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第3話 【ざまぁ】俺を追放した勇者パーティーの末路。無敵のバフが切れたことに気づかず、下級魔物相手に全滅の危機に陥る

「チッ、あの無能め。いなくなって清々したぜ」

王都から少し離れた中級ダンジョン『嘆きの洞窟』。

Sランクパーティー【白銀の剣】のリーダーであり、勇者の称号を持つ俺、ザックは、松明の明かりだけが頼りの薄暗い通路を歩きながら悪態をついた。

あの邪魔な雑用係、アレンを追放してから三日が経った。

あいつは戦闘では全く役に立たず、俺たちの後ろでブルブル震えているだけの臆病者だった。使えるスキルといえば、武器にほんの少し耐久度を足すだけの底辺スキル『素材付与』だけ。

俺のような選ばれた天才勇者には、あんな底辺の存在は足枷でしかなかったのだ。

「全くだわ。あいつが淹れる泥水みたいなコーヒーを飲まなくて済むと思うと、肌の調子まで良くなってきた気がするわ」

賢者のマリアが、杖を回しながら軽薄に笑う。

「ええ。それに、報酬を四等分しなくてよくなったのが一番のメリットですわ。私たちの実力なら、Sランクの依頼など三人で十分回せますもの」

聖女のルミナも、美しい金髪を揺らしながら同意した。

そう、俺たちは強い。

これまでどんな凶悪な魔物も、俺の聖剣の一振りで両断し、マリアの魔法で焼き尽くし、ルミナの神聖魔法で一切の傷を負うことなく戦い抜いてきた。

俺たちは選ばれた存在なのだ。あんな雑用係がいなくても、何も変わらない。

「おっ、丁度いい獲物が現れたぜ」

通路の奥から、三匹のオークが姿を現した。

豚の顔に筋骨隆々の肉体を持つ中級魔物だが、俺たち【白銀の剣】からすれば、ただの道端の石ころ同然の雑魚だ。

「おいマリア、ルミナ! ここは俺一人で十分だ。お前らはそこで俺の華麗な剣技でも見てな!」

「ふふっ、油断しないでね、ザック」

「勇者様の雄姿、目に焼き付けておきますわ」

俺は余裕の笑みを浮かべ、腰に帯びた国宝級の聖剣『エクスカリバー・レプリカ』を引き抜いた。

そして、オークの群れに向かって一直線に駆け出し、渾身の力で剣を振り下ろす。

「ハッ! 遅えんだよ、豚共が! これで終わりだぁぁぁっ!」

ガキンッ!!!!

「……は?」

鈍い金属音がダンジョンに響き渡る。

俺の聖剣が、オークの薄汚い棍棒と激突し――あろうことか、刃の真ん中から無惨にへし折れてしまったのだ。

「な、なんだと……!? 国宝級の聖剣が、ただのオークの棍棒に負けただと!?」

俺は折れた剣の柄を握りしめ、呆然と立ち尽くした。

今まで、どんな魔物の硬い皮膚も豆腐のように切り裂いてきたのに。鋼鉄のゴーレムの装甲すら一刀両断してきたのに。

なぜ、こんな下級の棍棒ごときに折られるんだ!?

「グガアアアアッ!」

「ぐおっ!?」

隙を見せた俺の腹に、もう一匹のオークの強烈な蹴りがめり込む。

凄まじい衝撃に内臓が揺れ、俺は数メートル後方に吹き飛ばされ、泥だらけの地面を無様に転がった。

「ガハッ……! い、痛ぇ……! なんだこの痛みは!?」

俺は激痛に顔を歪めた。

おかしい。今までどんな攻撃を受けても、かすり傷一つ負ったことなどなかったのに。まるで見えない鎧に守られているかのように、痛みなど感じたこともなかったのに!

「ザ、ザック!? ちょっと、何遊んでるのよ!」

マリアが慌てて杖を構える。

「燃え盛る業火よ、敵を灰塵に帰せ! 【エクスプロージョン】!」

マリアの杖の先から、巨大な炎の球が放たれる……はずだった。

しかし、杖の先からポッ、と飛び出したのは、ロウソクの火程度の小さな火の粉だけだった。

それはオークの顔に当たって「ジュッ」と小さな音を立てただけで、逆にオークを怒り狂わせてしまった。

「な、なんで!? 私の特大魔法が、こんなチャッカマンみたいに!?」

「マリア! 魔力切れですわ! 貴女、昨日から全く魔力が回復していませんよ!?」

ルミナが悲鳴のような声を上げる。

「魔力切れ!? 馬鹿な、私は一晩寝れば全回復するはずよ!」

「そ、それは……! ひっ!?」

オークたちが、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、マリアとルミナにジリジリと近づいていく。

「ル、ルミナ! 早く回復魔法を! 俺の怪我を治して、強化魔法バフをかけろ!」

「む、無理です! 私の祈りが……神聖魔力が、全く練り上がりません! 体が鉛のように重くて……!」

ルミナもまた、杖を取り落としてその場にへたり込んでしまった。

おかしい。全てがおかしい。

武器は折れ、魔法は発動せず、体力は底を尽きている。

まるで、俺たちの実力が突然、そこら辺の駆け出しのFランク冒険者レベルまで落ちてしまったかのように。

……Fランク?

その時、俺の脳裏に、追い出したあの無能の顔がフラッシュバックした。

『俺のスキルは、武器に耐久度をプラスするだけじゃないんだ』

『毎日の食事には疲労完全回復のエンチャントをかけているし、寝ている間は……』

「ま、まさか……」

俺の顔から、サーッと血の気が引いていくのがわかった。

絶対に折れない聖剣。かすり傷一つ負わない防御力。

無尽蔵に湧き出る魔力。一晩で全回復する体力。

それらは全て、俺たちの実力などではなく――アレンの『素材付与』による、常軌を逸した規格外のバックアップの賜物だったというのか!?

「そんな……嘘だ……! あんな無能の雑用係が、俺たちSランクの強さを支えていただと!? ありえねぇ! 俺は勇者なんだぞぉぉぉっ!!」

俺の絶叫は、薄暗いダンジョンの奥底に虚しく響き渡る。

「グガガガガッ!」

「いやっ! 来ないで! 助けて、ザック!」

「私の綺麗な顔を触らないでぇぇぇっ!!」

迫り来るオークの群れに対し、魔法を撃てない賢者と聖女はただ悲鳴を上げることしかできず、俺は腹の激痛で立ち上がることすらできない。

「く、くそっ……! 逃げるぞ、マリア、ルミナ! 依頼は破棄だ!!」

俺たちは泥と汗にまみれ、無様な姿でダンジョンから逃げ出すしかなかった。

武器もプライドも全て投げ捨てて、命からがら王都へ向かって全力疾走する。

その惨めな姿は、つい三日前まで『王都最強』と謳われていたSランクパーティーの威厳など、微塵も残っていなかった。

「アレン……ッ! くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

俺の血を吐くような後悔の叫びが、虚しく宙に消えていった。

◇◆◇

その頃。

俺、アレンは――。

「アレン様! あーん、してくださいませ! 新鮮な果実を剥いてまいりました!」

「あ、ああ……ありがとう、シルフィア。ん、甘くて美味しいな」

豪華な王都の最高級スイートルームよりもさらに広い、自作の巨大ログハウスのふかふかソファの上で。

エルフの王女であるシルフィアの柔らかい膝枕を堪能しながら、彼女から口移しに近い距離で果物を食べさせてもらい、最高に怠惰で幸せなスローライフを満喫していた。

「えへへ……アレン様に褒められました。私、もっともっとアレン様を甘やかしてダメにしてしまいますからね!」

俺を追放した連中が、今頃無敵のバフを失って泥水のような惨めな思いをしていることなど、知る由もなかった。

え? ギルドを爆散させた件?

もちろんお咎めなしどころか、Sランクギルドカードと多額の迷惑料(なぜかギルド側から)を渡され、さらにシルフィアから「さすが私のアレン様です!」と褒めちぎられる始末である。

「はぁ……自由って最高だな」

俺は柔らかい太ももの感触を楽しみながら、平和な日常を噛み締めていたのだった。

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