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第7話 国境を越えて現れた超巨大ダンジョン。世界の危機らしいけど、邪魔な山を【創造】で消し飛ばして、最下層まで最短ルートでピクニックしてきました

王国最強の女騎士クレアが仲間(居候)に加わってから数日。

俺のログハウスは、以前にも増して賑やか……というか、騒がしくなっていた。

「アレン様、本日の朝食は私が森で仕留めてきたギガントボアの香草焼きですわ! さぁ、あーん!」

「甘いなシルフィア! アレン様のような気高き御方には、私が朝比一で汲んできた霊峰の清水で淹れた至高のコーヒーこそが相応しい!」

朝からシルフィアとクレアによる、俺への「お世話」バトルの勃発である。

エルフの王女と王国騎士団長が、エプロン姿で俺の口元にスプーンやカップを突き出してくる光景は、端から見れば天国かもしれないが、当事者としては結構なプレッシャーだ。

「え、あー、二人ともありがとう。自分で食べるから大丈夫だよ」

俺が苦笑いしながら朝食を済ませた、その時だった。

ログハウスの結界(以前張った虫除けの強化版)を、血相を変えて叩く人物がいた。

「アレン様! アレン様ぁぁぁっ!! 大変です、世界の危機です!!」

転がり込んできたのは、もはやお馴染みとなった領主のアルベルトだ。今日の彼はいつも以上に顔が青ざめ、ガタガタと震えている。

「どうしたんですか、アルベルトさん。落ち着いてください」

「落ち着いてなどいられません! 国境沿いの山脈に、突如として前代未聞の超巨大ダンジョンが出現いたしました! ギルドの調査によれば、SSSランク指定の厄災級、放置すれば大陸全土を魔物が埋め尽くす『魔界の門』だとか……!」

「SSSランク……?」

俺は首を傾げた。Sの上が三つ? なんだか、ソシャゲのレアリティみたいだな。

「現在、王国の全戦力を結集して事態に当たっていますが、入り口を固めるだけで精一杯。他国からも『我が国の領土だ』と軍勢が押し寄せ、小競り合いが始まっています。このままでは戦争に……!」

なるほど、それは面倒なことになっている。

俺としては、この平和なスローライフを邪魔されるのは困る。

「わかりました。ちょっと様子を見てきます」

「本当ですか!? おおお、神の御使い様! よろしくお願いいたします!」

「私も行きます、アレン様! 私の魔法で、有象無象を一掃してご覧に入れますわ!」

「私も同行しよう。私の新しい魔剣(アレン様が研いでくれた剣)の錆びにしてくれる!」

シルフィアとクレアも、やる気満々だ。

まぁ、二人とも強いし、ピクニック気分で連れて行くのも悪くないか。

◇◆◇

アルベルトに案内され、国境付近へとやってきた。

そこには、かつてあった美しい山脈はなく、代わりに大地にぽっかりと開いた、直径数キロメートルはあろうかという漆黒の大穴が存在していた。

大穴からはどす黒い瘴気が噴き出し、周囲の空気を汚染している。

穴の周囲には、王国の兵士や冒険者たちが数万人規模で陣を敷いていたが、皆、恐怖に顔を歪めていた。

さらに、穴を挟んで反対側には、隣国の帝国軍がギラギラとした殺気を放ちながら対峙している。

「チッ、王国の無能共め。さっさと道を空けろ。このダンジョンは我々帝国が管理する!」

「ふざけるな、ここは王国の領土だ! 帝国こそ、軍を引け!」

最前線では、両国の将軍らしき男たちが怒鳴り合っていた。世界の危機だっていうのに、内輪揉めとは、人間ってのは本当に……。

「はぁ……。いちいち話をつけるのも面倒だな」

俺は、大穴の前で言い争う将軍たちの間に、シルフィアとクレアを引き連れて歩いていった。

「なんだ、貴様らは! 邪魔をするな、下がっていろ!」

帝国の将軍が、俺を見て一喝する。

「あー、ごめんなさい。ちょっと急いでるんで、道を空けてもらえます?」

俺が呑気に言うと、帝国の将軍は顔を真っ赤にして剣を抜いた。

「舐めるなよ、若造! 死にたくなければ――」

「アレン様のお言葉が聞こえなかったのですか? 『退け』と言っているのですよ、下等生物」

――ゾクッ。

シルフィアが、冷ややかな魔力を開放した。その瞬間、帝国の将軍は言葉を失い、恐怖にガタガタと震え出した。Sランク冒険者すらひれ伏すエルフ王女の殺気だ。常人なら精神が崩壊してもおかしくない。

「王国の将軍さんも。これ以上揉めるなら、国ごと消し飛ばしますよ?」

クレアが、俺が研いだ魔剣に手をかけながら、静かに告げる。

その圧倒的な強者のオーラに、王国の将軍も青ざめて一歩退いた。

両軍が静まり返る中、俺は大穴を見下ろした。

「うーん、深いな。入り口から地道に降りていくのは時間がかかりそうだ。……よし」

俺は【万物創造】のスキルを使い、イメージを具現化する。

思い浮かべるのは、最下層までの『最短ルート』。

具体的には、この邪魔なダンジョンの構造そのものを、最下層まで貫通する一本の『直通エレベーターシャフト』に作り替えてしまえばいい。

ついでに、溢れ出る瘴気もウザいので、『空気清浄機能付きのガラス管』で覆ってしまおう。

「えいっ」

俺は指先をダンジョンの大穴に向け、魔力を流し込んだ。

――その瞬間。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!

大地が激しく鳴動し、ダンジョンの大穴の周囲にあった山々が、まるで砂のアートのようにサラサラと崩れ去った。

そして、大穴のど真ん中に、直径数百メートル、最下層まで貫通する巨大な透明なガラスの筒が出現したのだ。

瘴気は瞬時に消え去り、ガラス管の中には、外光が差し込む美しい空間が出来上がった。

「…………え?」

王国の数万の軍勢も、帝国の軍勢も、将軍たちも、皆、言葉を失って固まった。

SSSランクの厄災級ダンジョンが、たった一瞬で、巨大な観光施設のようなガラスの塔に変貌してしまったのだ。

「よし、これで最下層まで一気に行けるな。二人とも、行こうか」

「はい、アレン様! 素晴らしい眺めですわ!」

「さすがアレン様だ……。ダンジョンの概念を覆すとは……!」

俺たちは、呆然と立ち尽くす両軍を余所に、自作の直通エレベーター(ガラス管の中を魔力で浮かせて移動する円盤)に乗り込み、最下層へと向かった。

◇◆◇

数分後、俺たちはSSSランクダンジョンの最下層、本来なら伝説の英雄ですら生還不可能な『魔帝の間』に到着した。

そこには、このダンジョンの主である『魔帝シャドウフレア』が、漆黒の玉座に座っていた。

「ククク……。よくぞここまで来た、愚かな人間共よ。我が真の姿を見た瞬間、貴様らは絶望に――」

「【即死デス】」

パチンッ、と。

俺が指を鳴らした瞬間。

――サラサラサラ……。

魔帝シャドウフレアは、断末魔を上げる暇すらなく、塵となって虚空へと消滅した。

後に残されたのは、SSSランクダンジョンのクリア報酬である、山のような金銀財宝と、世界を統べる力を持つという伝説の秘宝『創世の杖』だけだ。

「うーん、SSSランクっていうから期待したんだけど、昨日庭に出たゴキブリの方がまだ歯ごたえがあったな」

「アレン様にとって、世界の危機などその程度のものなのですね! ああっ、なんと尊い……っ!」

「魔帝を指先一つで……。やはり、私はこの御方に一生ついていくと決めて正解だった……!」

シルフィアとクレアが、陶酔しきった表情で俺を崇拝してくる。

「え、俺また何かやっちゃいました?」

俺は山積みの財宝の中から、シルフィアに似合いそうな綺麗なネックレスと、クレアに似合いそうな頑丈な盾を【創造】で少し強化してプレゼントした。

世界の危機をたった数分で解決し、お土産まで手に入れた俺たちは、そのまま自作のエレベーターで地上へと戻り、両軍の前で堂々と完結を宣言した。

こうして、俺の無自覚な規格外っぷりは、二つの大国の軍勢の前で証明され、俺の名前は『世界最強の男』として、大陸全土に轟くことになるのだった。

一方その頃、王都。

下水道の掃除中に、国境のダンジョンが消滅した噂を聞いたザックは、

「アレン……もしあそこにアレンがいたら……いや、あいつは無能だ、そんなはずは……っ!」

と、現実逃避を続けながら、さらに泥だらけの人生を歩んでいた。

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