鼓動2:帰り道
著者ノーツ:
皆様、こんにちは!
第44章「鼓動2」、お届けしました!
ついに「呼び捨て」という超重要イベントが発生してしまいました。白のうっかりミス(?)のおかげで、二人の関係はクラスメイト公認への階段を一気に駆け上がりましたね。
海斗の「あんまり変わるなよ」というアドバイス、親友らしくてグッときました。
キャンプという非日常が終わり、次からは学校という「日常」での二人の物語が始まります。恋人になった二人に、どんな試練(主に蓮と直美の冷やかし)が待ち受けているのか。
この新しいステップも、ぜひ見守ってください!
(山の冷たい空気が三日目の始まりを告げていた。キャンプ場は、半分眠りについたような生徒たちと、テントを解体する金属音、そして散乱するリュックで混沌としていた。粕美 白は、目立つほどの隈を作って足を引きずっていた。昨夜から彼の頭の中では、たった一つのフレーズがエコーのように繰り返され、一睡もさせてくれなかったのだ。――『好きです』)
粕美 白の心の声:(昨日、すべてが変わった……。まだ彼女の手の温もりが残ってる。これから、どんな顔をして彼女を見ればいいんだ? 普通に挨拶すべきか? それとも、もう昨日までとは違うのか?)
(遠くで、白崎 華が黒瀬 雪菜の荷物運びを手伝っている。白が近づいた瞬間、二人の視線がわずかに重なった)
白崎 華:(瞬時に赤くなり、視線を落としてカバンのジッパーを閉めることに過剰に集中する) —「白くん……少しは眠れましたか? その……すごく、疲れてるみたい」
粕美 白:(鼓動が速まるのを悟られまいと冷静を装う) —「あまり眠れなかったよ、白崎さん。頭の中がずっとぐるぐるしてて」
(二人は一瞬だけ見つめ合い、周囲には気づかれないほどの小さな微笑みを交わした。二人だけが共有する秘密、新しい「共犯関係」がそこにはあった)
(帰りのバスの前で、グループが集合し始める)
高木 蓮:(大げさに背伸びをして声を上げる) —「くっそー! 肩がバキバキだぜ。白、お前なんて俺よりひどい顔してるぞ。一晩中星でも数えてたのか?」
粕美 あかり:(兄の脇腹を小突いて、意地悪そうに微笑む) —「それとも、誰かのために自分の心臓が何回跳ねたか数えてたんじゃない? ねえ、お兄ちゃん」
森田 大輝:(ジャケットを整えながら、穏やかに笑う) —「やめておけよ、蓮。マットレスの文句を言うより……ずっと『生産的』な時間の使い方をした奴らもいるんだからな」
市ヶ谷 直美:(華と白をじろじろと眺め、二人の距離をミリ単位で分析する) —「ふーん……。二人とも、やけに『普通』に振る舞ってるわね。怪しいわ……」
黒瀬 雪菜:(無言でそのやり取りを見守る。表情は相変わらずだが、その瞳はすでにパズルのピースをすべて繋ぎ終えていた) —「……バスに乗りましょう。一刻も早くここを離れたいわ」
(華がバスに乗り込もうとしたその時、背後から彼女の足を止めさせる声が響いた)
粕美 白:(疲れのせいで、つい口が滑ってしまう。優しく、しかし周囲にも聞こえるはっきりとした声で) —「ねえ、華……。今日は海斗の隣に座ってもいいかな? 少し……考えを整理したくて」
(突如、時間が止まった。荷物の音も笑い声も消え去り、グループの10人は車内や通路で完全に凍りついた)
白崎 華:(耳まで真っ赤になり、目を見開く。二人きりの時しか呼ばれないはずの『呼び捨て』に、心臓が跳ね上がる) —「は、華……っ!?」
高木 蓮:(座席から身を乗り出し、目をごぼれ落ちそうにする) —「今、『華』って言ったか!? おい、聞いたかよ! 呼び捨てだぞ、呼び捨て!」
市ヶ谷 直美:(口を手で押さえ、興奮で悲鳴を上げる) —「バッチリ聞いたわ! 何よそれ、もう『新婚夫婦』レベルの親密度じゃない!」
黒瀬 雪菜:(メガネを指で押し上げ、鋭い視線を白に向ける) —「……へぇ。森の中にマナーでも置いてきたのかしら。それとも、もう必要ないって判断したのね」
粕美 白:(自分の失態に気づき、顔が爆発しそうなほど熱くなる。パニックで手を振り回す) —「ま、待ってくれ! 今のは間違いだ! 白崎さんって言おうとしたんだ! それか華ちゃん! 寝ぼけてただけなんだ、誓って!」
清水 海斗:(白の肩に手を置き、これ以上墓穴を掘らないよう制止する。その口元には微かな笑みがある) —「……手遅れだぞ、白。さっさと座れ」
(数分後、バスは山道を走り出した。最後列に座る白と海斗)
白崎 華:(まだ名前を呼ばれた衝撃を処理しきれず、ぼーっとしたまま雪菜の隣に座る) —「あ、うん……いいよ。私は雪菜さんと座るから……」
黒瀬 雪菜:(華の隣に座り、『もう隠せないわよ』という視線を送る) —「……で、公式ってことでいいのね? それとも、呼び捨てにしたのも『疲れによる事故』だって言い張るつもり?」
白崎 華:(顔を両手で覆いながらも、力強く頷く) —「……うん。公式だよ、雪菜さん。彼が言ってくれたの。私も、彼に伝えたから」
(バスの後方では……)
清水 海斗:(窓の外を眺めてから、親友に向き直る) —「いい動きだったな、白。直美さんたちの疑いを晴らしたいなら、正反対の結果になったがな」
粕美 白:(顔を両手で隠して) —「わざとじゃないんだ! 勝手に舌が動いただけなんだ……」
清水 海斗: —「まあいいさ。(真剣だが優しい声で)……それで、これからどうするか決めたか? お前はもう、ただ彼女を見てため息をつく影じゃない。『恋人』なんだ。学校ではどう振る舞うつもりだ?」
粕美 白: —「……分からないよ、海斗。すべてが新しすぎて、考えすぎると台無しにしそうで怖いんだ」
清水 海斗:(白の肩をポンと叩く) —「あんまり変わるなよ。白崎さんは、今のままのお前に惚れたんだ。……お前らしくいろ。それと、蓮にパーティーの口実を与えたくないなら、不用意に名前を呼ぶのは気をつけろよ」
(バスは曲がりくねった山道を下り、キャンプ場は木々の間に消えていった。白が前方に目をやると、雪菜と笑い合う華の姿があった。彼女が振り返り、白に気づくと、満面の笑みを向けた。白は深く息を吐く)
粕美 白の心の声:(昨日、すべてが変わった。……みんなに疑われてるけど、それでも、悪くない気分だ)
つづく




