の絶世の美女が顔を真っ赤にして身悶えていると、庭園の入り口付近から、何やらひどく騒々しい声と、鼻をつく強烈な異臭が漂ってきた。
「おい! 通せ! 俺たちはアレンの幼馴染にして、かつての仲間だぞ!!」
「そうよ! こんなドブ臭い服のまま歩かせる気!? さっさとアレンの所へ案内しなさい!」
屋敷を警備している領主軍の兵士たちに押し留められながら、ギャーギャーとわめいている三人組。
ヘドロと汚物にまみれたボロボロの服を着て、髪は鳥の巣のようにボサボサ、頬は痩せこけ、まるで路地裏の浮浪者のような惨めな姿。
「……あれ? あの声、どこかで……」
俺が不思議に思って立ち上がると、侵入者たちは兵士の隙を突いて庭園へと雪崩れ込んできた。
そして、俺の姿を見るなり、狂気じみた笑みを浮かべた。
「ア、アレン……! 探したぞ、アレン!!」
「ザック? それに、マリアとルミナか……?」
なんと、それは俺をパーティーから「無能」と見下して追放した、元Sランク勇者パーティー【白銀の剣】の三人だった。
しかし、かつての豪華な装備や威厳など微塵もなく、その姿からは底辺の生活で這いつくばってきたドロドロの悪臭しかしない。
「おいアレン! お前、こんなとこで何やってるんだよ! 探したんだぞ! まさかお前があの『神の御使い』だったなんてな! 水臭いじゃないか、俺たちに黙ってるなんてよぉ!」
ザックは馴れ馴れしく俺の肩に触れようと手を伸ばしてきた。
しかし、その手が俺に触れる直前。
「……気安くアレン様に近づくな、汚物」
ドンッ!!!
シルフィアが冷酷な声と共に魔力を放ち、ザックの体を数メートル後方へ弾き飛ばした。
さらに、クレアが腰の魔剣に手をかけ、絶対零度の殺気を三人に向ける。
「アレン様の御前に、そのような悪臭を放つゴミが立ち入る許可を誰が出した? その薄汚い口を今すぐ縫い合わせ、首を刎ねてやろうか」
二人の圧倒的な強者のプレッシャーに、マリアとルミナは「ヒッ!?」と悲鳴を上げて腰を抜かした。
弾き飛ばされたザックも、ガタガタと震えながら俺を縋るように見上げてくる。
「ア、アレン……! なんだよこいつら、お前の女か!? なぁ、お前からも言ってやってくれよ! 俺たちは最強のパーティーだろ!?」
「パーティー……?」
俺は冷めた目で彼らを見下ろした。
「おいおい、冗談だろ? お前、俺のこと無能な雑用係って言って、王都の宿屋で追放したじゃないか」
「そ、それは……! ほら、あれだ! お前の実力を試すための、ちょっとした試練というか、冗談だったんだよ! そうだろ、マリア、ルミナ!」
ザックの必死の言い訳に、二人の女も慌てて同調する。
「そ、そうよ! アレンがいないと、私たちのご飯を作る人がいなくて困ってたのよ! だから、特別に許してあげるわ! 私たちのパーティーに戻ることをね!」
「ええ、アレンさんが土下座して謝るなら、また荷物持ちとして雇ってあげてもよろしくてよ!?」
……どうやらこの連中は、自分たちが置かれている状況を全く理解していないらしい。
Sランクから転落し、借金取りに追われ、下水掃除で食いつなぐ中で、完全に精神が壊れてしまっているようだ。「アレンはまだ自分たちのことが好きで、戻りたがっている」という都合の良い妄想にすがりついている。
「アレン! お前のそのチートスキルで、また俺たちの武器を最強にしてくれ! そして、この豪邸も、その女たちも、全部俺たちで共有しようぜ! お前はまた、後ろで俺たちのサポートをしてくれればいいんだ! なぁ!?」
ザックが狂ったように笑いながら、再び俺に手を伸ばしてきた。
その身勝手極まりない言葉に、シルフィアとクレアの怒りがついに頂点に達し、空気が文字通り震え始めた。
だが、二人が手を下す前に、俺は静かに、そして冷酷に言い放った。
「断る。お前らみたいなの、もう必要ないから」
ピタリ、と。
ザックたちの笑顔が凍りついた。
「え……? ア、アレン……? お前、俺たちがいなきゃ……」
「俺はお前らがいなくても、最高の毎日を送ってるよ。それに、今の俺にはシルフィアやクレアっていう、本当に大切にしてくれる人たちがいる。お前らみたいに、俺を利用して、用が済んだらゴミみたいに捨てるような連中のサポートをする義理なんて、どこにもないんだよ」
俺の言葉は、彼らにとって死刑宣告も同然だった。
都合の良い妄想を打ち砕かれ、圧倒的な現実を突きつけられた三人の顔から、スッと血の気が引いていく。
「そ、そんな……! 嘘だろ!? アレン、お前がいなきゃ俺たちは、またあの暗くて臭い下水道で一生ヘドロをすするしかないんだぞ!? 助けてくれよ!! 俺たちは幼馴染だろぉぉぉっ!?」
「アレン! ごめんなさい、私が悪かったわ! あなたの足でも舐めるから、私をこの屋敷に置いてぇぇっ!!」
「嫌ですわ! 私は聖女なのに! なんでこんな底辺にぃぃぃっ!!」
泣き叫び、地面に頭をこすりつけて命乞いをする元勇者たち。
かつての傲慢さは見る影もなく、ただ見苦しく鼻水と涙を流すだけの哀れな存在に成り下がっていた。
「……連れて行け」
クレアが冷酷に命じると、待機していた領主軍の兵士たちが、汚物を扱うように三人を取り押さえた。
「離せぇぇっ! アレン! アレェェェェェンッ!!!」
彼らの絶叫は、兵士たちに引きずられていくにつれて遠ざかり、やがて完全に聞こえなくなった。
後日アルベルトから聞いた話によると、神の御使いである俺に不敬を働いた罪により、彼らは国家反逆罪に等しい扱いを受け、二度と太陽の光が届かない地下深くの魔石鉱山へと「終身強制労働」に送られたらしい。もう二度と、俺の前に姿を現すことはないだろう。
「……空気が汚れましたね。アレン様、お口直しに私の淹れた紅茶をどうぞ」
「アレン様のお心を煩わせるようなゴミは、全て私が斬り捨てますからね」
二人の美女が、心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「ありがとう。でも、全然気にしてないよ。むしろ、完全に吹っ切れたって感じかな」
俺はシルフィアの淹れた最高級の紅茶を飲みながら、澄み渡る青空を見上げた。
俺を虐げていた過去の鎖は、これで完全に断ち切られた。
これからはもう、誰に遠慮することもなく、この優しくて可愛いヒロインたちと共に、自分のためだけにこの規格外の力を使って幸せに生きていこう。
そう心に誓った、最高に気分の良い午後だった。




