第5章:僕の足音と鼓動の響き
(カフェを出ると、夜の冷たい空気が正面から吹きつけた。しかし、二人の頬は熟したトマトのように真っ赤に染まっている。)
羽栗かすみ: 「あ、あの…白崎さん、家はどのへん?」
(よし、言えた。ストーカーみたいに聞こえてなきゃいいけど…)
白崎花: 「えっ…あ、公園の近くだよ。そんなに遠くないし…」
(じっと見られたら、緊張で震えてるのがバレちゃう!)
羽栗かすみ: 「ちょうどよかった! 僕の家も…まあ、帰り道ってわけじゃないけど、関係ないよ! この時間は危ないからね」
(何やってんだ羽栗! 家が街の反対側だってバレたら必死すぎて引かれるぞ。バカだな、俺…)
(二人は歩き始めた。静寂を破るのは、地面を叩く自分たちの足音だけ。しかし、路地に入った瞬間、ガラの悪い三人の男たちが道をふさいだ。)
男1: 「へえ、運がいいな。金を持ってそうな学生に、上等な女も連れてる
男2: 「ああ、いい女だな。ちょっと楽しませてもらおうぜ」
男3: 「ガキの方は少し遊んでやるよ。どうせ何もできねえだろ」
羽栗かすみ: 「ど、どいてください…!」
(足がゲルみたいに震えてる。喧嘩なんてしたことないけど、白崎さんに指一本触れさせたくない…動け、俺の体!)
(男が花に手を伸ばそうとした瞬間、かすみは目を閉じ、歯を食いしばって彼女の前に立ちはだかった。)
羽栗かすみ: 「やめろって言ってるだろ!」(ボコボコにされるだろうけど、ここだけは退けない!)
(その時、激しい犬の吠え声が響いた。清水海斗が愛犬に引きずられながら現れる。)
清水海斗: 「おい、待てって! どうしたんだよ?」
(海斗は冷ややかな視線で男たちを射抜いた。)
清水海斗: 「五秒以内に失せろ。俺かこいつ、どっちかが我慢の限界を迎える前にな。五…四…」
(男たちは逃げ去り、海斗が二人を落ち着かせる。)
清水海斗: 「気をつけろよ、こんな時間に。羽栗、お前も震えながらよく踏ん張ったな。根性だけは認めてやるよ」
白崎花: 「ありがとう、海斗君…。それから、羽栗君も。怖かったのに、守ってくれて…。すごく、カッコよかったよ」
(私のヒーロー…震えながらも、迷わず私の前に立ってくれた。心臓がうるさい…こんな感覚、初めて…)
(花の家の前に到着する。)
白崎花: 「あ、あの…! 守ってくれてありがとう!」
(花はいきなりかすみを抱きしめた。一瞬の、不器用で必死な抱擁。彼女の髪の香りと鼓動が直接伝わってくる。)
白崎花: 「お、おやすみなさい、羽栗君!」
(真っ赤になって家の中に駆け込む花。かすみは呆然と立ち尽くす。)
羽栗かすみ: 「抱きしめられた…彼女が…自分の意思で。これって、夢じゃないよな…?」
翌朝、学校の廊下にて
白崎花: 「お、おはよう、羽栗君! 昨日は…よく眠れた?」
(あんな抱擁のあとで、まともに顔が見れないよ…!)
羽栗かすみ: 「おはよう、白崎さん! 僕は…まあ、よく眠れたかな。君は?」
白崎花: 「私は…その、全然眠れなかったよ、君と抱き合ったこと考えちゃって! …じゃなくて! 悪い奴らのことだよ!」
(何言ってるの私! これじゃ変態だと思われちゃう!)
羽栗かすみ: 「あ、ああ…そうだね、怖かったし…」
(彼女…今、僕との抱擁のせいで眠れなかったって言った? それって、僕と同じ気持ちなのかな?)
白崎花: 「とにかく! 早く教室に入って! さもないと、抱擁のこと忘れろって言い出しちゃう…ああっ、違うの! 勉強しようって言いたいの!」
(花は柱の陰に隠れて、震えながら様子を伺っている。そこへ一人の少女が現れた。)
謎の少女: 「興味深いわね…。あの子をあんなに慌てさせているのが、貴方なの」
羽栗かすみ: 「えっ…だ、誰…? 僕たち、会ったことある?」
謎の少女: 「花から聞いてるわ。名前は聞いてなかったけど、彼女をこれほど揺さぶる『誰か』がいるってね。彼女も私の正体には気づいているはずよ」
白崎花: (小声で絶叫)「な、なんであんたがここに…!?」
謎の少女: 「花、あなたが話したことがきっかけで私はここに来たのよ。そして貴方…答えてもらうわ。廊下で抱擁の話を叫ぶなんて、彼女に何をしたの? 隠し事は良くないわ」
第5章 完 :
壁一枚を隔てた教室の間でも、僕たちの鼓動の響きは騒がしいほどだ。
そして今…この少女は一体誰なんだ? そして、なぜ彼女は、僕がまだ言葉にすらできていない問いの答えをすべて知っているような気がするんだろう?




